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2023年10月

閑話休題 Vol.79「大和魂」(1)

<定義>

 

大和魂は、外国と比して、日本流であると考えられる精神や知恵・才覚などをいう。大和心。和魂。儒教や仏教などが入ってくる以前からの日本人のものの考え方や見方を支えている精神で、儒学や老荘思想に基づく「漢才(からざえ)」、学問(漢学)上の知識に対していう。江戸後期からは、日本民族特有の「正直で自由な心」の意味。

 

日本民族固有の精神。勇敢で、潔いことが特徴。天皇制における国粋主義思想、戦時中の軍国主義思想のもとで喧伝。

 

・世事に対応し、社会のなかでものごとを円滑に進めてゆくための常識や世間的な能力。

・専門的な学問・教養・技術などを社会のなかで実際に役立てていくための才能や手腕。

・中国などの外国文化や文明を享受するうえで、対になる(日本人の)常識的・日本的な対応能力。

・知的な論理や倫理ではなく、感情的な情緒や人情でものごとを把握し、共感する能力・感受性。

など、根底となるべき、優れた人物のそなえる霊的能力。

・日本民族固有(のものと考えられていた)勇敢で、潔く、主君・天皇に対して忠義な気性・精神性・心ばえ。(近世国学以来の新解釈)

 

イメージ:大和国(奈良県)日本そのもの、富士山、桜、出雲大社、大仏、戦艦大和、もののあはれ

 

 武士道との関連 厳しい規律と自己抑制、運命へ服従、忠誠心。自己に打ち勝つサムライ精神。

 

神道との関連 大気そのものの中に何かが感じられる、宣長の句の中の、朝日に匂う、には、何か神々しいもの、畏れおおいものを感じます。

 

<歴史Ⅰ>

 

「そらみつ大和の国は水の上は地行(つちゆ)くごとく船の上は床に居るごと大神の斎へる国ぞ」万葉集

大和魂の初出は「源氏物語」の21帖「少女」。

「なほ、才をもととしてこそ、大和魂の世に用ゐらるる方も強うはべらめ」

 

大和魂は、机上の知識を現実の様々な場面で応用する判断力・能力を表すようになり、主として「実務能力」の意味で用いられていました。

 

大和心も、また、知性に対する知恵の意味。学問の研鑽を通して身に付くものでなく、その人間に生来備わっているとされるもの。今昔物語集では、和魂で使われています。

 

江戸時代中期以降の国学で上代文学の研究が進み、大和魂の語は本居宣長が提唱した「漢意(からごころ)」と対比され(真心)、「もののあはれ」「はかりごとのないありのままの素直な心」「仏教や儒学から離れた日本古来から伝統的に伝わる固有の精神」のような概念となります。

 

宣長は「敷島の大和心を人問はば 朝日に匂ふ山桜花」と詠みました。

 

江戸後期になると国学者によって、大和魂は、日本の独自性を主張するための政治的な用語として使われます。遣唐使廃止を建言した菅原道真が、大和魂の語の創始者に仮託されます。(和魂漢才 菅家遺誡)儒学の深化と水戸学・国学などの発展やそれによる尊皇論の興隆に伴うもので、近代化への原動力となります。

 

アメリカの来航に密航を企て倒幕の志を抱いた吉田松陰。

「かくすれば かくなるものと知りながら やむにやまれぬ大和魂」

「身はたとひ 武蔵の野辺に朽ぬとも 留置まし大和魂」

「ヴォーカルトレーニングの全て」 Vol.4

○声の出やすい状態を知る

 

 ここでは、声を守り、うまく使うための注意をあげておきましょう。

 声は、よく出るときと出にくいときがあります。朝早く起きた時には、こもった声になります。身体が起きてくると、声が出やすくなります。スポーツなどをしているときには、思いがけず大きな声が出たりしませんか。 しかし、身体が疲れると、またうまく出なくなってきます。病気のときや落ち込んでいるときの声というのは、元気がありません。声は健康のバロメーターなのです。

 声をよくするには、できる限りポジティブに毎日を過ごすことです。そういう人の声は、とても魅力的でしょう。身体を動かし、健康的な生活をすることが一番大切なことです。

 

〇満腹、空腹ともによくない

 

 お腹が一杯のときもへっているときも、声にはよくありません。

 お腹が一杯だと、横隔膜が上の方へ圧迫されるので、呼吸がしにくくなります。胃や腸で食物を消化吸収しているときに、歌うような全身運動は、あまり好ましくないのです。

 逆にお腹が空いているときや疲れている状態では、お腹に力が入らないと思います。

 たとえば、歌う1時間前に食べるかどうかは、人によって違います。自分の場合はどうなのかを知っておく必要があります。レッスンも、食べてから60分は、間を取った方がよいでしょう。下痢や便秘などにも、注意しましょう。

 

〇冷たいもの、からいものもよくない

 

 声によい食べ物、悪い食べ物などということも、よく話題になりますが、私はあまり気にしない方がよいと思います。スポーツ選手のメニュと同じで、栄養価の高いものや消化のよいものの方が好ましいことは確かです。

 しかし、冷たいものや、からいものといった、喉を直接刺激するものは避けましょう。特に、発声練習や歌う前、歌っているときには避けましょう。氷水を飲みながら歌うなどというのは、危険なことです。

 

〇お酒とたばこは、ほどほどに

 

声のことを考えるなら、たばこはスポーツ選手を見習って、やめた方が無難です。アルコール類も、声帯から水分を奪って乾くために、粘膜が弱り、声のかすれやすい危険な状態になります。飲んだときには、知らず知らず大声で歌ったり、長く話しがちになります。これがよくないのです。ビールなどは、喉も冷えるので、気をつけなければいけません。

 

〇飲物やアメについて

 

まったく水分をとらずに長く練習するよりも、適当に休みを入れましょう。喉を回復させながら、適時、温かいものを飲むとよいでしょう。

 のどアメやトローチ類にもいろいろなものが出ていますが、薬用効果をうたっているものに頼る必要はありません。ただのアメでも、唾液が分泌されるということでは効果があります。疲れをとるために糖分を摂るという程度でよいでしょう。

 

○姿勢と呼吸

 

 ヴォイストレーニングで、いつでもベストの声が確実に出てくるようにしなくてはなりません。常に思い通りに声が出せるということは、歌うための前提条件といえます。楽器でいうと、これは完全な品質を持ち、正しく調律された状態にあります。自信にみち、威厳のある姿勢をとりましょう。両肩を、うしろに引いて下げます。胸のまん中を高くし、胸郭が前から横にかけて拡がるようにします。

 ブレス時は、常にこの姿勢を保持します。どんな状態にも動けるように、リラックスしながら、神経は張りつめ、精神集中できている状態です。スポーツにも共通する基本姿勢です。

 どうですか。うまくできましたか。自分の内にあるエネルギーを一つの声にして出せるように意識してください。

 

[息から声にするトレーニング]

 それぞれ、5回か10回ずつ行ってみましょう。

1.左右の腕を前後と反対方向に大きく円を描くように回してみましょう。

2.左右交互に肩の上げ下げをやってみましょう。

3.両手を目一杯、上に伸ばして脱力しましょう。

4.息を吐いてみましょう。「スーーーーー」

5.声にしてみましょう。「ハアーアーアーアー」

 内側に小さく弾むような感じで出してみます。少し強くやってみましょう。手を胸にあてると、ひびいていますね。このとき、腰の後ろ側の左右の筋肉に支えが感じられます。両手で触って確かめてください。

6.弾力のあるマリのように空気を吐き出してみてください。

「ハッ」「ハッ」

 そのとき少し、お尻の穴がしまり、太ももが内側にきゅっと入りませんか。「歌っているときは、胃袋と尻が近づくような感じがする」と名テノール歌手のエンリコ・カルーソーは言っていたそうです。こういう一連の動きを自然と体でマスターしていってください。

7.嬉しいことに驚いて「ア」と言ってみましょう。

8.思いがけず、親しい人に会えた時のように「ハッ」と言ってみましょう。

9.大きなため息をついてみましょう。「あ~あ~あ」

10.長く息を吐けるだけ吐いてみましょう。

 

 

〇呼吸とお腹を結びつける

 

 腹式呼吸は、誰でも行っています。しかし、歌うときに使われていなければ無意味です。ですから、発声練習のなかで行っていくものです。

 日本人の場合、息がとても浅く、身体から息を出す感覚さえ、持っていないのです。

 これは、日本語が発音時に、身体からの強い呼気を必要とせず、さらにアクセントも強弱でなく高低でつけるために、口先だけの声になるからです。

 そこで、息を吐くのに使う筋肉の強化トレーニングのようなことを行います。これも、日常のなかでさえ、よい発声ができていない私たちが、最低限の条件を身につけるために行うものです。

 息のトレーニングに関しては、最初は大まかに自分の身体の動きのなかでやりましょう。

 歌うのに息の配分を決めて行うことが呼吸のコントロールだと思っている人がいますが、これもやりようによっては、発声器官に緊張をもたらし、悪い癖をつける場合があります。単純に出したいフレーズの2倍程度の息を保つように、大まかに捉えることです。

 呼吸やブレスは、お腹で調整すべきことで、喉で行おうとしてはなりません。呼吸は、ピッチ(音高)やフレーズをキープするために強く長くできるようにしていきます。

 口は自然に開き、吐いた分だけ瞬時に空気が入るような身体にしていきます。鼻とか口とかで吸おうと意識しないこと、のどが乾いたり異物が入ったりするから鼻から吸気するのが原則ですが、吐いた分より早く元の状態に戻せるように、身体を鍛えていくと考えてください。

 

[呼吸とお腹のトレーニング]

それぞれ、5回か10回ずつ行ってみましょう。

1.上半身を脱力して、前屈します。両手を下につけて息を吐きます。

2.上半身を戻すときに自然と息を入れてください。

3.12の動きを結びつけて行ってみます。

4.両手を上に思い切ってあげる時に、息が入るように意識してみてください。

5.両手を下に下げるときにゆっくりと息を吐いていきましょう。

6.45の動きを結びつけて、行ってみます。

7.あお向けに横になり、お腹に手をおき、静かに息を吐き、そして吸います。

8.横向きに横になり、お腹に手をおき、静かに息を吐き、そして吸います。

9.腕立てをしながら、息を吐いたり吸ったりしてみましょう。

10.上体起こしをしながら、息を吐いたり吸ったりしてみましょう。

肩や胸の位置が動かないように注意しましょう。

 

〇呼吸と声を結びつける

 

 お腹から息を吸うと、前腹の下の方はやや引っ込む感じがします。お腹全体が拡がります。へその裏にあたるところに、この動きの中心となる感じがきます。

 吸うということは、よく誤解されます。空気が入ると、肺は自然に出そうとしますから、止めるということは、吐かない以上、わずかに吸っている感覚になるのです。声帯が発声の瞬間(これを声立てといいます)に備えている状態です。体ができてくると、こういったことが無意識下にわかってきますから、最初はそういうものかというくらいに思って気にしなくて結構です。

 呼吸では、吐くことを中心にトレーニングしてください。吐いたあと、自然に身体が戻り、空気が入ってくるようにします。ときには、発声のトレーニングで、声が自然に出やすいように、呼吸を支える体に意識を向けてください。

 歌うときに感情移入して表現しようとすると、精神的にも高揚し、心は体から離れようとします。声は自由を欲します。しかし、声は身体があって出ているものですから、自然の摂理に従った身体の使い方をしなくてはいけないのです。そのために技術があり、それを支えるトレーニングがあります。

 その最も基本となるのが、このヴォイストレーニングなのです。歌やせりふがうまくいかなければ、息を吐くことに還ることです。

息をすることは、生きることにつながります。人間であれば(生きとし生けるものならば)間違いようがないのです。ただし、一流のヴォーカリストレベルでは、超人的なブレスのコントロールが求められるから、トレーニングが必要なのです。(お腹が出たり、へこむことが大切なのでなく、自由に動きやすくなる状態を得たいのです。)

 

[ブレス・トレーニング]

 それぞれ、5回か10回ずつ行ってみましょう。

1.上体をゆっくりと前に倒しながら息を吐いていきます。

2.吐き切ったら、上体を起こすと同時に、息が入ったのを意識します。

3.息を吐きます。そのときにお腹の横やうしろが出るようにします。

4.息を吐きます。そのときにお腹の横やうしろがへこむようにします。

5.身体を前屈させて、息を長く10秒間吐き、5秒休みます(2分間)。

6.体を前屈させて、息を短く「ハッハッハッ……」と10秒間吐き、5秒休みます(2分間)。

7.息をできるだけ長く吐き、瞬時に体の動きで息が入るようにしましょう。

8.息を8秒出し、10秒止め、2秒で吸いましょう(3分間)。

9.歌詞を息だけで(声にせず)読みましょう。

10.歌を1曲、息だけで歌ってみましょう。

あごをひき、口は固定してあまり動かないようにします。

「よい声になれるヴォイストレーニング~声の科学」 Vol.2

○プロの声はお腹から出る

 

役者や声優は、台本を、人にしっかり伝わるように表現します。それは、訓練の賜物です。

大切なことは伝えることであって、声を出すことではありません。いくらよい発声でも、棒読みしているのでは、伝わらないからです。深い呼吸で声にメリハリをつける自在に使える力がないと、聞こえたところで、伝わらないのです。つまり、プロは、お腹から声が出ているといえるでしょう。

この機会に、声を「出すこと、使うこと、伝えること、伝わること」について考えてみましよう。また、自分の呼吸や発声について、チェックしてみましょう。

 

○声の音色

 

音色の違いは、周波数の成分がどんな具合に混ざっているかの違いで、音波の波形で示されます。私たちが聞いている音のほとんどは、複合音です。

声もまた、複合音です。120ヘルツの高さ(基本周波数)で話していても、そこには、その上の240360480と整数倍の高調波(倍音=ハーモニクス)がのっています。その高調波がどのように交ざっているかによって、音色が違ってくるのです。

同じ大きさで、同じ高さの音でも、ギターの音かバイオリンの音かは区別できます。それぞれの波形=高調波成分の分布状況が違うからです。この違いが音色です。

声についても同じです。同じ大きさ、高さで声を出していても、誰の声かは、わかります。音色が違うからです。音色は音質とも言います。声の音色、すなわち声の音質はまた、声質ともいわれます。声のイメージは、この声質の違いです。

これは声帯と共鳴器官との関係などによって決定づけられます。ですから、細い声の人でも、トレーニングである程度までは太い声にすることができないわけではありません。

 

○純音について

 

一般の音のほとんどは複合音で、純音というものは、ほとんどありません。

純音とは、単一の周波数の音で、その波形は「サインカーブ」、数学の三角関数の授業に出てくるようなきれいなカーブで示されます。自然界にはほとんど存在しません。

身近では、NHKの時報の音が純音です。「プ、プ、プ、ポーン」は「ブ、プ、プ」より「ポーン」のほうが高い音で、この周波数は、はじめの3つが440ヘルツのラ(A)、最後の長い1音だけ880ヘルツの高いラとなっています。周波数が大きいほど音も高くなるので、時報は最初の3音に比べて、最後の1音に倍の周波数を使ってオクターブ上の高音にしているのです。

 

○フォルマント

 

声帯から音は、声道から口を通り、「ア」とか「イ」などの響きがつけられます。それが、音色の違いであり、高調波(倍音)の共鳴の濃淡によってつくられます。

口の中では母音に応じて、舌などで形を変え、共鳴を変えています。とくによく共鳴しているいくつかの周波数のことを、フォルマント周波数と呼びます。フォルマントは、いくつかの山となり、低い周波数から順に第一、第二、第三フォルマントです。(第一の下に声帯の基本周波数が位置する)母音は、第一フォルマントと第ニフォルマントの周波数の組み合わせで決まります。

 

○f分の1ゆらぎ

 

 fというのは周波数(frequency)の頭文字で、「f分の1ゆらぎ」とは、周波数に反比例するゆらぎです。つまり、高い音ほど小刻みに、低い音ほど大きくゆらぐのです。自然界の音(せせらぎや除夜の鐘、風鈴、オルゴール、クラシック音楽など)に見られます。

 

〇よい声の条件とは?

 

声がよくなるとは、より大きく高く(低く)長く出せるだけでなく、声がしっかりと統一され、かすれたり割れたりしないということです。しかも長時間出しても異常をきたさないことです。体調の悪いときも、伝えたいことを表現するのに充分な声が確保されることです。特に、人前で声を使うときは、声の調子を万全に整えておかなくてはいけません。

現実には、美しさ、心地よさといった声質、あるいは、個性、パワー、インパクトが問われます。

つまり、「よい声」とは、生まれつきの声(素質)よりも、発声のよさ(発声)、さらにそれよりも声の使い方(表現力)によるところが大きいのです。

声そのもののよさだけでなく、声を使える力が、より問われるようになってきたのです。まずは、今自分の持っている声の力を見直してみましょう。

 

EX.魅力的な声 

基本周波数で、腹式発声がきちんと行われていると30004500ヘルツ前後の成分が高く、声の聞こえがよくなります。Sの音がきれいに出ていると、さわやかな印象を受けます。

 

〇よい声と悪い声とはどう違うか

 

人は、十人十色、いろんな声を使っています。その中で、よい声がどうもよくわからない人は、悪い声から考えてみましょう。悪い声は不自然で伝わりにくいでしょう。何を自然と思うかは、聞く人の感覚で、目的やTPOや相手の好みにも左右されます。よい声は自然に伝わるといえましょう。

自分の声がどうなっているのか、そして、どうなったらよいのかを、自分なりにイメージしておくことは大切なことです。

声について、自分の抱いているイメージを、声がよいと思う人、声が悪いと思う人、変わった声だと思う人(どのように)など、他の人の声を思い浮かべて書き出してみましょう。

次に、今の自分の声と、改善目標を掲げてみましょう。

たとえばこんな感じに…

今の自分の声「かたく、こもって、押し潰した声で、ときにヒステリック」

改善目標「やわらかく、はっきり前に出たクリアな声で、いつも落ち着いてゆったり聞こえる」

というわけで、声のよしあしというのは耳を研ぎ澄ますことでわかるものです。

 

EX.個性的な声

・音圧のレベルが高い。基本周波数の変化が遅いのがわかる。

・エネルギー量が少なく、やや力を抜いている感じ

 

〇耳で音を聞くしくみ

 

声のよしあしも聞く人の受け止め方によります。耳が声をどう捉えるかを知っておきましょう。

人間の耳は、外耳、中耳、内耳の3つに分かれています。外耳のなかでも、耳介は音を集める働きを持っています。とくに前方と横の音を中心に集め、後ろからの音をカットするようになっています。耳の形をみるとわかるでしょう。左右両方に耳があるのは、音の方向を知るためです。

集められた音は外耳道を通って、鼓膜を振動させます。この鼓膜の奥が中耳です。鼓膜のところで振動した音は骨を通って、蝸牛孔というところに出ます。その蝸牛の中で周波数が分析されます。その情報が脳に伝えられ、判断するのです。

蝸牛と呼ばれる骨の中はリンパ液で満たされています。そこには1万を超える数の繊毛がフラフラと浮くようにして生えています。その11本が特定の周波数を聞き取る役割を持っています。

この繊毛が1本でもなくなると、その特定の周波数の音を聞くことができなくなります。壊された繊毛は再生することはないので、二度と、その周波数を聞き取ることはできなくなります。

この繊毛は、耳の外側から順に高い周波数から、奥へ行くほど低い周波数に反応するようになっています。高音の音波はまっすぐ進み、1回でも曲がってしまうと、それより先へ進まなくなるという性質があります。低音の音波は回りながらでも進んでいくことができます。そのため、耳の入口近くで高音を感じ取り、奥のほうで低音をキャッチするようになっているのです。

いちばん外側のは、2万ヘルツくらいの周波数に反応します。人間の耳には聞こえない高周波数ですが、反応を示すということで、その音を受け取っていることがわかります。

受け取り可能な周波数には、言語によっても差異があります。たとえば、英語には超音波まで含む発音が多く、英語を話す人たちはそういった音までを捉えています。英語のヒアリングができると英語の発音もよくなります。

 

〇お年寄りに聞き返されない声

 

声は、高い方が聞こえるものですが、場合によっては聞きとりにくくもなります。耳の遠いお年寄りには、大きな声でなく低い声を使うのがうまく伝わるコツです。年齢を経ると、耳の入口の方から繊毛がなくなり、高い声をとらえにくくなるからです。

 

〇人間の間き分け力

 

人間の音の高さ(周波数)の聞き分けは、2ヘルツでも可能です。わずか2ヘルツでも違えば、違っていることに気づきます。

1オクターブ内で歌った場合、そのなかで次々に周波数を変えていくのですが、その変化で2ヘルツを違うと音程の狂いを感じるわけです。つまり、安定した声の高さを保ち、次の音階へと移行するのは、高度な技術を要するのです。これを私たちは歌うときには、しぜんとやっているのです。

音感の優れている人は、ある音から次の音に変化するときにパッと移ります。しかし、音感が悪いと、正しい音よりも上に行き過ぎてから下がったり、下げ過ぎて上に戻すといったことで、正しい音に落ち着かせます。正しい音に落ち着かないと「音痴」と呼ばれるのです。

「対策する」 No.386

外的な違和感には、内的な自覚を高めて乗り越えましょう。

具体的な方法にとらわれず、実効果のある考えを出しましょう。

新しく自分に合う方法を自ら創るためにあるのが、本当の方法論です。

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