閑話休題 Vol.80「大和魂」(2)
<歴史Ⅱ>
明治に入り、西洋のものが流入すると、岡倉天心らによって、日本流に摂取すべきという主張が現れ、和魂洋才が用いられます。和魂漢才のもじりで、大和魂の本来的な意味を含んでいましたが、西洋の知識や文化を必要以上に摂取することへの抵抗感もありました。
欧米列強に対抗できる国家づくりを目標に、欧米を模倣した中央主権的な国家体制が整備され、国民の統制教育も整備されました。それまでの自由主義的傾向の教育から、中央集権的・国家主義的傾向へと変わる過程で、大和魂は、日本精神として、国家忠誠心的な部分が強調されました。
1894年8月「支那征伐大和魂」鬼石学人
日清戦争が始まった頃には「銀の匙」(1913~1915年)中勘助で「朝から晩まで、大和魂とちゃんちゃん坊主でもちきってゐる」と。
1900年、新渡戸稲造の「武士道」に“Yamato Damashi, the Soul of Japan”「大和魂は遂に島帝国の民族精神を表現するに至った」として宣長の歌を引いています。
夏目漱石は「吾輩は猫である」で、巷に大和魂が溢れている状況を皮肉って「大和魂は、それ天狗の類か」と(1905年10月、日露戦争直後、発表の6章(「ホトトギス」)。
日露戦争以降の帝国主義の台頭に伴い、国家への犠牲的精神とともに他国への排外的・拡張的な姿勢を含み、日本精神の独自性・優位性の表現に変容。明治天皇も大和心、大和魂を詠んでいます。(1904年、3首)
第二次世界大戦期には、軍国主義的に、現状打破、突撃精神を鼓舞するのに使われました。日本の国家(国体)を支える日本人(臣民)の大和魂となります。
「大和魂に磨きをかけて生産性を戦い抜くことである」(1943年9月、武田春爾 戦時安全訓)
「砲の不足は大和魂で補え」(中内功の談)
戦前のタバコの名称、敷島、大和、朝日、山桜。戦艦名、関島、大和、朝日。
神風攻撃隊、敷島隊、大和隊、朝日隊、山桜隊。
1967年「大和魂と星条旗」竹下トマスK アメリカ移民日系人
2004年 なでしこジャパン 新語流行語大賞2011年
2011年から 侍ジャパン WBC野球チーム
発言「大和魂を貫いてまいります」豪栄道/「大和魂で戦う」K1渡部
21世紀に入り、大和魂と入った本が、たくさん発行されるようになります。
2020年「大和魂」田中マルクス闘莉王(サッカー選手)幻冬社
アカツキ5(オリンピック女子バスケット2021)
2021年ヘビメタバンド「LOUDNESS」が40周年、新曲をNFT(非代替性トークン)で販売。8/5日夜、初披露、新曲「大和魂」
<映画>
「大和魂」“The Man Who Laughs Last”(アメリカ)
早川雪洲氏がワーナー・ブラザース映画のために米国で出演録音した英語版映画。原作は雪洲氏が十八番ものとして上演した舞台劇(エドモンド・ジョセフ脚色、マレイ・ロス監督)。
長崎の名家の息子オトヤはスペインの血をうけた混血児ロジエタを愛していたが、ジムという男はオトヤを恋敵として憎み、一夜だまし討にし、ロジエタを誘拐して逃れる。10カ月後、南海の小港にジムとロジエタは姿を見せる。ジムはロジエタを監禁し、彼女は逃れようとしている。ジムはロジエタが意に従わないので嘆く。そこへ死んだと思ったオトヤが入って来る。オトヤはロジエタが自分を愛していること、長崎のピストルの件はロジエタの関知しないことを知り、ジムと最後の決闘をする。倒れたジムに向ってオトヤは笑う。「おれは勝った。10カ月前、長崎で貴様は笑った。勝って笑った。しかし、今はおれがこうして笑っているぞ。最後に笑う方が勝つのだぞ」
参考文献:「大和魂のゆくえ」(2020年)島田裕巳(インターナショナル新書集英社)/Wikipedia/Weblioほか