« 「生きる意味」 No.385 | トップページ | 「ヴォーカルトレーニングの全て」 Vol.3 »

「よい声になれるヴォイストレーニング~声の科学」 Vol.1

○声はトレーニングでよくなる

 

「いい声」というと、役者さんを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。しかし彼らも最初からそんな声をしていたのではありません。「人々にしっかりと伝えるために、声を磨いた」のです。その結果、プロの声となったのです。

声は誰でももっているし、使えているので、よほど困らないとトレーニングなどしませんね。しかも、声帯は、誰一人同じ人はいませんから、よほどの効果が上がらなければ、わかりにくいものです。でも、声を鍛えてきた人には、ある程度、共通した方法があります。それが、ヴォイストレーニングといわれるものです。

声の正体をとらえ、「いい声」とのギャップを埋めようという意識を持つだけでも、声は魅力的になるものです。

ぜひ、人間に残された最後のそして最大の魅力開発「声のメイクアップ」をスタートし、仕事や生活で、ますます魅力的なあなたになってください。いつも「相手に働きかける声を意識すること」で、あなたのコミュニケーションカは大きく変わります。毎日少しずつ声を魅力的にしていきましょう。

 

○息と声帯

 

まず最初に、声はどのようにして出ているかについて、知っておきましょう。

声は、息を使って声帯を振動させることで発します。それを喉や鼻、口の中で響かせ、舌や唇を操って言葉や歌にしています。それぞれで、大きな個人差が生じているのです。

 

鼻腔と口腔は、口蓋垂(のどちんこ)で合わさります。その上下の管状の部分を咽頭といいます。途中で気管と食道に分岐していて、気管の入口近くに喉頭が、その内側に声帯があります。

声帯は唇のような形をしています。膜状の筋肉を周りの筋肉で吊ったような構造です。気管の内側に弁のように張り出していて、声帯がくっつくと息が止められます。

声帯そのものは直接、動かせません。黙って呼吸しているとき、声帯は開いています。声を出すときには、呼気で声帯を振動させます。声帯が1秒に何百回~何千回、開閉することで、声の元になる喉頭原音を生み出します。

吐く息が不安定だと、声帯の開閉も不安定になります。声帯は通常、象牙色ですが、酷使して炎症を起こすと赤く充血します。声も荒れます。

 

○共鳴と調音

 

声帯は声を発しますが、そのままでは言葉になりません。言葉を話すには、調音(構音)が必要です。

声がよく響くようにするのが、狭義のヴォイストレーニングです。アナウンサーやナレーターは、滑舌のトレーニングを中心にします。発音の方がトレーニングや矯正がしやすいし、効果も早くあがるからです。

声帯のコントロールで声に大小(強弱)や高低をつけられます。それは、共鳴腔(咽頭、鼻腔、口腔)で整えられます。共鳴腔は、管楽器の管(空洞)にあたり、そこで喉頭原音を共鳴させます。このとき、喉頭原音に含まれる高さ(周波数)の音の成分を強調したり、別の高さの成分を弱めたりすることで音色の違い、母音の区別が生じます。

 

日本語は5つの母音は、有声音です。その母音や息を歯茎、舌、唇などで妨げて出すのが子音です。

 

母音は、必ず声帯が振動します。のどぼとけに指をあてたら、その振動が伝わるのがわかります。声帯の振動を伴わない音は、無声音といいます。

力行、サ行、夕行、パ行などの子音は、無声音です。「p」は唇を閉じた状態から開くときに空気を破裂させ、「パッ」という音にします。「カッ」という音は、喉の奥で空気が通る音です。

b」(バッ)や「g」(ガッ)のように、声帯が振動する有声子音もあります。「f」や「v」のように、無声音だった発音が有声化したものもあります。

これらを明瞭に発音するために、発音のトレーニングが必要です。

 

○話し声と歌う声

 

歌声と話す声とでは、全く違うという人と、違わないという人といます。話す声はよくないのに、歌声はとてもよい人もいます。しかし、歌声が悪いのに、普段の声がよい人は、あまりいません。話す声というのは、たいていの人は意識もせずに発しているからでしょう。

 

○声の大きい人と小さい人の違い

 

声の大きさは、声帯の振動エネルギーと、共鳴の効率によって決まります。肺から空気を出すこと(声門加圧)と、2本の声帯がきちんと閉じられているという声門抵抗が生じます。それによって、声帯の振幅が大きくなれば、大きな声が出ます。同じ大きさでも、その高さによって聞こえやすさに違いがあります。人は約202万ヘルツくらいの周波数帯の音を聞くことができます。ヘルツというのは、音の周波数(高低)をあらわす単位です。この周波数によって聞こえやすさが違うのです。

最も聞こえやすい周波数はだいたい2500ヘルツ~といわれます。バイオリンの高音域です。

 

○声が高い人と低い人の違い

 

人の声帯が出す声(喉頭原音)は、64ヘルツから1024ヘルツくらい、これはピアノの真ん中のドの高低、それぞれ2オクタープの範囲にあたります。(周波数を表すヘルツというのは、100ヘルツなら1秒間に100回、声帯が振動することです。)

声帯から出る喉頭原音には多くの周波数成分が含まれています。一番下の周波数が声帯の振動数そのもので、基本周波数といいます。上の方の周波数成分は、基本周波数の倍音などで構成されています。この倍音成分の違いが音色の違いとなります。

話し声では、男性の基本周波数が110150ヘルツ、女性で220300ヘルツくらいです。弦なら長いほど低い音が出ます。男性は変声期に声帯が2倍近く長くなるので、女性より低いのです。

一般的に身長の高い人の声が低く、低い人の声が高くなります。これは、身長と声帯の長さが比例しているからなのです。(ファントの法則)

音楽では、だいたい505000ヘルツの範囲です。自然界では、私たちの耳に聞こえないほど高い音、低い音を使う生きものもいます。こうしてみると、私たちの声の出せる高低の範囲は実に狭いのです。とはいえ、これがわずか2センチの「声帯」という楽器でできるのだと考えるなら、驚異的なことでしょう。

 

低い声というのは、高い声に比べて、その人の声帯や体型など、個人的な資質が、より関係してきます。バイオリンでは、チェロの低く太い音は出せません。もちろん、人間の場合、使い方もあるので、簡単には言い切れません。  

高い声が好きだと思っていても、低い声の方が伝えやすいならば、まずはそちらを選ぶベきです。生まれもっての楽器としての限界もありますが、高音域ばかりで声を使っていると、低い声は出にくくなります。もちろん、低い声ばかり使うのでは高い声は出にくくなります。無理のかかる声域で、声の状態を悪くする人が多いので、一番よく声の出るところで、声の使い方を覚えていきましょう。

 

○共鳴と周波数についての解説

 

共鳴体では、音がそれぞれ固有の振動を起こすとき、ある周波数だけが共鳴体で共鳴を起こし、出口からはその強められた周波数のみが出てきます。ほかの周波数の音は弱められてしまい、出口では聞き取ることさえできなくなってしまうのです。

つまり、もともと周波数上は同じレベルのエネルギーを持っていたとしても、出てくるときには、弱められた周波数と強められた周波数というように変換がなされているのです。

それは共鳴体の形によって異なります。一般的には共鳴体が大きいほど低い音に共鳴し、小さいほど高い音に共鳴します。大きいものは低い音を出し、小さいものは高い音を出すのです。 

声の高さは、キー(音域)の高さのことですが、もうひとつ、日常的には高い低いで感知されない、周波数的に高い声というものが存在します。子音(破裂昔、摩擦音)などは、母音に比べて、高い周波数を含んでいます。

この周波数としての声の高さと、キーの高さというものは必ずしも一致しないのです。日本人の声は、キーとしては高い方ですが、周波数的には高いとはいえません。日本語は母音中心で、言語としては高周波を必要としていないからです。声の周波数に影響を与えるのは、言語体系による違いがもつとも大きいのです。

高周波の音を多分に使っている言語には、スウェーデン語などがあります。

« 「生きる意味」 No.385 | トップページ | 「ヴォーカルトレーニングの全て」 Vol.3 »

3-1.声の話」カテゴリの記事

ブレスヴォイストレーニング研究所ホームページ

ブレスヴォイストレーニング研究所 レッスン受講資料請求

サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想

発声と音声表現のQ&A

ヴォイトレレッスンの日々

2.ヴォイトレの論点