「最強トレーニング」 Vol.8
〇声のうまく使えないことのデメリットを知る
私の友人で、とてもおもしろい情報をたくさんもっている人がいます。ところが彼が話すと、そのよさがまったく伝わらないのです。充分に情報や話すべき内容をもっているのですから、これは、話し方、伝え方が問題ということになります。
話し方は、音声によって伝達する技術です。たとえ、どんなによいことをいっていても、声が小さすぎては伝わりません。発音が聞き取れなくても伝わりません。
しっかりと話を伝えるなら、最小限の声量と相手が聞きやすい声の使い方が必要なのです。
とはいえ、話し方においては、どこまでが技術なのかがわかりにくいものです。
そのため話し方や声の使い方をしっかりと学ぶには、かなり高い意識をもたなくては、いうに易く、行なうは難しです。
つまり、人前でよほど苦い思いでもしない限り、トレーニングの必要性にめざめないでしょう。そのときどきを適当にしのいでいるうちに慣れてしまうからです。そのため、 いつまでたっても、あまり上達しない人が多いのです。
たとえば、表情はポーカーフェースのまま、どんなこともボソボソ早口でしゃべる人がいます。とてもわかりにくいのですが、日本人社会のなかでは、こういうことを指摘する人は、あまりいないのです。
そのため、本人は気づかず、いつまでも変わりません。まるで外国人と話すように、話す内容の実質半分くらいしか伝わっていないのに。
としたら、これによって、その人はどのくらい損をしているかは、はかりしれません。こういうことは程度の差こそあれ、誰にでもあてはまることなのです。
1.声が伝わりにくいこと、それによって多少ともデメリッ トを被っていることに気づくこと
2.話し方、声の伝え方をよりよく直すこと
そのためには、話を声から見直し、声をトレーニングすればよいのです。
〇いい換える力をつける
声やことばを豊かにすると、伝わることも豊かになります。単一な声でのいい方では、聞く人は飽きてきます。よくひきあいに出される例ですが、TV の料理番組でのタレントの「おいしいですね」の繰り返し、「アンタの仕事は味わうのでなく、その味を適確に伝えることだろう」といいたくなりますね。話としては、貧困なボキャブラリーで 通用しません。
しかし、これも声の出し方を変えることでかなりカバーできます。タレントは、まさに内容のない話でも、相手との間をもたせるプロです。声の表情や身体の使い方に思わ ず感心してしまいます。
ビジュアルに頼れないラジオでは、声がもっとも有効に生かされています。
テレビのアナウンサーとラジオのパーソナリティの話し 方を比べてみるとよいでしょう。
考えてみれば、話というのは同じことを伝えるのに、何度もいいかえて、理解できるまでわかりやすく説明するのに大半の時間をかけているものです。それとともに、大体、世の中、多くの人は、同じことを違うことばでいっている だけだということもわかるでしょう。
つまり、話の伝達の本質は、いい換えです。それは、ことば自体が伝えたいことをキーワードとして取り出し、表象、シンボル化して伝えているものであるからにほかなりません。
ですから、その一つひとつのことばに具体的な事象や感覚を導き出すイメージが伴ってはじめて、実感がつかめます。そのために、ことばを重ねていったり、そのことばにトーンやニュアンスの変化をつけたりするのです。古館伊知郎さんのかつてのプロレス中継は、まさにその 例でした。多様なボキャブラリーに加えて、あの語り口、声の力が彼をトップキャスターに押し上げたのです。
〇相手にイメージをつくらせる
いくつかのことばを繰り返しているうちに、聞く人のなかには、ある具体的なイメージが生まれてきます。声をうまく使うと、さらにそれが、つかみやすくなります。声に力があれば、一言でそのイメージを伝えられるのです。
ビジュアル化とは、それを一目でわかるようにしたものです。テレビでは、目で見てわからないところだけ、ことばやテロップで補えばよいでしょう。誰でも見てわかることは最小限の、ことばで止めておかなければくどくなりま す。
〇語りかけ調がベース
声も、所信表明のようになっては、共感を得られません。 語りかけ調にすると、伝わりやすくなります。相手とのコミュニケーションをとりやすくすると、あなたも話すのが楽になります。そういう話し方にもっていくには、いくつかのスキルがあります。
「こういうことを聞いたことがありますか」
「3 つ、ポイントがあります」
「皆さんはどうでしょうか」
このように、単発に発しても消えていくことばを、先に案内したり、あとにひいたりと、前後にからめていくことによって、話の内容を立体的にわかりやすくしていくのです。こういうときの声は、ゆっくりめに使いましょう。
〇問答調にする
落語のように脚本型、卜書きと登場人物のせりふ、プラス効果音や小道具(扇など)で伝える方法もあります。声は、二人で問答しているような間をとって使います。
(例) 「……」と、そのおじさんがいったわけです。
「……」と私は答えました。
「……」とくる。
「……」てなもんで… (この間、机の上を一つ叩く)
声を転がすように、リズミカルにすると心地よいものです。これも、話を聞きやすくするテクニックの一つです。
〇指示語でまとめる
指示語はあまり使わず、具体的にしたほうがよいといわれます。しかし、指示語のなかには、前後にいうことを示すという働きがあります。これはとても便利です。いったことをまとめたり、次にいうことに興味をひかせることができるからです。このときの声は、やや鋭くつっこみましょう。
「こんなことがいわれています」
「こうしたらどうでしょうか」
「こう私は考えます」
「こうではなかったでしょうか」
引用する例を予め指し示したり、後において、まとめることができます。
〇三つという型に入れる
「三つ、ポイントがあります。一つは…、二つ目は…、三つ目は…、以上、この三つのポイントです」
こういう型にはめこんでいくのも、わかりやすくするコツです。
さらに「次の七つです」のように示し、さらに「サシスセソ…」とか「オアシス」のように、頭の音と絡めたり、よく使うことばでまとめて覚えやすくすると、その部分の話がまとまって、はっきりとします。
提示においては、声はカチッとはめたように、同じテンポ、同じ声質、同じ声量で使うのがコツです。
〇声で相手に投げかけてみる
「皆さんはどうでしょうか」
「あなたもそう思いますか」
慣れないうちは、なかなかこういった一言が切り出せぬものです。しかし、使うと強くひきつけることができます。 声でリーダーシップを発揮するには声の勢い、覇気が欠かせません。思い切ってやってみましょう。
〇難しい表現は、やわらかい声で親しみやすくする
誰の話にも、それぞれ、話のくせがあります。話し方や話のスタンスのとり方も、それなりにその人らしくあるものです。
身近な人の話し方やその声を思い浮かべてみるだけでも、 いろいろと特色やパターンがあるでしょう。
そこから自分のクセに気づくことは、話し方や声を学ぶために、とても有効です。決してアナウンサーのようになろうとしなくてもよいのです。むしろ、一般的には、親しみ感のある方がずっと大切でしょう。
普段はそういうことができていても、難しいことばや説明になると、硬い声でガチガチに固めて、棒読みしていま す。その結果、よけいに難しそうに聞こえます。こういうときこそ、あえて明るく柔らかい声を使うことです。
〇くせになっているいい回し(口ぐせ)をとる
あなたにとっても、使いやすいことばとそうでないことばがあります。もちろん、聞く人によって使い分けも必要です。しかし、思わず多用して害となっていることばもあるかもしれません。
あなたが話すときに、何度も使っていることばはないでしょうか。
「非常に」「とっても」「いろいろ」「あのう」など、くせとなっていることばを、チェックしてみましょう。案外と気づかないまま、何回も出てくることばがあるはずです。
ここでは、多用しないほうがよいことばをチェックしましょう。どうしても、いい換えられないときは、そこでゆっくりとしゃべりましょう。
・音としてわかりにくく、さけた方がよい紛らわしいこと ば
「渋谷」(シブヤ)-「日比谷」(ヒビヤ)
「七時」(シチジ)-これは「イチ」と勘違いされやすいの で、「七」は「ナナ」というほうがよいでしょう。
「急に急転」「広義の意味で」「予め予告する」などは、重複させないことも大切です。
・話ではわかりやすくいい換えるほうがよいことば 「開幕」→「始まりました。」
・程度は具体的に表わす
「しばらく」「まもなく」「すぐ」「けっこう」「ほどよい」「て きとうに」「とても」「口ではいえないほど」
これらは、具体的な数値や量を用いましょう。
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