閑話休題 Vol.84「薙刀」(4)
〇分類
薙刀は、形状によって分けられます。
巴形薙刀は、「女薙刀」とも呼ばれ、形状や長さに明確な規定がない薙刀です。一般的には、鋒/切先(きっさき)の方が強く反り、身幅が広がっているのが特徴。
江戸時代に制作された婦人用薙刀の形状、巴形薙刀という名称も江戸時代になってから付けられました。木曽義仲の愛妾、巴御前にちなんで命名、その由来に巴御前は関係がないという説もあります。
静形薙刀 「男薙刀」とも呼ばれ、形状や長さに明確な規定がない薙刀です。一般的には反りが浅く、身幅の先が狭い、いわゆる菖蒲造の日本刀に似ているのが特徴。静形薙刀術、静流は、鬼から剣術を習った源義経が、その剣術を薙刀術に応用し、静御前だけに教えたことがはじまりと言われています。
筑紫薙刀 室町時代、九州地方の大名「大友家」を中心に、筑紫地方で盛んに使用された薙刀です。最大の特徴は、柄に収める茎(なかご)がないこと。
刀身の棟側に「櫃」(ひつ)という輪状の金具を付け、そこに柄を通すという特殊な構造をしています。鋒/切先(きっさき)の方が強く反り、身幅が広がっているのが特徴。
中国大陸より伝来した各種の長柄武器から発展したものと考えられているが、農器具「草刈大鎌」「枝切大鎌」の長柄鉈から発展したという説も有力である。このため、鉈長刀、無爪鉈長刀とも呼称する。「鉈長刀」の呼び名は、『大友興廃記』でも度々登場し、大友氏ではこの武具が重用されていた。
大阪府羽曳野市の壷井八幡宮には神功皇后所持との伝承がある薙刀が収蔵されており、この形式である。
袋薙刀 安土桃山時代になり、筑紫薙刀と同じように刀身の峰側に櫃を持ち、この部分に柄を挿し込んで固定して使用する形式の長柄武器が出現した。これらは「袋薙刀」と呼ばれ、瀬戸内の水軍衆を中心に用いられている。
「袋槍」とは違って刀身の根元がソケット状の「袋穂」になっているわけではなく、筑紫薙刀とほぼ同じである。違いは、刀身の形状が薙刀とほぼ同じ冠落造りや菖蒲造りの刀身形状を持つものから鎬の無い平造りのもの、ほぼ半月形に近い形状のものまで多岐に渡っていることと、櫃が二つあるものが多く存在する。
鍵付薙刀 鍔の代わりに鍵(鉤)の付いた薙刀。薙刀本来の動作に加え、鍵で引っかけることが可能。戸田派武甲流薙刀術が使うことで知られている。
日本式眉尖刀 中国大陸より伝来した眉尖刀から発展したもの。中国式の眉尖刀とは違い日本刀や薙刀と同様の重ね構造で刃金が存在するとされるが、身幅が広いという特殊な形状である。現存する流派では元戸隠流(忍術)の武神館が使用。実際に昔から日本で使われていたかは不明。
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