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2025年10月

閑話休題 Vol.103「書道」(2)

〇日本の文字と日本語 

 

日本人は、会話のなかで「それはどう書くのか」と聞くことは珍しくありません。首長(くびちょう)、監事(さらか んじ)、幹事(みきかんじ)などと読むときに説明を入れた りします。 

こういうことは、アルファベットではありえません。欧米 語なら、意味は、発音されたところで、ほぼわかるからです。どう綴るのかわからないのは、文字としての表記であって、どの意味かわからないのではありません。 

つまり、日本語には、正書法(orthography)がないのです。 欧米語では、これは正しいスペリングとなりますから、ス ペルチェッカーで修正は簡単です。 

日本人は、ことばを聞きつつ文字で確認するといえます。 しかし、いちいち文字にして聞いているわけではないので、 けっこうあいまいなわけです。真剣に聞くとなると、先の ように、どう書くかでチェックすることが必要になること もあるのです。 

欧米語は、話をリライトしたら論文のようになりますが、 日本語では、かなりの修正、構成が必要になるのも、そういうことです。日本語では、未だに言文は一致しないので す。 

文を読んでも読み方が適当で、あいまいです。地名や名字 でさえ、けっこう適当に読んでいます。 

絵でさえ、富士山に「不二、不死」を重ねています。どのように描いたのかが問われます。 

 

〇日本語は音数が少ない 

 

日本語の特徴は、漢字仮名交じり文で、漢字と女手(平仮名) とカタカナの 3 つが一字体としてあることです。さらに、 日本語は、多音節で表音文字としても用いられ、音読み、 訓読みでいくつもの読みが出たのです。当用漢字「送り仮 名のつけ方」「現代かなづかい」での混乱は、収まりそうにはありません。そして、擬音語、擬態語が多いことです。同音異義語が多くなるのは、日本語が音数が少なく、単純なためです。 

日本人は、かつては中国の漢字を入れ、近代には欧米から の新しいことばには、(漢字の)翻訳語をつくって対応していったのです。 

語彙が枝分かれして増えていかなかったのは、漢字で区別 できるからです。川を「サンボンガワのカワ」のように文字を説明することも多いです。 

他の言語のように、音で区分けして細分化されなかったの です。母音の前後に多くの子音がついて増えることがなか ったのです。その結果、読み方は、書き方に比べて日本人には重要なことではなくなってしまうのです。 

 

〇文字の種類 

 

表意文字[→表語文字(漢字)] 

表音文字―音節文字(子音+母音)ひらがな、カタカナ、音素文字 アルファベット(単音、子音、母音) 話(言)はなす―声を放す。書(文)かく―欠く、掻く、 画く 

空海の「風信帖」は、漢文です。カタカナの書としては、「方 丈記」と「雨ニモ負ケズ」があり、ともに宗教的なものです。 

 

〇音と字 

 

ことばは、音韻律と字韻律のどちらかで分けられます。西 洋の音楽と東アジアの書の難しさに対し、西洋のカリグラ フィと日本の音楽となりましょう。日本では、音楽も歌も 歌詞、ことば重視です。 

履歴書は、かつては毛筆で書いていました。それが、筆ペン、万年筆、ペンと変わっていきました。板書で黒板とチョークからホワイトボードとマジック、そしてパワーポイ ントとタイピングで、失われていくものは何なのでしょう か。 

日本語は、俳句、短歌、連歌、そして掛詞や縁語など、少ないことば、音数で、深く察してくみとるハイコンテキス ト文化なのです。 

そのため、音読みの漢字を組み合わせた「字音語」の氾濫で、同音異義のことばが多数できて、耳で聞いただけでは 意味のわからない語彙が多数あるのです。 

「すべての言葉が沈黙や吃音、諧調や逆説を孕んでいる」 と、書家の石川力楊は言いました。 

文字の「肉筆」と「活字」は、音声でいうと「肉声」と「合 成音」にあたります。 

漢字は、映像、視界的に、文字が事物化します。ことば一つで宇宙となります。 

筆触、筆記具の先端の圧力に思考が文字に出ます。日本語 は、縦書きなので、ペンの持ち方も、それに合わせていました。ひらがなは、2 つ以上で一語つながります。末尾が右回転で「の」のようになるから、縦につながります。カタカナは、漢字に挟み込む「ノ」で、返り点に使いやすく、 縦にはつながりません。それに対し、中国語は、縦から横へ 1 字ずつ独立しています。中国語は、字音節に漢字一字 が対応しています。 

日本語人名での仮名(けみょう)は「字」あざな。偉くなると、音読みになることが多いようです。文字は言霊をとど めるためにありましたから、実名は、読まれない名前となり、書くときだけに使われたのです。 

「本や文字を書いた紙をまたいではいけない」という信心 がありました。 

「日本人は身近に豊かな自然があって、四季の移り変わり がありますから、いろんな形で調和を取ってる世界見てま すから、かなを散らすときもそういう感覚が働いて、何も ない平面を、庭を造るように作ったんじゃないかとそうい う感じがするんですよね。やっぱりね、日本人オリジナル の生活、習慣、風土、いろんなものがかな文字に反映していると思うんですね。日本人らしさというのが、かな文字 というのを通して一番表わされているんじゃないかな」(名 児耶明) 

「ヴォーカルトレーニングの全て」 Vol.28

〇姿勢とフォーム 

 

  • 「ハイ」

息と呼吸を中心に基本トレーニングをやりましょう。まず「ハイ」と大きな声で言ってみましょう。身体全体がひびくようにします。腰を中心に、身体をまっすぐ伸ばしたときに身体の線がでてきます。それに添っていくようにします。 

日本は姿勢が悪いです。あごが出ていて、猫背になります。まず、胸の位置をあげてみましょう。お腹がでるのではなく、骨盤から下が前に入ります。声を出すときに息の抵抗を感じたまま、腰を中心に意識してみることです。 

「ハイ」と言ったときに、肩が動いたり、首に力が入らないようにします。常に姿勢を正すことを忘れないでください。声を息とともに身体に馴染ませてください。歌のときはいろんな形があってもよいのですが、声を覚えるときは声を出すのにベストの形にすることです。 

立った方がいろいろと自由にできます。大きなことも、ひびかせることもできる代わりに、あるレベルまでいかないうちは、うまく使えない人が多いのです。どこかを固定して、声を正しく出す感覚をつかんでいくことです。そこでレッスンでは、最初は身体を曲げさせています。曲げたときの方が感覚がつかみやすいからです。立っている姿勢というのは難しいものです。後はそれぞれにまかせています。一番、声が出るという方向に身体をあわせていくのです。 

 

〇声を身体で捉え、息を吐く 

 

  • 息で〔ハイ〕と言って、声で「ハイ」と言う。最初に矯正する部分は、身体の中心で声を出すということです。身体全体(胸中心に)をひびかせて、その上に声をのせるようにしていきます。そんなに高くない声、大きくない声に関しては、身体で捉えるのが基本です。日本人の場合、ひびきを意識すると喉にきます。上にひびかせようとして、口蓋にぶつけて同時に喉をしめてしまうのです。それで悪いくせがついていきます。最初の1年間は、息が充分に吐けるようにすることです。喉を開いて声を出すことを覚えることです。歌に結びつかなくても、そこの部分を覚え、鍛えましょう。身体というのは、最初に鍛えておかないと、歌をまとめてから(フォームができたときに)身体をつけようとしても無理です。順番としてそのときにしかできないことを、優先してやっていくことです。声の技術的なことに関しては、年数がたってからもできます。むしろ、あとの方がよいわけです。

身体を使えているか、使えていないかをチェックしてください。それには、息や身体が変わってきているかどうかを目安にしてください。 

意識して欲しいことは、高い音のところと息とを結びつけていくことです。日本人の発声の間違いというのは、上の音になってくると、どんどん息が使えなくなってくることです。そして身体も使わなくなってきます。高い音とかより低い音というのは、普通のことと違うことをやるわけですから、当然、より身体で支えなければできないはずでしょう。 

高くなると息はきつくなるかも知れませんが、息を吐いていくことです。その息を使って声を出していくというのが原則です。高くなればなるほど、息を吐いていくことです。息と声の差をなるだけなくしていくことです。身体と息を結びつける。息を声を結びつける。最終的に身体と声が結びつけるようにしていきます。 

(この上限は、話す声の 1 オクターブ上くらい、喉をしめなくてはいけなくなったら、それ以上、高い音はやめましょう。) 

 

〇息読み 

 

息を吐いてから「ハイ」と言葉にする息読みも、深い息で声にしたときにも変わらないでいえるためのトレーニン グです。自分で息を吐くのと声を出すのと同じ感覚になる わけです。できるだけ息を深く吐けるようにして、それか ら長く伸ばしていきます。こうすると息が身体に結びつい ていくわけです。それを背中で感じていくようにしてくだ さい。 

 

〇胸の中心にひびく 

 

  • 胸に響くように意識して、「ハイ」「ラオ」と言う 声が出にくいときは深呼吸から始めましょう。深呼吸を しながら身体を少しずつ動かしていきます。なるだけ 1 日の時間をヴォーカリストの呼吸で過ごすことです。夜だけ練習する人も多いのですが、朝起きたらヴォーカリストの状態にしておいて日常の会話でも、喉のロスをさせないことです。毎日のトレーニングによって、最初は声が胸に、やがて身体全体に共鳴してきます。胸の中心に声が宿ってくる感覚になります。それを私は声のポジションといっています。

声のポジションをとるには、上から下におしつけてはよくありません。背中の方から胸の前に声が出てくるという感覚です。胸にポジションがあるというのは、便宜的に考えるのです。なるだけ深い声をイメージしてやってみましょう。なるだけシンプルにまとめていくことです。どこまで凝縮し、どこで解放できるかということです。中途半端にしていると、表現力を伴う芸事にはなりません。 

口に関しては、あまり動かさないことでしょう。口を大きくしてやろうとすると、声自体を失う場合が多いです。発声して声ができてきたら、そこで調音し発音するのです。 言葉の発音トレーニングは、発声よりも調整と考えてくだ さい。 

 

  • 「ア・エ・イ・オ・ウ」(スタッカート)のトレーニング。 「ハイ」「ア」「エ」「イ」「オ」「ウ」

スタッカートは、基本的にポジショニングの確認の練習と思ってください。「アエイオウ」であれば5 回息を吐くと考えてください。息で「アエイオウ」としたときと同じ感覚で声も出ていないといけません。「ハイ」と言ってから「ア エイオウ」と言ってみるとよいでしょう。身体で「アエイオウ」と出し、口先で出さないことです。身体はさぼってはいけません。喉で邪魔をしてはいけません。息を吐いて 身体が使われている感覚を「アエイオウ」といったときに くずさないことです。 

「ハイ」といったときに、腰や胸の位置を動かさないことです。首も同じです。あごは前に出ないようにしてください。完全に息を声にします。 

難しいのは、「ハイ」とにぎったまま、押しつけないことです。深いところの声の芯だけを残して、あとは邪魔させないで、ひびかせるというより声の線を出していきます。身体の内側に全部引いておいてから、解放させます。ポジションの問題は息の深さの問題です。より深くとったほうが有利です。 

このときに大切なのは、上にいけばいくほど息で支えることです。 

高くなったときに、より深いところで息を吐いておいて 「ハイ」というと、シャウトや息をおさえた声になります。 トレーニングでやっていることをそのまま、歌の中に持ちこむのはきついことです。それに耐えられる身体になっていないからです。ですから、そういう身体を作っていくトレーニングになるわけです。そこでやるから効果的なのです。 

息を深く吐くということと、その深い息で声を出すことがポイントです。息は深くできても、声は浅くなってしまうのです。日本人の場合は、喉を使いしめてしまうからできなくなっていきます。喉が疲れるからです。身体のところでのポジションと声の感覚をつかむことが必要になって きます。一時、高いということは、強いところと意識してください。より高いハイトーンについて、いっているので はありません。 

 

  • 「ラァ」

「ラァ」は、歌うよりも「ラーァ」と息を吐くという感じです。その線を太くしていくことです。人によって出やすい言葉は違います。「ナァ」「ヤァ」「マァ」「ネェ」などでやってみましょう。ぶつけるのではなく、声に息を送るつもりでやります。 

歌のスタイルにはいろいろとありますが、声の線をとるときに息の線をきちんとつくっておくことです。その上に声をのせるという感じです。息の線の上に声の線を持っておかないと、身体から離れていってしまうのです。繊細なコントロールができません。 

きれいな声で音を並べていくのではなく、声を統一してそこにヴォリューム感が出なければいけません。ここでの目的は、声を使って、息を使って、いかに身体を強くするかということだと思ってください。歌は同じ表現であれば、 いかに力を抜いて楽に歌うかという方向ですから、逆です。 ここでは身体に声を身につけるための強化トレーニングを することです。 

 

  • 「ハイ、ハイ、ハイ、ハイ、ハイ」(ドレミレド)

低いところの意識は胸のところでもよいのですが、もう少し高いところでやろうとしたら、頭部(眉間や鼻の上、 

頬骨など)の意識をもつことです。上の音にいくほど、深く息を入れていくような感覚が大切です。あくまでもかた い胸の板に対して、それを掘っていくつもりでやってくだ さい。ひびきのイメージは浅く横に広がるのではなく、深 く上下に縦にまとめることです。縦の線をイメージで思い 描いてください。 

 

  • 「アデッソシ アデッソケ」(イタリア語) (ドドレミ ミレミファ)

単純に言葉を投げかけているように歌うことです。ひびきだけで歌ってしまわないように気をつけましょう。「ララ ララ ララララ」でなく、「ラァーララ ラァーララ」と 1 つで捉えていくとよいでしょう。歌うように歌うのは誰でもできます。要は息を発したらそれが歌になっているところまでもっていくことです。上にいけばいくほど、身体が 入っていくように、身体を完全につけてもっていきます。 

どこかの音までは身体がどんどん入ってポジションも深 くなり、より大きな声になってきます。ところがある音か ら、完全に逆のことがおきます。声が自然と上に抜け、ひびきもあがってきます。そこからはバランスが大切です。 

練習しなければいけないのは、ヴォリュームとフレーズ、 ひびきのポジションを調整していくことです。 低いところでやったことを、高くなったときにも守りましょう。口先で歌わないところで声をキープできれば、それがトレーニングとしての身体づくりに最適です。耳と身 体という原点から、声を捉えてみてください。 

 

  • 「アデッソシ アデソッケ トゥバイロンターノ」(ドドレミ ミレミファ ファドレミレミ)(カンツォーネ「去りゆく今」より)

日本人の英語がカタカナ英語になってしまうのは、1 つず つ音をわけてしまうからです。日本語というのは、昔から1 つの音に 1 つの言葉をのせて歌にしてきました。そうする と動きが出てこないし、身体も使いにくくうまく歌えない のです。 

なるだけ 1 つのフレーズとして捉えていってください。 「シ」と「ケ」を身体で離さずにおさえておくことです。 日本語の場合は、「さりゆくー いまこそー しってほしいー」と歌詞がついて、伸びてしまいがちです。下のフレーズは息を流すフレーズとして保った上で言葉をおくことです。最終的に日本語らしく歌うのか、フレーズとしてメロディ処理をするのかを、日本語の場合はせまられてしまうこともあります。両方が活かせるぎりぎりのところで、とっていくことが必要になってきます。 

「さりゆく」といってから、フレーズをつけてみます。「さ り」「ゆ」「く」が別れてしまうとダメです。日本語は言葉の頭で高アクセントをつけますから、大きなフレーズを作 らないといけません。そこでいれておかないと、後ろにひ っぱられてしまいます。助詞がついているところでは、強 調できないからです。伝えたいのは「さり」と「いま」になるので、フレーズを大きく動かさないと、伝わらないの です。それと逆に、「ゆく」「こそ」と音声イメージで、形づけていきます。

  • 「アデッソシ アデソッケ」「さりゆく いまこそ」(ドドレミ ミレミファ)

メロディをつけてみます。「シィ」「ケ」のポジションを狂わせないことです。きちんと同じポジションがとれているかどうかをチェックします。とれていないとしたら、どこまでできているのかをチェックします。 

トレーニングすべきことは、体力づくり、息を吐くこと、それから音声イメージをもつことです。この 3 つをきちん と身につけていきましょう。 

「最強トレーニング」 Vol.8

〇声のうまく使えないことのデメリットを知る

私の友人で、とてもおもしろい情報をたくさんもっている人がいます。ところが彼が話すと、そのよさがまったく伝わらないのです。充分に情報や話すべき内容をもっているのですから、これは、話し方、伝え方が問題ということになります。 

話し方は、音声によって伝達する技術です。たとえ、どんなによいことをいっていても、声が小さすぎては伝わりません。発音が聞き取れなくても伝わりません。 

しっかりと話を伝えるなら、最小限の声量と相手が聞きやすい声の使い方が必要なのです。 

とはいえ、話し方においては、どこまでが技術なのかがわかりにくいものです。 

そのため話し方や声の使い方をしっかりと学ぶには、かなり高い意識をもたなくては、いうに易く、行なうは難しです。 

つまり、人前でよほど苦い思いでもしない限り、トレーニングの必要性にめざめないでしょう。そのときどきを適当にしのいでいるうちに慣れてしまうからです。そのため、 いつまでたっても、あまり上達しない人が多いのです。 

たとえば、表情はポーカーフェースのまま、どんなこともボソボソ早口でしゃべる人がいます。とてもわかりにくいのですが、日本人社会のなかでは、こういうことを指摘する人は、あまりいないのです。 

そのため、本人は気づかず、いつまでも変わりません。まるで外国人と話すように、話す内容の実質半分くらいしか伝わっていないのに。 

としたら、これによって、その人はどのくらい損をしているかは、はかりしれません。こういうことは程度の差こそあれ、誰にでもあてはまることなのです。 

1.声が伝わりにくいこと、それによって多少ともデメリッ トを被っていることに気づくこと 

2.話し方、声の伝え方をよりよく直すこと 

そのためには、話を声から見直し、声をトレーニングすればよいのです。 

 

〇いい換える力をつける 

 

声やことばを豊かにすると、伝わることも豊かになります。単一な声でのいい方では、聞く人は飽きてきます。よくひきあいに出される例ですが、TV の料理番組でのタレントの「おいしいですね」の繰り返し、「アンタの仕事は味わうのでなく、その味を適確に伝えることだろう」といいたくなりますね。話としては、貧困なボキャブラリーで 通用しません。 

しかし、これも声の出し方を変えることでかなりカバーできます。タレントは、まさに内容のない話でも、相手との間をもたせるプロです。声の表情や身体の使い方に思わ ず感心してしまいます。 

ビジュアルに頼れないラジオでは、声がもっとも有効に生かされています。 

テレビのアナウンサーとラジオのパーソナリティの話し 方を比べてみるとよいでしょう。 

考えてみれば、話というのは同じことを伝えるのに、何度もいいかえて、理解できるまでわかりやすく説明するのに大半の時間をかけているものです。それとともに、大体、世の中、多くの人は、同じことを違うことばでいっている だけだということもわかるでしょう。 

つまり、話の伝達の本質は、いい換えです。それは、ことば自体が伝えたいことをキーワードとして取り出し、表象、シンボル化して伝えているものであるからにほかなりません。 

ですから、その一つひとつのことばに具体的な事象や感覚を導き出すイメージが伴ってはじめて、実感がつかめます。そのために、ことばを重ねていったり、そのことばにトーンやニュアンスの変化をつけたりするのです。古館伊知郎さんのかつてのプロレス中継は、まさにその 例でした。多様なボキャブラリーに加えて、あの語り口、声の力が彼をトップキャスターに押し上げたのです。 

 

〇相手にイメージをつくらせる 

 

いくつかのことばを繰り返しているうちに、聞く人のなかには、ある具体的なイメージが生まれてきます。声をうまく使うと、さらにそれが、つかみやすくなります。声に力があれば、一言でそのイメージを伝えられるのです。 

ビジュアル化とは、それを一目でわかるようにしたものです。テレビでは、目で見てわからないところだけ、ことばやテロップで補えばよいでしょう。誰でも見てわかることは最小限の、ことばで止めておかなければくどくなりま す。 

 

〇語りかけ調がベース 

 

声も、所信表明のようになっては、共感を得られません。 語りかけ調にすると、伝わりやすくなります。相手とのコミュニケーションをとりやすくすると、あなたも話すのが楽になります。そういう話し方にもっていくには、いくつかのスキルがあります。 

「こういうことを聞いたことがありますか」 

「3 つ、ポイントがあります」 

「皆さんはどうでしょうか」 

このように、単発に発しても消えていくことばを、先に案内したり、あとにひいたりと、前後にからめていくことによって、話の内容を立体的にわかりやすくしていくのです。こういうときの声は、ゆっくりめに使いましょう。 

 

〇問答調にする

落語のように脚本型、卜書きと登場人物のせりふ、プラス効果音や小道具(扇など)で伝える方法もあります。声は、二人で問答しているような間をとって使います。 

(例) 「……」と、そのおじさんがいったわけです。

「……」と私は答えました。 

「……」とくる。 

「……」てなもんで… (この間、机の上を一つ叩く)

声を転がすように、リズミカルにすると心地よいものです。これも、話を聞きやすくするテクニックの一つです。 

 

〇指示語でまとめる 

 

指示語はあまり使わず、具体的にしたほうがよいといわれます。しかし、指示語のなかには、前後にいうことを示すという働きがあります。これはとても便利です。いったことをまとめたり、次にいうことに興味をひかせることができるからです。このときの声は、やや鋭くつっこみましょう。 

「こんなことがいわれています」 

「こうしたらどうでしょうか」 

「こう私は考えます」 

「こうではなかったでしょうか」 

引用する例を予め指し示したり、後において、まとめることができます。 

 

〇三つという型に入れる 

 

「三つ、ポイントがあります。一つは…、二つ目は…、三つ目は…、以上、この三つのポイントです」

こういう型にはめこんでいくのも、わかりやすくするコツです。 

さらに「次の七つです」のように示し、さらに「サシスセソ…」とか「オアシス」のように、頭の音と絡めたり、よく使うことばでまとめて覚えやすくすると、その部分の話がまとまって、はっきりとします。 

提示においては、声はカチッとはめたように、同じテンポ、同じ声質、同じ声量で使うのがコツです。 

 

〇声で相手に投げかけてみる 

 

「皆さんはどうでしょうか」 

「あなたもそう思いますか」 

慣れないうちは、なかなかこういった一言が切り出せぬものです。しかし、使うと強くひきつけることができます。 声でリーダーシップを発揮するには声の勢い、覇気が欠かせません。思い切ってやってみましょう。 

 

〇難しい表現は、やわらかい声で親しみやすくする 

 

誰の話にも、それぞれ、話のくせがあります。話し方や話のスタンスのとり方も、それなりにその人らしくあるものです。 

身近な人の話し方やその声を思い浮かべてみるだけでも、 いろいろと特色やパターンがあるでしょう。 

そこから自分のクセに気づくことは、話し方や声を学ぶために、とても有効です。決してアナウンサーのようになろうとしなくてもよいのです。むしろ、一般的には、親しみ感のある方がずっと大切でしょう。 

普段はそういうことができていても、難しいことばや説明になると、硬い声でガチガチに固めて、棒読みしていま す。その結果、よけいに難しそうに聞こえます。こういうときこそ、あえて明るく柔らかい声を使うことです。 

 

〇くせになっているいい回し(口ぐせ)をとる 

 

あなたにとっても、使いやすいことばとそうでないことばがあります。もちろん、聞く人によって使い分けも必要です。しかし、思わず多用して害となっていることばもあるかもしれません。 

あなたが話すときに、何度も使っていることばはないでしょうか。 

「非常に」「とっても」「いろいろ」「あのう」など、くせとなっていることばを、チェックしてみましょう。案外と気づかないまま、何回も出てくることばがあるはずです。 

ここでは、多用しないほうがよいことばをチェックしましょう。どうしても、いい換えられないときは、そこでゆっくりとしゃべりましょう。 

・音としてわかりにくく、さけた方がよい紛らわしいこと ば 

「渋谷」(シブヤ)-「日比谷」(ヒビヤ) 

「七時」(シチジ)-これは「イチ」と勘違いされやすいの で、「七」は「ナナ」というほうがよいでしょう。

「急に急転」「広義の意味で」「予め予告する」などは、重複させないことも大切です。 

・話ではわかりやすくいい換えるほうがよいことば 「開幕」→「始まりました。」 

・程度は具体的に表わす 

「しばらく」「まもなく」「すぐ」「けっこう」「ほどよい」「て きとうに」「とても」「口ではいえないほど」 

これらは、具体的な数値や量を用いましょう。 

 

「推しという生き方」 No.410

私が声に関心をもったとき、 

それは声を鍛える、喉を鍛えるということでした。 シンプルにいうと、声を大きくすることです。 それは、声を太くすることでもあり、 

パワフルにする、 

つまり、大人の声、 

より男らしい声にするともいえました。 

時代としては、戦後まだ軍隊の価値観が 

経済の高度成長の元、学校や企業教育に継承され、 心身ともに強健に、という流れがありました。 アニメは、科学とスポ根ものでした。 

バブルがはじける頃から、その反動か、 

戦え、強くあれという価値観が消えていきます。 

卒業までは髪の毛をのばした団塊世代の男性は、 厳しい競争原理のなかで心身を鍛えていき、 令和のいま、ハラスメントの温床ともなっていますが、 男女平等、差別禁止の改革のなかで 

強くなること、鍛えることは、 

とくに日本では、失われてきたのでしょう。 

家庭でも学校でも、社会に出てからも、 

強くなれ、鍛えろ、とは、教えられず、 

弱くてもそのままでいい、 

声をあげろ、訴えろ、逃げろと 

教育された。 

その結果でしょうか、 

自分を鍛えるまえに 

権利の主張と 

他の人や社会への批判ばかりするように 

なったようにも思うのです。 

心身を鍛えていないので、傷つきやすく 

何事もうまくできない、 

できるように克服してきた経験がないなら、 

なおさらです。 

どの時代でも、 

強く美しいものが 

価値をもつのは、変わりません。 

世の中も大きくは、弱肉強食で動いているのです。 

結局、思い通りの人生を手にしているのは、 強く美しい、そういう人たちでしょう。 

むしろ、中間層が弱体化したため、 

ますますそことの差が開いているのです。 

推しが生きがい、なのは、 

何もないよりはよいと思います。 

私も、推しをたくさん見つけています。 

でも、それは、私の人生では最終コーナーからです。 

若いときには、推しより、「推され」になろうと 努力したほうがよいように思うのです。 

以前「あらゆる人に感謝して生きようと思う」と言った人 に 

「それより、あらゆる人に感謝されるように生きようとし たら」 

と言ったことがあります。 

なんか、今の日本、ひっくり返っているように 思うことが多いものです。 

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