「よい声になれるヴォイストレーニング~声の科学」 Vol.4
〇外国人(欧米人)の方が声では有利
外国人との発声の大きな違いの原因となっているのは、日本語の浅い発声、日本人の生活様式など、さまざまです。姿勢一つとっても、私たちはどうしても猫背になりがちで、響く声を出すのにひと苦労です。言語を発するポジションも、喉のあけ方も違います。
頭骸骨も、鼻、あごの形なども、民族によってかなり違いがあります。その違いは共鳴体にも変化をもたらしています。たとえば、共鳴体が違うと声や言語も違ってくるのです。
共鳴体の違いは、声の違いを生むとともに、民族によって出しやすい音と出しにくい音という差異も生んでいます。その民族にとって出しにくい音を使った言語はなじまないので、それぞれの民族に適した言語体系が形成されていくのです。
英語教育による影響をもっとも強く受けているのが、海外生活の経験がある子どもです。同じような体格の子どもであっても、海外で生まれ育った子どものほうが20ヘルツほど声が低くなるという調査結果があります。体格的な理由以上に環境や文化が声に影響を与えているのです。
〇日本人も音声に関心を
日本人は、話し声も小さく、メリハリ、響き、パワーに欠けます。しかし、外国人は総じて身体についた声で、明るくはっきりと発しています。
もう日本人も、体格、骨格や背の高さなども外国人と変わらないようになりました。きちんとした発声を身につけることができれば、同じように声が出せるはずです。
ただ、声を引き出すのは、必要性ですから、言語、文化、風土の問題の方が大きいのです。日本では、異民族、異言語にさらされてきた多くの外国人ほどに、音声に対する関心や表現力が必要にせまられなかったのです。
とはいえ、邦楽では、80歳でも朗々とした声を出す人もいます。歌う声も、話し声もトレーニングしだいで克服できるのです。
〇英語に、パワーや勢いをつける
日本人の英語の発音は、とてもよくなりました。しかし、発声とリズム(強弱)がまだよくありません。
口先で英語を器用に発音しているだけでは、英語らしい雰囲気で聞かせているだけといってもよいでしょう。声は前に飛ばないし、強い息にのっていない。歌も声の芯や深い息がないので、私は、その一声で、およそ日本人だとわかります。
欧米の言語は、強い息を発し、舌、歯、唇で生じさせる子音を中心とします。日本語にないパワー、勢いがあります。それがしぜんに深い声や多彩な音色につながるのです。そこまで耳と声で捉えている人は、日本人には稀でしょう。
しぜんな発声と呼吸を身につけた身体があってはじめて、外国人と対等に声で渡り合える実力につながるのです。ですから、身体からの深い息を深い声にするようなトレーニングを続けることです。
〇日本語と英語との違い
日本語と英語のニュースで、同じ内容を伝えるためにどれだけの時間を要したかを測定してみました。その結果、日本語では14秒、英語では21秒でした。さらに、10分間で何音節話しているかを調べると、日本語では160、英語では110でした。
日本語では少ない時間内に多くの語数を費やし、より多くの情報を伝えようとしていることがわかります。つまり、日本人は早口だということになります。このスピードの違いは、英語ではひとつの単語を伸ばして話したり、強調するための間などが多く見受けられるのに対し、日本語では比較的どんどん言葉を進めていってしまう違いによるのでしょう。
〇性格と声
日本人の声の大きさは、欧米人の声に比べると小さいといえます。音圧にして、3~4デシベルほどの違いがあります。日本人にとっては、人前で話すことや声を大きく出すことは、まだまだ抵抗があるのでしょう。欧米人は、そういう恥ずかしさを逆手に取るようなところがあります。
洋画や海外のドラマなどを見ていると、自分が失敗をして恥ずかしくてしょうがないというときに、ひときわ大きな声で笑い飛ばす、なんていうシーンが少なくありません。自分の感情をどんどん前に押し出していくのです。
そういうふうに、声で伝えるというのは、日本人にはあまりみられません。楽しいときには豪快に笑い、怒ったときには派手に怒声をあげるとよいのです。
« 「自立して知的に協力する」No.388 | トップページ | 「ヴォーカルトレーニングの全て」 Vol.6 »
「3-1.声の話」カテゴリの記事
- 「よい声になれるヴォイストレーニング~声の科学」 Vol.12(2024.08.05)
- 「よい声になれるヴォイストレーニング~声の科学」 Vol.11(2024.07.05)
- 「よい声になれるヴォイストレーニング~声の科学」 Vol.10(2024.06.05)
- 「よい声になれるヴォイストレーニング~声の科学」 Vol.9(2024.05.05)
- 「よい声になれるヴォイストレーニング~声の科学」 Vol.8(2024.04.05)