3-1.声の話

「最強トレーニング」 Vol.19

〇温かい気持ちで応対する声

 

  • 基本トレーニング

1.「はい」

2.「ようこそいらっしゃいました」

3.「こんにちは」

4.「いらっしゃいませ」

5.「かしこまりました」

 

□チェックポイント

A.姿勢、身体 呼吸、フレーズ

たき火にあたっているようなイメージで身体をあたためます。

B.顔の表情

目一杯ほほえんでください。

C.発声、高低、強弱、トーン

一呼吸おいて、うれしさをかみしめていってみます。やや低めの声で。

D.発音

少しこもってもかまいません。口の中を広く使いましょう。

E.声の表現法

ゆるやかに、ゆっくりと。

 

〇温かい声とはどういう声か

 

 温かい声、ホットな声は、ラジオのパーソナリティの声が手本ですね。テレビのアナウンサーやレポーターと違って、マンツーマンのメディア、ホットなメディアとしてのラジオは、聞く人をあなただけに想定してオンエアされています。いわば、みのもんた式、声の使い方ですね。

現代人が、温かい気持ちになれるとき、それは、いつでしょうか。

案外と、皮肉なことですが、悲しい出来事を皆で共有したときなどではないでしょうか。戦争、テロ、大震災などで打ちのめされたとき、人間のとても大切なものがあふれ出てくる。倒産、闘病などでも、そうかもしれません。もっとも、人間らしい心を持つのは、死刑囚という人もいました。

あなたはどうでしょう。人の施しに感謝したとき、反抗していた親が年老いて弱ってきたとき、赤ちゃんや小さな子供と接するとき、人というのは、温かい気持ちになります。温かく人に応対できる声は、本当は、とても苦労してきた人でなくては、なかなか出せません。こればかりは、ノウハウではありません。せめて、そういう気持ちで、他人にも接しようとしたときに発されるものでしょう。

 

〇声の感じをやわらかくしよう

 

その人の声の感じが“決め手”となります。話は、その動きの部分、リズム、メリハリ、ノリのまえに、声質によって、相手の話を受け入れるかどうか、決まるといっても過言ではありません。怒ったり、ヒステリックな声は、誰も聞きたいとは思わないでしょう。とても仲のよい人でも、その声質が少し変わっただけで、ずいぶんと感じが変わることもあります。

このように、ずっと伝達のベースを支配するのは、声質です。よい声質は、話を聞きやすくし、やわらかな声は、聞く人の気持ちを穏やかにし、聞き終えた後の印象をよくします。

 

〇声質の印象の違い

 

声質は、ちょっと気をつけて声を出すだけでも、かなり相手の受ける印象は違ってきます。

次のことに気をつけてみましょう。

1.語尾を丁寧に切る。

2.同じ声質をキープした声で話す。

3.声の高さを上げすぎない。

4.メリハリ、強弱をほどよくつける。

5.感情的なときほど低くゆっくりと抑える。

 

〇自分の声が嫌だと思わないように

 

声質は、一人ひとり違うものですが、ある程度は先天的に決まっています。

中には、自分の声が気に入らない、声を取り替えたい、という人もいるでしょう。でも、誰の声にも、その人なりの個性があるものです。その自分の個性を見つけ、声を生かす方向で伸ばしていきましょう。

声は、その使い方で随分と印象が変わります。大切なのは、声そのものでなく、声を使った結果、相手に与える印象の方だということを忘れないでください。自分の声が嫌いであっても、周りの人はその声を聞いているのですから、まずあなた自身が、自分の声を好きになることが先決です。そして、自分のベストの声をつかみましょう。自分のベストの声とは、調子がよいときだけでなく、大事なときにいつも気にしなくてよい声です。自分にぴったりと合った、自然な声といえましょう。

 

〇声とことばの響きをよくする

 

ここでは、声の感じをよくするための準備をします。

発声に関係する筋肉が硬直していては、声はうまく響きません。顔も同じです。日頃から大きく表情を動かしておきましょう。表情の豊かなことが、声の表現力を高めるのです。

 

〇音声のイメージからやわらかくする

 

高低、緩急、強弱、声質、音量のイメージを自分で工夫してコントロールしましょう。

1.ものまね、模写、声色のまねをしてみる。

2.擬態語を使う「グーッとよった」など。 これは、誇張して感じを出すとよいでしょう。

3.わざとつくり声、甘えた鼻声にしてみる。

 

〇●表情のトレーニング

 

次のトレーニングを、自分でいろいろと組み合わせて、メニューをつくってみるとよいでしょう。

・眉毛のトレーニング

1.思いっきり眉毛をつりあげる

2.しかめっつらをして、眉毛を下げる

・頬のトレーニング

1.頬に呼気を送り、ふくらませ、その後、両頬を吸い込む

2.頬の左右、上歯ぐきの上方、下歯ぐきの下方と4方向を部分的にふくらませる

・眼のトレーニング

1.力強く眼を閉じ、開く

2.眼を左右、上下、左まわり、右まわりと動かす

 

  • 硬い声をやわらかくするトレーニング

 

硬い声に聞こえる人、ゆっくりと「アー」と伸ばしたとき、「アッ」と硬い音が入る人は、声門を急な息がこじあけているのです。

1.「マメミムメモマモ」

2.「マメミモムミメモムマ」

 

  • 感情を入れて、せりふを読むトレーニング

 

感情を込めていってみましょう。

1.「とても、うれしかったです。」

2.「でも、勇気づけられました。」

3.「とてもおいしいですね。」

4.「あのときは楽しかったです。」

 

■応用例文トレーニング

1.「承知いたしました」

2.「どうぞおかまいなく」

3.「ようこそおいでくださいました」

4.「お待ちしておりました」

5.「~いたしかねます」(わかりかねます)

6.「恐縮です」

7.「もったいないおことばです」

8.「皆さまのお力添えのおかげです」

9.「とんでもないことです」

「最強トレーニング」 Vol.18 

〇明るくさわやかに、元気を与える声

 

  • 基本トレーニング

1.「ありがとうございます」

2.「おはようございます」

3.「いかがでしょうか」

4.「いらっしゃいますか」

5.「よろしくお願い致します」

 

□チェックポイント

A.姿勢、身体 呼吸、フレーズ

  すくっと立ち、ゆっくりと呼吸を整えます。

B.顔の表情

  口と舌の運動を多めにしておきます。

C.発声、高低、強弱、トーン

  やや高めに入り、あわてずにしっかりといい切ります。

D.発音

  口角をややあげて、一つひとつの発音を少し意識的に区切ってみます。

E.声の表現法

  少し語尾を伸ばしてもよいでしょう。

 

〇ことばをはっきりさせよう

 

ことばがわからないといわれる人、もごもごと口のなかでこもってしまったり、ことばがはっきりとしない人、はしょったりする人がいます。

これを直すには、まず、口をしっかりと動かし、口の内を開けることです。そうしないと声は前にでてきません。

とはいえ、ことばをはっきりといおうとしてむやみやたらに口やあごを大きく開けすぎるのも、よくありません。口がパクパクするだけで、本来の声の持ち味を生かせなくなりがちです(もちろん、口やあごの運動、表情筋のトレーニングのときは構いません)。口先だけの、実際にはかえって使いにくい平べったい声になります。

 試しに口先はあまり開けずに、口の中を開ける感じで「アイウエオ」と、お腹を意識しながら声を出してみてください。少しこもった感じになるとは思いますが、口を開けているときより、口の奥の方でしっかりと響きませんか。できるだけ深い息、深い声を意識してください。

 身体からことばを発するというのが基本ということを忘れないでください。

 

〇発音をクリアにしよう

 

他の人に正確に伝わるには、明瞭な発音が必要です。それには、唇、あご、舌、喉(声帯)それぞれの運動と、それらのスムーズに連動した動きが必要となります。

しかし、話すときにこれらを同時に注意していたのでは、頭が痛くなってしまいそうです。余計な部分に力が入ってしまい、自然に動かすことができなくなりかねません。そこで、最初は別々にトレーニングします。

 自分の好きな文章を黙読します。次に黙読のまま、唇・舌・喉・あごを、やや大きめに動かしてください。文章の意味を考えながらメリハリをつけて読むと、効果的です。

 口の動きがつかめてきたら、今度は声を出します。少し遠くにマイクをおいて録音し、チェックしてみましょう。

後は、黙読、音読、録音、再生チェックをくり返し、不明瞭な部分を改善していきます。

 

〇ねちゃねちゃした感じが気になる人は

 

なんとなく舌がもつれたような、切れの悪いことばを発する人がいます。舌がうまく動いていないことが原因です。寝起きは、こういう声に近いでしょう。

口の中にものを入れて話すことをイメージするとわかりやすいでしょう。口が開かずに発音がはっきりしませんし、口の中に入っているものによって舌の動きが制限されているからです。お酒を飲むと、急にねちゃねちゃ度が増す人もいます。これも舌の動きの麻痺からです。また、舌を噛んだり、やけどすると、似た状態になることもあります。

 いずれにしても、ふだんから舌を動かすトレーニングをすることです。舌を動かす筋力が衰えていると、舌の機能を充分に活用することができないからです。

 

〇あなたも明日から“転声”できる

 

明るい人、さわやかな人、元気のよい人というと、誰を思い浮かべますか。声というのは、声だけでイメージするものではありませんから、きっと、こういう場合、表情や振る舞いが、明るい、さわやか、元気のよい人を思い浮かべるでしょう。声だけでしたら、声優さんやラジオのパーソナリティで、声しか知らない人で、考えてみるとよいですね。声のトーンや語り口が明るい、さわやか、元気がよいと、それぞれ微妙に違いますから、わかりやすいのではないでしょうか。

かつて、深夜放送にパーソナリティとして出て、世の中をアッといわせたのは、中島みゆきさんでした。まるで二重人格、ジキルとハイドのように、それまで暗く、悲しい歌声のイメージを、軽妙な語り口で一新したのです。声で自分を演出したり、変革できる一例です。

もっとも、象徴的なのは、選挙の前後ですね。当落によって、明-暗、さわやか-湿っぽい、元気-陰気、候補者も応援スタッフも、一転します。ということは、あなたも、明日から“転声”できるということです。

 

  • 口のトレーニング

1.口を大きく開ける

2.あくびをする

3.前歯をむき出す

 

  • 唇のトレーニング

1.唇を閉じて、パ・バ・マを発音します(呼気圧の高い順に)。

パピプペポ・バビブベボ・マミムメモを繰り返す

2.唇を閉じて、上下の唇を交互に前に突き出す

3.歯を合わせたまま、歯並びがすべて見えるように開き、閉じる

 

  • ことばをはっきりさせるトレーニング

・「イエアオウ」でのトレーニング

1.「イ」の口形で、「イエイアイオイウ」をいう。 (明るい「イ」の音でやります。)

(明るい方から暗い順に、「イエアオウ」となります。子音なら、tがイの位置にきます。)

2.「ガナタラバパ」をくり返す。(タラは、舌先で発します)

3.「バベビボブ、パペピポプ、マメミモム」をくり返す。

(声をのみ込む状態、奥の方でしゃべっているようなら、軟口蓋と歯にもってきて、唇を使う音で顔面にもってくるようにします。(バ、パ、マ行がよいでしょう)

 

■応用例文トレーニング

<会ったときのあいさつ>

1.「はじめてお目にかかります」

2.「お目にかかれて光栄です」

3.「お見知りおきくださいませ」

4.「ご挨拶が遅れましたが・・・・、××と申します」

5.「申し遅れましたが・・・・、××でございます」

6.「奇遇ですね」

7.「珍しいところでお目にかかりましたね」

8.「ごぶさたしております」

「最強トレーニング」 Vol.17

〇くせのない自然な声の使い方を学ぼう

 

  • 基本トレーニング

1.「ただいま」

2.「こんにちは」

3.「さようなら」

4.「どうもありがとう」

5.「すみません」

 

□チェックポイント

A.姿勢、身体 呼吸、フレーズ

身体を動かしてリラックスしましょう。

B.顔の表情

顔の表情をやわらかくします。

C.発声、高低、強弱、トーン

もっとも使いやすい声でよいです。

D.発音

あまり気にしないでください。

E.声の表現法

さいごまで、なごやかな気持ちをキープします。

 

〇日本人にとっての、自然な声のイメージとは

 

日本人の日本語の音声には、いろんな弱点があるといえます。自然というと、力を抜きすぎ、弱くなりすぎることもあります。

 というのも、日本人の場合、どうしても、強く声をぶつけあい主張し合うような風潮がなかったため、声に強く吐く息や大きなメリハリなどが必要とされなかったのです。自分たちの主張が通らなかった場合、激しく訴えるような、強力な音声力をもつ国の人々とは違います。ですから、ことばのトレーニングのときは、気は強くもち、声は少していねいに、という感じで心がけてみましょう。

この音声そのものへの認識力の弱さと、その効果的な使用法への無頓着さは、「あ、うん」の間で心が通じ合うという、日本の文化、風土の影響のせいでもあります。それを自覚して、しっかりとトレーニングすれば、優れることはさして難しいことではありません。ぜひ、本書で音声力に差をつけましょう。

 

〇声のくせとは、何か

 

声のくせは、その人の声の特徴であり、個性です。声を聞いて、あなただとわかるのは、声にあなた独自の音色が表われているからです。しかし、あまりに発声のよい状態からそれていると、喉の障害に結びつくことがあります。持って生まれた声を充分に生かしきっていないのを、くせというのです。

若さがない老け声やいっていることが聞きづらいというのも、一つのくせです。声がうまく共鳴していないからです。多くの場合、生まれつきということではありません。

ガサついている声、マイクに入りにくい声は、必要以上に大きな声を出している人にみられます。声帯に力が入っていたり、喉や口内が詰まったりしているのが主な原因です。

普段はよい声でも、いざというときに、極端に不自然な発声に切り替わって、喉をしめつけている人もいます。

小さな声しか出さない人も、うまく響かないと、硬く頼りなく聞こえます。

 

〇くせと個性

 

くせというのは、個性とよく混同されます。くせのないというのは、この場合、声として何もひっかかりのないということです。他の人とあなたとを区別する何かのことです。声の場合は、声の大きさ、話すスピード、方言など、いろいろあります。特に主なのは、音色です。楽器の区別は、目をつぶってもできます。ピアノとバイオリンとトランペットは間違えませんね。その違いは、音色です。くせというのは、きっと中学生が始めてそういう楽器を扱ったときに出す、ノイズのようなものと思えばよいでしょう。うまく本来の機能を扱えていないために生じるイヤな感じと思うとよいでしょう。

 声には、呼吸や発声だけでなく、意志や意図も入ってくるので、やっかいです。発声に関しては、本書のトレーニングで直せます。できるだけ、明るく、気分よく、笑顔で話しましょう。そしたら、少々くせがあっても、魅力的な個声となって聞こえるのですから。

 

〇声のくせをとるには

 

発声について、無自覚のうちに間違ったイメージや思い込みがある場合、他人の声やその使い方の影響による場合、自分に合っていない声を出そうとすると、無理が生じます。

 発声上の問題だけでなく、発音の問題もあります。

大きな声を出しすぎている人は、トーンダウンしてみましょう。低音でゆっくりと出してください。リラックスして、強い息を使わずに声を出します。かすれたり、喉にひっかかるのはよくありません。

 身体や息のトレーニングで、少しでもお腹から息が流れるようにしていきましょう。喉から上ではなく、お腹全体に意識をもって出すことです。

 

〇「自然な声」にするには

 

「自然な声」というものがあるのではありません。「自然な声を出す」とは、あなたの声を、ごく自然に出しているように聞こえる声にしていくということです。メイクアップはするが、飾りすぎない声(無理に演じているようでない声)にするということです。伝わることを、声で邪魔しないといった方がよいでしょうか。

人それぞれに違う魅力的な声があります。そういう感覚で、自分の自然な声をみつけていきましょう。

一般的には心身がリラックスしているときに出した声は、話し声でも歌声でも、自然な声として聞こえます。楽しいことがあって、思わず笑みを浮かべているときの声が理想です。

反対に不自然な姿勢や緊張した状態で発声をすると、どこかに力が入り、声も不自然になるものです。心身のどちらかでも硬ければ、声まで硬い感じになってしまいます。

声は、その人の姿勢や意志、感情にも大きく左右されます。

後ろめたいとき、うそをついているときなどは、物腰だけでなく、声も不自然になるでしょう。つまり体調から精神的なものまで、全てが声に現れてしまうのです。

 

  • 自然な声にするためのトレーニング

・息と声をミックスさせるトレーニング

 身体から深い息を出したあと、そこにうまく声を合わせるようなつもりで声を出してください。

1.「ハーアー」  2.「ハーエー」  3.「ハーオー」  4.「ハーウー」

・声で伸ばすトレーニング

1.「アーー」  2.「ハアー」 3.「フゥー」 4.「へエー」 (各20~30秒) 

 

・自然な声で読むトレーニング

情景を思い浮かべて、ゆっくりと読んでください。

1.「今日は気持ちのよい朝ですね。」

2.「すっかり晴れましたね。」

3.「どうも雲行きがよろしくないようですね。」

 

■応用例文トレーニング 

1.「ただ今戻りました」

2.「お先に失礼します」

3.「お疲れさまでした」

4.「失礼いたします」

5.「恐れ入ります」

6.「お先にいただきます」

7.「ご馳走さまでした」

8.「ちょうだいいたします」

9.「そろそろおいとまいたしますので」

 

「最強トレーニング」 Vol.16

〇さまざまな音をつくる子音(4) マ行、ヤ行、ラ行、ワ行

 

□マ行の発音

EX.「いつまでもお変わりありませんね」 「いつもおしゃれでいらっしゃる」

 

〇 マ行音……マ[ma] ミ[mi] ム[mu] メ[me] モ[mo]

 

 両唇を閉じ、軟口蓋を下げ、鼻に通し、鼻腔と口腔に共鳴するmを発します。そこから唇をあけ、母音につなげます(唇を閉じて出すため、両唇音といいます)。

 

〈マ行音とバ行音を区別する〉

 両唇を用いる点で、マ行はバ行音と近いため、混同しがちです。

 「さびしい」→「さみしい」 「寒い」→「さぶい」 「無防備」→「ムモービ」 などになりやすいのです。

1.マバマビマブマベマボ

2.バマバミバムバメバモ

 

□ヤ行の発音

EX.「ようこそおいでくださいました」 「よろこんでちょうだいいたします」

 

〇 ヤ行音……ヤ[ja] イ[i] ユ[ju] エ[e] ヨ[jo]

 

 [j]の音は、[ӡ]の音と同じ口構えで、中舌を硬口蓋に近づけて出します。([ӡ]が無声音であるのに対して[j]は有声の摩擦音です。[j]は先に述べたように、半母音と呼びます。

 ヤ[ja]ユ[ju]ヨ[jo]は、イア、イウ、イオのようにイの口の形をして、ア、ウ、オを発音してみましょう。力が入ると、横浜がィヨコハマのように、ねばっこくなります。

 そのため、イ、ユ、ヨが混用されています。行く(ユク、イク)、よい(ヨイ、イイ)などです(どちらも認められています)。

 

□ラ行の発音

EX.「恐れ入りますが」 「いらっしゃいませ」

 

〇 ラ行音……ラ[ra] リ[ri] ル[ru] レ[re] ロ[ro]

 

ラ行音は、日本人にとってはなかなか難しい音で、いくつかのパターンがあります。

1.「ホラッ!」というときに、はじくように聞こえる弾音。

軽く歯と歯ぐきの境目のあたりに舌をはじくようにつけます。弾くところは前から「ル」、「レ」、「ラ」、「ロ」、「リ」の順で、奥に。

(これは語中・語尾に、多くあらわれます。空、くり、晴れ、風呂など。)

2.ブルンブルンなどというときの強い震え音。巻き舌で話すときの音です。(この巻き舌のラ行は共通語では用いないのが普通です。)

3.英語の[l]のような発音で、前もって舌先が歯ぐきに触れていて跳ねる音です。語頭には、この音が多く用いられます。

ラジオ、ロボット、リズム、レモン、ルビーなど。「リ」は、口蓋化します。

ちなみに英語の「L」は、舌先を軟口蓋、口の奥で、「R」は、唇を丸め、舌先を上(口蓋)につけず、口先で発します。

 

〇 ラとRとL

 

「R」舌の先端を振動させ巻き舌にします。

「L」舌の先端を軽く上の前歯の先方につけ、前にはずしながら発音します。

「ラ」 Lよりも少し縮まり後方につき、舌根がやや固くふくらみます。どちらかといえば「ダ」に近いようです。

「LaLaLa」は「ラララ」と違って、あごは動きません。

 

□ワ行の発音

EX.「私は〇〇 と申します」「おわかりになりましたか」

 

〇 ワ行音……ワ[wa] イ[i] ウ[u] エ[e] ヲ[o]

 

 ワ行の[w]は、口構えをウ[u]に近い形にして発する両唇摩擦音です([w]は、英語の発音ほど、両唇を近づけません)。

 ワ行の「イ」「ウ」「エ」「ヲ」は現在ではア行音と同じ音になっています。ワ行音は[wa]だけが違う発音です。(つい最近まで、「イ」→「ヰ」、「エ」→「ヱ」、「オ」→「ヲ」のかなで表わしていました。昔は「ウィ」、「ウェ」、「ウォ」の音がありました。地域によってはそうした発音が残っています。共通語の場合、表記は「ヲ」でも、発音は「オ」と同じです。)

☆「わたし」と「あたし」を区別しましょう。

 

  • 〈マ行のトレーニング〉

(マ)前々から前歯が曲がっていた/まじめなママがますます迷う

(ミ)波のように満たしてみる/みみずくの店

(ム)息子は六日に婿入り/昔むかしの虫かご

(メ)女々しくて面目ない/目が覚めたら雨だった

(モ)身も心も燃え立つ/桃色の森を求めて

 

  • 〈ヤ行のトレーニング〉

(ヤ)奴らと野球をやる/約束を破って夜勤を辞めた

(ユ)優雅な百合の花/憂鬱な夢にゆらゆら

(ヨ)用心してヨットを寄せる/よそよそしさを装う

 

  • 〈ラ行のトレーニング〉

(ラ)皿を洗うのはつらい/桜は暗いときに開く

(リ)理想を力説するリーダー/リリカルな輪郭と彩り

(ル)留守に盗られるルビー/ベルがうるさく鳴る

(レ)レンガづくりの歴史的レストラン/レアチーズにレモンを入れる

(ロ)色鮮やかな摩天楼を見下ろす/路地をうろついていろ

 

  • 〈ワ行のトレーニング〉

(ワ)忘れられない脇役の笑い声/わしの若い鷲

 

 

〇さまざまな音をつくる子音(5) 促音、撥音、拗音

 

促音・・・・・・「ッ」

 

 促音は、マッタクなどと小さい「ッ」を使って表記しますが、音声的には、そのあとに続く音を発する口構えのまま一拍分息を急に止めることです。つまり、ガッカリは[k]の口構え、ヤッパリは[p]の口構えをつくることになります。したがって促音といえばどんなことばにも、いつも小さい[t]の発音が伴うというものではありません。

 促音が小さい「ッ」で表されるため、本来促音でないものが、促音のように間違って発音されるケースもあります。

(例) カムチャツカ×カムチャッカ

    かつて(カツテ)×カッテ

    トロツキー×トロッキー

    ラデツキー×ラデッキー

 

撥音……ン[m][n]

 

「ン」で表記される撥音は、両唇や舌などで口からの呼気の出口を閉じたうえで、鼻腔への通路をつくって発音する音です。五十音図ではンと一文字で表わしますが、そのときのことばによっていろいろな表われ方をします。

 次の音がどんな音かによって違いが出ます。

 ンのあとにp、b、mの両唇音がくる場合は[m]の音になる傾向があります。

 ンのあとにt、d、n、rなどの歯茎と舌先を使う音がくるときは、[n]の音になる傾向があります。

 上にある以外に、アナウンサー、恋愛(レンアイ)、陰うつ(インウツ)、温和(オンワ)、範囲(ハンイ)、繁栄(ハンエイ)、本式(ホンシキ)、三役(サンヤク)など、[s][a][o][u][w][i][e][∫][j]などの音の前にあるンは、はっきり聞き取れない中途半端な発音になることがありますから、意識してはっきり出すようにつとめましょう。

 

拗音・・・・・・「ャ、ュ、ョ」

 

 カ[ka]という音に対してキャという音があります。この場合、音韻論的には、キャはカ[ka]の中に半母音[j]がはさまって[kja]という拍(音節)になっているとも考えられます(国語学大辞典)。このように子音+母音の拍(これを直音といいます)に対して、半母音が入った拍を拗音とよびます。

共通語の拗音は次の十二種です。

 キャキュキョ[k] ギャギュギョ[g] キ゜ャキ゜ュキ゜ョ[ɳ] シャシュショ[∫]

 ジャジュジョ[dӡ] チャチュチョ[t∫] ニャニュニョ[n] ヒャヒュヒョ[ç]

 ビャビュビョ[b] ピャピュピョ[p] ミャミュミョ[m] リャリュリョ[r]

 拗音は、音韻論的には、子音+半母音+母音からなっているといいましたが、音声学的に個々にみますと、[k][g][b][p][m][r]は、半母音[j]を経て母音[a][u][o]につながる音であり、その他は[∫][dg][t∫][h]に母音[a][u][o]がついたものです。また、拗音のはずのことばで、拗音でない発音を認める場合があります。

  千住(センジュ)→センジ

  手術(シュジュツ)→シュジツ

  新宿(シンジュク)→シンジク

 

  • 拗音のトレーニング

1.キャキュキョ  ギャギュギョ  キ゜ャキ゜ュキ゜ョ

2.シャシュショ  ジャジュジョ

3.チャチュチョ  ニャニュニョ

4.ヒャヒュヒョ  ビャビュビョ  ピャピュピョ

5.ミャミュミョ  リャリュリョ

 

  • 促音「っ」のトレーニング

1.「にっちもさっちもいかない」

2.「おっとびっくり、ずっこけた」

3.「キットキッズ 食った」

 

  • 撥音「ん」のトレーニング

1.「仙台の先輩はガンガン打った」

2.「先頭にいた連盟は散会した」

3.「宣伝した新聞で宣言する」

 

「最強トレーニング」 Vol.15

〇さまざまな音をつくる子音(2)サ行(ザ行)

 

□サ行の発音

EX.「すみません」 「失礼しました」 「お先に失礼します」

 

〇サ行音……サ[sa] シ[∫i] ス[su] セ[se] ソ[so]

 

 舌の先を上歯茎の裏に近づけると、舌先の下の部分は、下歯の裏に密着し、上歯茎の裏と舌先の上面との間にわずかなすき間ができます。そこに息を吐くと、狭いところを押し出す息で摩擦音が生じます。これが[s]の音です。

サスセソは、[s]の音に母音アウエオが結びついたものです。

 

<シとサスセソの違い>

 「刺す」「死す」の発音を比較して、呼気の通るすき間の位置を比べてみてください。

 サは舌先が上歯茎の裏に近づくのに対して、シは舌の上面の前のほうが、上顎の前方の硬口蓋に近づき、舌先の下がサと違い、下歯の裏から離れた状態で発されます。このような音を[∫i]であらわします。「静かに、シー! 」というとき、あるいは「シャシシュシェショ」の「シ」です。先生を「シェンシェイ」となまるのは、この混同です。「スエスエ」、「スエンスエン」、「センセイ」とくり返して直しましょう。

(近頃、このシの代わりにスィ[si]にする人が多くなっています。シ[∫i]を無声音で伸ばすと、シーといつまでも摩擦音ですが、[si]を伸ばすと、母音のイになります。

sの音が[∫]の発音にならないように

 サスセソの音は、舌の位置に注意してください。[s]は上歯茎の裏に近づいて発音しますが、[∫]は舌先が上歯先の裏に近づきます。

「さあ~」と舌が出すぎたり、息の通り道が狭くならないと、切れの悪い音になります。逆に、息の音が強すぎるなら、上唇を歯に少しかぶせましょう。

 

〇ザ行音……ザ[dza] ジ[dӡi] ズ[dzu] ゼ[dze] ゾ[dzo]

 

 サと違い、舌先がまず上歯茎の裏に接するのがわかります。

 その接触でふさいだ気道を押し破って、呼気が出るときに破裂音がつくられます。

 続いて、そのときできたすき間から呼気が流れるときに生じる摩擦音が加わって、[dz]の音をつくります。このように破裂音と摩擦音の組み合わさった音を破擦音といいます。

 ザ行音の中で、ジはシの場合と同じく口蓋化した音で、[z]の音をつくる位置より舌が硬口蓋に近いところで発音されます。(地域によっては、ジ[dӡi]とヂ[di]、ズ[dzu]とヅ[du]を区別して使っているところもありますが、共通語では区別しません)

 

  • 〈サ行のトレーニング〉

(サ)さっさと財布を探さなきゃ/さすがの寒さに目覚めた

(シ)椎茸と塩を仕入れる/死の獅子舞ショー

(ス)すべてを捨てて救う/炭火を入れるのが済む

(セ)聖母は戦争を責める/背伸びする制服の生徒

(ソ)外の掃除が騒々しい/空にそびえる壮大な阿蘇

 

〇さまざまな音をつくる子音(2) タ行(ダ行)/ナ行

 

□タ行の発音

EX.「どうぞこちらに」 「どうかお待ちください」 「ちょうだいいたします」 「お疲れさまでした」

 

〇タ行音・・・・・・タ[ta] チ[t∫i] ツ[tsu] テ[te] ト[to]

 

「タ」「テ」「ト」は、上の歯か歯茎あたりで、舌先を離して生ずる破裂音[t]に、「ア」「エ」「オ」がついたものです。

 「チ」は、口蓋化した音で、舌が上歯茎より、もう少し奥の硬口蓋に接して、破裂音[t]を発し、そのすき間で生ずる摩擦音[∫]が、組み合わさった破擦音です。

 「ツ」は[t]が[s]に動く破擦音です。「アツイ」をゆっくりと発音してみるとわかります(トゥ[tu]ではない)。

 

<チ[t∫i]、ティ[ti]、ツィ[tsi]の違い>

 [t∫i]をささやくように無声音で「チー」と伸ばして発音してみると、最初の「チ」の音のあとに「シ」のような摩擦音が「シー」と続きます。「アチー!」の「チ」。「チーチーパッパ」の「チ」の音です。「チ」は「ティ」ではありません。

 「ティ」[ti]、「ツィ」[tsi]を伸ばすと、「イー」となります。この二つは、外来語(ティーポット、ツイードなど)以外では使いません。つまり、「チ」は、「チャ」「チ」「チュ」「チェ」「チョ」、「ツ」は「ツァ」「ツィ」「ツ」「ツェ」「ツォ」の音です。

 

〇ダ行音……ダ[da] ヂ[dӡi] ヅ[dzu] デ[de] ド[do]

 

 「ダ」「デ」「ド」は、タ行が無声音、ダ行音は有声の破裂音です。

 「ヂ」と「ヅ」は、音の上で「ジ」と「ズ」と同じです。「ヂャ」「ヂュ」「ヂョ」も、「ジャ」「ジュ」「ジョ」と同じで、限られたとき以外は使いません。

 このようにザ行音と共通のところが多いため、「ダ」「デ」「ド」と、「ザ」「ゼ」「ゾ」を混同しないよう、注意しましょう。「さざ波」が「サダナミ」、「撫でる」が「ナゼル」、「喉」が「ノゾ」になる人は、ここで直しましょう。「地図」が「ツゥヅゥ」や「ツィヅィ」となる人も、要注意です。

 

<タがいいにくい>

「竹たてかけた」がいえない人は、舌の移動の練習をしましょう。

・タケタテタケタケ

(この竹垣に竹立てかけたのは竹立てかけたかったから、竹立てかけたのだ)

 

  • 〈タ行のトレーニング〉

(タ)楽しい旅をしたい/正しい畳の叩き方

(チ)塵はきちんと持ち帰れ/父が痴漢に注意した

(ツ)つまらない付き合いを続ける/つるつるのツノ

(テ)丁寧に手を洗う/転校生の手書きの手紙

(ト)灯台のともしびが届く/遠い都市の時計が止まるとき

 

□ナ行の発音

EX.「おさしつかえなければ」 「お会いになりますか」

 

〇ナ行音……ナ[na] ニ[ɲi] ヌ[nu] ネ[ne] ノ[no]

 

 舌の接するところは、タ行と同じです。タ行音は破裂音、ナ行音は、舌を歯茎につけたまま、息を鼻へ抜く鼻音になります。

 「ナ」は、そのまま、声を出さないと、ただ鼻から息が静かにもれます。そこで、鼻に手をあて声を出して「ナ」を発音すると、声が鼻に響いて振動するのがわかるでしょう。

・ナヌネノとニの発音の違い

 ニは、ナヌネノと調音点が違い口蓋化します。

 

  • 〈ナ行のトレーニング〉

(ナ)なし崩しに成し遂げることはない/海原の七不思議

(ニ)二人三脚で荷造りして逃げた/兄さんを二度と憎まない

(ヌ)ぬるぬるぬめる/塗り薬が塗れぬよ

(ネ)来年を念じながら眠る/寝たら願いが叶うね

(ノ)ノックののち覗く/納期でノイローゼの農民

 

〇さまざまな音をつくる子音(3) ハ行(バ行、パ行)

 

□ハ行の発音

EX.「はじめまして」 「大変お世話になりました」

 

〇ハ行音……ハ[ha] ヒ[çi] フ[ɸu] ヘ[he] ホ[ho]

 

[h]の音は、「ハー」と息を吹くときの喉音です。喉の奥を、「ア」「エ」「オ」より狭くして出す摩擦音です。「ハ」「ヘ」「ホ」は、この[h]音と母音「ア」「エ」「オ」でつくられます。[h]は喉頭からの深い声、喉音です。

「ヒ」[çi]は「シ」の発音に近い口構えで、「シ」より舌の中ほどをもっと盛り上げて発する弱い摩擦音です。「ヒ」は舌と口蓋でつくられる音です。

 

<「ヒ」と「シ」を区別する>

 「ヒ」と「シ」は調音点が近いため混同しやすく、日比谷と渋谷、質店などは、よく聞き間違えます(地域によって「ヒ」と「シ」を逆に発音するところもあります)。

1.ヒシシヒヒシヒシ

2.シヒヒシシヒシヒ

「フ」[ɸu]は、「フーフー」と、吹くときに出る両唇を用いた摩擦音です(英語などの[f]のように、下唇を上歯で噛んだ状態で出しません)。

 日本語の「フ」と[f]の違い、「ハ」「ヘ」「ホ」の[h]音と[ɸ]音の違いも確かめましょう。

 「ヒ」は、「ヒャ」「ヒ」「ヒュ」「ヒェ」「ヒョ」、「フ」は「ファ」「フィ」「フ」「フェ」「フォ」の仲間です。

 

<「ヒ」と「フィ」を区別する>

 この「ヒ」を両唇をまるめ「フィ」のように発音しないように。

1.ヒフィフィヒフィヒフィヒ

2.フィヒヒフィヒフィヒフィ

 

〇バ行音……バ[ba] ビ[bi] ブ[bu] ベ[be] ボ[bo]

 

 [b]は、唇を閉じ軟口蓋をあげて鼻へ抜かず、唇で出す弱い破裂音です。語頭では強く感じても、語中での[b]は唇がわずかに接するかどうかくらいで、ほとんど摩擦音に近くなります。

 「ウー」と発音しながら、だんだん両唇を近づけてみると出る音が、「ブ」の音です。

 

〇パ行音……パ[pa] ピ[pi] プ[pu] ペ[pe] ポ[po]

 

 [p]は無声破裂音です。外来語や擬声語(パタパタ、ピカピカなど)や、促音(ん)と使います。

 

〈「プ」と「フ」を区別する〉

 共に唇で発音します。「プ」は唇がいったん完全に閉じ、瞬時に息が流れ出て、「フ」は少し開いたまま息を流し続けます。

〈「パ」と「バ」を区別する〉

 「バ」は最初から音になります。「パ」は最初は音にならず、「ア」のときに、音になります。

 喉仏に指を当てると、「バ」は、すぐ振動し、「パ」は遅れて振動します。つまり、「バ」は声を伴う子音(有声子音)で「パ」は声を伴わない子音(無声子音)です。

1.バパパババパバパ

2.パババパパバパバ

 

  • 〈ハ行のトレーニング〉

(ハ)羽根をはがされた羽アリ/華やかではかない花火

(ヒ)昼間はひとりで暇だ/光る瞳にひかれる

(フ)工夫した豆腐のフライ/不意に触れ合う二人の皮膚

(ヘ)辟易するヘリウムの変化量/ヘラヘラ笑う蛇

(ホ)本当のほたるが欲しい/星の本を翻訳した

「最強トレーニング」 Vol.14

〇さまざまな音をつくる子音(1)カ行(ガ行)

 

声を出すときに、声を発するところや声を妨げるところ、その位置ややり方が変わると音も変わります。そこで生じた音を子音といいます。

 

日本語の場合は、子音は母音につく形(原則として1子音+1母音)です。柔軟かつすばやく出すことが求められます。母音が流れをつくり出すのに対し、子音はそれを妨げ発します。

K、T、Fなどは、声帯を震わさずに、喉、舌、唇によって発音されます(これを無声音といいます)。

L、M、N、R、Z、V、Wなどは、声帯の振動を伴います(これを有声音といいます)。

日本語の欠点は、口の中で平たく浅い声になってしまい、外にひびいていかないことです。それを欧米の言語のように口の中を縦に広く、響きも胸と鼻の線を結ぶ<縦のイメージ>で出すことがポイントです。欧米の発声と同じように日本語もしっかりと伝えられるようにしていきたいものです。

 

日本語では子音母音の区別がないため、スーツ(Suit)、スーパー(Super)のす(Su)とスクール(School)、スケート(Skate)のS(子音のみ)を同じ発音「ス」で認識しています。

それを、耳での感覚による認識をより鋭くすることで解決していきます。日本語の音声言語教育の必要性は大いにあるのですが、今のところ、外国語学習(聴音と発音)によって代用されているといってもよいでしょう。

 

K 舌の中央を山型に軟口蓋につけ、息を止めてこれを離すことで発音します。「か」は、舌根の奥で行なっているため、次にくる母音が不明瞭になりがちです(Gにも同じことがいえます)。

N 日本語「ん」とは違います。歯茎の軟口蓋に舌の先がついて、瞬間的に鼻に抜けます。

V、F、W 下唇の裏と上の前歯で摩擦して発音します。

Z 歯の間ではなく、舌を歯の間で出します。

 

□カ行の発音

EX.「こんにちは」 「こんばんは」

 

〇カ行音……カ[ka] キ[ki] ク[ku] ケ[ke] コ[ko]

 

日本語で最も語数が多いのが、カ行、ガ行で始まることばです。

カ行の子音[k]は、奥舌と軟口蓋でつくる破裂音です。奥舌を軟口蓋につけて息の出口をふさぎ、息をはき出すとき、この閉じた部分をつき破ることによって発します。

 「アカアカ」をくり返してみましょう。鏡でみると、喉の奥(軟口蓋)の口蓋垂に舌が盛り上がります。「カ」「ク」「ケ」「コ」はこうして発音されます。

 

<キとカクケコの違い>

「カキカキ」といいながら、鏡で喉をみてください。

軟口蓋は「カ」でみえるのに、「キ」ではよくみえません。舌の手前が盛り上がるからです。キ[ki]は、「イ」の発音につられて、舌の接点が他のカ行音よりも前で硬口蓋になります。これを口蓋化といいます。口蓋化は、他の行にも出てきます。(調音点は、前方から、キ→ク、ケ→カ→コの順です。また、キ、クは、無声化することがあります。)

 

〇ガ行と鼻濁音について

 

・ガ行音……ガ[ga] ギ[gi] グ[gu] ゲ[ge] ゴ[go]

[g]は、[k]と同じに発する子音です。[k]が無声音、[g]は有声子音です。[g]は強い破裂音で、強く発音すると耳ざわりです。「ガ」「グ」「ゲ」「ゴ」に対して、「ギ」は口蓋化します。

 このガ行音は、呼気を鼻へぬく鼻濁音になることがあります。

 

〇ガ行が鼻濁音になる場合

 

助詞のガ  EX.山カ゜(゜は鼻濁音化を示す)

もとはカ行のものが複合語になって濁ったもの  EX.株式会社

数字でも固有名詞化したもの  EX. 十五夜、大五郎

 

〇ガ行が鼻濁音にならない場合

 

第1シラブルにくるガ  EX.学校

複合語  EX. 専門学校

外来語  EX.スィンガー

擬音    EX.ガンガン

数字    EX.5(ゴ)

 

  • 〈カ行のトレーニング〉

(カ)固まった価値観を変えろ/階段の壁にかかった消化器

(キ)今日のキリンの気持ち/地球の危機きっと来てる

(ク)空想の中の百済の国/熊本の空港にくる

(ケ)過去の経験にけりをつける/やけ酒のわけ

(コ)苔むした小石の小径/行楽地で孤独な子供

 

「最強トレーニング」 Vol.13

〇あまり大きく口を開閉しないこと

 

日本人の発音練習は、きれいな(美しくひびく)日本語を使おうと、口の形の練習ばかりをやっているかのように思われます。(若い女性のナレーター、アイドルやファーストフードの店員、大企業の受付、プロの電話交換の声などを思い浮かべてください。)

 しかし本当は、身体からしっかりと息を流し、胸の深いところで声としてしっかりととらえ、充分に共鳴させた上で発音した方が、よいのです。身体を使う分、喉は楽になります。

へたな合唱団のように口ばかりパクパクして、本当の声が身体から出てこないようでは困ります。1音1音、大きく口を開閉するのは不自然な上に、息の流れが一定でなくなり、流暢に聞こえにくくなります。

 現場で即戦力を求める場合、こういう形になるのは、やむをえないかもしれません。ビジュアル(口の形)でも、伝わる分、口の形を整えるのは、有利であったからです。

 しかし、ここでは、声としてしっかり出した上で、音として調整するようにしましょう。

 口をはっきりとあけることは、最終段階でよいのです。口の形からやる人も多いのですが、母音というのは唇や口に直接関係していないことを知っておいてください。

 

〇日本語のアイウエオは一時、使わなくてよい

 

日本語では声が浅く、どうしても無理が生じて聞こえます。たとえば、「ウ」の発音は軽く口を閉じ喉をならすものですが、こうすると息がもれやすく身体からのしっかりとした声になりにくいのです。日本語の口の形通りに発音すると、ア、イやエも、ずいぶんと薄っぺらい声になります。

外国人が日本語で歌ったものは、とてもきれいに音が響いています。これは、「U」でOに近いところで、喉も口のなかも開いたまま発声するからです。私や役者が話すときは、この深い母音AIUEOを使っているのです。

 

〇インターナショナルな発音は、発声から

 

インターナショナルな発声の練習をします。これは、いままでの日本語の音声トレーニングと異なります。でも、20年以上使い慣れ聞いてきた日本語のくせがそう簡単にとれるわけではありません。特に、日本語での発音をもとに外国語の発音をつくろうとする無理からきます。

そこで私は、外国語の発音以前の発声まで立ち戻り、そこからの深い音を借用させています。つまり、どうせ勉強するなら何語でもOKという調音以前の発声を身につけようということです。しっかりした発声でなくては発音もうまくいかないからです。

 

※発音は聞きとる力によって大きく異なります。母音を浅く捉えた日本語と日本人の生活は、日本人を国際的に強い音声言語の使い手にはしませんでした。

 

〇発声から発音へ

 

 日本語のアエイオウを、AEIOUとおきかえて、英語で説明します。ただし、英語のAは口内が狭くなりがちなので注意してください。

A……GARDEN(ガーデン) 口を大きくあけ、舌を平らにして明るく。薄っぺらな声にならないように

E……EVER(エバー) Iより口を大きく。多くの息を使う

I……CHEESE(チーズ) 唇がほどよく開き、明るく広く

O……FOR(フォー) 舌を平らにする

U……FOOL(フール) 唇をあまり前につき出さず、鼻音にもならないように気をつける

 ついでに、もう3つ、発音を学びましょう。

ユ( Ü)(ウムラウト)……ウの口形でイを発音(英語になく、ドイツ語・フランス語) [※ウムラウト・・・後続母音の影響による母音変異]

アー(ER)……HER、口を中くらいにあけて、やや唇をつき出す

ア(A)……HAT、大きな口で明るくはっきりと出す

 

〇外国語の発音もよくなる

 

 A・E・I・O・Uを、最初の段階では、「A」と「E」の間の音、「E」と「I」の間の音など、それぞれの中間音を出してみるのもよいでしょう。ここでは、響きと声をコントロールする方法をおぼえることに意味があるからです。あいまいな音をうまく出せることも、インターナショナルなレベルでの発声・発音に対応していくためには大切なことです。

もちろん、ここでいう、あいまいとは、言語(発音)不明瞭ということではありません。日本語のアイウエオではないだけで、はっきりした音ということです。

 

〇AEIOUアエイオウ、母音のチェック

 

「A」「E」「I」「O」「U」で同じ音色にとることをチェックしてください。

□喉が開いている

□声がしっかり胸についている

□お腹をしっかりとつかって支えている

□語の響きが均一である

□5音とも、身体の使い方、息の使い方がそろっている

□息が詰まっていない、きちんと流れている

□舌に力が入っていない、平らになっている

□呼吸の準備をしてから発声している(ため、構えがある)

□あごが出ていない

 

〇ことばの基本は5つの母音

 

母音とは、声帯で発せられた声が、共鳴器官を通って鼻や口から外へ出るまでの間、妨げられずに出たものです。

日本語では、ア行音 あ[a] い[i] う[u] え[e] お[o] にあたります。

 

〇母音の発音

 

EX.「ありがとうございます」 「お先にいただきます」

 

母音は、舌の位置、口の開き方の三点で、発音が変わります。

 

[あ]自然な口の構えで、あごを大きく開きます。上下の唇の間に、指二本が縦になんとか入るぐらいが、「あ」の最大の口の開きです。舌はあごと一緒に下げて、唇はまるめません。

 

[え]「あ」から、あごを閉じてきて、舌の位置を「あ」のときより前にもち上げます。唇は、両端をやや左右に引く感じです。

 

[い]「え」からあごを閉じてきて、ほとんど開かない状態にします。舌は、上歯ぐきの上の硬口蓋へ向けて、ジーと摩擦音が起こる手前まで高く上げます。唇は、平たくわずかに開けます。

 

[お]「う」の場合より、あごを開き、上下の唇の間に、人指し指一本がたてに入るぐらいの大きさにする。舌は「う」のときよりやや奥へ引き込み、「あ」の場合より奥舌がうしろへ持ち上げられます。唇は五つの母音の中で、一番丸くします。

 

[う]「い」に近いのですが、あごの開きは、五つの母音の中で最も小さくなります。舌先を奥のほうへ引っ込め、舌のつけ根に近い部分をやや緊張させてもり上げる感じです。唇は「い」より両端を左右から中央へ引き寄せます。(日本語の「う」は、完全にまるめるのではなく、外見上は平らな感じ。唇は丸くなりません。)

 

〇声からことばに

 

 声が使われ始めたときに、ことばはまだありませんでした。

最初に使った声は、動物と同じく痛みや恐れを表したり、敵を威嚇するもの、悲鳴に近いものなどだったと思われます。

日本語では5音しか認識しない母音も、国が違えば異なる音が多くあります。かつては、日本語のなかにも今と違う発音がたくさんあったのです。アイウエオは、後々に日本語のことばとして(とくに書くために)定められたものです。

 

基本を旨とするトレーニングでは、原始的な音のエネルギーにまで戻ってそのパワーを吸収していきたいものです。

結果として、発音、ことばとして聞こえるようにそろえることができればよいのです。

声が出てからことばになっていったのですから、まずは声が出ることにこだわって、チェックをしていきましょう。その後にことばとして使えるようにしていきましょう。

 

  • 母音の発声トレーニング

「ア」 アーいい天気だ

「エ」 エーそうだったんですか

「イ」 イーッだ イッヤッダッ

「オ」 オー ワンダフル

「ウ」 ウー マンボッ

 

〇母音の発声で特に注意すること

 

□「あ」……舌の力が抜けているか

□「え」……口が狭すぎて「い」に近くなっていないか(このときは、唇を少し横にひく)

□「い」……「え」とか「あ」に近くなっていないか

□「お」……口の開きすぎで「あ」に近くなっていないか、唇を使いすぎて「う」に近くなっていないか

□「う」……「¨」(ウムラウト)になっていないか 

 

 指や鉛筆をくわえて、口の形をまったく動かさず、唇と舌で5つの母音を発してみるとよいでしょう。

 母音そのもののもつ音質(フォルマント)は、口に到達する前につくられています。そのため、口を動かさないで、5音とも発声できます。母音は声を出した瞬間につくられるのです。ですから、口先に頼って発音せず、腹話術のように口の奥で声にするイメージをもつとよいでしょう。

 唇には力を入れすぎてはなりません。少し緊張させて声をしっかりと前に出すように習慣づけてください。きちんと発されていたら、声は結果として前に飛びます。

 舌は、前歯の歯ぐきのうしろです。そこに自然に軽くつけておきます。舌根(舌の根元の方)に力が入るとよくありません。舌を平らにするように注意してください。あごと舌を楽にすれば自然とそうなります。

 すべてのことばをはっきりと発音しすぎることによって、流暢な流れ、ことばの抑揚を打ち消してしまう人もいます。これは、ことばを口先ではなく、口の形をあまり変えずに、はっきりと響きで伝えられるようにすることによって解決できます。

 私が深い声を重視するのは、発音面で区分けすればよいアナウンサーならともかく、この問題を解決せずには、魅力のある声が出せないからです。

ことばをはっきりさせるための発音練習は必要ですが、それと声で、自分の意志や感情を伝えることは別問題です。相手に伝わり、相手の心を動かすだけの表現がのる声が、まずは大切であることを忘れないで下さい。

 

  • 母音のトレーニング

<ア行のトレーニング>

(ア)あした、あさって、しあさって/秋、愛は熱く燃える

(イ)イライラしている猪/一途なる意志とイマジネーション

(ウ)うれしい噂は嘘だった/ウカウカしていると運が逃げる

(エ)偉い絵師が選んだ絵/エネルギュッシュな演技に詠嘆

(オ)お母さんの大きなおなか/お金を落として怒る人

「最強トレーニング」 Vol.12

〇呼吸のしくみ

 

声帯そのものは意識的に動かすことができません。そこで呼吸をコントロールすることで、その周辺の筋肉も含めた声のコントロールをしていくのです。

 

〇呼吸は肺が行なうのではない

 

呼吸は、肺がそれ自体の力で膨らんだり縮んだりして行なうものではありません。肺は、ゴム風船のようなものと考えてください。肺を取り囲む胸郭(きょうかく)が、横隔膜、肋間筋(ろっかんきん)などによって拡張したり収縮したりして、肺に働きかけ、吸ったり吐いたりできるのです。

 

〇吸気と呼気

 

吸気は、身体のなかを広げることで、肺がふくらみ、肺内の圧力が低くなり、口や鼻から空気が入ってくるのです。

もともと呼吸とは、空気の酸素を血液中に取り入れ、体内で生じた不要な二酸化炭素や水蒸気を吐き出すものでした。およそ一、二秒で吸って、一、二秒で出していたのです。

 その呼気をことばや歌など、発声に使うと、十秒くらい出して一秒吸うといった必要がでてきました。つまり、発声のための呼気のコントロールをしなくてはいけなくなってきたのです(横隔膜などは、元は吸気のための筋肉ですから、呼気に使うように、トレーニングしなくてはいけないのです)。

 

〇腹式呼吸と横隔膜のしくみ

 

 横隔膜は胸腔(肺)と腹腔(胃腸)の境にあります。しゃっくりのときに動くところです。お椀をふせたような形をしている筋肉質のものですが、これが収縮すると、全体が平らになって下がり、胸郭のなかが広がります。肋骨の下に手をあて、息を吐いたり吸ったりしてください。声楽家のように、本格的に腹式呼吸を身につけた人は、腰のまわりに空気が入るかのようにふくらむものです。

ドンデルスの模型で説明します。これは、びんを胸郭に、底に張ったゴム膜を横隔膜に見立て、二股のガラス管(気管)の先には、ゴム風船がついています。

 底のゴム膜を下に引っ張ると、びんの中の気圧が外の圧力よりも下がり、ゴム風船には自然に空気が入って膨らみます。そして、底のゴム膜を引っ張っていた指をはなすと、びんの中の気圧が上がり、ゴム風船は縮み、空気は外へ流出します。

 これが、吸気と呼気にあたります。

 

〇胸式呼吸(肋骨呼吸)と肩呼吸(鎖骨呼吸)

 

腹式呼吸に対して、声を完全にコントロールするのに適さないのが、胸式呼吸です。これは、肋骨や鎖骨で、胸部を広げ空気を入れます。ラジオ体操の深呼吸は、肋骨を引き上げて胸を広げて吸い、逆の動きで吐きます。

 激しい運動をするとハアハアと肩で息をします。これは吸うのも吐くのも速いため、すばやく酸素をとりいれるためのものです。どちらも、胸や肩が動くと見た目によくありません。(息を丁寧に保って声をコントロールできないので、発声には不向きです)息を吸うと、肩や胸がもり上がるなら、胸式呼吸と思ってください。

 

〇肺活量は気にしないこと

 

肺活量で悩む人が多いのですが、成人してからは減るだけです。小柄な人や女性は肺活量が少ないのに、声が悪いというわけではないでしょう。そんなことは気にせず、息の使い方を変えるようにしていきましょう。

大切なのは、限られた呼気量をどれだけうまく声に変えられるか、ということだからです。息がいくら多くても、息もればかりで、声として生かせないのであれば意味がありません。

いかに少ない呼気量でうまく声にできるか、それはいかにしっかりと共鳴させられるかで、決まってくるのです。

 

〇呼吸は鼻と口、どちらでするのか

 

 鼻呼吸がよく、口呼吸はよくないと、よくいわれます。確かに鼻で吸う方が、喉を乾燥させない、異物を除去するなど、健康上もよいでしょう。そのため、時間をとって行なうトレーニングにおいて、注意するのはわかります。

 しかし、呼吸の原理から考えると、吐いた分は自然と入るのですから、吸うという意識を持つことや、吸うトレーニングはあえて行なう必要はないといえます(口内を意識するために吸う息を感じてみるなどというのは、よいでしょう)。鼻がつまっていたら話せないわけでもないのですから。

 

〇たくさんのメリットがある腹式呼吸

 

腹式呼吸は、たくさんの息を横隔膜でコントロールして使えるので、発声上、さまざまなメリットがあります。そこでなぜ腹式呼吸が大切なのか知っておきましょう。

 

〇腹式呼吸を知ろう

 

腹式呼吸ができてくれば、お腹の周り全体が自然と外側へふくらむのが感じられるはずです。

両足をかるく開き、背筋を伸ばして立ってみましょう。肩の力を抜いて手を腰の両わきへあて、そこに空気が入るように息を入れてみます。そのとき、肩、胸が盛り上がったり、力が入ったりしてはいけません。

 最初はわかりにくいので、上体を前方へ倒してやったり、座ったり、寝ころんだりして、息と身体(お腹)との関係をつかむとよいでしょう。

 

〇なぜ腹式呼吸が大切なのか

 

腹式呼吸は、息を身体でコントロールして使えるので、声にメリハリがつけられます。話を力強く展開していくことができます。

人前であがると、声が細かくふるえたり、声の高さや大きさがうまく調整できなくなり、ひどいときは声が裏返ります。

心臓がドキドキして呼吸が浅くなり、お腹で支えられなくなるからです。しかし、腹式呼吸では、横隔膜で支え、あがりからくる緊張などの影響をあまり受けなくてすみます。しかも、喉を安定させやすいことから、歌唱やせりふの基本条件となっているのです。

 

〇腹式呼吸のときの注意

 

首を回したり、肩を動かしたりして、常に緊張を解きほぐしましょう。肩と首の間、胸とわき、肩との間の筋肉は、特によくほぐしておくことです。

 息を吐いてみます。喉がかわくような吐き方でなく、お腹の底から楽に絞り出すような吐き方がよいでしょう。吐き切ったら、少し止め、そしてゆるめます。すると、自然と息が入ってきます。

 これを、身体の動きとして意識しましょう。「口で息を吸っているのでなく、息が身体に入ってくる」ようにするのです。

 上体を前屈させると、お腹の前のほうが押されるので、背筋や側筋が使いやすくなります。

 

よく腹式呼吸をお腹の前を動かして鍛えている人がいますが、これは内臓器官を圧迫するだけで、あまり勧められません。

横隔膜は、肺の下にお椀をふせたような形でついているので、前ばかりを鍛えるのでなく、均等に動かしましょう。 鍛えにくい背筋や側筋を使いこなしていくことです。本格的に腹式呼吸を身につけたオペラ歌手などは、腰のまわりに空気が入るかのようにふくらみます。

 息を吐くときには、あごがあがらないようにすることです。日本人の大半は、あごが前に出すぎています。

 

〇腹式呼吸のわかりにくい人のために

 

胸を張り、少しやや上に向けて、もちあげると、腰のまわりに少し緊張を感じます。そこの筋肉(背筋、側筋)が、声を自在に扱うために大切です。足はやや開き、楽な姿勢をとることです。頭を後ろに反らないように気をつけることです。こういう立ち姿勢も慣れるまで疲れるものです。

街を歩くときも、食事をするときも、さっそうと胸を張って、背筋を伸ばし、あごをひいて、常日頃から格好よくしましょう。

1.両足を少し広めに開いて、まっすぐ立ってください。

2.肩があがらないように気をつけて、両手を腰の横にあてて、そこの筋肉を動かしてみてください。その後、両手はおろした方が、肩があがらなくてよいでしょう。

3.息を吐いたあと、少しずつ、そこに空気が入ってくる感じを確かめてください。多くの人は、前腹が出っぱるぐらいでしょう。身体ができてくるにつれ、腰の両わきや背後がふくらみます。

 次に床の上に仰向けに寝てください。

 少し重いもの(本などを3、4冊)をお腹のみぞおちのあたりにのせて、力を抜いてください。

じっとしていると、ものがお腹の上で動くので、呼吸が呼気と吸気のくり返しで行なわれているのがわかるでしょう。少し強く吐くと、その分反動で、お腹の方へ入っていくようになります。自然に吸気します。肩が動かないように気をつけましょう。

 

〇腹式呼吸の習得法

 

 声を使うときに必ずいわれるのは、腹式呼吸です。といっても、腹式呼吸は、誰にでもできます。腹式呼吸で声をコントロールすることができているかどうかが問題です。

 寝ころがってみれば、腹式呼吸していることは確認できます。しかし、それが声に応用でき、声を出したときに腹式呼吸でコントロール(常に腹式と胸式呼吸は共存するのですが)するのは、なかなか大変です。

 日本人の場合、日本語がとても浅い息で発音できることばであるため、身体や息を使った発声をあまり習得できていないといってもよいでしょう。外国人のことばの発声の響きも参考にしてみてください。強い吐息(吐気)をしっかりした深い声にせず、発音を口先や口内で浅い息で作っているのでは、声量や声域がなく、個性的な声も出しにくい状態です。

 決して、新しい声をつくるわけではありません。自分のもっている声を最大限に発揮できるようにしていくのです。それには、自分自身の今、持っているベターの声の発見と、その声のトレーニングからです。

 一般的に腹式呼吸は、誰もが日常的に使っていますが、発声時にそうならない人もいます。特に、女性のなかには、腹式呼吸を意識して身につけた方がよい人がたくさんいます。話すときにこそ、腹式呼吸中心にならなくてはなりません。

 

  • 腹式呼吸のトレーニング

1.息をお腹から出してみましょう。お腹が少しずつへこんできます。苦しくなったら、そこで、お腹がもとに戻る反動を利用して、お腹に空気を満たしましょう。吸えなくなって止まったら、そこでまた吐き出しましょう。

この動きを2~3分くり返します。

2.次にこれを次のように2秒止めてやってみましょう。

 息を吐く→2秒止める→吸う→2秒止める

 きちんと止めなくても、吐かなければ入ってくるので、保つ感じでよいでしょう。

 喉を中心としたところや、上半身に力が入らないように呼吸ができるようになることを目的としてください。

3.次は1回の息を吐く時間を5秒にしてみてください。息を吸うのに2秒、次に、5秒を10秒にしてみてください。少しずつ呼気の時間を長くしていってください。次には、吸気の時間を短くしてみてください。

 息を吐く(5秒)→吸う(2秒)

 〃   (10秒)→〃 (2秒)

 〃   (20秒)→〃 (1.5秒)

 〃   (30秒)→〃 (1秒)

 呼気は、少しずつ、お腹の力で調整できるようになるにつれ安定してきます。息の流れに乱れがなく、均一に一定量が吐けるようになるようにしましょう。やがて、息も少しずつ深くなってきます。

4.息をできるかぎり長く出してみましょう。それを、毎日1回、時計で測って記録しておきましょう。 < 年 月 日 秒>

 

〇腹式呼吸のイメージ

 

腹式呼吸のトレーニングでは、深く息を吸ったり、深呼吸するようなトレーニングはしません。息を吐いたらその分自然に入ってくるというのが呼吸だからです。呼吸については、吐いてから吸うときへの移行を、一つの円を描くようにイメージして行ないます。

 

〇胸式呼吸をめだたせない

 

息を少し強めに何回か吐いてみてください。

このとき、胸や肩がもちあがるなら、胸式呼吸を過度に加えた呼吸を行なっているということになります。

胸式による呼吸は、声帯周辺に無理な緊張を与えるため、発声には好ましくありません。腹式呼吸を、毎日の生活のなかでもしっかりとできるように、身につけていきましょう。

 

〇息の支えを得る

 

息を吸っているときは、横隔膜が下がって平らになり、胸郭が広がります。お腹の方に圧力がかかって、左右に押し広げられます。肋骨の下の左右の筋肉に弾力が感じられます。これをトレーニングによって、意図的にコントロールできるようにしていきます。つまり、すぐに横隔膜が上がらないように、保つのです。このお腹の支え、息の支えが、腹式呼吸による発声の基本となります。

 

〇お腹に意識をすえる

 

 お腹に力を入れようと考えると、全身が緊張してしまいます。こういうときは、下腹に、力でなく意識を持っていってください。意識が頭ではなく腹にすわっているときには、自然に力が抜け、思うようになっているものです。

声は、硬いところへ響きます。喉が硬ければ喉に、舌が硬ければ舌に、あごならあごにひびいて、こもってしまうわけです。

筋肉が硬くなっては、どんな動きもスムーズにできません。ひざに力が入ると、みぞおち、胸、首と力が入ります。身体は一つなので、全体に影響してしまいますから、注意してください。

女性は、声帯が男性の3分の2くらいの大きさで、横隔膜の位置も男性に比べるとやや高いため、腹式呼吸、胸声をマスターするのに、やや時間がかかるようです。

 

  • 呼吸のトレーニング

 両足を少し開き、リラックスして立ってみてください。

 息の量や長さをコントロールします。息がわかりやすいように、スーッといいながら練習します。

1.「スーーーーー」(長く吐く。息がくずれないように20~40秒くらい)

2.「スーーッ」(息を均等に吐ける範囲で15~20秒くらい)

3.「スッスッスッスッ」(息の瞬発力をつける)少しずつ速いテンポに進んでいくようにしましょう。最初は1秒に1回で練習してください。

 

  • 息の瞬発力を高めるトレーニング

 「ハッ」、「ハッ」、「ハッ」、「ハッ」、「ハッ」と、一回ごとに、お腹が少しふくらむ感じで吐きます。

 これを、ドッグブレスといいます。走ってきた犬のように、早く深くたくさん吐いてみましょう。

※やりすぎは危険です(過酸化症候群になる)。具合の悪くならない程度に、その日の体調にあわせてやりましょう。

 

  • 呼気の調整トレーニング(各10~20秒)

 息を止めても、喉は開いたままで、必ずお腹で切るようにしてください。

1.均等に息を20秒流してください

2.初めは強く、だんだん弱くしてください

3.初めは弱く、だんだん強くしてください

4.3から2へ続けてください

5.2から3へ続けてください

6.短く強弱をくり返してください

 

  • 呼吸の機能強化のためのトレーニング

1.ゆっくりと息を出し、出し切ったら、2~3秒止め、自然と息を入れる(10回)

2.息を(ハッハッハッハッ)と犬が走り終えたときのように速く吐きつづける(30秒間)

3.時計をみながら、5秒、なるべく速く吐き、5秒休む(1分間)

4.均等になるように意識して息を吐き出す(10回)

5.少ない息から、少しずつ吐く量を大きくしていく(10回)

6.上半身を中心に大きく身体を動かしながら声を出す(オイチニイ、サンシ、ゴー、ロク、シチ、ハチ)

7.脱力して、はねながら「アー」と声を出す(5回)

8.上半身を前傾させたところから、ゆっくりと上にあげながら息を吸い、「ああー」といって、戻す(3回)

 

〇腹筋の強化トレーニング

 

ここでは、腹筋の弱い人のために、それを鍛えるためのトレーニングを紹介します。

腹式呼吸に関して、お腹の前の方の筋肉はあまり固くならない方がよいので、補助的トレーニングとして用いましょう。これによって側筋や背筋をつけ、対応しやすくしておくのです。

1.仰向けに寝ころんで、足を30°くらいに持ち上げます。これを毎日行ないます。

2.仰向けに寝ころんで、頭の下に両手をあて、上半身を持ち上げます。これを毎日行ないます。

 

〇呼吸のチェックリスト

 

□喉がすぐに乾かない

□息を吐くと、お腹と結びつきが感じられる

□胸に力が入っていない

□背中はまっすぐにしている

□口をパクパクさせていない

□重心があがっていない

□肩があがらない

□上半身に力が入っていない

□首や頭がまっすぐになっている

□あごはひいていて、力が入っていない

□呼吸は同じペースで行われ、ムラがない

□お腹は苦しくなく、お腹の前の方に力が入っていない

□頭痛やめまいはしない

 慣れていないうちにあまり続けてトレーニングすると、過換気症候群の症状がでることがあります。時間を区切ってやるようにしてください。息苦しくなったときは、すぐに止めて座って休んでください。

「最強トレーニング」 Vol.11 

〇構想(イメージ)をもって話すこと

 

たとえば、テニスのプレーヤーは、相手の打つ前の動きからみて先に落下点を予測し、そこに先まわりして自分のフォームをくずさず打ち返します。話も、自分のフォームが充分に生かせるように予め、どのようなフレーズにまとまるかをしっかりとイメージしましょう。

行きあたりばったりでは、1つひとつのことばや音も途絶えがちになります。次のフレージングへの入り方のタイミングや声量、リズムののり、ことば、発声(響き)などが、ベストのタイミングでまとまりません。

「木を見て森をみず」ということにならないように、全体を見通した上で、声や息を配分しましょう。

 

〇フレージングを保つトレーニング

 

「すべての案件が昨日の会議で可決されました」

これを一つのフレージングの流れのなかでいいきってみましょう。

このとき、1つひとつのことばを身体でしっかりと押え、すべてのフレーズをそのことばの流れの上で1本化してとらえます。バラバラに口先からどこへ飛んでいくかわからないようにガナリたててはいけません。方向はひとつ、その声で一つひとつのことばをたたみかけるようにしっかりとつないでいくのです。

フレーズをこま切れ、ブツ切れにすると、フレージングと、ことばの命脈を奪います。このとき、息をしっかりと流さないと、その脈や流れも出てこないのです。

 もうひとつ気をつけたいのは、ことば、あるいはフレーズの最初と最後(発生と終止)のところでは、必ず同じポジションで声をとるということです。とくに、喉で息を切って終わると、次のフレーズで声が出にくくなり、裏返ったり、フレージングがうまくいかない原因になります。これはリピート、つまり部分的な疲労防止策です。

 

〇フレージングを正しくいうトレーニング

 

ことばのメリハリから、フレージングを考えてみましょう。

「いつもの会場で開催いたします。」

1.「いつものか、いじょうで」

2.「いつもの、かいじょうで」

3.「いつも、のかいじょうで」

これも、「いつものか、いじょうで」と聞こえないように、「いつも の 会場 で」としっかりと伝えましょう。

どうですか?大分感じが違ってくるでしょう。

 

これも、フレージングの使い方による差です。日本人は細かくとらえ、全体的につかんで大きく表現することが苦手です。小さな単位ごとにいってしまうのです。

それに対し、大きな感情のうねりのなかに、細やかな繊細な感情も入っているようにするのです。フレーズのとり方が大きいと、声が楽に出ます。気持ちよく聞こえるのです。声の動きを、波やうねり、ボールのバウンドのようなものとイメージしてください。

(つまり、最初にひとつ大きなフレーズをつくると、あとは、その勢いでいくつかの小さなフレーズが、動きのなかに出てくるということです。小刻みにブレスすると、この大きなうねりがなかなか出てこなくて、のりにくくなりがちです。)

日本語は、抑揚なく間伸びして、ことばのなかにリズムが出にくいことばです。これをメリハリの効くことばに変えていくのです。べらんめえ調のマネから練習するのもよいでしょう。

 

〇口上を聞いてみよう

 

相手を退屈させないように、日本語をうまく立ち上げている例としては、落語の語り口や、漫談、大道芸人、たたき売りの口上、もの売り(金魚や、トウフや、青竹や、石焼芋)、舞台役者のせりふなどがあります。

このあたりに、日本語をことばとして生き生きとさせる大きなヒントがあります。

子供が、おもちゃを買って欲しくて、「おかあ!さん!」といういい方は、生きていることばだから、人に働きかけるのです。

 

〇大きく踏み込んで流れをつくる

 

フレージングの話に戻ると、最初に大きなバウンドをするほど、はねて進める力が長く残っているということです。早めに大きく踏み込み、あとで自由度を長くとるのがフレージングの基本です。この自然な力を充分に生かしてもっていくと楽に心地よく聞こえます。

小さな波ばかりでは全体的に動きも出にくいし、毎回そういう波をつくらなくてはいけないので、大変な上に単調な一本調子になります。外国人があんなに楽しく速く話せるのは、このフレーズでの力の生かし方といえるのです。

 

〇声は身体という楽器から出る

 

“お腹から声を出せ”とは、よくいわれますね。ところが、それがどういうことなのかは、よくわからないのではないでしょうか。まずは、声を出すための楽器としての自分の身体のしくみを理解し、発声のためのフォームをつくっていきましょう。

 

〇身体が声を出す楽器ということは

 

私たちの声は、喉にある声帯から生じ、身体に共鳴させて出てくるものです。つまり、身体が声を出す楽器ともいえるのです。

 となると、身体そのものが成長する、あるいは鍛えられるにつれ、楽器も変わっていくわけです。つまり、他の楽器のように、完成されたものとして扱えないのです。声については、生まれ授かった自分自身の身体という楽器をよく知り、どううまく使いこなすかを学んでいく必要があるのです。

 

〇姿勢-身体と呼吸と声を一つにするために

 

畳文化で猫背の姿勢で生活していた日本人は、喉を圧迫し、こもった喉声やしゃがれ声にしてきました。そういう声を小さいときから、たくさん聞いているために、私たちの声もそういう声になりやすいのです。

しかし、本当に声の機能を充分に発揮しやすくしたところの身体の理に従った声が求められます。まず、本当に自然な声にするために必要な姿勢を習得していきましょう。

何事においても、その人の姿勢を見ただけで、おおよそのキャリアがわかるといわれます。何をするにも、姿勢というのは基本です。

ヴォイストレーニングの基本姿勢に関しては、声のために最も習得しやすい形を優先します。その形ができて自由に変化することを目指します。

自然で無理がなく、楽であることがよい姿勢の条件です。しかし、最初はどうしてもどこかに力が入りがちになります。姿勢は、練習の始めと途中と終わりと3回チェックしてください。

 

〇姿勢を正しくする

 

次の順に整えてみてください。

1.胸の位置をややあげて、背筋をピンと伸ばす(やや鳩胸のように)

2.首をまっすぐしたまま、あごをひく(頭のてっぺんからコインを落とすとまっすぐ身体のなかを通るように)

3.重心は低めに(やや足を開くとよい)

4.顔はまっすぐに前を向く

 

〇4つの姿勢

 

1.基本姿勢(立っている)

壁に、かかと・お尻・背中・後頭部をくっつけてください。そのときに、両足のかかとを、左右にこぶし二握りほど開きます。そこから、このこぶしを、背中と壁の間に入れてみてください。少し胸が上がると思います。その状態であごをひき、肩があがってないのを確認してください。

 

<チェック>

・ひざを軽く曲げて、かかとを床から離すと、つま先で立つことになります。

・ひざの屈伸を数回くり返し、身体の重心が下の方にきていることを確認しましょう。

・息を吐いて、胸や肩が動くようでしたら、胸の位置をハト胸のように少し高く持ち上げてみましょう。

・どうしても、練習中に肩や胸が動くときは、重いものを両手にぶら下げたり、寝転んで、身体を固定してみるとよいでしょう。

 

2.基本姿勢(腰かける)

イス(硬いもの)に腰かけ、背骨をまっすぐに伸ばしましょう。両手は軽くひざがしらのやや上にそえます。前かがみにならないようにしましょう。両足の幅は基本姿勢1と同じくらいに開きます。この形のまま立つと、基本姿勢1になります。

 

3.基本姿勢(前屈する)

腹式呼吸のわかりにくい人は、最初の姿勢を前屈にするとよいでしょう。腹式呼吸で声を出すとき、立ち姿勢でやると、胸の上だけに息を入れてしまう人が多く、また、前方のお腹ばかりが動いて、うまくいかないことが多いからです。

腰かけたり、前屈してやった方が始めは、声がつかみやすいでしょう。身体と息、息と声を結びつけるトレーニングとしては、身体全体をリラックスさせるためにも、この基本姿勢3を用います。

このときは、背中の線と頭の後ろの線が一直線になるように注意してください。

 

4.基本姿勢(寝ころぶ)

仰向けに寝ころがると、身体の下半分を固定できるので、呼吸を自覚しやすいです。

どんな姿勢でも、背中と後頭部の線は一直線になるように気をつけましょう。

 

〇姿勢のチェックリスト

 

□自然でゆったりした楽な姿勢

□顔はいく分、上向き

□目はしっかり見開く

□視線はまっすぐより少し上に

□下あごは少しひく(うなじを伸ばす)

□肩、首に力を入れない

□首は少し後方にひき、まっすぐおとす、立てる

□胸をはり、広げたまま、やや高く保つ

□腕はだらっと下げる

□お腹は引っ込める

 

〇発声のしくみを知る 

 

まずは楽器としての、私たちの身体の構造を、発声、呼吸のメカニズムを中心に、四つに分けて大まかに捉えてみましょう。

 

1.呼吸(呼気)がエネルギー源

人間の身体という楽器をオーボエにたとえてみると、声帯は、そのリードにあたり、声の元を生じさせています。リードを振るわせ音を生じさせるのが、肺から出る息(呼気)です。

声帯そのものは動かせないので、呼気をコントロールすることによって、周辺の筋肉も含めた声のコントロールを習得していくわけです。そこで、確実に声をコントロールするのに、腹式呼吸のトレーニングが必要となります。息は肺を取り囲む筋肉の働きによって横隔膜を経てコントロールされています。

 

2.声帯で息を声にする

肺から吐き出された空気は、直径2cmぐらいの気管を通って上昇してきます。咽頭は、食道、気道を分けるところにあります。気道の調節は、唾を飲むと上下に動く喉頭でやります。この喉頭に、V字の尖った方を前にする象牙色の唇のようなものがあります。これが声帯です。

 声帯は、気管の中央まで張り出し、左右のがくっつき、呼気がせき止められます。一秒に何百回~何千回もの開閉で、声を生じます。その響きのない鈍い音を、喉頭原音といいます。

 

3.声の元の音を響かせる

声は、声帯の振動から空気のうねりで生じます。これは口笛のように、口唇そのものの音でなく、空気音なのです。いわば声帯という、二枚の扉の狭い隙間で生じる音のことです。

その声を大きくしたり、音色をつくりだすのは、楽器の管(空洞)にあたります。(声は喉を中心に口や鼻までの声道で、共鳴します。身体の共鳴腔は、口腔、咽頭、鼻腔などです。口内の響きを舌で変えて母音をつくります。)

 

4.唇・舌・歯などで、声をことばにする

響いている声を、舌、歯、唇、歯茎などで、妨げて音をつくります。それが子音です。(これを構音・調音ともいいます。)

「最強トレーニング」 Vol.10

〇声の表情を伴って伸ばす

 

 「お世話になりました」とはっきりいってみてください。ゆっくりと、しっかり、やや大きな声でいいます。「せ」とか「た」とかが、うまくいえましたか。

もしうまくいえない音があるようでしたら、その音を後でしっかりとトレーニングします。

ことばのトレーニングを繰り返し行なうのもよいでしょう。ついでに、「よい経験になりました」に変えてみましょう。

そこで、表情をつけてみます。役者になり切ってやってみてください。

単に大きな声を出せばよいというわけではありません。そのなかにメリハリをつけ、あなたのもっているイメージが伝わるようにしてください。そのイメージをこわさないで表現を大きくしてください。

強弱、メリハリをイメージで大きくとっていくのです。すると、少しずつフレーズが大きくなって、音が伸びてきます。ことばがいい切れなくなったり、フレーズの1本の線の中でことばが処理できなくなったら、それ以上伸ばすのをやめます。

何度もトレーニングしているうちに、声はうまく伸びるようになってきます。

言霊(ことだま)といって、ことばの中には魂、命が入っているのです。これをよりパワフルに伝えるために伸ばしていくのですが、表現力が失われるほど、だらだらと伸ばしてはいけないのです。

 

  • 声に表情をつけるトレーニング

たっぷりと表情をつけていってください。

1.「私は、とてもうれしく思っています」

2.「お世話になりました」

3.「よい経験になりました」

 

  • たたみかけるトレーニング

テンポをあげ、ハイテンションでピーク、サビを出しましょう。

テキ屋、もの売り、フーテンの寅さんなどのタンカを参考に、勢いよくたたみかけてください。

1.「はいはい、どんどん、買ってちょうだいね」

2.「それはね、一番いいよ」

 

  • ツッパリのトレーニング

断定的にいって、強いひきつけをねらいます。やりすぎると、反感をもたれますが、こうして緊張感を合間で喚起させることは、有効なことです。そのあとに、やさしくゆっくりと声を使うと、より効果的になります。緩急の緩と急を、うまくどこかに入れていくわけです。きっぱりと断定してから、ふつうのいい方に戻してください。

1.「いりません。でも、時間をいただければ、検討いたします。」

2.「いけません。気をつけてください。」

  • 嘆願するトレーニング

あまり卑屈にならないことです。人柄や性格にもよりますが、相手によっては、それが効果的なこともあります。

気持ちを込めていってみましょう。

1.「お願いですから、残してください。」

2.「助けると思って、お決めください。」

  • 下手に立っていうトレーニング

 聞く人はお客様、お客様は神様と、常にうやまうことです。敬語をベースに使い、相手の尊厳に配慮します。

 嘆願してみましょう。

1.「何卒、ご容赦願えませんでしょうか。」

2.「どうか、お許しください。」

3.「失礼致しました。」

 

〇プロミネンス(prominence 強調)とは

 

プロミネンスとは、表現を相手に強く伝えること、強調してはっきりと伝えることを示します。「際だち」「際だたせ」「卓立」「対比の強調」「文アクセント」などともいわれます。ある特定のことばを結果として強調することです。

強調するためには、強い調子でいうのが、一番、簡単です。その他にも、間やテンポを変えるなど、いろんなやり方があります。

これは、個人の選択に任されている場合と、社会的習慣として決まっている場合があります。いいたいことをわかりやすく伝えるために強調します。どこにこのプロミネンスをおくかで、文章の意味が変わってくることもあります。

 いつも、どの語がどのように際立っているかを、チェックしましょう。

〇プロミネンスの原則

 

声で全てを強くいうと、均等化され、逆効果となります。特に意味をもつ大切なことばだけを強調するのが一般的です。

大声でいったために、発音が不明瞭になったり、うるさくて何をいったのかわからなくなるようでは、本末転倒です。

特に伝えたいことばに絞って目立たせるのが、プロミネンスの原則です。

この場合、プロミネンスとは、強弱アクセントの強勢のことではなく、語や文章そのものを強めるということです。

強くいうと、大きく高くなりがちですが、結果的に、しっかりと伝わればよいのです。ですから、プロミネンスにもいろんな方法があります。そのことばの前後を弱くいう。前後に間をとる。長くいう、太くいう、はっきりという、表情や方向を変えていう、などもプロミネンスの手法です。

 

  • ことばに緩急をつけるトレーニング

/のついているところまで速く、//のついているところまでゆっくりいってみましょう。

1.「あなたの上司は/ここから遠く離れたニューヨークの郊外に//住んでいます。」

2.「私は/いつも//あなたのことをずっと//思っています。」

 

  • 強調(プロミネンス)トレーニング

(1)低く、弱く読む

 次の下線部に-のついたことばを、声を低く弱く、小さな声にして読んでみましょう。そのことばの意味を強めるように、声に気持ちをこめます。

1.「お客様が ずぅっと 迷っているときは 声をかけましょう」

2.「会議で どんどん 発言をしましょう」

(2)伸ばして読む

 次のように一つの声を長く伸ばすと、そのことばの意味が強調されます。

 次の下線部に-のついたことばの意味を強めていいましょう。

1.「そんな バカな話があるものですか」

2.「時間はまだ たっぷりと あります」

(3)速く読む

 次の下線部に-のついたことばを、声を速めて(早口で)、意味を強めてみましょう。

1.「わたしの勘が ぴたりと 当たった」

2.「そんなこと 知るわけないでしょう」

(4)強調箇所を変える

「私は(1)、午後一時に(2)、会議室で(3)、営業部長と打ち合わせをします(4)」

1.誰が行くのですか (1)

2.いつ、行くのですか (2)

3.どこに行くのですか (3)

4.何をしに行くのですか (4)

 この四つの疑問のどれに最も強く答えるかによって、それぞれ際立たせたいところ、プロミネンスがおかれるところが違ってきます。

〇話の調子を変える

 

チェンジオブペースとは、ペースをチェンジする、話の調子を変えることです。

自分の声をテープで聞いたとき、単調で、退屈に聞こえるとしたら、調子が変わらないからです。話すのに、慣れていないと、大体そうなります。声や話し方に変化がないと、聞いている人は引き込まれません。

 でも、あなたは友だちに、退屈な話をする人だとは思われていないでしょう。それは、友だちと話すときには、チェンジオブペースをしているからです。それでも仲間内で聞いて退屈なときもありますね。その理由を考えてみましょう。

・話題がないとき、自分に関心のない話題のとき

・一方的に相手ばかりがしゃべっているとき

・間合い、テンポ、リズム、フィーリング、呼吸が合わないとき

・メリハリ、相手のしゃべり方が単調で変化のないとき

・発音、ことばが聞きづらいとき

友人との間では、しゃべり方まで問われることはないでしょう。おたがいのことを知っているし、関心のあることをしゃべっているからです。

それよりも、呼吸、間、コミュニケーション上で大切なことが、案外と気づかないまま、いい加減になっているものです。

友人相手ではないときは、もっとわかりやすく伝わるようにしなくてはいけません。

たとえば、友人であっても、一人でずっとしゃべっているのに、聞いている人が退屈せず、魅き込まれていく人もいるでしょう。話題も大したことがないのに、次の一言が待ち遠しいような話し方をする人、そこに自然と含まれている技術が、チェンジオブペースです。

〇ことばに抑揚をつける

 

 ことばには必ず抑揚があります。たとえば、子供達がふざけあって話していることばは、大きくなったり小さくなったりして、その感情を伴って私たちの耳に入ってきますね。

しかし、その子たちに教科書や作文を読ませたり、ト書きを話させてみてください。「ボクノオトウサンハ・・・」といきなり、生気を失った単調で、一本調子なことばの羅列、いわゆる棒読みになってしまいます。

 普通の会話の中にも、音節(シラブル)がもつ自然なアクセントがあり、強調されているところがあります。これによってことばの意味がわかりやすくなるのです。

 こういったことばに対する感覚の鋭さを磨くためには、文章を読み聞かせる力をしっかりとつけることからです。すべてのことばは、高低・強弱、そして音量、リズムと変化をもっています。これをしっかりとらえ、それをさらに大きくイメージしたのが歌や芝居のせりふだと思ってください。

 

〇抑揚と強調のトレーニング

「あなたの先日の企画は とてもよいと思います」

 これを、語調、語気、語勢、間をいろいろと変えてやってみましょう。

1.語調 高低 高い-低い

2.語気 強弱 強い-弱い

3.語勢 緩急(テンポの変化) 早い-ゆっくり

4.間 「企画は」であけましょう。その前後の音の高さに気をつけましょう。

 そこで、ことばを発見し、感じることです。

 ことばの一つひとつに情感が入るような表現ができるためには、声、ことばに強い関心をもって、感じることです。こういった音の世界の動きに、感性での快さを捉えていくことが、上達への道となります。

〇緩急の表現のトレーニング

 緩急は、普(普通)→緩→急→普→緩→急→普とつけます。

 緩では、感情を抑制し、急で、感情を解放します。

「ゆっくりとつたえる」

1.ゆ っ 、く り 、と 、つ、た、え、る

2.ゆ っ く り と、つ た、 え る

3.ゆっ・・・く・りと、つた、える

緩急とは、単にぶつ切りにしたり、音間をあけることではありません。一つずつ切ると音が切れて幼稚になるので、音を持続させる気持ちでいいます。強アクセントをおいたあと、たっぷりにゆったりというとよいでしょう。

 抑揚(イントネーション)は、ことばの調子、語調、語気、語勢に気をつけ、情感的に入れ込んだ表現で、練習しましょう。充分に気持ちを込めてやってみることです。

 長い間のあとは、やや高めに大きく入ると効果的です。これを「高出し」といい、日本語の場合は特に大切です。

 

〇声とことばから表現を感じる

 

ここで、怒った顔で笑ってみましょう。心と身体(生理)は一体のため、表情と違う表現をするときには、ひどくアンバランスで、ぎこちなくなるでしょう。次に、笑った顔で怒ってみましょう。どうでしょう。

日本語は、プライベート、オフィシャルの区別が大きいのに、日本の教育では、音声表現をあまり学びません。そのためか、どうも日本人は音声表現において、うまくありません。たとえば、英語のように抑揚をつけて日本語で話せたら、そのまま対話として通じる表現になりやすいでしょう。日本語でそういうことをしっかりやっているのは、役者の養成所くらいです。

 

そこで、役者のようにしっかりとした声で話すことを心がけましょう。それを、テープに録ってチェックしましょう。

ひとつはことばを大きく伸ばす方向でとらえていくこと(声量)、もうひとつは、高低に幅をもたせていくこと(声域)です。この両方が声の基礎条件になっているといえます。そこで、日本語もそのように応用してみるわけです。

 メリハリをつけるにも、どこを強調すべきなのかを考えなくてはなりません。

 抑揚には、リズムやことばの感じをうまく生かすようにしましょう。

より以前の記事一覧

ブレスヴォイストレーニング研究所ホームページ

ブレスヴォイストレーニング研究所 レッスン受講資料請求

サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想

発声と音声表現のQ&A

ヴォイトレレッスンの日々

2.ヴォイトレの論点