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2022年11月

閑話休題 Vol.68「庭園」(2)

<歴史>

古代:池泉舟遊(ちせんしゅうゆう)式(池泉周遊式)

庭園は古代から仏教世界の中心とされてきた須弥山を表す石の山のまわりに配する。

推古天皇「須弥山(しゅみせん)」と「呉橋(くれのはし)」。百済の帰化人の路子工(みちのこのたくみ)。

『懐風藻』(751年)中国古来の三月上己の曲水宴を日本的風物に詠い込んだ日本的曲水観と見る。中国色を巧みに日本の風物に調和。吉野川(離宮)、大堰川(嵐山)など海浜・荒磯・島など景勝地の印象を描写。瀬戸内海 築山・池・島・白砂・水流・滝などの自然要素で構成される伝統様式。

 

平安時代:京都の山紫水明 平安時代の寝殿造り庭園 奈良時代から海景の縮景庭園

平安中期 浄土宗の影響で西方浄土の極楽に見立てた浄土庭園、橘俊綱が書いたといわれる『作庭記』。 四季折々を歌に詠む情緒的な文学の世界。

 

中世:中世―座観式、定視式、鑑賞式、茶庭(ちゃにわ)式、露地式

源頼朝の鎌倉永福寺、浄土式庭園形式。西園寺公経の北山第。足利義満の舎利殿(金閣寺)。

夢窓疎石の西芳寺の庭 石組みの最高峰。天龍寺(京都)、瑞泉寺(鎌倉)。

枯山水庭園では、大徳寺大仙院、龍安寺方丈石庭。

わび茶のための庭園空間が露地。海景から深山へ。待庵露地、官休庵露地など。

 

鎌倉時代:「造園のプロ」の登場「石(いし)(だて)(そう)」 

仏教寺院は宗教的雰囲気、寺の荘厳のため。

写景、写意、象徴化(書における楷書、行書、草書、生け花における真、行、草)。

 

近世:池泉回遊式。大名の屋敷に廻遊式庭園。築山中心の池泉回遊式庭園として、小石川後楽園、兼六園、後楽園、栗林公園、水前寺成趣園。

 

近現代:自然主義、自然風景式、日本庭園を併設 洋風化しなかった。

19世紀後半、欧米でジャポニスムの流行 庭石・太鼓橋・灯篭・茶室 

1893年『日本庭園入門』イギリス人建築家ジョサイア・コンドル

小沢圭次郎 1915年『明治庭園記』。近藤正一『名園五十種』。

磯谷宗庸の三菱深川親睦園日本庭園内の洋館はジョサイア・コンドルが手がけた

小川治兵衛(植治)は、京都の南禅寺近辺に野村碧雲荘、平安神宮神苑、八坂神社神苑、円山公園、長浜の慶雲館本庭。

大江新太郎1924年「作庭意匠」。築山、平庭、露地の3つの分類に壷庭と崖庭。

1919年に日本庭園協会が設立。古宇田實、保岡勝也、重森三玲、龍居松之助、吉永義信、森蘊ら。

昭和の造園は「用」と「景」、「環境」と「芸術」に二極化。建築では用と美、土木では用強美、造園では用と景は、実用性、機能性。「景」は、景観性、美観性。イサム・ノグチの「モエレ沼公園」。

「歌の裏ワザ」Vol.11

〇ステージの立つ前には、録画して入念にチェックする

 

かっこよく、歌い動き回るプロを真似ることを、とことんやってください。動きは、すぐには身につかないからです。

声を出さずに振りと表情だけで、なりきるのです。それを録画して、チェックして直してください。(これなら、声を出さないところでやれます。いつも鏡を見てチェックしてください。

声が出てなくても、歌っていなくても、歌っているように見えるように。音なしのプロモーション映像をつくってください。鏡は左右逆となるので、映像に撮りつつ、大きなスクリーンに投影できたら理想的です。(しかし、小さなモニターよりは大きな鏡がよいです。)プロもまた振り真似から入っているのです。

 

 なぜ声を出さないかというと、それでうまくいくのなら、もうステージをすればよいからです。パフォーマンスは、声や歌の、客へ働きかける力を倍増させるためのもので、声や歌だけでの(つまり、音としての)完成とは違ってくるからです。即興ライブと同じく、そこでのゆがみや変化、乱れが研ぎ澄まされた感覚のもとに自然に出てくるからこそ、人の心を一段とひきつけるのです。それは日頃から意図しておくことですが、あまり無理に形づくっておかない方がよいのです。

ゆがみや乱れのための基本トレは不要です。野球でもボール球をヒットさせたり、転がって片手でキャッチなど、ファインプレーのようなトレーニングはしません。ステージだからこそ、起きるかもしれない奇跡は、無私の心で挑み、起きたら捉えるだけです。

 

 ということで、姿勢は、発声のトレーニングなら、発声にもっとも適した姿勢で行います。というよりも、わかりやすく(チェックしやすい)、あとで必要な力が補われてくるという目的で行います。(これはチェックであり、力をつけるのとは、違います。)

 まず、下半身の安定です。体が揺れないように、あごはひきますが、喉を圧迫しないようにしましょう。そのために、首筋をまっすぐに立てておくことです。首と、背中と頭の後ろの線は、一直線上にしましょう。

 

 

〇本番でミスしないために、シミュレーションする

 

[リハ]ウォーミングアップして、録音します。時間をかけるより質を優先します。

録音チェック、ヴォーカルは声での集中限度があるし、翌日があるなら、負担を残さないことです。

スケジューリングが大切です。体調と喉の状態をいつも気にかけましょう。把握して管理できるようになりましょう。

[ライブリハ]モニタリング

ヴォーカルモニターのかえり、自分の声が聞こえないなら、バンドの音量を下げたり、大きく出しすぎないことです。大音量で聞こえないときは、体の感覚を頼ります。マイペースで、会場や客にあまり影響されないことです。自分の声中心に、ドラム(リズム)を返し、全てを返さない。

[選曲 メニュ]プログラム構成

 直前には変えないのが原則です。配分をしっかりと考え、試しておくこと。メリハリのつくように、並び替えましょう。

[コンサート]

 ホールの残響音は変わります。客が少ないとすごく返ります。冬は返りにくいです。

 

 

〇個性的なステージングをしたいなら、生き方のこだわりを出そう

 

 若い人に言っておきたいことは、他人の考えであまり左右されないでほしいということです。表現を支える基盤とは、あなた自身の生き方、生きてきたことのパワーの総合力というようなところがあるのです。

 歌は、二十歳でも、うまい人はうまいし、五十年、習っているといっても、へたな人はへたなのです。だからこそ実力派志向でいくなら、しっかりとしたトレーニングが求められるのです。

 

 毎日、自分のよい声をなるべく朝から使えるようにしましょう。すると、声も疲れません。よい声を出していると自分も元気になれるのです。声で気合いを入れたり、声でパワーを出している人もいますね。

 そのためには、早く体と心を目覚めさせることです。朝、起きたら深呼吸をして柔軟体操をします。首や顔の表情も動かしましょう。体を動かしながら、息をゆっくりと大きめに長く吐きます。

次に声を出して、喉や口のなかを起こします。ハミングしてから何かを読むのもよいでしょう(読経、朗読など)。急に大声を出したり、ハードに歌ったりするのは、やめましょう。  

これでふだんなら午後や夕方からしか、のってこない声が出せます。それだけよい声での一日が長く過ごせるのです。このように、呼吸や声のためによい習慣づけをすることが大切です。

 

 

〇途中で伴奏をミュートして歌う

 

ドラムやベースの音にあわせたあと、すべての音を消して、合っていることを確認しましょう。

アカペラで練習すると、ピッチやフレーズのキープ力がつきます。テンポも頼らないことではじめて身につきます。そこから、リズム、音程、メロディの処理能力をつけてください。

 

同時に歌うという感覚でも、聞いている人にはやや遅れて聞こえます。うまく聞かせるなら、曲の半歩先に出ている感覚で歌いましょう。メロディよりも早く出すぎてはいけませんが、若干の狂いは落ち着いて処理すればカバーできます。音は遅れたり、下がったりすると目立つのです。

Wa」なら、一拍目に「a」で合わせ、「W」をその先に出すようにします。

 

 

〇プロの映像とシミュレーションする

 

あがらず客をのせるには、大プロジェクターで観客席を写し、度胸をつけましょう。

大プロジェクターで、大観客の前で歌うシミュレーションをして、ステージ側からみることに慣れるのです。

ヴォーカルと同じように、ステージに出て、走り、アクションして、ひっこみ、MCする(最近では、格闘家のリングパフォーマンスがうまい)。するとしぜんと姿勢も表情も目線もよくなるでしょう。最高の表情を見せなくては、最高の声は出てこないのです。コンサート会場でなくとも、駅前広場や遊園地などのステージで、客席の方に向かって立ってみるのもよいでしょう。

 

 目は、開けて歌います。間奏の時や歌う合間に、意味を持たせられるなら閉じてみてもよいでしょう。

 曲のなかでの変化、場面が変わるところやバラードに入るところ、サビに入るところなどでは、ちょっとした動きを入れましょう。振りで伝えることも必要です。

 エンディングは最後までしっかりとマイクに向かって歌い、マイクをおろして一礼します。決してあわてないことです。

 ステージに出てくるときや曲の終わった後、足早に雑に動いて、せっかくの雰囲気をこわしている人がいます。ヴォーカリストは主役なのですから、いつもに増して、ゆっくり堂々と振る舞うようにしましょう。

 

 

〇マイクの扱いと種類

 

 マイクの持ち方

マイクは、親指、人指し指と中指の3本で軽く持ち、薬指や小指はそえるくらいでよいです。ギュッと強く握らないようにしてください。

・マイクを高く掲げないこと。(高く掲げるようにしてマイクを持つと上のひびきしかとらえない)

・正面に六〇度くらいで構える

・マイクを斜めに持たない

・口を近づけすぎない

 マイクは精密な機材です。次のようなことはしないよう。

・指でマイクの頭を叩く

・マイクを直接ものの上に置く

・マイクのヘッドを手で包む(上をおおうとハウリングを起こすことがあり、下をおおうとひびきが入りにくくなる)

 歌い終わったら、マイクは必ず、次の人に手渡しするか、マイク・スタンドに立てるようにしてください。マイクを投げておいたり、直接テーブルの上におくのは、タブーです。

マイクからノイズが出るときは、コードが痛んでいる可能性があります。マイクのすぐ下のコードの接続している部分が、接触不良になっていることもあります。抜き差しして、だめなら交換しましょう。コードを引っ張ってはいけません。一本、自分専用のマイクをもちましょう。衛生的で、傷むことも少ないからです。

 

スタンドマイクはハンドマイクより難しいので、初心者はさけましょう。

声量のある人は、こぶし一つか二つ、声量のない人は半分くらい、口とマイクを離すとよいでしょう。

サビで声を張り上げるときは、口元から一直線上にマイクの軸がくるように離していきます。逆に、語り口調になるときは、口元に近づけたほうがやわらかく聞こえます。

 

[単一指向性マイク]

ヴォーカリストの使う標準的なマイクです。一定の方向の音を強くとらえるため、マイクを向けた方向の音をメインにとらえます。ヴォーカル以外の雑音が入りにくいのが利点です。

声を出す方向に常に向けておきます。向きによって、声の入り方が変化するので注意しましょう。

アクションをつけると、マイクが別の方向を向き、声があまり入っていないことにならないように気をつけましょう。コードを持ったりからませたりしないようにしましょう。

 

[ワイヤレス・マイク]

 アクションをつけたりステージを移動するのに、コードがないので便利です。しかし、ノイズも拾います。

 

 

〇選曲には、持ち味が出るものを入れる

 

自分の声にあった選曲をしましょう。客が感動、満足するものを優先したり、意外性でいくのも一つのやり方です。

選曲の理由としては、次のようなところでしょう。

・好きな曲

・音域があっている曲

・曲の詞の内容が雰囲気が、自分に似合う曲

・聞いている人がのりやすい曲

・無難な曲(スタンダードなナンバー)

・他の人があまり歌わない目立つ曲

・オリジナル曲

 

 歌うときに大切なのは雰囲気です。選んだ歌の表現する世界とあなたのキャラクターがあまりにかけ離れていると不利です。歌は、単に歌えたらよいわけではなく、その人に合っていることが肝心です。

 

 とはいえ、あまりその人の声質に似た人の曲ばかりを歌うことはすすめたくありません。たしかに似ているのは有利かもしれませんが、あなた自身の表現こそが期待されているのです。

「案外、いかす」とか、「あなたが歌うと変わった味が出るね」とか、自分の思いもしなかった曲に誰かが魅力を感じてくれたとしたら、その曲を大切にするとよいでしょう。

本人が好きな曲よりも、まわりからこういわれているうちに本人も好きになっていくような曲の中に、その人の本当のオリジナリティーの出る曲があるように思います。似合った歌を歌うことよりも、「まさか、この人が」という意外性がよいのです。曲づくりのときにも念頭においてください。

 

 

〇リヴァーブのかけすぎ、ボリュームの上げすぎを防ぐ

 

音響効果(リヴァーブ)をかけると、どんな声でも一応、歌としての格好がつきます。そこで最近はプロもリヴァーヴをけっこうかけています。しかし、これですべてがよくなるわけではありません。むしろ、次のようなデメリットが出てくることを覚えておいてください。

・歌詞が聞き取りにくくなる

・ストレートに感情が伝わりにくい

・メリハリがなく、モアモアした感じになって切れが悪くなる

・ 言葉が遅れて聞こえるようで、リズムがさえなくなる。

・声の音色、インパクト、パワーがぼやける

 

声の音色そのものの魅力が伝わりにくいということです。

 そこで、うまい人ほど、あまりエコーをかけないようになります。せっかく歌った歌を生かすも殺すもリバーブしだい、適切に調節して抑え、必要以上にかけすぎないようにしましょう。

 

自分の歌っている声が大きく聞こえないと歌っている気にならないせいか、目一杯ヴォリュームを上げる人がいます。うまさが半減して、まわりの人は疲れてしまうことも少なくありません。

人は静かに聞こえてくる音には耳をすまし、うるさい音には拒絶反応を起こすからです。しかも音が割れたり、ハウリングしやすくなり、歌が十分に生きません。適度な声量で歌って実感できるように、自分の体で知っておくことでしょう。

バンドも含めての練習では音量を下げることと、自分の歌をよく聞くことで、ていねいになり、うまくなるものです。

 

 

○ハウリング

 

 ハウリングは、スピーカーの音をマイクが拾って、ブーンとスピーカーが鳴る現象です。スピーカーの方向へマイクを向けなければよいのです。キーンと高音が響くなら、高音ボリュームを下げます。このハウリングは、複数のマイクを同時に使うとき、それらのマイクをくっつけすぎても起こります。

 

[ハウリングの対策]

・マイクをスピーカーから離す。単一指向性マイクを使用し、スピーカーの方向へ向けない。

・スピーカーの方向を調整する。

・マイクに近づいて歌う。手などでマイクの後部(ネット後部)をふさがない。

・イコライザーなどで周波特性を変える。(ハウリング・サプレッサー、グラフィック・イコライザー、パラメトリック・イコライザーなどでハウリングを発生させ、その周波数の値を下げていくと音質の劣化を防げます。)

・ディレイ装置を使う。

 

 

〇視線、動作、マイクを持つ手に注意

 

[ステージパフォーマンス]

目線-語りのときはまっすぐ前を、サビの部分は遠くを見つめるなど工夫しましょう。歌っている間、ときにはいろいろな方向に視線を使い分けることも大切です。

あがりやすい人は、マイクの中に歌うとか、少し遠くの人を選んで、その人に聞かせるつもりで歌うとしぜんに見えます。

 

手の振り-サビのところとエンディングだけ、少し手を伸ばしてみるだけでもだいぶ違ってきます。また、語りのところや心を特に込めたいところは、左手を胸に置いたり、両手をマイクに添えたりするのも効果的です。

 

ステップ-足をリズムに合わせて動かす。

間奏のときには、マイクは口元から離すようにします。少し動いて位置を変えたり、向きを変えてみるのもよいでしょう。マイクを持ち変えるなど、ちょっとした動きがあってもよいでしょう。

歌のムードを維持したり、高めたりするのに、変じるのは両刃の剣です。余計なことをやって雰囲気をこわさないように気をつけます。じっと立っているというのも一つの演出です。

 曲の出だしや間奏の後の出だしの時は、前もって少しずつマイクを口元に近づけていくようにしましょう。

 

ファッション、メイク(汗に強い)に加え、アクション、振りを考え、ステージを大きく使いましょう。

きれいにうまく歌おうと思わず、キャラ、味を出し、お客さんと触れ合いましょう。

・マナー、時間厳守、裏方さんに声をかけよう

・レコーディング、総チェックの場、ライブよりもレッスンに近い

・トラブルには、最善の処理

・ミーティング 反省会をする

「基礎教育のためのヴォイトレ」 Vol.3

〇国際社会では弱い音声力の日本人

 

 海外に行くと、状況はさらに厳しくなります。ことばで意志を伝えるのに、外国語ペラペラでなければ、大して役に立ちません。だからといって、通じないわけではありません。私たちは、不慣れな言語では、ことばよりも声の表情やボディランゲージにヒントを得ることになります。

 私はフランスの美術館で、あるところに立ち入るなり後ろから、“A―――”といわれ、パッと身を引きました。声の調子から、いけないという禁止の意味だとわかったのです。小さな子ども、動物にでも、声の力は使えるのです。

 私たち日本人にとって、音声というのは、やっかいなものです。日本人が英語をしゃべれないのは、勉強をしていないからではありません。どちらかというと、耳と声とをしっかりと磨いていないせいです。

あなたは、国語の時間にどのくらい、声の使い方を学びましたか。小学校に入るときには、あいうえおの50音のひらがなもカタカナと音とのきまりは知っていたでしょう。そう、日本語は、読みがわかったら、言えるのです。漢字は、ふりがなをふれば読めます。なにしろ、漢字が膨大な量ですから、国語ではその読み書きの練習ばかり、たくさんしましたね。常用漢字だけで2千余字です。

一方で、アルファベットは26文字、そのかわり、音の数は何十倍にもなります。ちょうど、私たちが多くの漢字に四苦八苦しているときに、外国人は多くの発音を正しく発することを学んでいるのです。

 

 

〇話の説得も声で決まる

 

 さて、話をしても、それが相手にうまく伝わる人と伝わらない人がいますね。話のうまいへたは、何で決まるのでしょう。言うまでもなく、まず、内容、これは大切ですね。

 でも同じことを言っても、うまく伝わらない人もいます。大したことがない内容なのに、よい内容をもつ人よりもうまく伝わる人もいます。

 内容というのはメモしたもので、伝えるというのは、それを渡すこととなります。内容がメモでなく頭に入っていたら、声でとり出して伝えるということになります。

 そのときに、内容のよしあしと伝えるよしあしというのは、別だということを知っておいてください。

 「メラビアンの実験」では、話の説得力は内容より声で決まるともいえるのです。

 お笑いでも、おもしろいネタもつまらなくしゃべったら、笑いはとれません。つまらないネタでもおもしろくしゃべると、笑ってもらえます。あなたの身の回りにもそんな友だちや知り合いはいるでしょう。

 人を笑わせる人は、人気者です。人を楽しくすることができるからです。

同じ話、同じ声なのに、声の使い方一つで人を楽しませることもできる。人を笑わせることでプロにもなれる。つまり、それを仕事に、食べていくことさえできるのです。

 仕事や人間関係も同じです。声の使い方一つで、うまくもいくし、失敗もするのです。

 

 

〇声は健康のバロメーター

 

 あなたの知人や友人の具合の悪いときは、何でわかりますか。顔色でわかりますね。でも声でもわかりませんか。

風邪をひいたら、風邪声になります。鼻声ですね。なぜ鼻声になるかというと、鼻がつまるからです。

 私たちの声は、口と鼻から出ています。ところが、風邪をひくと、口だけから出て、鼻の中にはひびくからです。鼻をつまんで声を出してみたら、わかります。

喉が痛いときは、うまく声帯が合わず、かすれ声になります。カラオケなどで歌いすぎた状態と同じです。このとき息が声にならず、もれてしまいます。

 声帯が腫れたり、できもの(ポリープ)ができたときもそのようになります。お腹の調子が悪いと、どうでしょうか。息を深く吐けませんね。すると、声は弱々しくなります。

 息は、生きるの生き、です。深い息が浅くなり、吐けなくなると、人間は死んでしまいます。

 あなたが無意識に行なっている呼吸も、体が弱ったら大変な労力のいることなのです。

 ついでに、あがり症の人に、アドバイスをしておきます。いつもあがりそうなときには、深呼吸を心がけてください。体がくつろぐと、神経も安らぎます。

 声は呼吸のうち、吐く息でコントロールして使います。吐く息をコントロールできなければ、うまく声が出ません。

 だから、声がひびく人、大きく出る人は、だいたい健康です。

 健康というのは、体だけでなく、心のことも含めてです。気落ちしていると、声にも元気が出ません。声は肺からの空気をエネルギー源とするのですが、気の力が満ちていてはじめて伝わります。やる気、気力、元気と、気はみえませんが、声によって明らかに伝わるのです。

 私は、声は、健康のバロメーター、やる気のバロメーターといっています。

 

 

〇日本語では、読み書き中心

 

 あなたが耳でよく発音を聞いて、口で発する練習をしたのは、日本語でなくて、たぶん英語でしょう。母語は、しぜんとしゃべれて、外国語だから発音から学ぶという考えは、日本くらいでしか通じません。自分の国のことばでも、発音を正すのは、案外と難しいのです。

 日本語の音の数はいくつあると思いますか。五十音、いいえ、50余りしか音がないのではなく、もっとたくさんあります。実際は「ん」でも5通りくらいあるのです。しかし日本人は、それを認識せずに使っているので、存在しないみたいなものものです。たとえば、ホンとボンのンは違います。

 国語というと、他人のことばを聞いて、自分のことばを話すことが基本なのです。読み書き中心の国語学習は、明治維新以後、西欧文明に追いつけと日本人ががんばったためです。

 言語というと、文字に書けるものと思っていませんか。日本語は、そうです。しかし、世界の言語で文字をもつのは、言語の全体からいうと少ないのです。

 日本でも方言は文字にできないといえなくもありません。ひらがなの音で書けますが、特別な場合をのぞき、方言は文字にしないのです。

 

 欧米でも、ことばは音声で扱われてきました。ことばは聖書では、人間が動物と区別されるための大切なものでした。ことばがない赤ん坊は、動物と同じ、だからこそ、音声教育は重要視されたのです。

それは発音に限らず、スピーチ、ディベート、ディスカッションなど、音声コミュニケーションの技術として身につけるものとなりました。詩や小説も朗読されるものでした。声の使い方、間のあけ方など学びます。

 日本では、文盲率は少なく、ほとんどの人が文字を読めます。これは、とても特別なことです。その代わり、人前で発表したり、スピーチするのは苦手な人が少なくありません。

 他国が音声の基礎教育として学んでいることは、日本ではアナウンサーや役者の基礎訓練を受ける機会でもなければ、経験しません。

 義務教育で音声技術を習得した人と、そうでない人が出会えば、どうなるでしょう。

 これは、英語という国際共通語でも、遅れをとっている日本にもう一つ、音声の大きな壁が立ちはだかっているといえます。

 日本という島国の村社会では、以心伝心で察してきました。音声ことばにして、言う必要もなく、対話や論議もたいしてせずに、生活が営めました。そのことが音声コミュニケーション力においては、裏目に出ているのです。

 しかし、ますますグローバル化する社会では、常に異言語、異民族国家の人とまみえることになります。もはや、日本という、村社会の「話さずとも相手が意をくんでくれる」という常識は、通用しないのです。

 

 

〇日本人の音声力のなさ

 

 日本人の住まいは、木と紙の家でしたから、壁に耳あり障子に目あり、大きな声はタブーでした。一方、欧米のように石やレンガの家なら、壁に耳をつけても、何も聞こえません。しかも、天上が高く、広い家では大きな声をひびかせなくては伝わりません。

 そんなことで、私たち日本人は、あまり声を使わなくてすんだのです。

 気候も日本はジメジメしています。からっと乾燥したところでは、声は遠くまでひびきます。

 畳の生活で猫背ですから、押した声となります。体も小さかったし、狩りなどと違い、農耕民族に大声は必要ありません。声を張り上げなくてはいけない必要も少ないからです。

体格だけでなく、頭蓋骨、あごの形も違います。食べものは、肉食でなく草食、声を出す体も、決してパワフルではなかったのです。

 そこから「口は災い」、「沈黙は金」、「おしゃべりするな」、「歯をみせて笑うな」と、たくさんしゃべる人、大声でしゃべる人、口のうまい人は、日本では、評価が低かったのです。いつも落ち着いて腹がすわっていて、無言実行、死んでも口を割らないような人が、尊敬されたのです。

 

 

〇声は、相手に左右される

 

 自分の言いたいことをしっかりと相手に伝えるのに、声の力がこれからますます問われてくるでしょう。

 情報化社会では、バーチャルな世界、目でみえる世界をどんどん広げています。もちろん、音で伝えることも便利になりました。

五感のうち触覚、臭覚、味覚は、その場にいないと捉えられません。しかし、映画やTV、パソコンの発達で、目の世界は伝送できるようになりました。レコード、ラジオ、電話の発明は、耳の世界を伝送しています。

しかし、目で得る情報量の多さに、耳の感覚はややおされ気味です。

 わかりやすくいうと、目をつぶった世界が視覚以外の感覚、主に耳の世界です。人間の臭覚は、かなり劣ってしまいました。生きることに必要ないと、感覚は衰えるのです。触覚も、キーは速く打てますが、鉛筆をナイフで削った頃よりは、鈍っているでしょう。

声は、発した時点で、相手のものとなると思ってください。自分の体から出るのですが、独り言でない限り、それは相手を想定しているわけです。相手にしっかりと伝わって成り立つのです。

 多くの人は、声を出すことばかり考えています。しかし、話というのは、相手に左右されるのです。相手が受けとめて、なんぼです。その話は声にのります。

 どんなによいことを言っても「聞き取れませんでした」では、結果ゼロなのです。

 さらに、聞き手の態度にもよります。熱心に聞いてくれると、伝わることも、他のことばかり気になって考えていたら全く伝わらなくなります。つまり、話し手のレベルでなく、聞き手で決まるのです。これは、声で気持ちが伝わらない例でも説明しました。

 

「言葉にして繰り返す」 No.375

世の中の見方や自分に対する能力等の判断は、すべて意識によって変わってきます。

ポジティブにみたとき、可能性に満ちあふれていたことも、ネガティヴにみれば絶望に陥ってしまいます。

この意識を変える有効な方法は、言葉を使うことです。

言葉にして思い描いてみること、

言葉にして読んでみること、

そして、それを口癖のように、毎日のように唱えることです。

宗教でもなんでも効験あらたかなものは、そういったものです。

飽くなき繰り返しのみが、結果をもたらすのです。

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