「ヴォーカルトレーニングの全て」 Vol.19
〇ヴォーカリストになるために必要な科目
ヴォーカリストになるのには、よく聞き、感動し、それを自分で表現できる技術をもつことです。しかし、次のように考えると、体系づけて効率よく基本のトレーニングができるでしょう。
〇メインカリキュラム
チェック欄
1.言語 音声学、語学(聴音、発音)、朗読
2.音楽理論 和声、対位法、楽典
3.発声法 ヴォイストレーニング
4.音楽的基礎 ピッチ、視唱と聴音、リズム
5.鑑賞、レパートリー研究、ライブ研究
6.体力づくり 柔軟、体力、運動神経と反射神経、集中力
〇サブカリキュラム
1.楽器
2.演技、ステージマナー
3.ダンス、リトミック
4.音楽史
5.一般教養
6.作詞、作曲、アレンジ
チェック欄に自分が必要なものを選び、それを学ぶ方法手段と、習得する期間(予定)、費用などを具体的に記入しましょう。
〇音を即興で立体的に捉える
音楽を感じ、感じたものを表現するために心の準備をしましょう。次の順にやってみてください。できたら、100~400字くらいで感じたことを書きとめてみましょう。
1.心のトレーニング…ものごとを素直に受け入れる心が大切です。「音楽と心について」をテーマに、考えてみましょう。
2.聴感覚トレーニング…音に対し、何かを感じ、その音の動きを感じてみましょう。
3.即興で音をとる…ひとつのフレーズを聞いて感じたままにそのとおりのメロディでいろんなパターンを口ずさんでみてください。
4.コードをイメージ化する…ドミソシ、ドミソラ、ドミファラ、ドミファラのフラットなど、4つの音をゆっくりと弾き、その違いを感じてください。
5.音を定め、動かし構成する…先の4つの音を適当に繰り返して、自分の好きなように構成してみてください。本当に好きな感じがでるまで、つきつめていってください。音や数は変えても構いません。一番好きだった進行を書いてみましょう。
〇読譜力をチェックする
1.リズムを叩く
2.音階で読む(移動ド)
3.音階をとる
4.リズムと音階をとる
5.歌詞をつけて歌ってみる
〇聴感覚とイメージ能力を伸ばす
聞くことに集中してみましょう。暗闇で聞こえてくる音を頼りにいろんなイメージを思い浮かべてみます。ラジオでもCDでも、風の音でも構いません(400字でその音の風景[Sound scape]を書いてみましょう)。
〇声について知る
声について知りましょう。自分の声を知ることは、とても難しいのです。ですから、他の人の声をよく聞いてみましょう。自分がよい声だと思う人をあげてみましょう。その声がどうしてよいのか、どういう特色があるのかを考えてみましょう。ヴォーカリストのほかにも、俳優、声優、キャスター、アナウンサーなど、プロとして声を使っている人の声を聞き比べましょう。
〇感動した曲を聞き直す
今までに、自分の感動した曲と、その理由を書き出してみましょう。声の質、メロディ、歌詞、雰囲気など、何に心をとらわれましたか。また、その曲のどの部分に心が魅きつけられましたか。ヴォーカリスト以外でも構いません。曲でなく、舞台や映画、番組などもよいでしょう。できたら聞いた年代順に年表式に仕上げるとよいでしょう。
「自分の音楽史」をつくるのです。
1.年( 歳)
2.曲とアーティスト
3.感動した理由
〇発声法のイメージを歌からつかむ
最初はヴォイストレーニングをしながら、声を深めていきましょう。
共鳴(ひびき)は、音の高さ(ピッチ)、長さ、声量によって変わりますが、極力、音色は変わらないようにしましょう。音色の作成については、一流ヴォーカリストの歌を聞き、そのイメージを参考にします。一流のヴォーカリストの歌をBGMに合わせて歌ってみて、録音し、それを何度も聞いてどこが違うのかを書き並べてみましょう。ことば、発音、音程、リズムも大切ですが、特に声の質や太さ、統一性、切り方、伸ばし方、強弱、ひびかせ方などに注意してチェックしましょう。
自分の心が動いた一流の作品、歌から音楽ごと、そのヴォーカリストを全身を耳にしてイメージコピーします。(キィは下げても構いません。サビ、高音よりも、出だし、低音や中音域での緊張感とヴォリューム感の違いに注意して、比べてみましょう。
〇言語でのトレーニング
歌には、いろんなことばがついています。ことばを使ったトレーニングをしましょう。
たとえば、ある役割を自分の声で演じてみます。(テレビドラマなどの場面から、まねしてみましょう。できたら、歌のなかで、せりふでいわれているところなどをまねてみるとよいでしょう。)
1.おかみさん
2.子供
3.おじいさん
4.政治家などの職業(アナウンサー、タレント、社長、八百屋さん、学校の先生など)
他の人のもつ音色、音の強さ、アクセント、ひびき、抑揚、くせなどをよく観察してみましょう。うまくできたものから評価してみます。このとき、あまりに自分の性、年齢にあわない役割は喉に過度の疲労をもたらすので、気をつけましょう。仮に、その役割がやりたくとも、長くやるのは声のためには決して得ではありません。歌うときには、さらに、過大な負担がかかります。人まねで歌う必要はありませんが、ここでは、他の人の声をまねることで声についての理解を深め、声を柔軟に使えるようにすることがねらいです。
〇模倣から入る
顔つき、姿勢、口の開け方など、さまざまに工夫して、どこをどのようにすれば声が似るのか徹底的にチェックしましょう。イッセー尾形、清水ミチコ、タモリの腹芸などの研究もよいでしょう。
イメージをうまくとり入れる、つまりはなり切る能力は、演技の上でも基本です。そこに、自動的に声が伴う柔軟性が身についてきます。すると、イメージを思い浮かべるだけで、そのような声となります。最初は、動物のまねなども効果的です。
さらに、感情の描写をしてみましょう。
ことばは記号としてことばだけを伝えるものではありません。ことばを口に出すことで、そのことばにある風景やイメージがそこに現出してこなくてはならないのです。
〇ものまねから、オリジナルの表現へ
自分の好きな歌を聞いたままに、歌ってみてください。ただし、自分の自在に操れる声域、声量を越えて行なわないようにしてください。ことばがしっかりといえない音の高さのところでは、やらないことです。
何度もよく聞いて繰り返していくと、イメージが固まってきて、かなり似たように再現することができるようになってきます。これだけでは、ものまねですが、ここまでに学ぶべきことがたくさんあります。耳がよいことはヴォーカリストの基本的な条件です。瞬時にコピーできる器用さは、一つの武器になります。正しい発声にイメージで矯正していくことができるからです。耳をよくすることに充分に時間をさいていきたいものです。ものまねのレベルで、自分がどう表現したいかをつきつめていくのです。ものまねのなかで自分の表現したいものとどう違うかをつかんでいきます。ものまねで必ず働いてしまう不しぜんさをなくしていくと、本物のあなたの表現が出てきます。それに気づいていくことです。
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