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Vol.99

〇仕事、声と価値

 会社も人も、利益を生み、生活を支えなくては、いくら世の中に役立つことでも、続けられません。お金はとても大切です。必要なものですが、手段です。

 お金と声どちらも使わなくては価値ありません。お金や時間を投じて、磨いてきた声が、さまざまな出会いと仕事をもたらします。

 よく、歌などでは、生活できないという人がいます。それは声や歌を本当に使い切れていないからかも知れません。アーティストには、1曲わずか3分間の作品で大金を手にしている人も少なくありません。今はいちいち人前に出て歌わなくても稼げるから、なおさらです。

 声も歌も他の人に価値を与える手段です。自分で心地よく歌うのと、他の人に歌って欲しいと求められるのとでは違います。その見返りとなるのが、感謝やその印としてのお金なのです。

 お金にとらわれたくなければ、お金持ちになればよいのです。他の人があなたをお金持ちにしてくれるのです。お金持ちが嫌いなら、お金をすてればよいでしょう。つまり、お金に左右されずに、選択できる自由度が大切なのです。

 お金持ちでも幸せになれないというのは、確かです。しかしお金がないと、幸せも遠ざかりかねません。

 人間は、食べるためだけでなく、よりよく生きるために仕事をするのです。もっと自由を増やして、もっと楽しもう、その手段は何か、と考えるのです。あなたは何で人に働きかけますか。

〇有名になれる声

 有名になるのも同じです。自分で有名になりたいと思っても、それは無理です。他の人があなたを認めるから、あなたは有名になれるのです。他の人があなたを有名にしてくれるのです。

 そのためには、他の人に認めてもらわなくてはなりません。そのときに何において認めてもらうのでしょう。そこから考えることです。

それには、自分の何かを差し出さなくてはなりません。それは、ものでなくても構いません。作品でも労力でもよいのです。他の人に価値のあるものなら、よいのです。

 それを伝える手段の一つは、声です。私は、依頼の電話を声で受け、その可否を声で伝え、声で話し合ってきました。おおざっぱに言うと、声なしには、仕事も成立しなかったのです。

〇成功者にみる声柄

 「すべての成功者は、声で成功した」とまではいいません。そのなかには声がよくないとか話がうまくない人も少なくないでしょう。話などは、うまくなくてもよいのです。うまい話? それだけでうさん臭いじゃありませんか。

 人柄というのは、大きく人の印象に残りますね。仕事も結局のところ、その人がいて成立するものです。私は、人柄のように“声柄”というのがあると思います。「人となり」に対し、「声となり」というのもありそうです。

 多くの成功者は、目標を声で唱えています。皆に声で伝えています。イメージして、ことばにして、目標にする。さらに、もう一つ、それを声で具現化しているのです。

 多くの人は、自分の器以上に望めないものです。分を知る、現実を知ると、年収○百万円くらいの生活かなどと考えてしまいます。でも、もったいないことです。

天才や犯罪人などでなく、一代で何億円も稼いでいる人もいます。若くして年収何千万円という人もいます。あなたの何十倍、稼いでいるから何十倍も働いているのでしょうか。いえ、時間や労力ではありません。目標をもち、それを可能にする毎日を送ってきたからです。

 多くの成功者は、「運やツキや人様のおかげで成功した」と言います。成功のパワーというのが、一人でできないことを後押しして、気づいたら、そのように成し遂げさせてしまうのです。

 不思議なことではありません。その目的をみすえて、毎日、続けている人が少ないだけです。

〇お客を倍増する声の力

 大きな夢をもつこと、そしてそれを具体的に言葉にして、そして声で唱えること、多くの成功者がそのプロセスを経ています。

 人に働きかける声の力は大きいものです。お客なら、声一つ「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」で、決まるでしょう。そのお客が続けてくるか、二度と来なくなるかで変わるのですから大きな差です。同じ人が年に5、6回来たら、客数は5、6倍になります。リピートしない人が増えると、店は、やがて潰れます。

 たとえ店でなくても、仕事というなら、同じです。

 声の魔力とは、このように、お客を月に何回も来るようにしてしまうことです。

 これは例えですが、人生もそんなものです。あなたはどちらを選びますか。

〇仕事の声力診断

 それでは、あなたの仕事における声力を診断してみましょう。

□自分の仕事での声に自信がある。

□あいさつは自分からする。

□声で相手によい印象を与えている。

□誰にでも声をかけるのが、苦ではない。

□自分の声を仕事に活かせていると思う。

□自分の声をもっと仕事に活かせると思う。

□他人の声で、いろんな情報がわかる。

□話しかけてくれる人が多い。

〇仕事がうまくいく声になる

 仕事がうまくいく声とは、どんな声でしょう。これは仕事の業種、職種、そして相手にも要件によっても違ってきます。

たとえば、高級品を売る仕事とディスカウント品を売る声とは、違います。商談をゆっくりと進めるとき、早く切り上げるときも、違います。高級レストランの応対の声と、ファストフード店の対応の声も違います。

 そこで声を一番うまく使っている人をみつけて、見本にしましょう。見よう見まねで、まねていくうちに上達します。

 仕事上では、説得力のある声、つまり、人の心を変える声、動かす声が大切でしょう。具体的には、落ち着いていて自信にあふれた声です。もちろん、それが嫌味になっては逆効果です。

 美しい声でうまい話ができなければだめと思っている人がいます。しかし、現実には、声の美しさなど、たいして関係ありません。その人らしい声、その人のイメージを裏切らない声でよいのです。深くゆったりした声で、適度に強く張りがあって、メリハリの効く声が望まれます。成功した人の声を見習ってみてください。

〇職場の人間関係をよくする声

 人間関係をよくする声も大切です。それは、しっかりと相手を受けとめる声です。

日本においては、あまり声だけの力に頼りすぎないことも大切です。聞く人には、声が大きすぎると、声を聞いていても疲れます。声の大きさには充分に配慮してください。デリカシーが問われます。

 職場では、声の使い分けがなされています。お客さん、上司、同僚に使う声は、少し違います。それは言葉遣いとも似ています。お客さん、上司には、敬語、同僚、部下には、ため口。いえ親しさに応じて、違ってきます。人間関係の違いが、声に表われます。あなたの望むように人間関係を声で区別していけばよいのです。

 好き嫌いが声に表われるなら、声で好き嫌いを表わしてしまいますか。いえ、職場では嫌いな人にも嫌いとは表わせません。そこで、少し努力して好きな人に使う声にすればよいのです。そんなことで声は減りませんから、大丈夫です。

 もっとうまくやりたければ、とても好きな人に使う声を嫌いな人に使ってみてください。きっとうまくいくようになります。その人を嫌えば嫌われるし、好きになれば好かれやすくなります。あなたの本当の好き嫌いに関わらず、声でよい方へ演出すればよいのです。

 他の人の人間関係を見抜くのにも、声は大きなヒントになります。露骨に声を使い分けている人もいます。そこでその人の好き嫌いがわかります。感度を磨けば、その人が誰を尊敬しているかもわかります。

〇信頼される声、安心感を与える声になる

 仕事にはいろんなことが起きます。あなたは、仕事があるたびに慌てふためく人と、沈着冷静に対処する人と、どちらを尊敬しますか。どちらになりたいですか。言うまでもなく、後者ですね。そしたら、そういう態度をとるところからスタートです。

 ささいなことが起こるたびにドキドキしていては、仕事上、有能とはいえません。大きなことが起きても、どんなに驚いても頭にきても、笑顔のポーカーフェイスで対応しましょう。内心は乱れても、取り乱したところを見せてはいけません。

 ところが、そうした努力とはうらはらに、声は、あなたの心の内を正直に表わしてしまいます。ドキドキしていたら上ずって、あがった声になります。怒っていたら、怒気を含みます。嫌なら、皮肉めいた言葉を言ったつもりがないのに、そのニュアンスが入ります。

聞いている人は、あなたの声をそれで判断します。ですから声を演出するのです。

 

 キレそうなときに、明るく朗らかな声で「わかりました」と受けとめる。がまんできないときに、落ち着いた低い声で、ゆっくりと、「失礼しました」と受けとめる。相手を殴りたいとき、これまでの人生に感謝をして、「ありがとうございました」と受けとめる。すると、あなたの評判は、高まっていくでしょう。いわば、はったりでが、人間関係にも、声の演出は必要だということです。

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3-1.声の話」カテゴリの記事

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