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「基礎教育のためのヴォイトレ」 Vol.7

○声の使い方でイメージは変わる

 

 元々もっている声そのものよりも、声の使い方で、ずいぶんと声のイメージは変わるものです。

態度と同じで、つんつんしているとか、甘えているとかいうことは、声にも表われるのです。

 ものまね芸人をみると、表情や態度が声に大きく影響してくるのです。

 

  • 身体、性格(元々の声、声帯)

2.態度(表情のつくり方)

声の使い方(声やことばの使い方)

 

 自分の声のなかには、どういう声があるのかをチェックしてみましょう。自分の声は、一つしかないということはありません。誰でもたくさんの声をもっています。

 怒った声、泣いた声、笑った声は、違いますね。笑った声でも、腹の底から笑った声と、少し笑った声ではまったく違います。

 小さな子どもをみてください。自分の感情にまかせて、さまざまな声を使っています。

 

 自分の声のさまざまなパターンとその効果を知っていくと、あなたの表現力、コミュニケーション力は、格段に高まります。TPOによって、声を使い分けましょう。その声に気をつけてみてください。

 

○声で成功する

 

 声には、その人の自信が現われます。羽振りのよかった社長さんの明るく元気な声は、倒産してからは暗い沈み込んだ声になります。

 あなたのうれしさ一杯のときの声と、悲しいときの声は、違いませんか。別人のように変わるのは、顔や体ばかりではありません。声もまた、大きく変わります。

 声は無意識のうちにも変わります。ショックなことがあって、声の出なくなる人もいます。

また、声は、意識的に変えることもできます。

「オレオレ詐欺」のように、他人になり切った声で、人をだましたり脅したりすることもできます。本心とは別に急に甘えたり、かわいく振る舞うこともできます。

 つまり、相手の心を知るため、だまされないためにも声について知ることと、声をうまく使えるようになることは、大切なのです。それによってコミュニケーション力は大きく違ってきます。その結果として人生も違ってくるのです。

 

○声の効果・影響

 

 無意識下の声の表わす働きを多くの人は詳しくは知りません。顔や態度は、少し経験を積むと正しく判断できるようになってきます。まわりをみて学んでいくからです。しかし、声は知る人ぞ知る、それに鋭い人は気づきますが鈍い人は気づきません。

 一般的に男性よりも女性の方が鋭いです。男の嘘はバレるが、女の嘘はバレないそうです。「男性はことばで嘘をつくが、女性はことば以外で見破る」というのが定説です。

 つまり、ことばからでなく、声からその人の真意を見抜く力がつけば、第六感みたいなものが冴えるのです。

たくさんの人と会っている人は、こういうノンバーバルなところから人を見抜く眼に長けてきます。表面的なことだけで、ことばを信用しなくなります。

 逆に声がよかったらどうでしょう。カラオケでも、一所懸命歌わなくては通じない人と、声のよさで惹きつけてしまう人は、歌の勝負前に大きな差があるのです。勝負以前で勝ちに持ち込める、これが声の強さです。

 声そのものがよくなくても、自分の声とその使い方を知れば、何とでもなるので安心してください。まして、多くの人がそんなことは知らないのですから、あなたは、とても多くを得ることになるでしょう。

 

○声はたくさんの情報をもつ

 

 たった一つの声でも、そこから知ることのできる情報は、たくさんあります。電話やスマホで考えてみましょう。

 たとえば、留守電に「またあとで、かけ直します」と、声が入っていたとします。

 あなたはきっと、それが誰からきたのかわかりますね。自分に電話をしてくる人のなかから、声だけで判断して相手を特定することができるのです。メールなら、そこにアドレスや名前がないとわかりませんね。

 知らない人から、電話がかかってきたとします。あなたは相手が男か女か、年をとった人か、若い人か、ある程度、性別や年齢などを予想することができるでしょう。 その語調、声の調子から、そのことばに込められた意図や気持ちもわかります。

 不服そうだったり、優しそうだったり、すごく急いでいるようであったり、ことばの内容以外の情報をとれるのです。

ということは、逆に考えてみると、あなたからも、相手はそのようなメッセージを受けとめているということです。

 

○なぜ、自分の声を自覚しないのか

 

 でも、他の人の声で、たくさんの情報をとっていながら、自分の声が同じように相手にたくさんの情報を与えていることに、あまり意識しないのは、なぜでしょうか。

 まず、声は発したところから消えてしまうことがあげられます。メールや手紙のように、そこに残らないために見直すことができません。

 もちろん、今は、録音して再生することができますから、聞き返すこともできます。しかし、あまりそういうことをしたくはないでしょう。何となく自分の声が変に聞こえるからではないですか。

 その声に慣れなくてはいけないのに、じっくりと聞かないのですから、よくわからないのは、当然です。

 それと、言ったことは、もう伝わったと思ってしまうからです。本当は、言うことと伝わることは、まったく別なのです。

 言ったつもりでも、理解しようとして相手がわかってくれなくては、伝わらないのです。これは、コミュニケーションギャップの問題です。さらに間違って伝わることもあります。

きちんと伝わるなら伝言ゲームは成立しません。ことばさえ正しく伝わらないのですから、ニュアンスや態度などまで、そう簡単に伝わるものではありません。

 

○書きことばと話しことばは違う

 

 私たちは、文字で書いたものをそのまま音声にして同じに話していると思っています。しかし、必ずしもそうではないのです。

 たとえば、「日本」、これを「ニッポン」という人と、「ニホン」という人がいます。どちらが正しいというのではなく、人によって場合によって、前後のことばによっても、変わるのです。

 しかし私たちは、文字では「ニホン」と振ります。「NHK」は、どうでしょう。辞書でひくと、「エヌエイチケー」ですが、実際は、ほとんどの人が「エヌエッチケー」といいます。「エヌエチケ」「エネーチケ」という人もいます。どれも間違いではありませんが、文字では、そのように書かないでしょう。

 「私?」、これも実際は「あたしぃ?」などと使われていませんか。「わたくし」というのは、限られた使われ方ですね。

 ラ抜きことばといって、「みられる」「たべられる」を「みれる」「たべれる」という人も増えています。

 ことばは時代とともに変わっていくのですが、その基本的なところで表わしたのが、書きことばです。それが時代についていかないことも多々あるのです。方言は、日本語の五十音だけでは正しく表記できません。外来語も同じです。

 つまり、同じ日本語でも書きことばと話しことば、文字と声の世界は、違うのです。声のもつ多彩な表現の一部を、文字は表わしているとみた方がよいでしょう。

(たとえば、日本語の発音に、外国語の音がたくさん入っているのに、私たちは、ほとんど認識していないのです。)それで何の不便もないからです。

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