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「ヴォーカルトレーニングの全て」 Vol.8

○子音のトレーニング

 

 アーティキュレーションとは、明瞭な発声と、発音、音声の形成、継ぎ目をつなぎ合わすことです。母音はアタックせず、舌、唇を使いません。なめらか(スラー)に流れるので、レガートを中心とする歌唱の基本トレーニングに使うのです。

 それに対し、アタックするのが、子音です。これは、舌、歯や唇を使います。

 舌は、子音を作るとともに、母音につなげる準備をしています。正しく舌を使うとともに、必要なとき以外は舌を平らに保ち、力を抜いておきましょう。舌が邪魔してはいけません。

 参考までに、主な発音もあげておきます。

 

「ラ」

lよりも縮こまり、やや後方につき、舌根が固くふくらみます。したがって、喉の奥の開きが狭められ、声は奥に入ってこもってしまいます。「ダ」に近いです。下あごが固くなり、ガクガクと動きがちです。

 

l

舌をやわらかく薄く扱い、先端(舌の先の裏側)を軽く上の前歯の先(軟口蓋)につけます。舌根は固くなりません。下あごは動きません。

 

r

巻き舌で舌の先を軟口蓋を利用して震わせます。

 

(参考)gli(リ)イタリア語

軟口蓋に舌の表面(lと逆側)をつけ、舌の両側から息を出しながら舌の上の歯の根元をずらすように前に移動して発音します。

 

f」、「v

日本人は、hbになりがちです。下唇の上に軽く、上の歯を押しあて(かんで)息を押し出すのです。やわらかく唇を使います。水戸黄門のように「ファッファッファッファッ」と笑ってみましょう。「フ」は唇を閉じない、上下の摩擦音です。

 

「∫」(シュ)

上下の歯の間に少し隙間ができて、唇は柔らかく膨らませ、つき出して息を押し出します。唇やアゴの力が抜けているのです。日本語のシュは、唇を少しとがらし、上下の歯もほとんど閉じています。

 

n

これも、外国語では上あごに舌の先がついて、瞬間的に鼻に抜け、音となりません。

 

[アタックの強さを変えるトレーニング]

 次の5つを、強、中強、中、中弱、弱の順に発音してください。

sa、sesisosu

ga、gegigogu

ta、tetitotu

da、dedidodu

ka、kekikoku

ba、bebibobu

 

[アタックからレガ-トにするトレ-ニング]

ka-akeekiikookuu

ga-ageegiigooguu

ba-abeebiiboobuu

ta-ateetiitootuu

da-adeediidooduu

pa-apeepiipoopuu

ba-abeebiiboobuu

 

○日本語のトレーニング

 

 あまり速いテンポでトレーニングすることはよくありません。早口ことばのように速いスピードで声を使おうとして、いくら間違えずにスラスラと速く言えたとしても、不自然になるだけです。本当に伝えたいときに、そんなことはしないからです。

 声の響きのトレーニングでも、あまりよいトレーニングになりません。

 100キロの球がまともに打てぬバッターに、150キロの投球マシーンでトレーニングさせるでしょうか。結果としてフォームがくずれるだけです。フォームさえ身につきません。こういうときは、確実にミートできる球でしっかりとフォームを整えつつ、感触を身体で覚えていくものでしょう。つまり、目的が、あたればよいというものではないからです。

 充分に息と身体を使いましょう。ことばを発し、その分、空気が入るのを待って、こなしていくことです。

 最近の曲は速くなっていますから、リズムにのせて早口で、歌えることも必要です。しかし、口だけが速く動いても伝わりません(それでよしとしているのが、J-POPにもたくさんあるのは残念ですが)。ピアノでも速弾き競争はありません。そういうトレーニングは、つけ焼き刃にすぎず、いつまでも、速くうまく言えないことになります。速く言えるようになっても、意味や情感を伝えられなければ何にもなりません。時間と競って速く言うトレーニングは、最初は無用です。悪いくせを助長する原因となります。

 声がしっかりしていくと、1曲3分という時間はとても長くなるのです。そういう時間感覚が身につけば、歌詞を伝えるのは簡単です。しぜんと人が驚くほど多くのことばを短い時間に盛り込めるようになってきます。

 口でなく、感覚が働き出すからです。正しい発声は、おのずと機敏性をもたらしてくれます。その結果、自分で速く感じず、聞いている人にも速く感じさせず速く言えてしまうようになります。ことばのトレーニングは、まず相手に伝わるようにゆっくり、しっかりと読むところから、始めましょう。

 

50音のトレーニング]

 カ行からラ行までを読んでみましょう。

 読むパターンとしては、

アエイオウ

イウエアオ

アエイウエオアオ

アエイオウオアオ

などがあります。

 

○ことばのトレーニング

 

 一息で5音くらいまでをひとくくりで一拍のつもりで読んでみましょう。

 

○詩を読むトレーニング

 

 心に思い浮かべ、その情感や風景が伝わるように読んでみましょう。呼吸、間あい、声の大きさ、スピード、すべてに注意して構成してみましょう。

 

○歌詞を読むトレーニング

 

 歌詞をよく読んで、自分なりの解釈、さらにストーリーをつくり、オリジナルといえる読み方(歌い方でもよい)にまで高めてみましょう。

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3-2.歌の話」カテゴリの記事

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