「声の裏ワザ」Vol.1
○ヴォイトレの方針
できないことができるようになるためには、そのギャップについて、理詰めで考え、自分でメニュをつくるか、他のことをやっているうちに、自然とできてくるのを待つことです。
入っていないものは出てこないのです。気づかないものに気づく、足らないものは補う、入っていないものは入れる、すぐにできる方がおかしいと思いませんか。それは無理にやって、できたと思って基準を甘くしているだけなのです。それは、やれたのでなく、ごまかしてこなしたのです。解決したのでなく、本当の問題に気づく機会を見逃したのです。
○持っているものを活かす
声帯を中心とした発声に関わる器官自体をトレーニングで変えていきます。変えなくても、声の出し方で変えることもできます。ですから、心配する必要はありません。心配することが、発声を一番悪くします。
すぐれた成果をあげたいなら、好き嫌いはさておき、自分が持って生まれた楽器をきちんと使いこなすことに目標を絞るということです。
つまり、神様が、あなたの先祖代々、ご両親が与えてくれた、あなたの体という楽器を目一杯、活かすことこそが、もっとも有利なことだということに早く気づいてほしいのです。
あこがれや好きなことをするのも、楽しいでしょう。しかし、本当の才能、天分を活かすことは、それと同じとは限りません。声はもって生まれたものだけに、個人差が大きいのでス。可能性があるとともに、制限もあるのです。だからこそ、きちんとみていくと、自分のできることがわかってくるはずです。
○ヴォイトレのプロセス
最初に見えていたはずのものが、渦中に入ると曇ってくるものです。そして、青い鳥を求めるように、どこかに正解があると、それを探したがる。相手にそれを求めるうちは、何ともなりません。
日本人は、殊にそれを他の人のもっているものへと追い求めたがります。追うから自分を見ないのです。
この状況のままでは、何事も実現不可能です。師とは、何かを成し遂げる人が、自分自身を知るためにいるのです。
トレーナーのようにやりたがる人も多いようです。もちろん何をやってもよいのですが、もし間違えというのがあるとしたら、そこが唯一の間違えなのです。
変えられないものは考えない、変えられるものも、その必要性をまず考えることでしょう。その上で判断してください。
トレーニングとしては、もっとも有利な発声を習得して、あとは 何でもできて、使うときに自由に選べばよい、そうなれば おのずと応用力のあるものが選ばれてくると思っています。
真のトレーニング(レッスン)は経験、年数、コース、回数などで動いていくものではありません。違うことをたくさん覚えるのではなく、同じことをよりシンプルに違うようにできるようにしていくことです。厳密な基準でチェックしていくことができるようにすることです。
○練習場所がなければ、どこでもできることから
「練習をどこでやればよいのか」これもよく聞かれる質問の一つです。今ならカラオケボックス、スタジオの当日個人(割引)予約などがお勧めです。うるさければヘッドホンをしましょう。マイクを使わないで行いましょう。あまりまわりを気にしないことです。(宇多田ヒカルさんは、口を枕にあててやったといいますが、勧めません。)気にしすぎると、よい声は出にくいからです。
練習は場所を問いません。声を出すのは、田舎なら田んぼの真ん中、都会なら屋上や河原、公園など、人に迷惑さえかけなければ、気にしないことです。度胸試しのつもりで、ストリートや公園で堂々とやれるくらいのやんちゃさは欲しいものですね。
声がうるさいなら、もっとうるさいところでやるのも一手です。鉄道や道路の近くや、車の中、お風呂の中など。ただし、乾燥や湿りすぎ、空気の悪いところでは避けたいですね。耳も疲れさせないうちに切り上げましょう。
大きな声を出すだけが練習ではありません。毎日の練習について、いくつかあげておきます。
1.体づくり、柔軟、集中力、2.呼吸、3.発声、4.表現、5.音楽
工夫をすれば、家の中でも、歩きながらでもできますね。
防音ルームを購入したり、部屋を防音して加工するのもよいでしょう。
□練習はどこでもあっても、度胸だめしのつもりで!
○喉が痛くなったら警告とし、最高の状態をめざす
これまで大して声を出さなかった人が、それ以上に声を出したり、ヴォイトレをしたりするなら、喉が痛くなるのはあたりまえです。喉が痛くなるのは、大体は、やりすぎです。やりすぎにもいろんなパターンがあります。
主として、
- 無理な大声や高音の使いすぎ(低音やくせ声、シャウトなども)
2.長時間のやりすぎ
3.休みをとらなすぎ、ペースが早すぎ
4.新しい試み(課題)が合わないとき
5.喉の病気などです。
その他に、体調が悪いときです。
それぞれに解決方法も違いますが、考え方としては、第一に、喉が痛くなるのを避けること、それを決してプラスに考えないこと。なかには、スポーツの基礎トレのように、痛みに充実感を感じる人がいます。しかし、喉は楽器ですから、よくありません。むしろ逆効果と思ってください。(体のチョイ痛は、許容するトレーナーもいます。私は好みませんが、トレーニングのスタンスにもよると考えます。)
途中で休みをとらない人も多いようです。私は、「集中力やテンションが落ちた練習はするな」といってきました。1時間歌いっぱなしなどというのでは、集中力は持ちようがありません。
2分やっては4分休んで、1時間に20分くらいなら、3時間(正味60分)でも悪くはありません。そんなにゆっくりのペースでは、待っていられないという人の方が多いようですが。休みは、チェックや聞く時間にあてましょう。
鍛えるなら、ハードでもよいでしょう。(人によります)ただし、レベルアップをしたいなら、最高の喉の状態で行う。同じ時間内でたくさん行うより、休んで行う方がよくなるというのは、まさに裏技でしょうね。
トレーニングは今、全力で表現するライブではありません。将来の力をつけるためにやるものです。
□集中力やテンションが落ちたら、練習はおしまい。やりすぎはよくない!
○喉が荒れたら
高い声や大きな声を出そうと無理をせず、自分のキーに下げて歌うこと。二、三曲ごとに小休止を入れることです。
疲れたと感じたときに、温かいものを飲むだけでも、喉を休めることができます。お酒はなるべく飲まないこと、飲んだあとに歌わないこと、換気に気をつけ、温度や湿度を程度に保つことです。
1週間たっても直らないときは、耳鼻咽喉科へ
○練習時間は量より質、疲れたら早目にやめる
発声は楽器の演奏であり、スポーツでの一流選手のような繊細な調整を最初から要求されます。例えていうと、草笛をお腹から一杯の息で吹く人はいないでしょう。リートを壊しては元も子もないからです。
声は喉が疲れます。それは、楽器としてつくられたものでも、完成されたものではありません。体の中にあるのですから、それを大切に扱わなくては状態が悪くなります。
ですから、もっともよい状態をつないでいける時間までしか、発声しない方がよいくらいなのです。
あとは、曲を聞いたり、イメージトレーニングの時間を増やしましょう。ちなみに、楽器を弾いたり、音楽を聞いているときも、喉の神経は休まっていないのです。
疲れたら、すぐに喉を休ませましょう。次に疲れるまえに、喉を休ませられるようになりましょう。さらに疲れるような、無理な出し方、雑な出し方はやめましょう。 結果-自覚-修正の繰り返しで、その判断レベルが高まるようにしましょう。真剣にやろうとしたら、喉を使うのをおのずとセーブするものです。
□喉は楽器であるから、力任せにしない
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