「声の裏ワザ」Vol.3
〇声の共鳴を感じ、息でコントロールする
声の中心線をつかみ、息で動かしていくような感じにイメージします。低音域から中音域では胸を、それより高いところでは頭(顔の前面のひびき)を中心にしましょう。
それが体の真ん中に一本通っていて、その線上で逃がさずコントロールできるようにします。芯のみえない声でのデッサンは乱れます。声の粒子を集めるつもりで、焦点をしぼり、方向性をもった声にしましょう。
発音やピッチによって、あまり変わらないように声質(音色)を統一していきます。
切れとコクのある声、
滑らか、柔軟性にとんでしぜんとひびく声、
パワフル、芯があり、インパクトの強い声をイメージしましょう。
レガートで、静かな音の揺れ(ビブラート)を感じてみましょう。
アタックやスタッカートは、喉で切らないようにしましょう。
声を出さずに、体(息)でやってから、少しずつ声にしていきましょう。
口の中のチェックをします。口をあけるのと、喉をあけるのは違います。
スーッと吸うと、奥にすずしく感じる軟口蓋があります。これが上がって、喉仏が下がっているのを、喉があくというのです。口先(あご)を大きくあけると、声は却って出にくくなります。
大きな口は、ビジュアルとして伝えるには、よいこともありますが、発声には不自由なこともあります。
口の中をたてにあける m-ma m-mi
○クールダウンを欠かせるな
「ア・ア・ア」「ア!エ!イ!オ!ウ!」とよく行われている発声トレーニングは、使い方しだいで、喉を痛めかねません。強くぶつけるように出してはなりません。日本語の「あ」は浅く、喉に負担をかけやすい発声です。
母音の発声トレーニング(ヴォーカリーズ)は、やわらかく、滑らかに、ていねいにしましょう。特に“発声時”に急に声にしないように、息の流れのなかで、しぜんと瞬時に切り替わるようにしましょう。(声立て)
声楽家の歌唱や外国人ヴォーカリストのレガートの1フレーズを使うとよいでしょう。(たとえばアヴェマリアやアメージンググレース)
半母音(Y.W)での練習
ya - a
wa - a
wo - o
舌を平らに喉を下げ、軟口蓋をあげ、口の中を広くたてに、あくびのようにします。
声を少しずつ大きくしてから小さくしていくメッサ・ディ・ヴォーチェが有効です。
1.声を少しずつ大きくする
2.声を少しずつ小さくする
3.1と2を組み合わせる
〇出した声にイメージを入れて動かしていく
イメージした声が出ないとき、直接、そこに近づけていこうとすると、無理が生じることもあります。
そういうときは、自分なりにいろんな声を出して、フレーズとともに覚えておいてください。声の柔軟性、応用性が高まります。
ここでは、イメージに伴って引き出されてくる声を、発声練習の声(基本の声)から少しずつ、変じさせてください。
基本の声をベースで歌うのは、それが変じてこそ魅力となっていくからです。いろんな声をいくら覚えて使い分けても、バラバラでは、発声によくないし、歌も寄せ木細工みたいになりかねません。一つでも通じる声をもって、その変化でみせていくのです。
○表現のチェック
表現をチェックするには、日頃使っている日本語から入ることです。方言なら、さらによいでしょう。
日常出している声のチェックからしましょう。
「オーイ」「バーイ」
声の届く距離に敏感になりましょう。あなたの声に「何か」をのせて伝えるのです。
「どう出すか」より「どう聞かせるか」をいつも考えてください。
洋画を見ながら、英語、イタリア語、フランス語などのせりふを、真似して言ってみましょう。
○声に張りがない、言葉が不明瞭な場合
毎日、言葉のトレーニングをなるべく、大きな声でするようにしてみてください。普段の声に気をつけるだけでずいぶんとよくなります。
声に張りがある上で、そこで言葉がきちんとその言葉を伝えられるように、生きた言葉で入っているということです。
言葉のトレーニング、特に感情を入れて、歌詞を読むトレーニングをしてみてください。
鼻にかかりすぎて、言葉がはっきりしないときには、鼻の病気(蓄膿症、アデノイド)もあります。これは耳鼻咽喉科で、みてもらってください。
すぐに鼻にかかりすぎてしまう人は、鼻にあまり抜けないように意識してみてください。
言葉が言い切れず、しどろもどろになっている人は、はっきりと言葉を言い切ることです。
「ガヤダ」という言葉を繰り返してください。
「ラレリロル」「カケキコク」「ガゲギゴグ」「ダデヂドヅ」などを練習してみてください。(「ガゲギゴグ」は鼻音にならないように、ただし、歌のなかで鼻音になるのはかまいません。)
舌がまわりにくいなら、舌のトレーニングをします。
喉の管理は、痛めるまえにストップしてください。
〇声がかすれるなら、唾液で喉を潤そう
喉に違和感、異常を感じたら、休めてください。
大声、長時間厳禁、トレーニングして痛めたという人は、その分、声を使い喉をロスしたのです。
声は消耗品と思ってください。ヴォイトレした分、声を休めることです。特に口内の乾燥を避けてください。適度に唾液が必要です。
あくびして、「あ~あ」といってみましょう。
仰向けになって声を出します。横向けになって声を出します。
喉と口の中でなく、強い息で英語のように話すと、胸の中心に発声ポジションが落ちます。
風邪のときには、喉を休めましょう。
過労と冷房など、急激な温度変化に注意しましょう。
・喉、肩、体を冷やさない
・ほこり、たばこをさける
・アルコールでは、水分が失われる
・おしゃべりしすぎない
・人は人、自分は自分
喉のウォーミングアップメニュ
ドレミ(全音ずつ)ドド♯レ(半音)
〇喉を強くしたいのなら
喉を鍛えるという人もいます。そういうハードな方法を取れる人もいますが、無理な人もいるということです。年齢、キャリア、資質によって、ケースバイケースです。
喉が弱くても、自分の喉と声としての使い方をしっかりと知っていけば、大丈夫です。それぞれに喉は違うのですから自分に合った方法をとることです。ただし、トレーニングで長期的には喉が鍛えられていくのは、確かです。
1.喉が強くなる(無理がきく、タフになる)
2.喉の使い方がよくなる(いざとなっても、声をコントロールできる)
3.喉の限界と危険の避け方がわかる。(休め方、治し方がわかる)
この3つがプロの喉をつくるのではないでしょうか。
大きく変わることも、あまり変わらないこともあるのです。時間をかけていくなかで考えてもいきましょう。それも自分の声の個性を知ることになります。
声帯や体というのは、誰一人同じ人はいません。めざす声も、声の使い方も上達のプロセスも異なります。そこでは、一つのトレーニング方法が万能というわけにはいかないのです。その人によって、時期によって、目的によって、優先順位によって、すべて変わるのです。
喉のクールダウンをしましょう。
〇声質をよくしたいなら、発声に無理をしないこと
鼻濁音で鼻のひびきをつけてみましょう。
鼻濁音の「ガゲゴ」で歌ってみます。
― ing 昔は「ガ」(濁音)行全てを、歌ではやわらかく鼻濁音にして歌ったものです。
フランス語、外国語からも応用できます。
鼻声の人は、mは唇でのハミング、nは口蓋を舌先で離し、鼻腔共鳴にnaが使われるのです。
鼻をつまむと鼻声になります。これらは、声のひびきや発音をクリアにするための補強トレーニングです。
第一に姿勢をよくすることです。姿勢が悪いと映えないばかりか、声も出にくく、喉が詰まりがちになります。 背中を丸めた悪い姿勢で歌うのではなく、なるべく胸を張って堂々と歌うことです。
Ha(ハッ)でスタッカートにするのは、お腹でハッと切りやすいからです。(hは声帯閉鎖音)
私の基本メニュは、「ハイ」ですが、この「ハッ」からきたものです。「ハン」「フン」「ヘン」といってみてください。
〇食べ物は、直前でなければノープロブレム!
声に関する食べもののよしあしに関しては、諸説ありますが、大して気にすることはないでしょう。かなり、主観的な思い込み、迷信、ジンクスで語られています。
ただし、辛すぎるものや刺激の強いものなどはよくありません。でも声を出す直前でなければ、あまり気にする必要はないと思っています。声帯に直接、飲食物はふれないのですから。
喉の筋肉によくないことはあります。急に冷たいものを食べたり、飲んだりすると、冷えます。たとえば、歌ったり話したりして、喉がほてってきたからといって、氷をかじったり、コーラをがぶ飲みするのは、タブーですね。炭酸飲料はよくないでしょう。ウーロン茶やミルクを嫌う人もいます。お腹が鳴ったり、ゲップやしゃっくりは、困りますね。
食べ物は、栄養価の高いものがよいでしょう。スポーツ選手用のメニュなどを参考にしましょう。ハチミツ、レモンとお湯割り、花梨、リンゴ、あたためたミルク、肉、こんにゃくなどが、声によいといわれています。
なす、みかん、メロン、キウィフルーツ、桃、さくらんぼ(果物はアレルギーによる)など、辛すぎるもの、冷たいものは、よくないといいます。
こういったものは健康法と同じく、相性なので自分で考えましょう。
それよりも水分補給を忘れずに。喉を乾燥させたくはありません。飲料は、外から摂りすぎず、自分の唾液に頼りたいものです。
タバコを吸うと、タールやニコチンが煙となって体の中に入ります。声帯は肺と口の間、煙の通り道に突き出ているために打撃を被ります。タバコを吸い続けると、声帯がブヨブヨになって、声がかすれたり、出にくくなることもあります。
お酒に関しては、個人差がありますが、飲んだときは、しゃべらず、声を出さないようにしてください。お酒は血行をよくする半面、神経を鈍くします。声帯は一時、血のめぐりがよくなり、調子がよくなりますが、充血して疲れも早く出てきます。耳が聞こえにくくなり、発声の感覚もつかみにくくなります。自分の声が聞こえないために、声をはりあげがちに、無理に使いすぎてしまうのです。
まして、飲食物がお腹にたまると、わかりますね。
お風呂場も、湿りすぎ、響きすぎ、気分よすぎでは、あまりお勧めできません。
何事も、不安になったり、トレーニングの成果に関わるように思うのなら、やめた方がよいでしょう。トレーナーや医者は、最悪のことを考えるのです。
〇お腹から声を出すのは、声で発声器官を鍛え、整えていくため
息を吸いすぎると、コントロールしにくく、いきなり強い声になりやすくなり、うまく伸ばせません。
お腹からストレートに声が出ているイメージをつかみましょう。
すべてを真似するのでなく、一番わかりやすいところ、自分で近づけるところをコピーするのです。
歌と同じことばや同じ音色や同じピッチでなくて、一番出しやすいようにやりましょう。大切なのは、表面でなくて、内面の感覚として共通すること(原理)をつかんでいくのです。
お腹から声が出る充足感、これは体のリラックス、喉の状態、発声(声たて)など、体-息-声のコンビネーションが必要です。
私はそこで声を使っての、体の強化トレーニング(同時に喉の筋肉の強化)を試みています。
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