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「ヴォーカルトレーニングの全て」 Vol.31

〇歌詞のいいにくい、難しいフレーズを言葉をかえて練習する。

 

  • 「あなたへの歌に 愛していたのと」(ミラソソミソラシ ラララソ♯ シララ)(「君をうたう」より)

 「歌に」の「に」が難しく、つっかかりやすいでしょう。喉を絞めたりかすれているのではなく、同じポジションをとろうとしてかすれるのならかまいません。「ていた」で、ひびいてコントロールできない発声になってしまうのは、「あいし」で深くとらないからです。

 

  • 「あ~あえおえ、あえおえあえおえあおえあ~、愛していたのと」(ソーミラソソ、ミラソソミラ ソソミソラシー、ラララソシララ)

 どこかで言いかえた方がよいでしょう。全体的に、体力が必要です。まあ、自分なりにメリハリをつけてください。上っていって落ちてくればよいだけです。

 きちんと発声できている人は口内に響かなくなるのです。遠いところの声、あるいは小さな声に聞こえるようになっていきます。

 それから、「あ」の位置を深くすることです。「あ~あえおえ」では、なるべく深いところでとっていかないともっていけません。そして、最後「あおえあ~」。息を使い切ってはダメです。呼吸のバランスとフレーズの配分をうまく考えていかないとできません。

 

〇フレーズを通して声の線を一本描く

 

  • 1.「あーくるしいさみしいあなたへの歌に」

 (ソーミラソソ ミラソソ ミラソソミソラシ)

2.「ひとこと、こたえておくれ」

 (ソシラ ソファ♯ミファ♯ソ)

 

 最初の「あ~あえおえあえおえお」くらいで、もう口の中が疲れ果てないように。勝負しないといけないところは「あおえあ(「のうたに」に対応する部分)」です。ここで一番身体を使わないといけないのに、逆にそこで放してはいけません。ここでキチッと入れて、「愛していたのと」と出さなくてはいけません。

 「歌に」をはずして、「あなたへのあおえあ」にします。「あおえあ」あるいは「あえおえあおえあ」、にします。「歌に」のところだけ「あおえあ」に変えるか、ややこしいなら「あおえあ」を2回くり返してもよいです。

 「あおえああおえあ~愛していたのと」がワン・フレーズでできれば一番よいでしょう。

 「あなたへの歌に 愛していたのと」、「愛し」の「愛」は簡単ですが、「していたのと」のところが雑になりがちです。口の中でいうと声の線が消えてしまいます。最初から最後まで、くっきりと一本の線を描いていくことです(しっかりした声になっていなくても息が流れていれば構いません)。

 「歌に」の「に」のところできちんと入れて、広げて、そこから「あ」のところにきちんと持ってこなくてはいけません。この「愛して」のところで、きちんと言い切れないで泳いでしまうと、歌全体が流れてしまいます。

 「ひとことこたえておくれ」も、「おくれ」のところで盛り上げ、その後に落ちます。ですから、息とフレーズと自分の言葉のリズム感覚がフィットしないと切り出せないし、フレーズをもたせられません。どこかで流れが滞ってしまうのです。

 これが基本的なベースの歌い方です。出せる音域での音の処理として、自分の身体の中でひとつに掴んだものをきちんと息で送っていく、それを感情と一致させていくことです。あまり「寂しい」、「苦しい」と、作った感情を入れようとしないことです。自分の身体の大きなバランスの中で、それが聞く方に感じられるように表現するようにしてください。これくらいの長さでトレーニングしてください。

 

  • 「なにもかも見えない~」(ラシドミレドシラ)

 ほとんどの人が、「か」のところで響きにのってポジションが移って音をなくしてしまうでしょう。「がげぎごぐ」の「ぎ」、「ぐ」をうまく処理することでやってみましょう。

 日本人の「い」や「う」はとても浅いので、いくらでも口先でつくれます。「か」や「た」もそれに近い音です。その作った部分を放してしまうと声がなくなってしまうのです。だから、いつまでも声にヴォリューム感が伴いません。深いポジションを持たないと、こういう言葉は本当にはいえません。

 「なにもかも」の、「か」は、きっかけのところだけとれれば、「かぁ」の「あ」の中では入るはずです。「なにもかもみえない」を「あおいえあい」におきかえてやりましょう。苦手な音は集中的にやらず、ごまかしつつ、正しい声のなかに巻き込んでいくのです。

 「なにもかも見えない」の母音だけをとると、「あいおあおいえあい」となります。これは「あいお」が言いにくいでしょう。

 これをテヌートでやります。一番深いところで押さえておいて、上の方で音を保ち、やわらかく切るとよいでしょう。ただ、口先ではなく、身体の方で切ることです。言葉の音をおいていくという感覚です。おくまえに、おくところの線を自分でつくっておかないといけません。それがフレージングです。

 

〇フレーズの捉え方

 

  • 「あー、くるしい、さみしい」(レーシミレレ)~「あ~く~さ~」(レーシーシー)

 まず、言葉でそのまま言ってみましょう。「さびしい」でも「さみしい」でもどちらでもよいです。

 何だか高校生の演劇みたいですね。なり切る必要はありません。こういう歌の場合は、第三者的に歌い上げる場合が多いので、過度の感情移入するより、ワン・クッションおいて感情を構成した方がよいでしょう。声の面から言ったら、そのまま息の流れで言った方がよほど楽です。歌は大きなフレーズを作ってい るので、劇の発声とは少し違います。

 「ああ」と言っているなかで「苦しい」と捉えていくことです。「ああ、苦しい、寂しい」といくら口先で言っても、言うほど感情から離れていきます。自分の感情と一致させることです、自分の身体の動きとこの感情の流れとを、1つの動きに一致させるということです。ですから、息と声の深いところでの一致が原点なのです。ここで大きく作っておくことができれば、入っていけます。こうして、フレーズという考え方を少しずつわかっていってください。

 「ぁあ」なのか「あぁ」なのか、「苦しーい」の方が情感が出ても、気持ちのバランスとしては「苦しぃ」でしょう。歌ではなく言葉ということで言っても、“それらしく”なってしまわないことです。「あー、苦しい、寂しい」は、簡単にフレーズにすると「あ~く~さ~」、これだけです。その中に言葉がきちんと詰まってはみ出さないことです。ところが、「あ~く~る」になったり「ああ苦しい」になったり、そういうはみ出しがあると、フレーズはきれいに流れなくなってしまいます。だから頭で計算して作ってはいけません。

 感情をなるだけ生かして、音を処理することです。息の流れからすると、「あー苦しい、寂しい」ではなく、「あー苦しい寂しい」という1つの流れです。息つぎをしてかまいませんが、息つぎの仕方で作ってはいけません。息つぎが次のフレーズを決めます※。

 日本人が歌うと、どうしても「♪ああ、苦しい、寂しい」、「はあ、はあ、はあ」というようになってしまいます。それではダメです。「はあー」と、1つの流れの中でやっていくことです。

 これをプロの歌で聞くと、楽々歌っているようにみえます。実際楽々歌っているのでしょう。そこが身体の違いです。50キロ持てる人が30キロ持つのと、10キロしか持てない人が30キロ持つくらいの差があります。ですから、今は10キロしか持てなくても50キロ持てる人との差が40キロあることをわかることです。それが求められる耳のよさです。

 長いフレーズでやると「あー苦しい寂しい」と全部身体から離れてしまうので、こういうときは、フレーズを縮めてかまいません。

 「苦しい」。「く」が身体にしっかりと入って、その後に「う」が続きます。「く、る、し」の、「る」も入っています。「し」はこれでよいのですが、「し~い~」となるのはよくありません。普通は「し~」のなかに「い」を作ります。そういうことも全部フレーズの基本なのです。日本語を一音ずつ切り離さず、リエゾンのようにしていくのです。「くる~、くる~」や、「るし~、るし~、し~」という形です。「く・る・し・い~」とやってはいけません。

 日本語はそうなりやすいので、歌のフレーズ

に向いていません(より大きいのは、リズムグループの問題です※)。ただ、すべて母音がついていますから、英語よりも音楽的に処理できるともいえます。そういう意味では日本語は音楽的な言葉なのです。大切なのは、「く」でも「あ」でも、そこでこれだけフレーズをつくっておくと楽だということです。「あ~」でも「く~」でもよいし、「苦し~」でもよいでしょう。そのなかでフレーズをつくらないと、「く・る・し・い~」みたいに離れていきます。なるだけ1つに捉えて、「苦しい」と出すのです。フレーズをつけるには、それだけ身体の力で息を吐かないといけないのです。

 

〇身体を使う方向で練習をする

 

 もっと単純に簡単にやろうとしたら、イメージを「あ~苦しい」の中に全部入れていくことです。それが浅い「あ~」という声ではダメです。入り方が違います。縦に通すと、効率のよい発声になります。浅く広げると身体で、もっていけなくなります。浅くなってしまうと、どんどん空間の中の隙間が空いてきます。「あ」は大きくなくてよいのです。ただ、その中に「寂しい」までを全部入れていくことです。だから「あ~」っていうのをなるだけ深いところで言うのがポイントになります。

 「ら」や「あ」などを、日本語の中で深くしていくことが大切です。マイクのエコーに頼らないこと。サビでいきなり身体を使おうとしても無理です。さらに、低い音はなおさらテンションも支えも使います。ピアニッシモはもっと使います。中間音で完全に身体が使うことができれば、身体ができたということです。

 

 正しいトレーニングをしていると、高い音というのは、絶対に身体を使いますから、どうでもできてくるわけです。そこで変ずるひびきの使い方、バランスだけを考えればよいのです。ひびきに乗せていたら、バンドの方で盛り上げてくれて、もつのです。大切なのは、すべての音域で、身体が入るかどうかです。きちんと歌えてる人はみんな入れています。

 

  • 「あ~くるしい、さみしいあなたの歌に」(レーシミレレ、シミレレ、シミレレシレミファ♯)

 ここで最後の「あなたへの」(シミレレシ)で、「の」の音が下がるだけです。「苦しい」から「歌」までは3つしか音を使っていません。

 フレーズが多くなれば、それだけブレスも早くならないとできません。「あなたへの歌に~」(シミレレシ、レミファ♯)で、「う」と「た」と「に」というのは、はみ出しやすい言葉です。ここは、4音しか使っていません。

 

 同じポジションで完全に握っていると安定します。一音ごとの「ハイ」をつけて「ハイハイハイハイハイ」でやってみるのもよいでしょう。

 もともと息の深い人は、しっかりした声で音域をつくっていくから確実にできてきます(日本人は浅い息なので、音域だけは取れていても、いつまでたってもその音域がものにならないのです)。

 こういう簡単なフレーズを繰り返し練習し、自分の声に肉づけしてボリュームをつけていってください。結局、ポジションもフレーズも同じことです。応用の仕方はいろいろありますが、身体が使いやすく、シンプルに1つで捉えて1つで出せるというイメージで声を変えていきましょう。

 言葉のところでも、CDを聞きながら何回もやっていれば相当な練習になると思います。どこの部分でもよいのです。一言だけを1分やっても相当、大変なことです。

 最初は、頭がクラクラくると思います。もちろん、頭クラクラさせる勉強じゃなく、身体をしんどくさせる鍛練をするのです。そのときには、喉に余計な力を入れないように、リラックスすることを忘れないことです。中途半端なテンションでやっていると、どんどん変な力が入ってきます。喉を楽にして、身体のほうに力を加えて息が吐けるのであれば、そういう息がよいと思って下さい。

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