「基礎教育のためのヴォイトレ」 Vol.5
〇スピーチ好きになろう
日本で育つと、「皆のまえでスピーチする」というのは、嫌なことであっても嬉しいことにはならないようです。どちらかというと、「スピーチしなくてはいけない」という感じです。「皆、やらされているから仕方がない。」「他にいたら変わってもらえたら」と、そんな程度です。
自分からよく知らない人に声をかけることは、誰でも最初は抵抗があります。ところが、バイトなどで何人にも声をかけるような経験をしていたら、少しずつ抵抗がなくなります。スピーチでも毎日のようにすれば、大した負担ではなくなっていくでしょう。
声も、朝から出した方が楽なのです。
バイトや学校のためではなく、あなた自身が気持ちよく過ごすために声を出すと思えばよいのです。苦労したりきついと思わないで仕事をするために、朝から自分の心地よい声を出せると、自分でも気持ちよくなるものです。ならば自ら声をかけましょう。
優秀なセールスマンは、ミラートレーニングや、声を出すトレーニングをしています。お客さんのところへ行く前に、自分でしゃべっているのです。
そういうことを知らない人にとっては、なぜそんなことをやらなくてはいけないのかと思うのでしょう。
朝に体を動かし、深呼吸などをしておくと、朝から声が出やすくなります。一日中、疲れないで過ごすためにもよいのです。ストレスもたまりにくくなるし、声を出すことで発散できます。ラジオ体操を朝に行うと、活気がつき、事故防止にもなるのです。
何であれ、やらされる、できたらやりたくないと受け止めるのは、もったいないです。
寝起きの声でしゃべっているのは、よくありません。声は身体とともに次第に起きてきますが、それでも喉が疲れてきます。ところが、体を動かして遊びに行くような気分で声の状態が整っていると、人としゃべっていても疲れないし楽なのです。まわりの人にも、あなたのその声は好印象を与えます。
〇声のせいで損しているか
「声が悪い」とか「よく聞こえない」という人がいます。どこから、そう思うようになってきたのでしょうか。
たとえば日本人が自分の声の欠点に気づく体験の一つに、学校での出欠とりがあります。
あなたが名を呼ばれて「○○さん」「ハイ」と答えたのに、もう一度「○○さん」と。一度ならず、こういうことが続くと、誰でも自分の声に不安をもちます。(他の人は聞き返されていないのに、私だけ……。)他に、二度三度呼ばれる人をみて、「私もあの程度しか聞こえていないのだ」、そして「私の声が小さいのだ」と思ってしまうのです。
まれに、「あの先生は私に好意をもっていない」などと思い込んでしまう場合もあります。自分の声に責任を感じないとそうなります(先生も人間なので、本当のところはどうかわかりません)。
このケースは、声についての理解を深められるので、少し詳しく追ってみましょう。
まず、その原因からです。
たとえば、タイミング。先生が呼んだのに、間をあけてしまった。これは先生が返事を聞くのを諦め、間があったので、確認するために再度、呼びます。ちょっと時間がたつと、ポンポンと返事の返ってくるリズムからずれるので、そこではもう聞くことをやめています。つまり、先生の耳の注意力が落ちています。そこで、あなたの返事の声の大きさに関わらず、二度、呼ばれてしまいます。性急なタイプの先生、出欠に時間や神経をとりたくない先生には多いです。これは、タイミングと先生の性格の問題です。
逆に呼ばれたときに、返事を早めにしてしまうケース。何かを言っているとき、人の耳は疎かになっています。「今、返事したよね?」と確かめたくて、また聞きます。 聞こえていても、その人かどうかを確かめたくて聞き返すときもあります。
ときには他の物音が入ったり、まわりの私語があってさえぎられ、聞き返すときもあります。誰かがあなたと先生の間で咳をしたり、椅子をガタンとすると、あなたには大して聞こえなくとも、先生の耳の妨げにはなるでしょう。間に音の障害物があるときは、とても聞こえにくくなります。
さらに空間の問題としては、あなたが先生のところから遠くに座っているならどうでしょう。前の方の人と同じ声量では、届きにくいはずです。
近くに座ると、聞こえると思って、ぼそっと言う人もいます。これも、聞きづらい。共に適切な声量について、うまくコントロールできていないのです。
まだまだ原因はあります。先生には、声でなく目でチェックしているタイプも少なくないのです。つまり、声のした方向にあなたの顔や手がみえないと確認できません。他の生徒の代弁かと思うかもしれません。
出欠をとるときには、声を出していなくても、手をあげる人は、OKとしている先生も多いでしょう。出欠とは、当人の存在の確認ですから、「大きく、はっきりと声を出せ」とは言いません。顔や目でも合図できます。声をあまり聞かず、目で出欠をとるタイプの先生もいるのです。
シチュエーションの問題からいうなら、出席のときの声が届かないから、いつもあなたの声が届いていないということは一致しません。授業と、それ以外で、豹変する人もたくさんいますしね。
言いたいことは、一口に「声が聞こえない」といっても、いろんな問題がこんなにあるということです。あまり声そのものに関係ないことも多いので、全てを声のせいだと思い込まないでください。
話を戻して、声の通りの問題としては、
1.声質
2.ひびき
3.意志の強さ
4.方向性の問題
5.発音の明瞭性
次に、声の4要素を説明します。
1.声の高さ
あなたの声は、高い方ですか、低い方ですか。カラオケでは、キィを上げたり下げたりしますね。カラオケは、歌いやすいようにプロ歌手のよりも低めにしていることが多いようです。曲によっても違いますが、いつもキィを上げている人は高い声といえるでしょう。
あなたが男性なら女性より低く、女性なら男性よりも高いでしょう。この差がつくのは、十代のはじめ、声変わりのあとですね。男性が、1オクターブ近く低くなります。
同性のなかでも違いはあります。合唱などのパート分けをすると、クラシックでは、高い方から女性のソプラノ、メゾソプラノ、アルト、男性のテナー、バリトン、バスとなります。
2.声の音色
同じ大きさ、同じ強さなら、同じに聞こえるかというと、違いますね。一人ひとり、声の高さも大きさも、個人差があります。カラオケでは、声の大きさはボリューム、声質は、リヴァーブ(効果)のエコーなどで調整していますね。
3.声の強さ
音圧、ボリュームです。声の大きさ。強さはdb(デジベル)で、表します。
4.声の長さ(持続力)
息が続く限り、声を伸ばしてみてください。何秒、続きますか。
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