« 2023年1月 | トップページ | 2023年3月 »

2023年2月

閑話休題 Vol.71「庭園」(5)

<日欧三名園の比較>

 

兼六園:石川県金沢市、ミシュラン観光ガイド3つ星。1676年に加賀藩の四代藩主である前田綱紀(まえだ つなのり)の別荘の周りを庭園化。春は桜、初夏にカキツバタ、秋は紅葉、雪吊り。

後楽園:岡山県岡山市北区、岡山藩主である池田綱政(いけだ つなまさ)の命で1687年着工1700年完成。延養亭や廉池軒、茶祖堂など。春は桜、夏には蓮、秋にも紅葉。茶つみ祭、名月観賞会。

偕楽園:茨城県水戸市、水戸藩第九代藩主、徳川斉昭の構想、長尾景徳が造園。梅の名所のほか、桜や萩、松、竹。

 

ヴェルサイユ宮殿の庭園:1682年、ルイ14世によるバロック建築、水を引く豪勢な噴水で自然を変えるほどの力を誇示、1979年に世界遺産登録。

シェーンブルン宮殿の庭園:ウィーン、1750年、長さ100メートルの回廊建築、海神ネプチューンの彫刻がある噴水、ブルネン(1913年に皇位継承者フランツ・フェルディナント大公が造営の日本庭園あり)。

カゼルタ宮殿の庭園:ナポリ王国、18世紀後半、水は40㎞も離れたタブルノ山から。

 

<時代と庭園>

中世:毛越寺 庭園(岩手県西磐井郡平泉町)、旧観自在王院庭園(岩手県西磐井郡平泉町)、光前寺(長野県駒ヶ根市)、一乗谷朝倉氏庭園(福井県福井市)、西芳寺(苔寺)(京都府京都市西京区)、龍安寺 方丈石庭(京都府京都市右京区)、恵林寺 国指定名勝庭園(山梨県甲州市)、妙心寺 退蔵院(京都府京都市右京区)、天龍寺 曹源池庭園(京都府京都市右京区)、大徳寺 大仙院(京都府京都市北区)、鹿苑寺(金閣寺)(京都府京都市北区)、大徳寺 龍源院方丈庭園(京都府京都市北区)、慈照寺(銀閣寺)(京都府京都市左京区)、高台寺 圓徳院(京都府京都市東山区)、本法寺 巴の庭(京都府京都市上京区)、旧大乗院庭園(奈良県奈良市)、太山寺 安養院庭園(兵庫県神戸市西区)、粉河寺 庭園(和歌山県紀の川市)、竹林寺 庭園(高知県高知市)

 

近世:玉泉園 庭園(石川県金沢市)、養浩館庭園(福井県福井市)、西福寺 庭園(福井県敦賀市)、青岸寺 庭園(滋賀県米原市)、大通寺 含山軒庭園、蘭亭庭園(滋賀県長浜市)、玄宮園(滋賀県彦根市)、居初氏庭園(滋賀県大津市)、桂離宮(京都府京都市西京区)、修学院離宮(京都府京都市左京区)、醍醐寺 三宝院(京都府京都市伏見区)、西本願寺 書院(京都府京都市下京区)、二条城 二の丸御殿庭園(京都府京都市中京区)、南禅寺 方丈(京都府京都市左京区)、南禅寺 金地院(京都府京都市左京区)、大徳寺 方丈(京都府京都市北区)、詩仙堂(京都府京都市左京区)、円通寺(京都府京都市左京区)、松花堂 庭園(京都府八幡市)、根来寺 庭園(和歌山県岩出市)、和歌山城西之丸庭園(紅葉渓庭園)(和歌山県和歌山市)、養翠園 (和歌山県和歌山市)、観音院 庭園(鳥取県鳥取市)、徳島城 旧徳島城表御殿庭園(千秋閣庭園)(徳島県徳島市)

 

明治・大正期:慶雲館庭園(滋賀県長浜市)、円山公園(京都府京都市東山区)、無鄰庵 (京都府京都市左京区)、平安神宮神苑(京都府京都市左京区)、碧雲荘(京都府京都市左京区)、楽々荘庭園(京都府亀岡市)、白沙村荘庭園(京都市左京区)、慶沢園(大阪府大阪市天王寺区)、相楽園 (兵庫県神戸市中央区)、依水園(奈良県奈良市)、温山荘園 (和歌山県海南市)、揚亀園(青森県弘前市)、金平成園(澤成園)(青森県黒石市、名勝)、瑞楽園(青森県弘前市、名勝)、盛美園(青森県平川市)、香雪園(北海道函館市)、齋藤氏庭園(宮城県石巻市、名勝)、旧池田氏庭園(秋田県大仙市、名勝)、高梨氏庭園(千葉県野田市、名勝)、旧徳川昭武庭園(戸定邸庭園)(千葉県松戸市、名勝)、旧堀田正倫庭園(千葉県佐倉市、名勝)、三溪園(神奈川県横浜市)、旧諸戸氏庭園(三重県桑名市、名勝)、諸戸氏庭園(三重県桑名市、名勝)、旧堀氏庭園(島根県鹿足郡津和野町、名勝)、毛利氏庭園(山口県防府市、名勝)、立花氏庭園(福岡県柳川市、名勝)、九年庵(旧伊丹氏別邸)庭園(佐賀県神埼市、名勝)

 

昭和期:東福寺 方丈(京都府京都市東山区)、松尾大社 松風苑(京都府京都市西京区)、城南宮楽水苑(京都府京都市伏見区)、大仙公園日本庭園(大阪府堺市堺区)、足立美術館(島根県安来市)、等々力渓谷公園内日本庭園(東京都世田谷区)、万博記念公園日本庭園 (大阪府吹田市) 、長久邸庭園(和歌山県海南市)

 

参考文献:「日本の庭園」進土五十八(中公新書)/Wikipedia/「庭~楽園のつくり方」/「日本庭園のみかた」宮元健次(学芸出版社)ほか

「歌の裏ワザ」 Vol.14

〇声のタイプ別のアドバイス

 

A.キンキン声、金切り声

これは、頭のてっぺんから出る声で女性に多いのですが、男性にもみられます。男性では背が低い人に多いようです。声は通りますが、これはカン高いため、抜けて出てくるだけで、本当に響きがよいのとは違います。心地よい声は、高くともキンキン声とはいわれません。マイクを近づけると声が割れて聞こえ、少し離すと入りにくくなるので、使いにくいのです。

自分の声を一方的に高めだと思い込んだり、喉をしめたりして出していることが、ほとんどの原因です。無理に声を高くとりすぎた人、自分の無理なく出せる声域より高く歌おうとする人やコーラスなどをやっている女性に多くみられます。カン高い響きだけが耳について、ことばがうまく聞きとれません。

高い音に届かせているだけなので、弱めたり、スムーズに低くしたりすることがうまくいきません。しっかりと声になっていないまま、使っているからです。だいたいは、その息も浅く胸式に近い呼吸です。あごが上がるのも悪い点です。まずは、ことばをしっかりと深く話すことから始めましょう。

 

B.喉声、かすれ声

かすれている声、息もれする声は、高音に届きにくく、響きに欠けます。鼻に抜けて、かぜ気味の声のような人もいます。これは、息がうまく声にならないため、無理にのどに力を入れて押し出すときに表れます。息を浅く吐き、声を出すのに不自然につくっているのです。裏声にも切り替えにくく、詰まってきます。発音は不明瞭で、柔軟性に欠けます。

トレーニングの初期にもよく見られます。急にたくさんの声を長時間、使うからです。響きの焦点が合わず、声が広がってしまいます。声立てが雑で、ぶつけて力で出す人に多くみられます。あごやのどが硬く、よくない状態での発声です。

 

C.しゃがれ声、にごり声

ひどい場合は、声の診断を受けてください。多くは、声立て(息を声にする効率)の問題です。脱力して呼吸で支え、共鳴する発声の感覚を養いましょう。

ただ、喉に痛くなく、歌うのにも差し障りなく、コントロールができれば、ハスキーヴォイス、セクシー・ヴォイスといわれることもあります。もちろん、ことばや歌において表現できていることと、再現性が前提です。 

ハスキーヴォイスは、日本ではあまり好ましいと思われていないので、気にする人が多いようです。特に女性は、コンプレックスを抱くようですが、洋楽のヴォーカリストや女優の声を聞いたら、自信がもてるでしょう。欧米のロック・ヴォーカリストは、こういう声が多いです。

 

D.小さく細い声

蚊の泣くような、小さく細い声は、外見的には、あごや首、体格などが弱々しい人、または、内向的な性格からきていることも多いようです。大きな声をあまり使ってこなかったのでしょう。

その状態では、マイクの使い方でカバーするしかありませんが、変えられるところまで根本的に変えたいものです。体力、集中力づくり、体の柔軟から始めることです。運動やダンスに励みましょう。

なるべく前方に声を放ってやることを意識しましょう。声を出す機会を多くとってください。

 

E.低く太い声

今のヴォーカリストが高い域で歌っているため、声が届かず歌えないという人が多くなりました。しかし、トレーニングしだいで使える声域は拡がります。キィを下げて歌ってもよいのです。特に太い声でしっかりと響いている人は、有能といえるのです。

声量を抑えて軽めに出してみましょう。

多くの一流のヴォーカリストは、カン高い声ではなく、太い魅力的な音色をもちます。しっかりとその声を前に出すようにしてください。

声が低いとか声域がないから歌えないのではありません。どのフレーズでも何も伝わらないから歌えていないのです。それよりは、高い声が出て声域のある人の方がましですが、大して変わりはありません。

 

〇目一杯、背伸びして、はったりでもたせる

 

 私は、才能とは「入っているもの以上によいものが出てくること」と思っています。よいものとは、「新しいもの」「おもしろいもの」「変なもの」、何よりも、「すごいもの」です。

音楽の中でも、ことばがあり、人間の声である歌は、聞く人に対して絶対的に強いのです。この二つに支えられるために、日本の中で「ミュージシャンとしてのヴォーカリストの実力」を曖昧にしてしまったように思います。(もちろん、そんなことを指摘する必要は日本以外ではありえないので、日本では歌は厳しくない、ということになるのですが。)

 

 最終的にヴォーカリストが表現するということは、声を殺して歌を生かすこと、さらに歌を殺して心を伝えることです。

発声法でなく声の力、歌唱技術でなく歌の力、ステージの演出でなく、あなたの心と音楽が、人に伝わる力となることを目指してください。

 

〇歌や音源からどう学べばよいのか

 

 大切なのは、音楽的な基本、ここでは楽理よりは、歌の中の音楽として成立する共通の要素を入れることと、あなたの声を体の原理に基づいたオリジナルなものに戻し、使えるようにしていくことです。そのためには、一流の音楽・歌を徹底して聞くことです。

 同じ歌を異なるヴォーカリストで聞くこと、外国人の歌とその日本語訳詞の日本人の歌を聞くこと、それらを比べることは、とてもよい勉強になります。(スタンダード、オールディズ、ジャズ、ゴスペル、カンツォーネ、ラテン、シャンソンなど。)

 まずは、一流のヴォーカリストの学び方を作品のプロセスから追体験し、彼らの基準においてチェックしていくことができるようになることです。彼らが何から学んだかを追うと、全ての分野をカバーしていくことになるでしょう。

フレージングのコピーは、トレーニングメニュとしても使えます。できるだけ広い分野から、一流といわれたヴォーカリストの作品を集めましょう。彼らの伝記、自叙伝などを読むのも刺激になります。

 

・カンツォーネでは、オペラよりも親しみやすく発声が身につく

・ナポリターナでファルセット、ベルカントをマスターする

・シャンソンで、声の魅力とことばの音楽的な処理を学ぶ

・リズムを極めるなら、キューバンリズムからフラメンコなどを

・実力あるヴォーカルになりたいなら、70年代までの歌謡曲で音色をマスターしよう(カルメンマキ、弘田三枝子、今陽子など)

・発声テクニックを学ぶ

ファルセット、ウィスパーヴォイス、ヴォイスパーカッション、ラップなどに親しみましょう。

 

〇一本調子から脱する

 

 「歌がつまらない」のは、表現っぽいクセ以外にとりえがなく、声を出し、歌詞をメロディにのせてこなしているだけ、という状態なのでしょう。「同じようにきこえてしまう」のです。そうしたクセにとらわれて、発声やフレージングがワンパターンになり、声の音色に動きがないのです。多くは、イメージと構成力、つまり、曲を受けとめ膨らます想像力、自分の思いを声として展開する創造力の不足でしょう。

音のつなぎ方一つから、いろいろとアレンジして表現する練習をしましょう。

似ている、似ていくのでは、あなたの存在価値、歌の作品価値がありません。どれだけ、他の人と違っていくかという勝負でもあるのです。

 

 コピーから入ると、どうしても元のヴォーカリストの歌い方がしっくりくるでしょう。でも、それではあなたが歌う必要などなくなるのです。あなたが歌うのは、もの真似をするためではないはずです。皆、あなたの個性、あなたらしい歌、あなたにしか歌えない歌を聞きたいのです。コピーを聞かせるのはもったいない話です。

自分の土俵で勝負しないと、最初は受けがよくとも、すぐに飽きられるのです。大変でも、今は自分の土俵をつくってください。

 

 楽譜通りに伴奏音源をつくり、オリジナルを聞く前に自分で歌いこなしてみる練習も効果的だと思います。結果として、プロの歌唱に似ているのはかまわないのです。一つの歌を、解釈をして表現すると、あなたがすぐれていくにつれて、プロがイメージするものに近づいていくからです。

 ヴォイストレーニングは、声の使い方と思われていますが、私は最終的に、オリジナリティ(自分のデッサン、線=フレージング、色=音色)を見つける手段だと思います。

 

〇ベストの状態で勘と感覚を磨く

 

メニュの回数や時間、秒数などは、あえて指定していません。自分のベストの状態でベストの声を使えるようにしてください。必ずしも本やトレーナーの指示に合わせなくてもよいのです。

イメージしたら、やりきること、やるときは考えないこと、やり終えてから反省しフィードバックします。そして、メニュを続けるか一部分、変えるか、考えましょう。

できないことは、しばらくそのメニュを放っておいて忘れてください。その多くは、あなたが使う必要のないメニュです。でも何かの拍子に思い出したら、やってみてください。そこで使えたら、あなたに必要なメニュになったということです。

大切なことは、あなたが比較的できているメニュで、よりていねいに繊細に使いこなしていくことです。

 

第一の目的は、それで勘と感覚を磨くことです。

第二の目的は、それを繰り返すことで、身体に覚えさせ、イメージした声の状態を取り出せるようになることです。

第三の目的は、そのために体と心(精神状態)を確実に強化することです。

こういうことを経ずに、次々と新しいメニュをやっても大した効果はありません。(歌のレパートリーづくりも同じです。)

 

 できていないメニュは、できないのですから、無理をしすぎないことです。声によくないからです。自分の調子の最高によいときだけ応用して使ってみては、少しずつ、クリアしていくのです。

 メニュを考えたり、こなすことは、力をつけるために必要です。でも本当は、いくつかのメニュでよいのです。 それを見つけるために、いくつものメニュがあるのです。

トレーニングは、何をやるかでなく、やっていることをどう活かすか、何のためにどう判断するのかの方が、ずっと大切なのです。メニュはそのきっかけに過ぎません。

できるだけ、自分の高まる場に出ること、そこで格をあげていくことです。勘が磨かれていったら、必要なものは入ってきます。

「基礎教育のためのヴォイストレーニング」 Vol.6

〇誰もが正しい声をもっている

 

 声は皆、違っています。一人ひとり、誰も同じ人はいないのです。ですから、人と違っていても、気にする必要はありません。それも個性なのです。高い声の人も低い声の人もいます。太い声の人も細い声の人もいます。

 第一にもって生まれた声帯、発声のもっとも基本となる声を出すところですが、ここで、すでに個人差があります。

声変わりを経て、男性は女性より1オクターブ、高くなりますね。のど仏がでます。そのなかで、声帯の長さがおよそ2倍に伸びているのです。すると、音は1オクターブ低くなります。

 弦を弾いて、その真ん中で爪で押さえてみてください。長さが2分の1で、ちょうど倍音、つまり2倍の高さになるのです。たとえば、指で弾いて440回、1秒に振動したとします(440ヘルツ)。これを半分の長さにすると、880回(880ヘルツ)、振動します。これでラの音が1オクターブ高いラの音(ピアノの真ん中)になります。

 男性と女性の声帯の関係も、こういうことで、およそ1オクターブずれたのです。男性で女性より高い声を出そうとすると、ずいぶんムリしなくてはなりません。声帯を緊張させて固くしたり、あるいは一部だけ使って、高い声を出すのです。

 しかし、歌ならともかく日常の声でわざわざそんなことをする必要はありません。自分の一番出しやすい声を使えばよいのです。それが多くの人にとって、その人に合った声(声の高さ)である可能性が高いのです。

 

〇思うほどよい声を使っていない

 

 なかには、声は低いのに、高く使いすぎたり、その逆をする人がいます。

 声変わりのときの男の子は、あまりに急な変化で、しかもはじめてのことのために、どう声を扱えばよいのかわからないものです。自分の声の低いイメージに慣れるまでは、困惑することが少なくありません。

 さらに、声の使い方は、声の高さだけではありません。カラオケで長く歌ったり、応援などをしたりすると、のどの状態が悪くなり、声が低くなったり、かすれたりしますね。ひどいときは、ポリープになって、声が出なくなる人もいます。

 でも、普段から、そういう声を出している人もいます。これも原因はさまざまです。大声の出しすぎやたばこなどで声帯を害してしまった人もいます。もともと、声帯がしっかりとくっつきにくく、そうなる人、あるいは使い方が荒っぽかったり息を多めに吐いているために、そうなっている人もいます。それ以外の人も、鼻にかかったり鼻に抜けたり、舌ったらずだったりで、決して皆が皆、自分の持つ声をよく使っているわけではありません。

 声の病気が疑われるときは、耳鼻咽喉科に行きましょう。それ以外の人は、心配しなくてもよいです。ハスキーヴォイスの名優もたくさんいます。ただ、使い方の悪いときは、矯正のトレーニングをしましょう。

 

〇自分の声がよく思えない

 

 あなたが、自分の声を聞いて、「よい声だなあ」と思わないとしたら、きっと次のような理由があります。

 まず、TVかラジオなどでプロとして話している人の声と比べていることです。服をファッション誌のモデルで比べてみるようなものです。

 それは、本当の自分の理想の見本ではないのです。彼らの多くは、トレーニングしていますから、うまいのは当然です。

 彼らに学べることは、少なくありません。ギャップは大いにあるとはわかるのですが、それが何かがよくみえていない。まさに声は見えないのです。聞く中での判断力が問われるのです。

 モデルの服が自分にあわないのは、鏡をみたらわかります。しかし、声は並べては比べられません。しかも、自分の声の何がよくないのかわからない、どう直すのか、こうなるとお手上げですね。

 何回も練習する、噛んだのは言い直し、舌の動きは早口ことばでクリアできますね。プロも練習して声を鍛え磨いてきたのです。

 ということで、最大の理由は、あなたがこれまで声や声での表現に関心をもち、トレーニングをしていないことです。顔や体を洗うことは、習慣となっています。髪型や服の着方、これらはいろんなもの、雑誌やTVや友人のをみて、情報を得て、トレーニングしているのです。何がよくて何が悪いのかをあなたなりに基準をつくってきているのです。幼い頃にもボタンがはずれたり、襟が出ていなければ、まわりが注意してくれたでしょう。声には、そんなことがなかったはずです。

 ですから、トレーニングすればよいのです。

 

〇誰でも、よい声になれる

 

 それでは、あなたがめざすべきよい声ってどんな声でしょう。声は文章でお伝えするにはとても難しいので、身近な例から考えてみましょう。

 あなたが日頃、TVなどをみていて、「よい声だなぁ」と思う人は誰でしょう。声優さんやお笑い芸人でもかまいません。男女で3人ずつくらいあげてください。

 あなたの身の回りではどうですか。私はあるステーキ屋さんの声が忘れられません。お寿司屋さんとか八百屋さんなどにもいませんか。家族や親戚にはどうでしょうか。

 

[よい声の人と、その理由]

そのなかであなたがよい声と思ったのはなぜでしょうか。

もう一つ、よい声をわかりやすくするために作業をしましょう。あなたが悪い声、よい声じゃないと思う人を遠慮なくあげてください。

 

[悪い声の人と、その理由]

 さて、この理由をじっくりみていくと、よい声の定義ができそうですね。

 

 よい声の条件としては、

1.魅力的 2.深く落ち着いた感じ 3.聞きやすい 4.聞いて気持ちがよい 5.元気がよい 6.暗くない 7.ハキハキしている 8.聞くのに楽 9.遠くまでひびく 10.かすれたり苦しそうだったりしない

などが、あげられます。

 

〇よい声って、何?

 

 それでは、さらに細かくみていきましょう。

 次の声のイメージを ○よい声 ×悪い声 △どちらともいえない で判断してみてください。

1.カン高い声

2.黄色い声

3.こもった声

4.ドスの効いた声

5.鼻のつまったような声

 

 次に、それぞれ有名人か身近な人で思い当たる人がいたら、入れてみてください。

 次に、自分自身について、チェックしてみてください。

 その次に、友だちでもよいので、他の人からチェックしてもらってください。

 何人かで試してみると、とても勉強になります。

 あなたも他の人の評価をしつつ、それぞれの違いが比べられます。さらに評価がわかれることで、ことばのイメージの違いもわかります。

そういうことを詳しくみていくと、自分の声の位置づけもわかります。声の感じ方、聞き方も少しずつわかってきます。

 「○○さんから、私の声は○○さんと○○さんの間の声と思われている」などということも、何となくわかってきます。つまり、声のイメージが自分の声のイメージでもわかってくるのです。

 友だち同士でわかりにくいときは、年齢の違う人をチェックしてみるとよいでしょう。極端に特徴のある声の人を入れると、それぞれの人のもつ要素がはっきりするでしょう。

 

〇大声だから伝わるわけではない

 

 相手にしっかりと伝えるには、どうしますか。声を大きく出しますね。それで聞こえます。

相手の耳にまで届く声量というのは、最低限、必要です。声の大きさは、音の大きさです。db(デシベル)で表わします。大きな声は、100dbほどあります。

 それでは大きな声なら大きいほど伝わるのでしょうか。

 あなたがうるさいと思うくらい、大きな声を出したとします。選挙カーが演説するのも、駅のアナウンスも、マイクを通してすごく大きく聞こえますね。でもその内容は、うまく伝わっていますか。全然ですよね。うるさいだけです。

 まず聞く人に、興味がなければ伝わりません。次に大きすぎる声は、脳を守るためにカットしてしまいます。(もちろん、耳の鼓膜には、伝わっています。物理的には、耳栓や耳をふさぐしかありません)

 逆に、小さな声でも通る声なら、とてもよく聞こえますね。

 体育館での球技大会、グラウンドでの運動会では、いくら大声を出してもよく聞こえませんね。でも夜になってシーンとした体育館や校庭でなら、とても小さな声でもよく聞こえます。

 ですから、声を伝えるなら、大きな声を出すまえに、まわりの状況を静かにさせる方が効果的なのです。ワイワイガヤガヤざわめいている教室では、大きな声もおたがいに打ち消しあってしまいます。しかし、シーンとした教室では、小さな声でもよく聞こえるでしょう。テスト中に、ペンの音や咳払いがよく聞こえるのと同じですね。

 ですから、「静かにしてください」といって静かになってから、「それでは……」で話し始めることです。

 

〇甘えた声は甘くみられる

 

 甘えた声を出す人がいます。特に女の子には、アイドルのように、わざと甘えた声を出している人がいます。これはあまりよいことではありません。

 「うそー」「やだー」「ホントー」なども、です。

 まして、「むかつく」「うざい」こんな日本語は、使わないようにしましょう。

 こういうことばを使うと、本当にそんな気分になって、自分の心身に悪いからです。もちろん、言われた人も気分のよいものではありません。

 若い人のよく使う半疑問形というのも、感心しません。「ーとか」「ー?」などと、語尾があがるのは、自信なく、まわりの同調をさそう、つまり自分で意見を言って、その是非のリスクをとることを避けている、ことばと声のたれ流しです。

 最近、私は昔の時代劇などのことばが美しいと思うことがあります。それは、きっとしっかりと自分の意志や気持ちを声で言い切っているからです。

 言ったことのよしあしもですが、言い方にもっと気をつけましょう。

 言うことも気をつけなくてはいけないのですが、それは間違ったら、直せばよいのです。それで一つ学べます。ところが、きちんといわないと、そういうことさえできないのです。ことばというのは、自分の主張です。

「自分の思想をもつ」 No.378

問いとは、考えです。

自分がいなければ考えもありません。

考えなければ、自分もないということです。

 

人はどうしても考えずにはいられないのです。

そして、意味を求めてしまうのです。

 

考えというのは、言葉のことです。

考えるとは、言葉にすることです。

 

人が考えを持っているのでなく、考えの中に人がいる、

考えがあるから、人として、あるのです。

そして、生きていることは、考えることです。

 

考えというのは、言葉のことです。

言葉があるから、人として、あるのです。

つまり、生きていることは、言葉にすることです。

« 2023年1月 | トップページ | 2023年3月 »

ブレスヴォイストレーニング研究所ホームページ

ブレスヴォイストレーニング研究所 レッスン受講資料請求

サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想

発声と音声表現のQ&A

ヴォイトレレッスンの日々

2.ヴォイトレの論点