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「歌の裏ワザ」 Vol.13

〇レベルがわからない人は、世界の一流のと比べる

 

 どういうヴォーカルを聞いたらよいのかとよく聞かれます。何でも片っぱしから聞いて、ノートをつけましょう。自分で見つけることが大切です。そこがオリジナリティの感受性のベース、自分で創って、とことん気に入る、そこがオリジナリティの創造性のベース、この二つのベースを優先して欲してほしいのです。

 

 自分がどれをよいと思うのか、よくないと思うのか、思いつくだけの理由を入れましょう。それは、あなたの表現の核となる感じ方(感受性)です。もちろん、成長したり、変化もします。

自分の表現技能、楽器と違い、声はそれ自体に制限があります。やりたいこととできることがすぐに一致しないし、いつまでも不可能なこともあります。ですから、やりたいことからとは別に、自分の声のできることから考えていくことです。声も鍛えられますが、自分の声について知ることがとても大切なのです。

 

自分(やバンド)に合った曲づくり、ステージづくり、パフォーマンス、ファッション、発音、オリジナルの音(声、歌い方、歌)とは、何かをそれぞれ考えましょう。

 私は、フレージング、ハーモニー、フィーリング、スタイル、アプローチ、シャウト、情感、声質などをみています。バックグラウンド、メッセージ(発言)トークも磨きましょう。

 

○スタンダード曲の聞き比べ比較

 

 次の曲をYouTubeなどで、いろんなアーティストの歌唱で聞き比べてみましょう。

Georgia on my mind

When the man loves a woman

Amazing Grace

Autumn Leaves(枯葉)」

「愛の讃歌」

「イマジン」

「ダニーボーイ」

「星に願いを」

「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」

「イパネマの娘」

「ベサメムーチョ」

「キサスキサスキサス」

 

〇オリジナリティとは、同じことをして違ってくるもの

 

 人のやっていないことで、人のやっていない初めてのことをやるのなら、何でもオリジナリティというものでもありません。個性も確かに何でも個性ですが、それは他の人にとって価値のつくものとして、示せるもののことです。

他人と同じことをやっていながら、違うものがもっとも、あなたによい形で出てくることを問うのです。

そのためには、日頃から多くのすぐれたものに触れ、感じる(感動する)ことです。そういったものが自分の作品に出る、そういう流れが必要です。つまり、創造のための習慣と環境をキープするのです。その上に+αが生じる可能性が出てくるのです。

 強いもの、カリスマ性、オリジナリティ、才能と、自分にないものを人は求めます。技術だけでなく個性、キャラが大切です。

 

 声にしたり、歌にしたりしてみなくては、オリジナルもオリジナリティもわからないことは確かです。誰かのようでなければよいとか、初めてやればよいというのでなく、あなたの持って生まれた体(楽器)としての声、思いや感性、表現としての歌、作品としての音楽が一体になって伝わることです。ですから、本当にきちんとした練習というのは、そのまま、常にオリジナリティと対していくという問題になってくるのです。

私は、歌と声を8~16小節くらい、フレージング(半オクターブほど5秒~15秒くらい)で徹底してチェックすることで、歌とヴォイストレーニングを結びつけています。これをオリジナルフレーズでのデッサン練習としています。

 

〇同じ曲で感じ方の違いを把握する

 

 他人と同じ曲で比べるのは、よい勉強です。また、教えるほど勉強になることはないといいますが、他人の作品は自分のよりも客観視しやすいからです。

10人の同じ歌を聞いて、細かく判断するために、メモをつけてみます。その6人目として、自分が歌ったものを審査してみるのです。さらにすぐれた方法は、プロの11人と比べてみることです。

 現在は、ネットで、同曲異唱の音源を簡単に聞くことができるようになりました。一つの曲を多くのアーティストがどのようにプレイしてきたかが、聞き比べられるのです。歌い手だけでなく、楽器のプレイヤーのも聞きましょう。アラブもアフリカも全世界のを聞きましょう。そこで詳しく、ノートをつくるのです。

 

○同じ曲で比較してみよう

 

「ソモス・ノビオス」(クリスティーナ・アギレラと夏川りみ 同じ曲で共にボッチェリとデュエット)

「いとしのエリー」(桑田佳祐とレイ・チャールズ)

「エビータ」(マドンナ[映画版]と劇団四季)

「夜空ノムコウ」(SMAPと綾戸智絵)

「花」(喜納昌吉とおおたか静流)

「すばらしい日々」(奥田民生と矢野顕子) 

「島唄」(THE BOOMとアルフレッド・カセーロ)

「上を向いて歩こう」(坂本九とウルフルズ)

「スローバラード」(RCサクセションと和田アキ子)

「涙そうそう」(森山良子とBEGINと夏川りみ)

 

〇くせや一人よがりに陥らない、かっこよさを知る

 

 自己流と一人よがりは違います。これは、オリジナリティとも違います。人と違うことを考えたつもりでも、大抵は誰かがどこかでやったものと似てくるのです。ですから、アーティストは他の作品や世の中の動きにも敏感です。そこでもっともすぐれているものをベースにすれば、レベルの低いものに時間と労力を浪費しなくてすむからです。

 とはいえ、世の中の動きの後を追うようなことはしません。より早く新しいものを作り出し、世の中の追いつくのを待つのです。それがクール、かっこよさになるのですから。

岡本太郎氏のように、すでに「きれい、うまく、心地よく」などといわれるものにこびてはいけないのです。

 

 クセがあることがよくない理由は、 再現性、応用性、柔軟性に乏しいこと、 その人の理想とされるオリジナルの声ではないことです。人に伝わる自然な声というなら、伝えたいときの思いを伴い、それを妨げない声(ベターな声)といえます。

 

〇コピーに影響されなくなるまでコピーをする

 

 一人のあこがれのヴォーカルしか聞いていないなら、必ずその人のファンとわかるような歌い方になってしまうものです。それがいいときもありますが、背後にそういうのが出て通用するのは、カラオケだけです。(まして習っているトレーナーの歌や発声のくせが出るようなのは、上達にそって個性がなくなる分、最悪です)

 声楽的な歌唱のくせの抜け切れないヴォーカルもたくさんいました。高音、ビブラート、母音処理に声楽に通じるところが多くて、歌声、歌の形がそこにしか見出せなかった人が多かったのです。(そういうのは、今は古臭く聞こえます。)最近は、そこから自由になってきたのはよいのですが、自由即、表現とも違います。

 少なくとも複数のすぐれたアーティストを徹底して聞き込み、歌い込み、入れることでコピーの影響はかなり逃れられます。同じ曲で聞き比べていく方がよいでしょう。

(コピー即インプロは、ポップスのレッスンの基本です。このとき、大切なのは、元の形でなく、新しい形でかつ、成り立つ可能性のあるものに価値をおくのです。

オリジナリティは、当初、未完成な段階では、まっとうに聞けたものでないように思われることもあります。声のプロデュース能力こそ、ヴォイストレーナーの本質の力です。トレーナーも手探りでヴォーカルの可能性を探っていくのです。それゆえ、トレーナーは、世界中のすぐれたヴォーカルの声や歌を入れておく必要があるのですが・・・。)

 

○ものまねにならないよう大音量で身体に入れる

 

 まねるのは学ぶことですが、自分のために活かせられるように学ばないと、ただの二番煎じになります。一流のものは、まねることさえできないので、そこに挑戦するのが、ベストの学び方です。

しかし、声は一人ひとり違うので、必要以上に異なるところをまねるのは、自分の発声の表現力の可能性を狭めてしまいます。

 その人っぽくまねてみえるところは、まさに個性ですから、まねてはいけないところです。そこしかみえないと、そこをまねてしまうのです。

 

 発声のトレーナーの声についても、同じようなことが起こります。「先生そっくり」は、プレイヤーなら、セミプロまでのほめことばですが、ヴォーカリストとしては、致命傷です。

もう一つは、表に出た歌い方や声は、表現の形にすぎないということです。歌は、作品としてまとめ、切り取られているのです。そこでの声もすべてがよい手本ということではありません。☆

 練習のプロセスでは、もっと自分に基づいた大きな可能性を追求しなくてはなりません。ですから、役者が目で泣いたり、笑ったりできるまでに、号泣し、大笑いを練習するように、見たり聞いたりした感覚をもっとも大きく読み込んでいくのです。

 

 そのために歌は、大音量で聞き込んで、一つひとつの息づかいの違いまで聞き込んでください。少し伸ばしたところは、ずっと長く伸ばし、少し強めたところは、目一杯、強く出してください。

歌のバランスなど、あとで考えればよいのです。一つのフレーズをピークの表現となるところまで、全身全霊で出し切ってください。

英語でも、多くの日本人が強アクセントを強めているのは、向こうの人の半分も強くなっていないのです。ほんの少し弱く聞こえたというところで、プロの内部の感覚では、ほんとに消え入るほど弱く表現しているものです。弱い小さい表現は、強く大きい表現よりずっと難しいので、最初は拡大することを中心にやりましょう。

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