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「よい声になれるヴォイストレーニング~声の科学」 Vol.8

〇響かせるところを変えると声も変わる

 

声を出しているときに、口の中や唇のかたちが変わると、響きは変わってしまいます。アの母音で発声しながら口のかたちは変えずに、舌を前の方から後へひっこめたりしてみてください。これだけでも、ずいぶんと音色が変わるでしょう。「こういう体験をたくさんしていくと、いろんな発声、音色に親しむ」ことができます。

次に顔の角度が変わっていないかチェックしてみましょう。無意識のうちに頭がゆれていたり、顎が前に出ると、響き、音色も一定になりません。目線がキョロキョロして、視点が定まらないのも、よくない原因となります。顎はひきましょう。

苦手な母音は、どうしても響かない声になってしまうものです。こういう場合、弱点をなくすより、できているところをより厳しくチェックして繰り返し、より確実にして、完成させていく方がよいでしょう。他の条件が宿るまで放っておくのが、もっともよい習得方法です。

もっとも出やすい音(発音、音高)で、トレーニングしてみてください。ほとんどの場合は、根本的な問題として、身体からの深い息づくり、深い声づくりができていないのです。これには、ブレスのトレーニングから徹底してやりましょう。

 

〇日本語では、あまり息を吐かない

 

日本語というのは、肺からの空気圧をあまり必要としない言語です。英語の「have」は、日本人では「habu」になってしまいがちです。英語を発音するときには、まず息を強く吐くようにしなくてはならないのです。「f」は下唇を噛んで、しっかりと息を吐かないと、日本語の「フ」になります。このように強い空気圧を利用した発音が日本語にはないため、日本人は言葉を発するさい、腹式発声を必要とせず、喉のコントロールを中心に使うようになったのです。

アジアの言語は、日本語のようにあまり息を使わないで発することのできるものも多いのですが、中国語、韓国語などには強い息を使った発音がたくさんあります。

 

〇腹式呼吸と胸式呼吸の秘密

 

吸気のときに肩や胸が盛り上がると、胸式呼吸といわれます。そうならないためには、肩や胸が上がったり、力が入ったりしてはいけません。そうなる人は、心もち胸をあげて広げておきましょう。

息を吸うと、お腹のまわり全体が外側へふくらむのが感じられますか。簡単にいうと、これが腹式呼吸です。最初はわかりにくいので、上体を前方へ倒したり、座ったり、寝ころんだりして、息と身体(お腹)との関係をつかむとよいでしょう。

実際の呼吸は、腹式呼吸と胸式呼吸は不可分で、どちらかに切り替えはできません。しかし、呼吸としては、徐々に、お腹中心に支えるようにしていくのです。

腹式呼吸だけでは声は出ません。腹式呼吸は出ている声を扱うための必要条件にすぎません。しかも、誤解を避けずに言うと、腹式呼吸は、誰でもすでに身についているのです。

私たちはふだん、あるいは眠っているときに、無意識のうちに腹式呼吸を行っています。ですから、発声に伴って、腹式呼吸がいつでも無意識的にできるようになる必要があるということで、意識的にトレーニングするのです。

しっかりとした声が出るには、思い通りに息をコントロールできるようになる必要があります。そのためには、眠っているときの腹式呼吸とは、違う高度な扱いが必要なのです。これには時間をかけてコツコツとトレーニングを続けて身につけていくしかありません。

つまり、腹式呼吸は、使うことへ対応できる程度問題なのです。必要度はそれぞれに違うのです。ついでに、緊張してあがってしまうなどという問題も、この腹式呼吸でかなり改善されます。

 

ちなみに肺活量は、成人を過ぎると、少なくなってきます。しかし、大切なのは呼気(呼気量)をどれだけ効率よく声に変えられるかということです。息をいくら多く吸えても、声として活かせないのであれば、意味がありません。

 

〇ヴォイストレーニングとは何か

 

ヴォイストレーニングと聞くと、多くの人には、

・呼吸のトレーニング(腹式呼吸)

・アエイオウという母音での共鳴練習(レガートの発声練習、ヴォカリーズ)

・高低の音階練習(スケール練習、ドレミレドの発声練習)

といった従来の発声練習(声楽)のイメージが強いと思います。

しかし、声楽家でも、さまざまなトレーニング方法があります。まして、役者や声優、アナウンサー出身のトレーナーなら、かなり異なってきます。言語障害に対するりハビリとして、言語聴覚士のヴォイストレーニングもあります。

声といっても、発声、発音、声量、声域、マイクに入る声の効果まで、どこまで含めるかも決まっていません。

私は、ヴォイストレーニングを「いかにイメージに対して、繊細にていねいに声を扱うかを習得するためのすべて」と考えています。結果として、「声の自由度、柔軟性を得る」「声の表現への可能性を広げる」ためにするものと思っています。

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3-1.声の話」カテゴリの記事

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