〇声の表情を伴って伸ばす
「お世話になりました」とはっきりいってみてください。ゆっくりと、しっかり、やや大きな声でいいます。「せ」とか「た」とかが、うまくいえましたか。
もしうまくいえない音があるようでしたら、その音を後でしっかりとトレーニングします。
ことばのトレーニングを繰り返し行なうのもよいでしょう。ついでに、「よい経験になりました」に変えてみましょう。
そこで、表情をつけてみます。役者になり切ってやってみてください。
単に大きな声を出せばよいというわけではありません。そのなかにメリハリをつけ、あなたのもっているイメージが伝わるようにしてください。そのイメージをこわさないで表現を大きくしてください。
強弱、メリハリをイメージで大きくとっていくのです。すると、少しずつフレーズが大きくなって、音が伸びてきます。ことばがいい切れなくなったり、フレーズの1本の線の中でことばが処理できなくなったら、それ以上伸ばすのをやめます。
何度もトレーニングしているうちに、声はうまく伸びるようになってきます。
言霊(ことだま)といって、ことばの中には魂、命が入っているのです。これをよりパワフルに伝えるために伸ばしていくのですが、表現力が失われるほど、だらだらと伸ばしてはいけないのです。
たっぷりと表情をつけていってください。
1.「私は、とてもうれしく思っています」
2.「お世話になりました」
3.「よい経験になりました」
テンポをあげ、ハイテンションでピーク、サビを出しましょう。
テキ屋、もの売り、フーテンの寅さんなどのタンカを参考に、勢いよくたたみかけてください。
1.「はいはい、どんどん、買ってちょうだいね」
2.「それはね、一番いいよ」
断定的にいって、強いひきつけをねらいます。やりすぎると、反感をもたれますが、こうして緊張感を合間で喚起させることは、有効なことです。そのあとに、やさしくゆっくりと声を使うと、より効果的になります。緩急の緩と急を、うまくどこかに入れていくわけです。きっぱりと断定してから、ふつうのいい方に戻してください。
1.「いりません。でも、時間をいただければ、検討いたします。」
2.「いけません。気をつけてください。」
あまり卑屈にならないことです。人柄や性格にもよりますが、相手によっては、それが効果的なこともあります。
気持ちを込めていってみましょう。
1.「お願いですから、残してください。」
2.「助けると思って、お決めください。」
聞く人はお客様、お客様は神様と、常にうやまうことです。敬語をベースに使い、相手の尊厳に配慮します。
嘆願してみましょう。
1.「何卒、ご容赦願えませんでしょうか。」
2.「どうか、お許しください。」
3.「失礼致しました。」
〇プロミネンス(prominence 強調)とは
プロミネンスとは、表現を相手に強く伝えること、強調してはっきりと伝えることを示します。「際だち」「際だたせ」「卓立」「対比の強調」「文アクセント」などともいわれます。ある特定のことばを結果として強調することです。
強調するためには、強い調子でいうのが、一番、簡単です。その他にも、間やテンポを変えるなど、いろんなやり方があります。
これは、個人の選択に任されている場合と、社会的習慣として決まっている場合があります。いいたいことをわかりやすく伝えるために強調します。どこにこのプロミネンスをおくかで、文章の意味が変わってくることもあります。
いつも、どの語がどのように際立っているかを、チェックしましょう。
〇プロミネンスの原則
声で全てを強くいうと、均等化され、逆効果となります。特に意味をもつ大切なことばだけを強調するのが一般的です。
大声でいったために、発音が不明瞭になったり、うるさくて何をいったのかわからなくなるようでは、本末転倒です。
特に伝えたいことばに絞って目立たせるのが、プロミネンスの原則です。
この場合、プロミネンスとは、強弱アクセントの強勢のことではなく、語や文章そのものを強めるということです。
強くいうと、大きく高くなりがちですが、結果的に、しっかりと伝わればよいのです。ですから、プロミネンスにもいろんな方法があります。そのことばの前後を弱くいう。前後に間をとる。長くいう、太くいう、はっきりという、表情や方向を変えていう、などもプロミネンスの手法です。
/のついているところまで速く、//のついているところまでゆっくりいってみましょう。
1.「あなたの上司は/ここから遠く離れたニューヨークの郊外に//住んでいます。」
2.「私は/いつも//あなたのことをずっと//思っています。」
(1)低く、弱く読む
次の下線部に-のついたことばを、声を低く弱く、小さな声にして読んでみましょう。そのことばの意味を強めるように、声に気持ちをこめます。
1.「お客様が ずぅっと 迷っているときは 声をかけましょう」
2.「会議で どんどん 発言をしましょう」
(2)伸ばして読む
次のように一つの声を長く伸ばすと、そのことばの意味が強調されます。
次の下線部に-のついたことばの意味を強めていいましょう。
1.「そんな バカな話があるものですか」
2.「時間はまだ たっぷりと あります」
(3)速く読む
次の下線部に-のついたことばを、声を速めて(早口で)、意味を強めてみましょう。
1.「わたしの勘が ぴたりと 当たった」
2.「そんなこと 知るわけないでしょう」
(4)強調箇所を変える
「私は(1)、午後一時に(2)、会議室で(3)、営業部長と打ち合わせをします(4)」
1.誰が行くのですか (1)
2.いつ、行くのですか (2)
3.どこに行くのですか (3)
4.何をしに行くのですか (4)
この四つの疑問のどれに最も強く答えるかによって、それぞれ際立たせたいところ、プロミネンスがおかれるところが違ってきます。
〇話の調子を変える
チェンジオブペースとは、ペースをチェンジする、話の調子を変えることです。
自分の声をテープで聞いたとき、単調で、退屈に聞こえるとしたら、調子が変わらないからです。話すのに、慣れていないと、大体そうなります。声や話し方に変化がないと、聞いている人は引き込まれません。
でも、あなたは友だちに、退屈な話をする人だとは思われていないでしょう。それは、友だちと話すときには、チェンジオブペースをしているからです。それでも仲間内で聞いて退屈なときもありますね。その理由を考えてみましょう。
・話題がないとき、自分に関心のない話題のとき
・一方的に相手ばかりがしゃべっているとき
・間合い、テンポ、リズム、フィーリング、呼吸が合わないとき
・メリハリ、相手のしゃべり方が単調で変化のないとき
・発音、ことばが聞きづらいとき
友人との間では、しゃべり方まで問われることはないでしょう。おたがいのことを知っているし、関心のあることをしゃべっているからです。
それよりも、呼吸、間、コミュニケーション上で大切なことが、案外と気づかないまま、いい加減になっているものです。
友人相手ではないときは、もっとわかりやすく伝わるようにしなくてはいけません。
たとえば、友人であっても、一人でずっとしゃべっているのに、聞いている人が退屈せず、魅き込まれていく人もいるでしょう。話題も大したことがないのに、次の一言が待ち遠しいような話し方をする人、そこに自然と含まれている技術が、チェンジオブペースです。
〇ことばに抑揚をつける
ことばには必ず抑揚があります。たとえば、子供達がふざけあって話していることばは、大きくなったり小さくなったりして、その感情を伴って私たちの耳に入ってきますね。
しかし、その子たちに教科書や作文を読ませたり、ト書きを話させてみてください。「ボクノオトウサンハ・・・」といきなり、生気を失った単調で、一本調子なことばの羅列、いわゆる棒読みになってしまいます。
普通の会話の中にも、音節(シラブル)がもつ自然なアクセントがあり、強調されているところがあります。これによってことばの意味がわかりやすくなるのです。
こういったことばに対する感覚の鋭さを磨くためには、文章を読み聞かせる力をしっかりとつけることからです。すべてのことばは、高低・強弱、そして音量、リズムと変化をもっています。これをしっかりとらえ、それをさらに大きくイメージしたのが歌や芝居のせりふだと思ってください。
〇抑揚と強調のトレーニング
「あなたの先日の企画は とてもよいと思います」
これを、語調、語気、語勢、間をいろいろと変えてやってみましょう。
1.語調 高低 高い-低い
2.語気 強弱 強い-弱い
3.語勢 緩急(テンポの変化) 早い-ゆっくり
4.間 「企画は」であけましょう。その前後の音の高さに気をつけましょう。
そこで、ことばを発見し、感じることです。
ことばの一つひとつに情感が入るような表現ができるためには、声、ことばに強い関心をもって、感じることです。こういった音の世界の動きに、感性での快さを捉えていくことが、上達への道となります。
〇緩急の表現のトレーニング
緩急は、普(普通)→緩→急→普→緩→急→普とつけます。
緩では、感情を抑制し、急で、感情を解放します。
「ゆっくりとつたえる」
1.ゆ っ 、く り 、と 、つ、た、え、る
2.ゆ っ く り と、つ た、 え る
3.ゆっ・・・く・りと、つた、える
緩急とは、単にぶつ切りにしたり、音間をあけることではありません。一つずつ切ると音が切れて幼稚になるので、音を持続させる気持ちでいいます。強アクセントをおいたあと、たっぷりにゆったりというとよいでしょう。
抑揚(イントネーション)は、ことばの調子、語調、語気、語勢に気をつけ、情感的に入れ込んだ表現で、練習しましょう。充分に気持ちを込めてやってみることです。
長い間のあとは、やや高めに大きく入ると効果的です。これを「高出し」といい、日本語の場合は特に大切です。
〇声とことばから表現を感じる
ここで、怒った顔で笑ってみましょう。心と身体(生理)は一体のため、表情と違う表現をするときには、ひどくアンバランスで、ぎこちなくなるでしょう。次に、笑った顔で怒ってみましょう。どうでしょう。
日本語は、プライベート、オフィシャルの区別が大きいのに、日本の教育では、音声表現をあまり学びません。そのためか、どうも日本人は音声表現において、うまくありません。たとえば、英語のように抑揚をつけて日本語で話せたら、そのまま対話として通じる表現になりやすいでしょう。日本語でそういうことをしっかりやっているのは、役者の養成所くらいです。
そこで、役者のようにしっかりとした声で話すことを心がけましょう。それを、テープに録ってチェックしましょう。
ひとつはことばを大きく伸ばす方向でとらえていくこと(声量)、もうひとつは、高低に幅をもたせていくこと(声域)です。この両方が声の基礎条件になっているといえます。そこで、日本語もそのように応用してみるわけです。
メリハリをつけるにも、どこを強調すべきなのかを考えなくてはなりません。
抑揚には、リズムやことばの感じをうまく生かすようにしましょう。