「よい声になれるヴォイストレーニング~声の科学」 Vol.17
〇声と言葉の響きをよくする
ここでは、声の感じをよくするための準備となるトレーニングをします。
身体の筋肉が硬直していては、声はうまく響きません。顔も同じです。日頃から大きく表情筋を動かすトレーニングをしておきましょう。表情の豊かなことが、声の表現力を高めるのです。
次のトレーニングを組み合わせて、自分のメニュをつくってみましょう。
[頬のトレーニング]
1.両頬に呼気を送り、ふくらませ、その後、両頬を吸い込む
2.頬の左右、上歯茎の上方、下歯茎の下方と4方向を部分的にふくらませる
[眼のトレーニング]
1.力強く眼を・閉じ、開く
2.眼の玉を左右、上下、左回り、右回りと動かす
[眉毛のトレーニング]
1.思いっきり眉毛をつりあげる
2.しかめっつらをして、眉毛を下げる
[声に感じを出すトレーニング]
1.今後ともよろしくご指導ください。
2.誠に申し訳ございませんでした。
3.さようでございましたか。
4.いつもお世話になっております。
5.ご迷惑をおかけしております。
〇張りのある声で元気一杯に
いつもハキハキしていて、きれいに言葉を発せるように心がけると、いざ話すときにも苦労しないと思います。声に張りがなく言葉が不明瞭なのに、人前で話すときだけよくなるということはないでしょう。ふだんの生活から注意しましょう。「声に張り」を感じるのは、メリハリをしっかりつけてきちんと意味を伝えましょう。
言葉が明瞭に聞こえているか、しっかりとその言葉の意味が伝えられているかをチェックしてもらいましょう。
言葉のトレーニングはなるべく大きな声で行いましょう。毎日続けていれば必ず声もよくなってきます。
トレーニングをきっかけに声を意識して、その結果、普段の話し声もよくなるものです。言葉のトレーニング、とくにこのトレーニングで、はっきりした発声を身につけてください。
[張りのある声をつくるトレーニング]
1.いらっしゃいませ。
2.お見えになりますか。
[宴会の司会でのトレーニング]
「今日はカラオケ大会やビンゴ大会など、さまざまなお楽しみ企画が目白押しです。皆さん、大いに食べ、飲んで、どうぞリラックスしてお楽しみください。」
[言葉をていねいにしっかりと発するトレーニング]
次の言葉を力強く、はっきりと言ってみましょう。
1.このたびは、大変、お世話になりました。
2.ご迷惑をおかけして誠に申し訳ありません。
3.皆さんはこれからどうなさるのですか。
〇速いテンポで、滑舌よく話す
明瞭な発音のためには、唇、あご、舌、喉(声帯)などが、スムーズに連動していなければなりません。話すときに、いつでも、これらに注意していると、頭が痛くなってしまうでしょう。しかも、明瞭な発音をしようとするほど、不しぜんになってしまいがちです。
これは、身体の余分な部分に力が入ってしまい、うまく動かなくなるため、流れが止まったり、崩れてしまったりするのです。「発音より発声、発声より音の流れを優先する」ことです。その中で、ことばをのせていくか、ことばで言い切って、それを音の流れでつないでいくつもりで行いましょう。
口を開けすぎ、動かしすぎて、唇やあごの運動にエネルギーを多く使うと、ことばにするときに喉、舌の運動にエネルギーや気持ちがまわりません。
役者などのことばの基本トレーニングをしましょう。単に早口ことばのように速くしゃべるのではなく、お腹から声で、ことばにメリハリをつけましょう。
[ことばを発音するトレーニング]
・高低アクセントやイントネーションを無視して、すべて同じピッチ(音の高さ)、同じ音の長さで読みます。日本語のうまい外国人の日本語の話し方をイメージしてください。ラップ的にリズムをつけてもよいでしょう。
・そこで声の高さを高くしたり低くしたり、いくつかパターンを変えてやってみましよう。
〇日本語のアクセント
日本語の言葉をはっきりと伝えるためには、発音のほかにアクセントを正しくすることが重要です。日本語は第一 音がとても大切なので、どうしても高めに入ります。また日本語アクセントには、高低、低高低はあっても、低高、低低高はありません。つまり音が少しずつ下がってくるため、高めに入らないと低くこもってしまうのです。
[高低アクセントのトレーニング1]
「雨(アめ)・飴(あメ)」「去る(サる)」「きれいだ(キれいだ)」「寒い(さムい)」「赤い(あカイ)」「行く(いク)」「さて(サて)」「それでは(そレデハ)」
[高低アクセントのトレーニング2]
「足袋(タび)・旅(たビ)」
「二時(ニじ)・虹(にジ)」
「石(いシ)・医師、意志(イし)」
「都市(トし)・年(とシ)」
「咳(せキ)・席(セき)」
「電気(デンき)・伝記(でンキ)」
「神(カみ)・紙、髪(かミ)」
「朝(アさ)・麻(あサ)」
[高低アクセントのトレーニング3]
平板型(低高高/低くならない):「葉が(はガ)」「鼻が(はナガ)」「日が(ひガ)「桜が(さくらガ)」「鳥が(とりガ)」「水が(みずガ)」「私が(わたしガ)」「友達が(ともだちガ)」「赤ん坊が(あかんぼうガ)」「花王(かオウ)」「神田(かンダ)」「らくだ(らクダ)」
尾高型(低高高[低]/助詞が低くなる):「花が(はナガ)」「妹が(いモウトが)」「休みが(やスミが)」「男が(おトコが)」「山が(やマが)」「案内書が(あンナイショが)」
頭高型(高低低[低]/2拍目で低くなる):「木が(キが)」「火が(ヒが)」「姉さんが(ネえさんが)」「緑が(ミどりが)」「春が(ハるが)」
中高型(低高低[低]/途中で低くなる):「お菓子が(オカしが)」「湖が(ミズウみが)」「日本人が(ニホンジんが)」「土曜日が(ドヨウびが)」
[高低アクセントのトレーニング4]
頭高型と尾高型:「朝(アさ):麻(あサ)」「アナ(アな):穴(あナ)」「籍(セき):咳(せキ)」「足袋(タび):旅(たビ)」「tuna(ツな):綱(つナ)」「鶴(ツる):蔓(つル)」「都市(トシ):歳(とシ)」「訳(ヤく):約(やク)」
〇イントネーション
イントネーションは、告知、断定、問いかけ、念押しなどの表現となります。そのため言葉の意味するニュアンスを発見し、感じることが大切です。そうするうちに、言葉の一つひとつに情感が入るような表現ができるようになります。こうした音に、感覚として声を動かす快さをとらえていくことが、何よりも確実な上達への道となります。
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