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閑話休題 Vol.87「槍」(2)

〇使い方

 

槍のメリットは、間合いの広さです。離れた場所から刀剣や盾の相手へ攻撃したり、振り回せます。短くすれば近接戦闘にも対応できたと言います。

戦闘時に相手との距離がとれることによる恐怖感の少なさや振りまわすことによる打撃や刺突など基本操作や用途が簡便なため、練度の低い徴用兵を戦力化するにも適する。

剣よりも刃先に使用される石(黒曜石など)や金属(青銅、鉄など)が少なく済む。

 

欠点としては、大型ゆえ閉所での戦闘には向かないことや、長い柄が不利に転じ得る、携帯に不便などである。

 

担架やもっこの代用品として負傷者や荷物などを運ぶ道具。旗竿、軍旗や優勝旗などの旗竿はしばしば槍を模した穂先などの装飾。

複数の槍を使って壁を作る、物干し竿代わりにするなどにも使われました。

 

投擲用の槍は、独自の発展を遂げた。古代ローマのピルムは最も高度に発展したものの一つ。弓がなかったアフリカ、オーストラリア、ニュージーランド、ニューギニア島、ポリネシア・メラネシア・ミクロネシア太平洋諸島圏及びハワイ諸島、南米奥地などでは、近代まで狩猟具や武器として用いられてきた。

飛距離を増大させる槍投器が世界各地から発掘されている。

現在の陸上競技でも投げた槍の飛距離を争う、やり投があります。

 

〇種類

 

大身槍 穂が長い槍のこと。

柄の形状は、扱いやすいように穂よりも短く、太くなるのが特徴です。穂の長さが長大になればそれだけ重量が増し、扱いにくくなるため、大身槍を扱うことができたのは筋力と腕力が優れた使い手でした。

史上最も有名な3口の槍「天下三名槍」(てんがさんめいそう)が、大身槍です。

菊池槍 短刀に長い柄を付けた槍。

刀身に短刀を使用しているため、片刃となっている。1336年の「箱根・竹ノ下の戦い」「菊池武重」(きくちたけしげ)が竹の先に短刀を縛って武器としたことがはじまり。

刃長は6寸(約18cm)前後と1尺(約30cm)前後の2種類があり、後者は「数取り」(かずとり)、隊長が所持していました。長さが異なる菊池槍で、一目見て兵士の数が分かるようにしたのです。

 

鎌槍 穂の側面に「鎌」と呼ばれる枝刃が付いた槍のこと。相手の足を斬る目的で付けられたと言われる一方で、深く貫きすぎることを防ぐ役割ももっていました。

片方だけに鎌が付いた槍を「片鎌槍」(かたかまやり)、十字に鎌が付いた槍を「十文字槍」(じゅうもんじやり)、「両鎌槍」(りょうかまやり)、「十字槍」(じゅうじやり)と呼びます。

 

十文字槍には、左右の枝刃の長さが異なる「片鎌十文字槍」、鳥が飛び立つ様子に似た「千鳥十文字槍」、枝刃の取り外しが可能な「掛け外し十文字槍」。

左右の鎌が上下向きになっている「上下鎌十文字槍」(または「卍鎌槍」)など様々な種類がありますが、費用がかかるため、主に大将が使用していました。

戦国武将「真田幸村」(真田信繁)は、「大坂冬の陣・夏の陣」で朱色の十文字槍を持ち、騎乗で「徳川家康」のいる本陣へ突撃したという逸話。真田幸村は、この活躍から「日本一の兵」(ひのもといちのつわもの)と呼ばれるようになりました。

 

袋槍 穂の茎(なかご:刀身の中でも柄に収める部分)が筒状になった槍のこと。「かぶせ槍」とも呼ばれており、穂の着脱が容易なため、近くの竹などを切り出して先端に差し込めば急造の槍として使用できました。

明治時代まで全国展開した刀工一派「信国派」の中でも、筑前で活躍した信国派は槍の制作を得意としており、多くの袋槍を遺したことで知られています。

 

管槍(くだやり 穂に近い柄の上方に鉄製の管を嵌めた槍のこと。管を嵌めることで素早く刺突ができるようになるため、「早槍」とも呼ばれます。

江戸時代 近松門左衛門」は、浄瑠璃「堀川波鼓」(ほりかわなみのつづみ)で「きぬは紅梅、魚(うお)は鯛、云(い)ふも管槍、人は武士」(花であれば桜、魚であれば鯛、槍であれば管槍、人であれば武士が最も優れている)と記した。

管槍を考案したのは、槍術家の「伊東佐忠」(いとうすけただ)。伊東佐忠は、戦場で左手を負傷した際、槍に管を嵌めて扱いやすくした。特に尾張藩で発達。

 

 

蜻蛉切(とんぼぎり) 正式名称を「槍 銘 藤原正真作」(号 蜻蛉切)、徳川家康の重臣「本多忠勝」が愛用した笹穂型の大身槍。笹穂型とは、刀身が笹の葉に似ている。刃長は43.7cm、柄の長さは約6mあったが、晩年は約90cmに詰められました。名称の由来は、壁に立て掛けてあった槍の刃に触れた蜻蛉が真っ二つに切れたことから、天下三名槍の中で最も切れ味が優れていたことを示す。

 

日本号(にほんごう/ひのもとごう)は、正式名称を「槍 無銘(名物 日本号)」。「正親町天皇」から「足利義昭」「織田信長」「豊臣秀吉」「福島正則」に渡り、黒田家へ伝来した大身槍です。刃長79.2cm、茎長80.3cm、拵を含めた全長は321.5cm。正三位の位を賜ったという言い伝えから「槍に三位の位あり」と謳われた名槍で、「黒田長政」の家臣「母里友信」(もりとものぶ)が酒飲み対決で福島正則を圧倒した末に譲り受けた。この逸話から「呑み取りの槍」という別名が付けられ、民謡「黒田節」が生まれました。

 

御手杵(おてぎね)は、正式名称を「槍 銘 義助作」。鞘の形状が手杵(てぎね:餅つきに使う道具)に似ている。刃長4尺6寸(約139cm)、茎を含めると7尺1寸(約215cm)、鋒/切先(きっさき)から石突(いしづき:柄の先端)までの全長は11丈1尺(約333.3cm)、刃長は「天下三名槍」でも最大級。

下総国の大名「結城晴朝」(ゆうきはるとも)が、戦場での首級を槍に刺して帰城した際、ひとつの首が転がり落ち、手杵のように見えたため、手杵形の鞘を作りました。

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