「ヴォーカルトレーニングの全て」 Vol.14
〇ポピュラーの声の基準 強い声、ハスキーヴォイス
本当のヴォイストレーニングは、声としては完全に統一できるのに近いところまで試みます。ポピュラーのヴォーカリスト(特に、ジャズ、ブルース、ゴスペルなど)は、芯のある声で歌っていることものです。
高音や声量を獲得していくときに、いわゆる声楽的な美しい声をめざして高音域を獲得するために、響きをとるようなトレーニングをするより、音色でダイナミックに伝わる表現を優先するということです。(声楽は移調できないため、声域を必要とするという条件があります)
こう考えると、最初は芯のある声を一つの状態としてイメージしつつ、より高い完成に変じることをめざすことが、ポピュラーとしては理にかなっていることがわかるでしょう。
喉が弱い人ならば、なおさら、声の安定と安全のために、より高い完成度、つまり、無理なく疲れを残さない発声を、求めていけばよいのです。声を発声器官とともに人並みを超えたレベルまで鍛えていきます。
一方、強い声、大きな声の人は、用心してください。せっかくの声を効果的に使いたいなら、完全なコントロールのために基本的なトレーニングをすべきです。(日本では、それだけでステージのテンションがあがり、できているように思うからです。)生じ大きな声が出るだけに、音楽的な部分で学べず、まとめられない人が多いからです。うまく歌うには、統一された声と音楽的感覚が不可欠です。
ハードな声でステージをして、次の日に喉に影響の残らないヴォーカリストは、日本ではまれです。日頃からの基本づくりのトレーニングが大切なのです。
ステージ、歌というのは、ヴォーカリストの最終的なレベルの個別問題です。たとえば、「ブルース・スプリングスティーンの声の出し方は正しいのか」という質問は意味がないのです。彼は、音楽の活動ができているのです。音楽や歌は、声を聴かせるわけではないのです。彼はそれで、ステージをもたせられるのですから、彼にとっては、それが正解です。実績があって、ヴォーカリストとして一番大切な魅力があって、大勢の支持してくれる人間がついているからです。
「あなたが彼のような発声をしたとき喉がつぶれないか?」というのが問題であって、彼にとっての問題ではないということです。
歌という作品は総合芸術です。喉が強いからよいというものではありません。ひとつのかたちにまとめて、ステージができるのなら問題ないのです。
ハスキー・ヴォイスは喉声と混同されがちですが、一流のヴォーカリストなら、かなり身体を使う深い声のポジションをとった発声法をしています。かなり深いところで強く息(つまり身体)を使うと、あのような声になるのです。声帯が理想的に使われているかどうかは別にして、それなりの表現として動かしやすいのは、確かです。
日本人で、そういう声をまねて、わざと声を潰している人がいます。声帯を力で押しつけると、マイクにも声が入りにくくなり、音域も狭くなります。声帯は弱いので、使い方を間違えると、壊れます。本当のハスキーヴォイスは、理にかなった使い方をして決して喉声ではないのです。深く統一された声で、やわらかくもしっとりとも出せるのです。
[フレーズを統一するトレーニング]
1)「ラ」で(「ドシラソファ」で高いところから低いところ)
2)「ラ」で(「ドシシ♭ララ♭」で高いところから低いところ)
3)「ラ」で(「ミレドレミ」で高いところから低いところ)
4)「ラ」で(「ドソファミレド」で高いところから低いところ)
5)「ラ」で(「ソソソファミ」で高いところから低いところ)
[フレーズを動かすトレーニング]
1)あまいゆめを(「ドシラソファ」で高いところから低いところ)
2)あーいしていた(「ドシシ♭ララ♭」で高いところから低いところ)
3)きみーだけーに(「ミレドレミ」で高いところから低いところ)
4)もう二度とーは(「ドソファミレド」で高いところから低いところ)
5)ふたーりだけ(「ソソソファミ」で高いところから低いところ)
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