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「基礎教育のためのヴォイストレーニング」 Vol.12

○自信が欠けると声の魅力もなくなる

 

 「何か元気ないな」、「悪いことあったな」というのは、声でわかります。その人に不幸があると身体、表情、眼、姿勢、身振り、そして声に表われるのです。

 以前は羽振りのよかった人が逮捕などされると、別人のように暗い声になっています。報道で、そういうのを選んでいることもあるでしょうが、誰でもそうなるものでしょう。

 声でのコミュニケーション術、それは、言葉とともに、人間の獲得した最大の武器です。わずか2歳の子でも会話します。赤ちゃんは、言葉もなく、声だけで自分の意志をまわりに伝えます。

 子どもをみていると“今泣いたカラスがもう笑った”と、その表情の変化のスピードの速さや幅の大きさに驚かされます。声の表情が、心を表わします。

かつて、私たち誰もが子どもの頃はそうだったのです。成長するとともに、ストレートに心を表わすと、まずいことが多くなって、声も素直に出なくなってきたのです。社会的には、思っていることが、すぐ口から声に出たら、うまくやっていけないからです。

 でも、笑ったり笑い転げたり、泣いたり泣き腫らしたり、そのときの声は、心に反応していますね。

 

○声だけでも勝てる

 

 二人の人に電話して、一方はいつも明るくハキハキ、「待ってました」とのごとく、すぐに出る、もう一方は事務的な応対だとしたら、どう思うでしょう。

 友だちが落ち込んで弱気になったとき、あなたが声の優秀な使い手なら、千載一隅のチャンスです。あなたを頼ってきたときに、あなたから発される声が、その人を元気づけます。ところが、どんなに心を込めても、冷たい淡白な声に聞こえたら、落ち込ませるでしょう。

 皆に好かれない人の場合、こういうケースから少なからずあります。

 恵まれて育った人は、あまり声に感情を表わすことに慣れていないのです。深いつきあいでもなければ、声に何か込めるような必要もなかったから、そうなりやすいのです。

 また、私が思うに、ファッションモデル出身の女優さんは、声に苦労しているようです。モデルはしゃべり慣れていないこともありますが、背が高いので目立つのを抑え、声を大きくしないようにして、あまり使い慣れていない人が多いのです。

 

○職場の人間関係をよくする声

 

 人間関係をよくする声は、しっかりと相手を受けとめる声です。

 日本では、あまり音声の力に頼りすぎないことも大切です。声が大きすぎると、聞いている方も疲れます。声の大きさには充分に配慮しましょう。デリカシーが問われます。

 

 いろんなお店で働いている人の声を聞く機会はたくさんありますね。職場では、声の使い分けが、きちんとなされています。お客さん、上司、同僚に使う声は違います。それは言葉遣いでの違いです。お客さん、上司には、敬語、同僚、部下には、親しさに応じて、かなり違ってきますね。人間関係の違いが、声に表われているのです。人間関係は、その声で区別していけばよいということです。

 好き嫌いが声に表われるなら、声で好き嫌いを表わせます。職場では嫌いな人に嫌いとは表わせませんから、みな、好きな人に使う声にすればよいのです。そんなことで声は減りませんから、大丈夫です。

 とても好きな人に使う声を使ってみてください。すべてが、うまくいくようになります。相手を嫌えば嫌われるし、好きになれば好かれやすくなります。あなたの好き嫌いに関わらず、声でよい方へ演出するのです。

 そういえば、他の人の人間関係を見抜くのにも、声は大きなヒントです。上司や部下に対して、露骨に声を使い分けている人もいます。その人の好き嫌い、尊敬度、傾倒度、忠誠度なども見抜けます。

 

○夢のための声日記

 

 イメージを引き出すキィワードは、言葉です。声の感じで、その人のイメージや情報を引き出せます。

 「あの人どんな人だったか」と思い出すとき、何を言っていたかより、どんな声で言っていたかの方が残るからです。

 人が亡くなったとき、その人の生前の声、笑顔とともに笑い声を思い出して偲びます。亡くなったことは悲しくとも、そういう思い出を与えてくれたことに感謝です。そう考え、心の中では笑って送り出しましょう。

 

 いつか自分が送られる日まで、声の日記をつけてみましょう。

 あなたの夢が、確実にかなうためにです。

 

1.    年  月  日(  )天気(  )

2.目標

3.声のために行ったこと

4.声を使ったときのこと

5.どう声を使えばよかったのか

6.今日の声の調子と健康

7.明日の声の使い道

 

○声は意識したら耳に入ってくる

 

 自分の目標をしっかりとイメージしたら、自分に必要な情報は入ってきます。声も同じです。

 あなたの名が呼ばれたら、あなたにはとてもよく聞こえるはずです。以前、ジャマイカの空港で私は場内呼び出しを受けました。そのとき放送を何も聞いていなかったのに、自分の名前だけは聞こえました。

機上で映画をみて眠くなって目をつぶっていたのに、ストーリーは何となくわかります。そこに自分の知り合いの名前と同じ名前がでたら、耳に飛び込んできます。これも、カクテルパーティ効果※の一つでしょう。

 自分に関するもの、自分の好むもの、必要なものは、声を通じても入ってくるのです。

 あなたの好きな人の声や身内の声は、黙っていても聞こえてきます。心のなかに聞こえてくる、その声に従えばよいのです。

 

※カクテル効果

 パーティで、たくさんの人のなかから、聞きたい人の声や自分の課題だけを聞き取ることのできる能力が、人間の耳にあります。これを、カクテルパーティに、ちなんで、カクテル効果といいます。

 

○耳の力を養う

 

 もしあなたが耳の力が弱ければ、補いましょう。

 

 耳の弱い人(これは聴力が弱くて聞こえないということと違います)

・英語の発音が苦手だった

・歌詞、メロディがなかなか覚えられない

・ラジオが聞きづらい

・音楽があまり好きではない、音感やリズム感に自信がない

 

 耳の強い人

・ものまねがうまい

・カラオケが得意

・聞きとりに苦労しない

 

○アンテナを立てよう

 

 声を聞く能力は、個人差があります。学ぶにも、いろんな型があり、目でみる、耳できく、手を動かし書いてみる、口で言ってみる、それぞれに得手不得手があるものです。これにも、かなりの個人差があるようです。それでも、あなたも、友人の声すべてを聞き分けられるはずです。誰の声かを識別できる力があるのです。

 

 五感をもっとうまく利用するために、それぞれの感覚を組み合わせて活用するとよいでしょう。

 音読は、それを目と口の相乗作用で行うことになります。

 

○声で唱えると実現する

 

 口グセに気をつけようというのは、言葉を口に出していると、その通りになるからです。

かなり以前から、そうした分野は、自己暗示、成功哲学などといわれ、理論づけされてきました。大脳生理学などにより、言葉の力、声の力は、確かなものと認められてきました。

 

 自分自身に語りかけてみましょう。自分にやさしく語りかけると、やさしくなれます。植物やサボテンも、やさしい声に反応するそうですから。

 脳は、事実―現実に起きたことか、仮想イメージかを判断しません。潜在意識のなかでは、夢も現実も、バーチャルリアリティもリアルも、それが心身に起こす反応に違いはないのです。

 梅干しを思い浮かべるだけで、唾液が出ますね。

 映画や小説を読んで、感情移入できるのも、そのためです。

 スター(推し)のブロマイドをみていると幸せな気分になるのも、似ています。主人公に感情移入するのも同じ。小説やまんが、ゲームも人格形成に大きく関わっています。

 「ムカツク!」と口にしたら、ムカツクし、「しゃあねえ」とため息ついたら、力も抜けるのです。

だから、自分によい声でよい言葉を愛を込めて語ってください。

 

声が出るのは、とても複雑なメカニズムです。

声帯は、どんな楽器よりすぐれています。わずか2センチほどで、これだけの自在な音を扱えるものを、いつか人間はつくれるでしょうか。

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