「よい声になれるヴォイストレーニング~声の科学」 Vol.5
〇男性の声の高音化現象
以前の日本人の男性の声は、基本周波数が150ヘルツくらいで、300ヘルツ以上の声を出すことはほとんどありませんでした。しかし、最近では驚いたときや感情をぶつけたいときに、そのくらいの高周波数を出すことが珍しくなくなってきています。
高音を出すのは声を聞こえやすく、通りやすくしようとするからです。周波数の幅が広がって、抑揚がつくので、注意を喚起し、声を伝えやすくしているのです。
職業や客層にもよります。
〇性別も声紋分析ならば間違わない
たいてい声変わりは、十代半ばに起こります。男性は、声帯の振動数が大きく変わって低い声になります。思春期以降であれば、声を聞くだけでそれが男性なのか、女性なのか判別できます。ただ、声の低い女性、声の高い男性などといった例外もあります。電話で声を聞いたときに男性なのか、女性なのかがわからないといったケースも起こります。
〇なぜ声で年齢がわかるのか
年齢も、声紋分析によってほぼ正確に判別できる要素です。
声は25歳を過ぎるころから少しずつ衰えていきます。声帯と、口の構えを作る筋肉、神経の伝達能力が劣化するためです。脳神経が声帯と口の構えは指令を出しますが、脳神経自体も衰えます。声紋にあらわれる口や喉の奥の筋肉の老化状態を読み取っていくと、年齢は5歳刻みで推測することができるという研究者もいます。
たとえば「アー」と声を伸ばしたとき、若い人なら波形の揺れが少なく、年齢をとるほどに揺れは大きくなります。筋肉の衰えが起きて、声帯を長い間、同じ状態に維持することができなくなるからです。口の形も一定に保てなくなります。
また、年をとると肺からも一定の圧力で空気を送り込むことが難しくなります。つまり、加齢とともに、声帯の状態、口の形、肺から送る空気などを一定に保つことが困難になり、それが声紋の波形にあらわれてしまうのです。
高齢者の声がかれてくるのは、咽喉内の粘膜が老化して、喉に炎症が起きたときと同じように粘膜に凹凸ができてくるからです。肺から送られた空気がこの凹凸を通過するときにいくつかの渦が生じ、かすれた声を作り出すのです。肌や体や脳の老化に個人差があるように、声の老化にも個人差はあります。ですが、急に声を「若作り」しても、声紋分析すればわかってしまうそうです。
〇赤ちゃんの泣き声はサイレン
<赤ちゃんの泣き声が遠くまでよく聞こえるのは、ヴォリユームが大きいというよりも、人によく聞こえる周波数だからです。救急車のサイレンとほぼ同じ2500~4500ヘルツで、人間の耳の感度のいいところを本能的に捉えています。
この泣き声を分析すると、「おなかがすいている」「眠い」「苦しい、痛い」「さびしい」という、おもに4種類の感情にわけられます。>
一般的にいって通じやすい声の基本は、お腹からの腹式呼吸で出す声です。これは、人にとって聞きやすい、2500ヘルツから4000ヘルツ付近の音がよく出るのです。
〇体調判断も声でできる
風邪をひいたときには、声が悪くなります。これは、喉や鼻に炎症が起こり、痰がからむなど、共鳴体の大きさも形も微妙に変わってくるからです。体調が悪いと、体力も失われます。すると、腹筋を使った発声ができなくなります。それらによって、声自体にも変化が生じるのです。
喉に炎症を起こした場合は、声帯や声道の状態も変わります。摩擦音を発することもあります。すると声がかれる状態となります。さらに症状が悪化して気管支炎になると、呼吸が気管支を通るたびにゼーゼーといった音が鳴るようになります。
声によって体調を判断するのは比較的容易なことなのです。
〇自分のよいときの声を聞いてまねする
自分の絶好調のときの声を録音しておき、それを聞きながら、その声が出るまで、トレーニングを重ねるとよいでしょう。また、声は体調のバロメーターとしても活用できます。体調がすぐれず腹筋に力が入らなければ、声も低くなるからです。
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