「よい声になれるヴォイストレーニング~声の科学」 Vol.7
〇声を聞いたら、どんな姿勢かわかる
立った姿勢は自由すぎて、最初はうまく定められず、声が出にくい人もいます。そのときは、イスに腰かけてやるのもよいでしょう。このときも、背筋を伸ばし、肩の力をぬいて(あがらないように)腕に力を入れないようにすることです。背もたれに寄りかかったり、身体が前かがみになったりしないように注意します。
誰でも、疲れたとき、寝るときは、しぜんと寝ころびます。これが楽な姿勢だからです。
発声のフォームも、リラックスをした姿勢という点では共通しています。寝ころんで声を出して、呼吸と発声の感覚や結びつきをつかむことです。
腹式呼吸は、仰向けになって息を吐いてみるのが、一番わかりやすいでしょう。その姿勢で声を出し、身体に力が入ってしまうところがないかをチェックしてみてください。次に座った姿勢、その次に立った姿勢と、順にやります。
・寝た姿勢
<声がストレートでなく、腹式発声が行われていないことがわかる。>
・座った姿勢
<寝たときと立った時のちょうど中間の波形となる。>
・立ち姿勢
<腹式発声が行いやすい。同じエネルギーを使うなら、立って声を出すのが一番効率よく発声できるといえる。一般的にも、歌うときには立った方が声がよく出るといえる。>
〇気を入れると声も遠くまで飛ぶ
「人前で話すと、声が届かない」とか、「電話で何度も聞き返される」といった相談を受けることがあります。そういう人は、総じて声に覇気がありません。
健康状態は、すぐに声に出ます。身体が弱くなると、息がしっかり吐けなくなります。こういう声はよく思われません。
つまり声よりも、その人自身に、話すときに必要な「気」が満ちていないところが問題です。声もコントロールするものである以上、しっかりと伝えたければ、「気」の力や集中力は、人一倍必要です。
もちろん、呼吸機能、とくに吐く息が弱い人、腹筋が弱くて強い息の出せない人は、身体づくりから必要です。
次に、話し方の問題です。話そうとするのでなく、本気で伝えようとしてください。すると、その人なりの話し方が出てくるものです。それらを、よりよい方向ヘブラッシュアップしていくことです。
心を込めて伝えようとしたら、それなりに伝わるものです。伝える目的や強い意志のないところで、声だけ届かせようというのでは無理です。その上で、よりよく伝えられるためにトレーニングが必要なのです。
話すことはプロという意識でとりくむべきです。少なくとも、テンションは、外国人の平均レベルまでは、到達したいものです。
〇腹筋は、声を支える
発声のためには、腹筋運動が有効であると考えられてきました。腹筋は鍛えないよりは、鍛えた方がよいですが、腹式呼吸そのものに直接、効果的とはいえません。腹筋運動での筋肉の強化は、多くのスポーツの選手に必要ですが、声にとっては実際に腹式呼吸に使われる呼吸機能(内側の横隔膜に関わる筋肉や肋間筋など)を鍛えることです。
声は息によってコントロールされ、息は身体でコントロールします。それに関わる筋肉は、一連の呼吸運動(息を吐くこと)によってトレーニングすることです。
もちろん、適度にお腹の筋肉を鍛えておくことは大切なことです。他の人よりずいぶんと弱い人には、必修かもしれません。あなたがアスリートなら、多分、充分です。何事も「その人の現在もつ条件で違う」のです。腹直筋を、鍛えることで、お腹を固めてしまうなという人もいます。
〇声は共鳴しないとよくならない
声帯だけの声(喉頭原音)では、プープープーというブザーのような音にすぎません。
口の中には口腔、鼻の中には鼻腔と呼ばれる共鳴腔があります。口腔には舌、歯、唇があり、声帯でできた声は、ここで共鳴を起こします。そして、口の外に出るときに、調音されて言葉になって出るのです。
共鳴を増すためには、声を少し低めで大きく出して、喉がビリビリといわないように気をつけて、胸の中心に響きを感じてみましょう。決して押しつけたり、勢い(息や身体の力)で雑に荒っぽくやらないことです。もともと声が高めで、喉をしめないとうまくできない人は、頭部の響きから入ってもよいでしょう。
<胸の響き>言葉としては、「ハイ」、「ハオ」、「ガイ」、「ナイ」、「ライ」などから、もっともやりやすい言葉を選び、やってみましょう。頭や顔でなく、喉に響くようなら、もっと低くしましょう。
手を当ててみて、胸、肋骨、背骨、尾てい骨と、下のほうまで響いているかチェックしてみましょう。最初は少しも響かなくてもかまいません。あごを出さずに、首や肩、舌などの力は抜くことです。肩があがらないようにします。
<頭部の響き>次に高めの声で、「マア」「ナン」「ニャー」「ネエ」などて、顔面や鼻の響きを感じましょう。もっと高くすると、頭に響くように感じますか。このときも、胸部の響きを感じられたら、すごくよいです。
共鳴を頭部、胸部と分けるのでなく、そこに一本の線があって、喉に負担をかけずに自由にバランスを変化できるようにイメージしてみてください。ともに、喉の奥を広くあけるような感じです。
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