「歌の裏ワザ」 Vol.18
〇特別メニュ
特別なメニュ(方法)ほど、個人によって、効果の出方が大きく違いますし、専門的な取り扱いが必要なのは、他の分野と変わりません。
トレーナーが元に戻す能力をもっていない(考えてもいない)とか、通用した人だけ(本人含めて)の経験でやることが多い場合は、気をつけましょう。
自分には合わないかもしれないし、もっとよい方法があるかもしれないのです。
ただ、今、出しやすい声、使いやすい体の使い方が、必ずしも本当のベストでないために、将来に対してトレーニングを行う、その判断がつきにくいのが大きなネックなのです。(方法やトレーナーとの相性と同じです。)
○口を大きく開けない
口をパクパクと開けすぎるのは、発声の邪魔です。しかし、まだ声の出にくい人は、表情でもフォローできるし、表情筋も鍛えるべきです。口の動きは発音に大切です。目的はそれぞれです。ただし、口を開けるのと口の中を開けるのと、喉を開けるのとは違います。
〇深さ
これは、イメージのことば“深い息”“深い声”です。
私自身は、浅い声から深い声をもつのに至ったのが、ヴォイトレで、声楽と役者声づくりなしには、今の声は得られなかったでしょう。そのおかげで8時間ぶっつづけでも、声は使えるし、あまり眠らなくともひどい風邪でも、声には異常をきたさなかったのです。トレーナーの仕事は、その強靭さゆえにできたのです。しかし、そこまでに声のトレーニングづけで10年近くかかっているのです。
今の私の処方には、かなり個人差があるのですが、当初は、声づくりを100パーセント、前提でのメニュにしていました。今は耳づくりを経て、感性、ものの本質をみることや創造性をプログラミングしつつあります。
それでも、トレーニングのメニュや方法としてではなく、その結果として得られるものとして、深い呼吸や深い声を目的にしておくのは、一理あると思っています。
〇深い息と深い声
私が、お笑い芸人や役者、洋楽吹き替えの声優、ミュージカルの悪役声など、従来、日本では指導者がいなかったパワフルな声づくりができているのは、このおかげです。(欧米ではボイスティーチャー。しかし、声そのもののベースには触れない。彼らはすでに強く吐く息の上に声がのっていて強靭な喉をもっている。私の接してきた経験では、欧米人に日本人の欠点を理解するのは難しいようです。)
また外国人や日本の他分野の方にも、初対面第一声で、プロのトレーナーとわかってもらえるのも、このおかげです。私のできることが誰にでもできるものでない(生まれつき持っているもの+トレーニングの長い年月)とも思いますが、同じ条件を持っている人はいるので、試みるのは決して無駄ではないと思います。
〇シャウト
特に喉の強さについては、シャウトしたり、どなるだけで、喉に影響が出て、歌に支障が出る日本人は、一度、とことん考えてみるべきことに思われます。日本のシャウトするヴォーカルは、どうも30代後半くらいでボリュームやパワーを失っている人が多いからです。私がみるには、力で押しつける雑な発声と、音楽性よりも感情移入を優先して、喉に負担を与えすぎているからです。
〇フレージング
何よりも、呼吸を聞くくせをつけて欲しいのです。歌も芝居も、息と間が表現のすべてを握っています。
私が最初に注目したのは、外国人の強い息(ノイズ)と太い声(ハスキー)でした。特に女性は日本人とはかなり違います。
○考え方
考え方としては、
1.何でもないよりはあった方がよい
2.できないことは、本当に必要なのか
3.あっても使えなければ、使わなければいらない
4.本当に必要なものは何か
5.それをどうやって磨くのか
○声量
声量は音響加工のできる今の音声の世界においては、もはや、絶対条件ではありません。かつては、雨天でもトタン屋根の体育館などで演じなくてはいけなかったような「役者声」の必要性も減ってきました。
そのためポップスも、昭和の頃までのような音色をもつヴォーカル(強い喉をもつ人)は少なくなりつつあります。
時代も体のプロポーションも変わってきました。しかし、人間の体としては、昔も今も、欧米も日本も同じというところに私はベースをおいています。何事も基礎というのは、時代や地域でそう簡単に変わるものではありません。
踏まえるべきことは、
1.今のベターの声
2.将来のベストの声
1.今の出しやすい声
2.将来の出しやすい声
そんなことで影響されるような頼りのない声の鍛え方をすべきではないでしょう。
現状では、トレーナー(声そのものを動かせるクラシックは、高音でやや発音不明瞭でも許される)も情けないくらいの小さい高音でOKにしています。本物はパワフルに歌っている、歌には使っていなくても、そのくらいの声は出るので、トレーニングの目的は、そこにおきたいのですが・・・。(高音へのアプローチ)
人並みに声量がなくても、1オクターブしか声域がなくてもかまいません。そこを克服する必要は人によって違います。それに費やす労力を他に使うこともできます。
私は声量もないよりはあるほうがよい、それだけ体にそって声が出ているようになっているからと、思うのです。
〇シャッフル、16ビートが歌えない
ジャズを歌うのに、ジャズ理論が必要なのかという人がいます。ヴォーカルは、原則として、一つの声で歌うだけのパートです。
「ジャズとは」とか「ロック」とか決め付けること自体、もともとの自由な精神に反します。
定番は、タンバリンかカスタネットを使ってみることですが、ドラム、ギターやベース(ピアノでも)で叩きながら演じてみましょう。スイングするのも同じです。
〇試行する
私は日本人はなぜ、キィ(音高)とテンポをすでに歌った人(創唱者)や楽譜(原曲)に、疑いもなく合わせてしまうのか、不思議でした。
自分の表現創造よりも、あこがれのアーティストに同化したいところに基準があるのです。まずは、自由に試しつつ、最後に楽譜通りにしましょう。(ジャパンクールの今も、欧米舶来品の輸入大国の日本です。)
〇高い声
高い声といってもいろいろとありますが、ハイトーンは歌にしか使わない特殊な声ともいえます。悲鳴や怒鳴るときに出る高い声は、日常の範囲の中で使われます。ただ感情が発声の原理を邪魔しますので、喉によくありません。厳密な再現性もありません。声色として応用して使う分、それるので、トレーニングでは、元に戻して行いましょう。(クールダウン)
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