〇楽しみながらトレーニングできること
トレーニングのなかで、どんどん音楽や声を感じ、それを通じて、人の心を捉えられるようにしていくことです。
個性的なヴォーカリストの身振りや歌い方のスタイルをまねても、それは、同じ服を着て同じようなヘアスタイルとメイクをしているから、似ているというだけのことです。
正確に音程、リズムをとり、そのあとに感情を入れて歌い込んでいくというのは、原則です。しかし、これは発声ができたら、歌えると思うことと同じく、本末転倒だと思います。先に表現すべきものがあるべきです。それがなければ、それを見つけることです。どんなものであれ、与えられたら、心で受けとめ、そこに感じるところを発見し、それを伝えるという、最も根本的なことにこそ、トレーニングの時間をさかなくてはならないはずです。
ですから、本当に身になるトレーニングとは、単に将来の夢のためだけでなく、それをやっているときにも、楽しく充実しているものであるはずです。そのくらい一所懸命でなくては身につきません。退屈なトレーニングは、退屈な歌をつくるだけでしょう。たとえ、誰一人、聞いていなくても、自分の声で何かが表現できるということは、同時に、いつも自分の心を奮い立たせてくれるものなのです。トレーニングがつらいだけの人は、歌とはおよそ、はずれた意味のないトレーニングを自分に強いているのではないかということを疑ってみる必要があるでしょう。トレーニングがつまらないとしたら、あなた自身がつまらなくしているのです。
〇感情表現の訓練
すぐれた歌の世界をつくることは、自分の内にすぐれた感動の世界をつくることでもあります。何に対しても、自分の内だけで、それだけの世界を創るのは、大変なことです。ですから、最初は、外から大きな刺激と支えを得るとよいでしょう。
そこで、歌を含めたいわゆる芸術や文化、歴史を学ぶ必要も生じてくるのです。何も、毎日、コンサート、ライブ、映画館や美術館に行きなさいというのではありません。しかし、表現たるものを知るには、最初はそうするのがよいのは確かです。さらに自分で詩を書いたり、曲を弾いたり、また、本を読んだり、自然や他の人と触れあうことからも、いろんなものが感じられるはずです。特に人間から感じてください。有限である人間の無限の魂が、歌なのです。その感じる世界を大切にし、そこに接する時間を愛しんでください。
ヴォーカリストとは、歌で人を魅了する人です。そのためには、単に歌がうまく歌えるだけではないでしょう。その人に多くのバックグラウンドがあって、その歌の説得力を支えているのです。
人様の時間をいただき、そこで何かをやらしてもらう、そのことに対してどれだけの責任感をもって人の前に立てるかということです。そこに人に対する愛、尊厳があります。それがない人は、人前に立つ資格はありません。
そこ(ヴォーカリストの場合は、ステージ)で、人様、人の心を大切にし、自分でできる最大限のサービスをすることです。そのためには日夜、努力しなくては、できるはずがありません。それを忘れてしまったら、あるいは、そこに思い至らないなら、あなたは、カラオケボックスで皆の前で歌って自己陶酔している人と変わらないのです。
〇ヴォーカリストとして生きる
現在の日本のプロとよばれているヴォーカリストの地位は残念ながら低く、レベルも高くありません。しかし、タレントなどのように、なまじ、みかけだけの社会的地位が高くなるよりも、ヴォーカリストは、ハングリーかつ明日を夢見るものであってよいのではないでしょうか。役者が河原乞食といわれていたのと同じく、歌い手ももとより社会的に低い階級のものだったのです(人様を楽しませ、元気にする、そこに喜びを感じる天職の一つです)。そういう面では、今も昔も変わらず、です。ただ昔より自由に音楽ができるようになったのはありがたいことでしょう。
最も大切なのは、冒険を好み、新しいものを創りあげようとするアマチュアたるエネルギーでしょう。ヴォーカリストには資格はいりません。社会人であろうと、学生であろうと、何歳であろうと、その精神を歌で表現できる者はヴォーカリストたりうるのです。
長く多くの人に、プロとしてのサービスをしようという良心と、歌や人を愛し、尊敬し、いつくしむ心があれば、この道を選び、声、そして歌に対する謙虚な姿勢と研鑽の日々を楽しむ人生が送れましょう。それが、ヴォーカリストになる、いや、ヴォーカリストである最短にして唯一の道なのです。アマチュアの精神にプロの技術、それを忘れないでください。
毎日のトレーニング(I)
ヴォーカリーズ(母音発声)のトレーニング
声を出すトレーニングは、30分くらいで5~6分の小休止を含めて、正味、20分で充分です。毎日、休まないで続けることが大切です。
EX 1)ドレミレドをA、E、I、O、U
それぞれで、1オクターブを半音ずつ移行させましょう。
EX 2)ドレドレドレドでやってみます。(EX1と同じ)
このとき、上あごを高く保つことです。日本人のあくびは、口の中の奥だけで、上あごがあがらないため、暗くこもりがちです。頬に筋肉をひきあげるつもりでやりましょう。
以下、好きな母音の組み合わせでやってみましょう。喉を狭めないようにしてください。声の出るポジションは、できるだけ低く保つようにします。
EX 3)
ドレミファソミド
ミレドソミド
EX 4)
ミレド ファミレ ソファミ ミレド ファミレ ソファミ
ソファミ ファミレ ミレド ソファミ ファミレ ミレド
EX 5)
ドソファミレド ドソファミレド
ドミレド ドミレド
高音域のトレーニング(上のドから出します)
EX 6)
ドシラソ シラソファ ドシラソ シラソファ
ドラシソ シソラファ ドラシソ シソラファ
中音域のトレーニング
EX 7)
ミレドレミファソード ミレドレミファソード
ミレファファ レドミミ ミレファファ レドミミ
応用トレーニング
EX 8)
ドミソラシド
ドミソドソミド
フレージングのトレーニング
EX 9)
ドレドレミファミファソー ドレドレミファミファソー
ミレドレミレミレドー ミレドレミレミレドー
ソーミレドレミーソー ソーミレドレミーソー
EX 10)発音のチェック
舌が下の歯の根のところに軽くふれます。笑顔でやりましょう。
口の中の形をかえないことが大切です。
AEIOU
(注意)U:ウがy(イユー)となりちです。下あごの力を抜き、Oの口形でウというとよいでしょう。
EX 11)
IO IO IO
OU OU OU
AIO NIO MIO RIO
AOU NOU MOU ROU
EI HEI REI AEI NEI MEI REI
UA HUA AUA NUA MUA RUA
MAMMA PAPA BABA BOBO
Maria
Rum Ram Rom Rem
EX 12)スタッカートのトレーニング(ドレミレドで)
Zu(ズ) Zu Zu Zu Zu
Ho(ホ) Ho Ho Ho Ho
Ma Mi Mu Me Mo
EX 13)
VA VE VU
LA LE LU
FA FE FUなどでやります。
ドミド ドソド
ドレド ドファド ドラド
ドレド レミレ ミファミ
レドレ ミレミ ファミファ
EX 14)
ドドド(1オクターブの上下降)
ドミソドド(1オクターブの上下降)
ドミソファミレド
EX 15)pp(ピアニッシモ)でのトレーニング
ドミソドーシラソ
ドソドーラファレ
ドシドシドシドシラー
EX 16)声をころがすトレーニング
ドレミファミレドレミファミレドレミファミレド
ドレドレドレミレミファミファソ
ドードドレーレレミーミミ…
ドーレドーミレーファミーソファ…
ドーレドーミレーファミーソファ…
ドレミーレミファーミファソーファソラ…