「戯画」(1) Vol.64
<古代・中世> 6207
奈良時代:法隆寺金堂・天井板のらくがき、正倉院古文書の中の人物戯画
白鳳・天平では、戯曲として工人や写経生のいたずらがき
平安時代:絵巻様式が流行するにいたって戯画を生む 庶民の喜怒哀楽の姿
六道世界の閻魔や鬼(「地獄草紙」) ユーモアや怪奇など戯画的場面(「陽物くらべ」「放屁合戦」など)
「信貴山縁起」は「源氏物語絵巻」と並んで現存する最古の絵巻物、修行僧命(みょう)蓮(れん)にまつわる三つの物語で「飛倉(とびくら)巻」が有名。
「鳥獣(人物)戯画」高山寺。全4巻で白描(墨画)、甲巻は猿・兎・蛙などを戯画化し、遊戯の様。蛙が僧侶、兎が貴族を表し、当時の社会を諷刺 兎も蛙も同じ大きさ 丙・丁巻 は鎌倉時代で別の絵師。
「病の草紙」、「東北院職人歌合絵巻」
鳴呼(おこ)絵(え)(叡山無勒(むろく)寺の僧、阿闍梨など「今昔物語」)おそくずの絵、勝(かち)絵(え)など、エロチックな戯画。
肉筆戯画・肉筆戯画絵巻は、公家・大名・豪商など上流階級の人々が絵師に描かせる。
<近世>
近世に人ると木版画技術が発達し、少部数での複製戯画制作。浮世絵のような多色刷木版画も登場し、庶民が比較的安価に戯画を入手できる。戯画版本、戯画挿絵入り版本も多数登場。
江戸時代:俵屋宗達、英一蝶、葛飾北斎、渡辺崋山ら画家が戯画
山東京伝「奇妙図彙(ずい)」(1803年)、『小紋雅話』『新梓戯作・絵兄弟』などの遊び絵物
歌川広景「江戸名所(めいしょ)道戯尽(どうけづくし)」シリーズ(1859~1861年)
京都・大坂を中心とする長谷川光信、松屋耳(に)鳥(ちょう)斎(さい)などの鳥羽絵の出版活動、大阪で出版された鳥羽本『鳥羽絵欠(あく)び留(どめ)』『鳥羽絵三国志』『鳥羽絵扇の的』『軽筆鳥羽車』手長・足長・目が点のキャラクター
浮世絵派の鍬形蕙(けい)斎(さい)(北尾政美)、歌川国芳、大石真(ま)虎(とら)。
京都大津附近で売られた魔よけの大津絵、仏画や戯画「鬼の念仏」 東海道を旅する人たちの土産物 初期の大津絵は仏画で、徳川幕府のキリシタン弾圧政策によって広まる。
町人の力 「朝妻船」の絵で将軍綱吉の淫迭(いんいつ)な生活を風刺した英一蝶、歌川国芳の「妖怪図」は、老中水野忠邦による天保の改革を風刺。また「浮世又平名画奇特」で筆禍を受ける。「婚怪草紙」で和宮の徳川降嫁を諷した浮田一蕙(いっけい)。
瓦版「北斎漫画」(全15編)は1814年に初編 陶器の輸出時にパッキングとして使用され、ヨーロッパにも知られる。
江戸時代の戯画は、江戸中心の浮世絵派系統と京阪中心の円山・四条派系統に大別
(江戸)英一蝶から、戯画家は北尾政美、葛飾北斎、歌川国芳、渓斎英泉、河鍋暁斎。
文人画系統で渡辺崋山、司馬江漢
(上方)円山応挙門から山口素(そ)絢(けん)、八田古秀(こしゅう)、西村楠亭。松村呉春門から張月礁(げつしょう)。岸(がん)駒(く)の門から河村文鳳、吉田偃(えん)武(ぶ)。岡本豊彦門から田村東渓、別所東渓。
(大阪)大岡春ト、長谷川光信、竹原春朝斎、松屋耳鳥斎などの鳥羽絵が商人の港らしい俗気を反映。
(名古屋)張月礁、大石真虎、牧墨僊(ぼくせん)
江戸末期:禅僧の白隠、円通や筑前の仙(せん)崖(がい)和尚