「よい声になれるヴォイストレーニング~声の科学」 Vol.15
〇はっきりした発音にする
人間の共鳴体は、咽頭という喉の部分、口の中の口腔、鼻腔です。簡単にいえば、喉、口、鼻が共鳴体となって、おのおのの部位で共鳴が起こり、特定の周波数成分(フォルマント)が発生します。
たとえば、「あ」という形に口を構え、声を出すと、ある周波数成分で共鳴が起こり、「あ」と聞こえます。ほかの「い」「う」「え」「お」という母音も、おのおのの異なる2つの周波数成分、ないしは3つの周波数成分で共鳴が起こります。その周波数成分の声が外に出て、聞き手は「あ」「い」とわかるのです。
それぞれの共鳴体からの周波数、つまり口腔からの周波数や鼻腔からの周波数などがうまく混ざり合ったところではじめて他の人が聞いている声になるといえます。
口から出ている音、鼻から出ている音を片方だけしか聞いていない状態では、完全な声にはなっていないということです。この2種類の音は、だいたい口から12センチくらいのところで合わさります。つまり、人の声は口から少し離れたところまで出て、音声になっているのです。
・口の開け方が大きい
おーい
放射状態がよくなるので、基本的に音のレベルがあがる。声のレベルが大きい。「オーイ」だけだったので、レベル差くらいしか違いがないかもしれないが、口を大きく開けた方が、「オ」と「イ」の落差がつきやすいということもいえる。
・口の開け方が小さい
おーい
声のレベルも小さい。
〇ことばをはっきりとさせる
役者、アナウンサーなど、ことばを使う仕事についている人は、ことばのトレーニングをしています。日本語の母音を、口先での明瞭さだけでなく、身体の奥深く、お腹から声を発するようにしていきましょう。
口をしっかりと動かすことです。しかし、ことばをはっきりと言おうとしてむやみやたらに口を大きく開けすぎていると、かえって平べったい口先の声になります。
個々の音(構音)の訓練よりも、体から一つのことばを一まとまりとして捉えて、言ってみることです。つまり、発声と結びつけてトレーニングすることです。体からことばを一つにして言い切れるというのが基本です。早口ことばのような練習も、それをふまえた上でなければ、効果はありません。言えても心に伝わらないからです。
・明瞭な発音
口を開けるところはあけ、閉じるところはとじており、あいていることがわかる。
・不明瞭な発音
レベル的にみても音が切れていないので、口をあまり開かずに「おはようございます」と言っていることがわかる。その場合、フォルマントがはっきり出ないので、音韻を認識しにくい。口の開け方が小さいとボツボツと聞こえてしまうのは、低い周波数成分しか出てこずに、何を言っているのかがわからないという状態である。
〇基本は母音のトレーニング
単音のうち、ア、イ、ウ、エ、オが、母音です。母音は、声帯からの声が共鳴器官を通って鼻や口から外へ出るまでに、どこにも閉鎖などの妨げを受けることなく発せられたものです。つまり、舌や唇などの調音の器官で加工されずに発せられる音です。
そのほかの単音を子音と呼びます。子音は、鼻や口から音が出るまで、歯や唇、口蓋などで妨げられることで発せられる音です。
〇母音の区別 アとエ、アとオ、イとエ
「ア」と「エ」の区別がはっきりしない場合は、「ア」の口の開きを大きくし、舌先を上げすぎないことです。「ア」と「オ」が区別しにくいときは、舌の奥を上げすぎないようにしましょう。
「イ」と「エ」の場合では、「エ」は「ア」と「イ」の中間音ですから、それがはっきり区別されていないのでしょう。「つらい」が「ツレエ」となるのは、「ア」が「エ」になっているからです。「イ」と「エ」は、なまりやすいので要注意です。
[母音の発声トレーニング]
ア アーいい天気だ
イ イーッだ イッヤッダッ
ウ ウーウーウーエ
エ エーそうだったんですか
オ オー ワンダフル
[母音の発音トレーニング]
ア 甘い朝の挨拶/明日になれば雨もあがる/
兄も姉も明るい/秋、愛は熱く燃える
イ 胃の痛い犬/イライラしている猪/
一途なる意志とイマジネーション
ウ 海辺でウエを売る/海鳴りを聞きながら腕枕でうたた寝/嬉しい噂は嘘だった
エ 絵描きの鉛筆百円/映画のあと、駅で笑顔で別れる/偉い絵師が選んだ絵
オ おもしろおかしく踊ろうよ/おいしいお菓子をお裾分け/お金を落として怒る男
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