3-1.声の話

「よい声になれるヴォイストレーニング~声の科学」 Vol.5

〇男性の声の高音化現象

 

以前の日本人の男性の声は、基本周波数が150ヘルツくらいで、300ヘルツ以上の声を出すことはほとんどありませんでした。しかし、最近では驚いたときや感情をぶつけたいときに、そのくらいの高周波数を出すことが珍しくなくなってきています。

高音を出すのは声を聞こえやすく、通りやすくしようとするからです。周波数の幅が広がって、抑揚がつくので、注意を喚起し、声を伝えやすくしているのです。

職業や客層にもよります。

 

〇性別も声紋分析ならば間違わない

 

たいてい声変わりは、十代半ばに起こります。男性は、声帯の振動数が大きく変わって低い声になります。思春期以降であれば、声を聞くだけでそれが男性なのか、女性なのか判別できます。ただ、声の低い女性、声の高い男性などといった例外もあります。電話で声を聞いたときに男性なのか、女性なのかがわからないといったケースも起こります。

 

〇なぜ声で年齢がわかるのか

 

年齢も、声紋分析によってほぼ正確に判別できる要素です。

声は25歳を過ぎるころから少しずつ衰えていきます。声帯と、口の構えを作る筋肉、神経の伝達能力が劣化するためです。脳神経が声帯と口の構えは指令を出しますが、脳神経自体も衰えます。声紋にあらわれる口や喉の奥の筋肉の老化状態を読み取っていくと、年齢は5歳刻みで推測することができるという研究者もいます。

たとえば「アー」と声を伸ばしたとき、若い人なら波形の揺れが少なく、年齢をとるほどに揺れは大きくなります。筋肉の衰えが起きて、声帯を長い間、同じ状態に維持することができなくなるからです。口の形も一定に保てなくなります。

また、年をとると肺からも一定の圧力で空気を送り込むことが難しくなります。つまり、加齢とともに、声帯の状態、口の形、肺から送る空気などを一定に保つことが困難になり、それが声紋の波形にあらわれてしまうのです。

高齢者の声がかれてくるのは、咽喉内の粘膜が老化して、喉に炎症が起きたときと同じように粘膜に凹凸ができてくるからです。肺から送られた空気がこの凹凸を通過するときにいくつかの渦が生じ、かすれた声を作り出すのです。肌や体や脳の老化に個人差があるように、声の老化にも個人差はあります。ですが、急に声を「若作り」しても、声紋分析すればわかってしまうそうです。

 

〇赤ちゃんの泣き声はサイレン

 

<赤ちゃんの泣き声が遠くまでよく聞こえるのは、ヴォリユームが大きいというよりも、人によく聞こえる周波数だからです。救急車のサイレンとほぼ同じ25004500ヘルツで、人間の耳の感度のいいところを本能的に捉えています。

この泣き声を分析すると、「おなかがすいている」「眠い」「苦しい、痛い」「さびしい」という、おもに4種類の感情にわけられます。>

一般的にいって通じやすい声の基本は、お腹からの腹式呼吸で出す声です。これは、人にとって聞きやすい、2500ヘルツから4000ヘルツ付近の音がよく出るのです。

 

〇体調判断も声でできる

 

風邪をひいたときには、声が悪くなります。これは、喉や鼻に炎症が起こり、痰がからむなど、共鳴体の大きさも形も微妙に変わってくるからです。体調が悪いと、体力も失われます。すると、腹筋を使った発声ができなくなります。それらによって、声自体にも変化が生じるのです。

喉に炎症を起こした場合は、声帯や声道の状態も変わります。摩擦音を発することもあります。すると声がかれる状態となります。さらに症状が悪化して気管支炎になると、呼吸が気管支を通るたびにゼーゼーといった音が鳴るようになります。

声によって体調を判断するのは比較的容易なことなのです。

 

〇自分のよいときの声を聞いてまねする

 

自分の絶好調のときの声を録音しておき、それを聞きながら、その声が出るまで、トレーニングを重ねるとよいでしょう。また、声は体調のバロメーターとしても活用できます。体調がすぐれず腹筋に力が入らなければ、声も低くなるからです。

「よい声になれるヴォイストレーニング~声の科学」 Vol.4

〇外国人(欧米人)の方が声では有利

 

外国人との発声の大きな違いの原因となっているのは、日本語の浅い発声、日本人の生活様式など、さまざまです。姿勢一つとっても、私たちはどうしても猫背になりがちで、響く声を出すのにひと苦労です。言語を発するポジションも、喉のあけ方も違います。

頭骸骨も、鼻、あごの形なども、民族によってかなり違いがあります。その違いは共鳴体にも変化をもたらしています。たとえば、共鳴体が違うと声や言語も違ってくるのです。

共鳴体の違いは、声の違いを生むとともに、民族によって出しやすい音と出しにくい音という差異も生んでいます。その民族にとって出しにくい音を使った言語はなじまないので、それぞれの民族に適した言語体系が形成されていくのです。

英語教育による影響をもっとも強く受けているのが、海外生活の経験がある子どもです。同じような体格の子どもであっても、海外で生まれ育った子どものほうが20ヘルツほど声が低くなるという調査結果があります。体格的な理由以上に環境や文化が声に影響を与えているのです。

 

〇日本人も音声に関心を

 

日本人は、話し声も小さく、メリハリ、響き、パワーに欠けます。しかし、外国人は総じて身体についた声で、明るくはっきりと発しています。

もう日本人も、体格、骨格や背の高さなども外国人と変わらないようになりました。きちんとした発声を身につけることができれば、同じように声が出せるはずです。

ただ、声を引き出すのは、必要性ですから、言語、文化、風土の問題の方が大きいのです。日本では、異民族、異言語にさらされてきた多くの外国人ほどに、音声に対する関心や表現力が必要にせまられなかったのです。

とはいえ、邦楽では、80歳でも朗々とした声を出す人もいます。歌う声も、話し声もトレーニングしだいで克服できるのです。

 

〇英語に、パワーや勢いをつける

 

日本人の英語の発音は、とてもよくなりました。しかし、発声とリズム(強弱)がまだよくありません。

口先で英語を器用に発音しているだけでは、英語らしい雰囲気で聞かせているだけといってもよいでしょう。声は前に飛ばないし、強い息にのっていない。歌も声の芯や深い息がないので、私は、その一声で、およそ日本人だとわかります。

欧米の言語は、強い息を発し、舌、歯、唇で生じさせる子音を中心とします。日本語にないパワー、勢いがあります。それがしぜんに深い声や多彩な音色につながるのです。そこまで耳と声で捉えている人は、日本人には稀でしょう。

しぜんな発声と呼吸を身につけた身体があってはじめて、外国人と対等に声で渡り合える実力につながるのです。ですから、身体からの深い息を深い声にするようなトレーニングを続けることです。

 

〇日本語と英語との違い

 

日本語と英語のニュースで、同じ内容を伝えるためにどれだけの時間を要したかを測定してみました。その結果、日本語では14秒、英語では21秒でした。さらに、10分間で何音節話しているかを調べると、日本語では160、英語では110でした。

日本語では少ない時間内に多くの語数を費やし、より多くの情報を伝えようとしていることがわかります。つまり、日本人は早口だということになります。このスピードの違いは、英語ではひとつの単語を伸ばして話したり、強調するための間などが多く見受けられるのに対し、日本語では比較的どんどん言葉を進めていってしまう違いによるのでしょう。

 

〇性格と声

 

日本人の声の大きさは、欧米人の声に比べると小さいといえます。音圧にして、34デシベルほどの違いがあります。日本人にとっては、人前で話すことや声を大きく出すことは、まだまだ抵抗があるのでしょう。欧米人は、そういう恥ずかしさを逆手に取るようなところがあります。

洋画や海外のドラマなどを見ていると、自分が失敗をして恥ずかしくてしょうがないというときに、ひときわ大きな声で笑い飛ばす、なんていうシーンが少なくありません。自分の感情をどんどん前に押し出していくのです。

 そういうふうに、声で伝えるというのは、日本人にはあまりみられません。楽しいときには豪快に笑い、怒ったときには派手に怒声をあげるとよいのです。

「よい声になれるヴォイストレーニング~声の科学」 Vol.3

〇録音すると変な声になる理由

 

自分の声は、空気中に出されて、自分の耳の鼓膜を通して聞いている声と、自分の身体を通じて内耳から入る声と、二つを同時に聞いています。しかし、他人が聞いている自分の声は、空気中を伝った声だけです。つまり、自分で聞いている自分の声と第三者が聞いている自分の声とは、異なっているのです。

 

ヴォイスレコーダーで再生したあなたの声は、空気中を伝わったもので録音されていますので、ふだん、あなたの声として他の人が聞いている声に近い声です。あなたにとっては、聞き慣れない声で、変な感じがするものでしょうが、慣れましょう。

「声は他人がどのように聞くかということが問われる」のですから、録音された声がどうであるかが、あなたの思い込みの声のイメージよりも重要なのです。

録って再生した他の人の声をあなたが聞けば、その人とわかるでしょう。そのくらいに、あなたの声も正しく録れているのです。自分の声だけが変という人もいますが、他の人の声も、その人がプロでもなければ、それなりに変な声ですから、安心ください。

 

〇自分の声は自分で感じるより少し高い

 

実際に、自分の声として聞いている音には、骨伝導の音が混ざっています。骨伝導とは、自分の声が骨を伝わって鼓膜を振動させることです。

自分の手を口の数センチ前に当てて「あ」と言ってみましょう。手を当てずに言うときの音を聞き比べると、明らかに違って聞こえるでしょう。手を当てなかった場合は、はね返りが少なく、骨伝導で聞きとっているのに対し、手を当てた場合は、そのはね返りの方から聞くことで違うのです。

骨伝導によって伝えられた音と空気中を伝わった音と伝わるものが違えば、音自体が違ってきます。空気や骨だけでなく、水中を伝わった音、金属を伝わった音なども、違った音となります。

このような現象を「物質によるフィルター効果」とよびます。伝わるものによって、ある音が強められたり、反対に弱められたりとフィルタリングの効果が違ってくるのです。

骨は低い音をよく通すという性質を持っているので、骨伝導で聞いている自分の声は周りの人が聞いている音よりも少し低く感じられます。

 

〇楽音と非楽音

 

音は、楽音と非楽音とに分けられます。楽器の音のように、音の高い低いをハッキリ感じることのできる音は、楽音と言われます。それに対し、周波数成分が多すぎて音高を特定できない音、たとえば、せせらぎの音などを非楽音と呼びます。

音響学的にいうと、聞きやすい声が楽音になります。これは、言語音のなかでは、周期的な波形を示す母音にあたります。それに対し、不快感を与えるのがノイズ(雑音)です。子音の多くは、非周期的な波形を示します。 ノイズを含まない楽音、つまり、母音が多く含まれていることばは、聞きやすい声になりますので、発声トレーニングには、アエイオウが使われるのです。

日本語は、ほとんどが母音で終わる音節です。ですから、周期的な波形を示す楽音で美しく聞こえるのです。 音響的には、イタリア語、スペイン語、フランス語などのロマンス系語や、マライ、ポリネシア語と似ています。

母音が一番、聞こえがよく、次に濁音の有声子音、清音の無声子音の順に耳ざわりよく聞こえます。清音とよばれる子音が、最も不規則な非周期波を描きます。

 

〇清音と濁音

 

金田一春彦氏の指摘では、日本人にとって清音のp、t、k、sは、鋭、軽、小、美を表し、濁音のb、d、g、zは、鈍、重、大、汚を示しているそうです。hはpより上品、直音はより上品な感じとなる。ヒラヒラはピラピラより品があるということです(『指定音語、指定態語辞典(角川書店)』)。

さらに、k、tは堅さ、sは摩擦感、rは滑らかさ、h、pは抵抗感のなさ、mは柔らかさを示します。この感じをそのまま、トレーニングに使ってみるとよいでしょう。

 

堅いがっしりした声にするには、「カケキコク」「タテツトツ」

息もれ音やマイクノイズを防ぐには、「サセシソス」

舌、口を滑らかにするには、「ラレリロル」

楽に声を出すには、「ハヘヒホフ」「パペピポプ」

やわらかく声を出すには、「マメミモム」

 

〇声で犯人がわかる声紋分析

 

日本で声紋が初めて裁判で証拠採用されたのは、昭和51年の京都地裁の現職裁判官K判事補のニセ電話事件でした。彼は、検事総長を名乗って、当時の三木武夫首相に電話をかけ、有罪となりました。

大韓航空機撃墜事件で意味不明だったKAL機との最後の交信テープを解析されました。

声にも指紋のように一人ひとりを特定づける要因があるとして、声紋という言葉を使い、同一人物の証明は、周波数分析装置(ソナグラフ)で声の周波数や強さ、変化のわかるグラフをつくります。この特徴が一致しなくてはならないのです。周波数分析装置は、音声を周波数(縦軸)、時間経過(横軸)によって、音圧を濃淡模様のグラフに描き表わします。これが声紋(ヴォイスプリント)です。

声紋がなぜ固有なのかについては、その人特有の口の開き方や口の容積までが調べられるからです。声だけを調べるのではないので、たとえハンカチで声を変えて話していても、その人かどうかわかるのです。さらに分析にあたっては、声帯の振動、電話回線、老化での変化まで、すべての要因を加味します。

「よい声になれるヴォイストレーニング~声の科学」 Vol.2

○プロの声はお腹から出る

 

役者や声優は、台本を、人にしっかり伝わるように表現します。それは、訓練の賜物です。

大切なことは伝えることであって、声を出すことではありません。いくらよい発声でも、棒読みしているのでは、伝わらないからです。深い呼吸で声にメリハリをつける自在に使える力がないと、聞こえたところで、伝わらないのです。つまり、プロは、お腹から声が出ているといえるでしょう。

この機会に、声を「出すこと、使うこと、伝えること、伝わること」について考えてみましよう。また、自分の呼吸や発声について、チェックしてみましょう。

 

○声の音色

 

音色の違いは、周波数の成分がどんな具合に混ざっているかの違いで、音波の波形で示されます。私たちが聞いている音のほとんどは、複合音です。

声もまた、複合音です。120ヘルツの高さ(基本周波数)で話していても、そこには、その上の240360480と整数倍の高調波(倍音=ハーモニクス)がのっています。その高調波がどのように交ざっているかによって、音色が違ってくるのです。

同じ大きさで、同じ高さの音でも、ギターの音かバイオリンの音かは区別できます。それぞれの波形=高調波成分の分布状況が違うからです。この違いが音色です。

声についても同じです。同じ大きさ、高さで声を出していても、誰の声かは、わかります。音色が違うからです。音色は音質とも言います。声の音色、すなわち声の音質はまた、声質ともいわれます。声のイメージは、この声質の違いです。

これは声帯と共鳴器官との関係などによって決定づけられます。ですから、細い声の人でも、トレーニングである程度までは太い声にすることができないわけではありません。

 

○純音について

 

一般の音のほとんどは複合音で、純音というものは、ほとんどありません。

純音とは、単一の周波数の音で、その波形は「サインカーブ」、数学の三角関数の授業に出てくるようなきれいなカーブで示されます。自然界にはほとんど存在しません。

身近では、NHKの時報の音が純音です。「プ、プ、プ、ポーン」は「ブ、プ、プ」より「ポーン」のほうが高い音で、この周波数は、はじめの3つが440ヘルツのラ(A)、最後の長い1音だけ880ヘルツの高いラとなっています。周波数が大きいほど音も高くなるので、時報は最初の3音に比べて、最後の1音に倍の周波数を使ってオクターブ上の高音にしているのです。

 

○フォルマント

 

声帯から音は、声道から口を通り、「ア」とか「イ」などの響きがつけられます。それが、音色の違いであり、高調波(倍音)の共鳴の濃淡によってつくられます。

口の中では母音に応じて、舌などで形を変え、共鳴を変えています。とくによく共鳴しているいくつかの周波数のことを、フォルマント周波数と呼びます。フォルマントは、いくつかの山となり、低い周波数から順に第一、第二、第三フォルマントです。(第一の下に声帯の基本周波数が位置する)母音は、第一フォルマントと第ニフォルマントの周波数の組み合わせで決まります。

 

○f分の1ゆらぎ

 

 fというのは周波数(frequency)の頭文字で、「f分の1ゆらぎ」とは、周波数に反比例するゆらぎです。つまり、高い音ほど小刻みに、低い音ほど大きくゆらぐのです。自然界の音(せせらぎや除夜の鐘、風鈴、オルゴール、クラシック音楽など)に見られます。

 

〇よい声の条件とは?

 

声がよくなるとは、より大きく高く(低く)長く出せるだけでなく、声がしっかりと統一され、かすれたり割れたりしないということです。しかも長時間出しても異常をきたさないことです。体調の悪いときも、伝えたいことを表現するのに充分な声が確保されることです。特に、人前で声を使うときは、声の調子を万全に整えておかなくてはいけません。

現実には、美しさ、心地よさといった声質、あるいは、個性、パワー、インパクトが問われます。

つまり、「よい声」とは、生まれつきの声(素質)よりも、発声のよさ(発声)、さらにそれよりも声の使い方(表現力)によるところが大きいのです。

声そのもののよさだけでなく、声を使える力が、より問われるようになってきたのです。まずは、今自分の持っている声の力を見直してみましょう。

 

EX.魅力的な声 

基本周波数で、腹式発声がきちんと行われていると30004500ヘルツ前後の成分が高く、声の聞こえがよくなります。Sの音がきれいに出ていると、さわやかな印象を受けます。

 

〇よい声と悪い声とはどう違うか

 

人は、十人十色、いろんな声を使っています。その中で、よい声がどうもよくわからない人は、悪い声から考えてみましょう。悪い声は不自然で伝わりにくいでしょう。何を自然と思うかは、聞く人の感覚で、目的やTPOや相手の好みにも左右されます。よい声は自然に伝わるといえましょう。

自分の声がどうなっているのか、そして、どうなったらよいのかを、自分なりにイメージしておくことは大切なことです。

声について、自分の抱いているイメージを、声がよいと思う人、声が悪いと思う人、変わった声だと思う人(どのように)など、他の人の声を思い浮かべて書き出してみましょう。

次に、今の自分の声と、改善目標を掲げてみましょう。

たとえばこんな感じに…

今の自分の声「かたく、こもって、押し潰した声で、ときにヒステリック」

改善目標「やわらかく、はっきり前に出たクリアな声で、いつも落ち着いてゆったり聞こえる」

というわけで、声のよしあしというのは耳を研ぎ澄ますことでわかるものです。

 

EX.個性的な声

・音圧のレベルが高い。基本周波数の変化が遅いのがわかる。

・エネルギー量が少なく、やや力を抜いている感じ

 

〇耳で音を聞くしくみ

 

声のよしあしも聞く人の受け止め方によります。耳が声をどう捉えるかを知っておきましょう。

人間の耳は、外耳、中耳、内耳の3つに分かれています。外耳のなかでも、耳介は音を集める働きを持っています。とくに前方と横の音を中心に集め、後ろからの音をカットするようになっています。耳の形をみるとわかるでしょう。左右両方に耳があるのは、音の方向を知るためです。

集められた音は外耳道を通って、鼓膜を振動させます。この鼓膜の奥が中耳です。鼓膜のところで振動した音は骨を通って、蝸牛孔というところに出ます。その蝸牛の中で周波数が分析されます。その情報が脳に伝えられ、判断するのです。

蝸牛と呼ばれる骨の中はリンパ液で満たされています。そこには1万を超える数の繊毛がフラフラと浮くようにして生えています。その11本が特定の周波数を聞き取る役割を持っています。

この繊毛が1本でもなくなると、その特定の周波数の音を聞くことができなくなります。壊された繊毛は再生することはないので、二度と、その周波数を聞き取ることはできなくなります。

この繊毛は、耳の外側から順に高い周波数から、奥へ行くほど低い周波数に反応するようになっています。高音の音波はまっすぐ進み、1回でも曲がってしまうと、それより先へ進まなくなるという性質があります。低音の音波は回りながらでも進んでいくことができます。そのため、耳の入口近くで高音を感じ取り、奥のほうで低音をキャッチするようになっているのです。

いちばん外側のは、2万ヘルツくらいの周波数に反応します。人間の耳には聞こえない高周波数ですが、反応を示すということで、その音を受け取っていることがわかります。

受け取り可能な周波数には、言語によっても差異があります。たとえば、英語には超音波まで含む発音が多く、英語を話す人たちはそういった音までを捉えています。英語のヒアリングができると英語の発音もよくなります。

 

〇お年寄りに聞き返されない声

 

声は、高い方が聞こえるものですが、場合によっては聞きとりにくくもなります。耳の遠いお年寄りには、大きな声でなく低い声を使うのがうまく伝わるコツです。年齢を経ると、耳の入口の方から繊毛がなくなり、高い声をとらえにくくなるからです。

 

〇人間の間き分け力

 

人間の音の高さ(周波数)の聞き分けは、2ヘルツでも可能です。わずか2ヘルツでも違えば、違っていることに気づきます。

1オクターブ内で歌った場合、そのなかで次々に周波数を変えていくのですが、その変化で2ヘルツを違うと音程の狂いを感じるわけです。つまり、安定した声の高さを保ち、次の音階へと移行するのは、高度な技術を要するのです。これを私たちは歌うときには、しぜんとやっているのです。

音感の優れている人は、ある音から次の音に変化するときにパッと移ります。しかし、音感が悪いと、正しい音よりも上に行き過ぎてから下がったり、下げ過ぎて上に戻すといったことで、正しい音に落ち着かせます。正しい音に落ち着かないと「音痴」と呼ばれるのです。

「よい声になれるヴォイストレーニング~声の科学」 Vol.1

○声はトレーニングでよくなる

 

「いい声」というと、役者さんを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。しかし彼らも最初からそんな声をしていたのではありません。「人々にしっかりと伝えるために、声を磨いた」のです。その結果、プロの声となったのです。

声は誰でももっているし、使えているので、よほど困らないとトレーニングなどしませんね。しかも、声帯は、誰一人同じ人はいませんから、よほどの効果が上がらなければ、わかりにくいものです。でも、声を鍛えてきた人には、ある程度、共通した方法があります。それが、ヴォイストレーニングといわれるものです。

声の正体をとらえ、「いい声」とのギャップを埋めようという意識を持つだけでも、声は魅力的になるものです。

ぜひ、人間に残された最後のそして最大の魅力開発「声のメイクアップ」をスタートし、仕事や生活で、ますます魅力的なあなたになってください。いつも「相手に働きかける声を意識すること」で、あなたのコミュニケーションカは大きく変わります。毎日少しずつ声を魅力的にしていきましょう。

 

○息と声帯

 

まず最初に、声はどのようにして出ているかについて、知っておきましょう。

声は、息を使って声帯を振動させることで発します。それを喉や鼻、口の中で響かせ、舌や唇を操って言葉や歌にしています。それぞれで、大きな個人差が生じているのです。

 

鼻腔と口腔は、口蓋垂(のどちんこ)で合わさります。その上下の管状の部分を咽頭といいます。途中で気管と食道に分岐していて、気管の入口近くに喉頭が、その内側に声帯があります。

声帯は唇のような形をしています。膜状の筋肉を周りの筋肉で吊ったような構造です。気管の内側に弁のように張り出していて、声帯がくっつくと息が止められます。

声帯そのものは直接、動かせません。黙って呼吸しているとき、声帯は開いています。声を出すときには、呼気で声帯を振動させます。声帯が1秒に何百回~何千回、開閉することで、声の元になる喉頭原音を生み出します。

吐く息が不安定だと、声帯の開閉も不安定になります。声帯は通常、象牙色ですが、酷使して炎症を起こすと赤く充血します。声も荒れます。

 

○共鳴と調音

 

声帯は声を発しますが、そのままでは言葉になりません。言葉を話すには、調音(構音)が必要です。

声がよく響くようにするのが、狭義のヴォイストレーニングです。アナウンサーやナレーターは、滑舌のトレーニングを中心にします。発音の方がトレーニングや矯正がしやすいし、効果も早くあがるからです。

声帯のコントロールで声に大小(強弱)や高低をつけられます。それは、共鳴腔(咽頭、鼻腔、口腔)で整えられます。共鳴腔は、管楽器の管(空洞)にあたり、そこで喉頭原音を共鳴させます。このとき、喉頭原音に含まれる高さ(周波数)の音の成分を強調したり、別の高さの成分を弱めたりすることで音色の違い、母音の区別が生じます。

 

日本語は5つの母音は、有声音です。その母音や息を歯茎、舌、唇などで妨げて出すのが子音です。

 

母音は、必ず声帯が振動します。のどぼとけに指をあてたら、その振動が伝わるのがわかります。声帯の振動を伴わない音は、無声音といいます。

力行、サ行、夕行、パ行などの子音は、無声音です。「p」は唇を閉じた状態から開くときに空気を破裂させ、「パッ」という音にします。「カッ」という音は、喉の奥で空気が通る音です。

b」(バッ)や「g」(ガッ)のように、声帯が振動する有声子音もあります。「f」や「v」のように、無声音だった発音が有声化したものもあります。

これらを明瞭に発音するために、発音のトレーニングが必要です。

 

○話し声と歌う声

 

歌声と話す声とでは、全く違うという人と、違わないという人といます。話す声はよくないのに、歌声はとてもよい人もいます。しかし、歌声が悪いのに、普段の声がよい人は、あまりいません。話す声というのは、たいていの人は意識もせずに発しているからでしょう。

 

○声の大きい人と小さい人の違い

 

声の大きさは、声帯の振動エネルギーと、共鳴の効率によって決まります。肺から空気を出すこと(声門加圧)と、2本の声帯がきちんと閉じられているという声門抵抗が生じます。それによって、声帯の振幅が大きくなれば、大きな声が出ます。同じ大きさでも、その高さによって聞こえやすさに違いがあります。人は約202万ヘルツくらいの周波数帯の音を聞くことができます。ヘルツというのは、音の周波数(高低)をあらわす単位です。この周波数によって聞こえやすさが違うのです。

最も聞こえやすい周波数はだいたい2500ヘルツ~といわれます。バイオリンの高音域です。

 

○声が高い人と低い人の違い

 

人の声帯が出す声(喉頭原音)は、64ヘルツから1024ヘルツくらい、これはピアノの真ん中のドの高低、それぞれ2オクタープの範囲にあたります。(周波数を表すヘルツというのは、100ヘルツなら1秒間に100回、声帯が振動することです。)

声帯から出る喉頭原音には多くの周波数成分が含まれています。一番下の周波数が声帯の振動数そのもので、基本周波数といいます。上の方の周波数成分は、基本周波数の倍音などで構成されています。この倍音成分の違いが音色の違いとなります。

話し声では、男性の基本周波数が110150ヘルツ、女性で220300ヘルツくらいです。弦なら長いほど低い音が出ます。男性は変声期に声帯が2倍近く長くなるので、女性より低いのです。

一般的に身長の高い人の声が低く、低い人の声が高くなります。これは、身長と声帯の長さが比例しているからなのです。(ファントの法則)

音楽では、だいたい505000ヘルツの範囲です。自然界では、私たちの耳に聞こえないほど高い音、低い音を使う生きものもいます。こうしてみると、私たちの声の出せる高低の範囲は実に狭いのです。とはいえ、これがわずか2センチの「声帯」という楽器でできるのだと考えるなら、驚異的なことでしょう。

 

低い声というのは、高い声に比べて、その人の声帯や体型など、個人的な資質が、より関係してきます。バイオリンでは、チェロの低く太い音は出せません。もちろん、人間の場合、使い方もあるので、簡単には言い切れません。  

高い声が好きだと思っていても、低い声の方が伝えやすいならば、まずはそちらを選ぶベきです。生まれもっての楽器としての限界もありますが、高音域ばかりで声を使っていると、低い声は出にくくなります。もちろん、低い声ばかり使うのでは高い声は出にくくなります。無理のかかる声域で、声の状態を悪くする人が多いので、一番よく声の出るところで、声の使い方を覚えていきましょう。

 

○共鳴と周波数についての解説

 

共鳴体では、音がそれぞれ固有の振動を起こすとき、ある周波数だけが共鳴体で共鳴を起こし、出口からはその強められた周波数のみが出てきます。ほかの周波数の音は弱められてしまい、出口では聞き取ることさえできなくなってしまうのです。

つまり、もともと周波数上は同じレベルのエネルギーを持っていたとしても、出てくるときには、弱められた周波数と強められた周波数というように変換がなされているのです。

それは共鳴体の形によって異なります。一般的には共鳴体が大きいほど低い音に共鳴し、小さいほど高い音に共鳴します。大きいものは低い音を出し、小さいものは高い音を出すのです。 

声の高さは、キー(音域)の高さのことですが、もうひとつ、日常的には高い低いで感知されない、周波数的に高い声というものが存在します。子音(破裂昔、摩擦音)などは、母音に比べて、高い周波数を含んでいます。

この周波数としての声の高さと、キーの高さというものは必ずしも一致しないのです。日本人の声は、キーとしては高い方ですが、周波数的には高いとはいえません。日本語は母音中心で、言語としては高周波を必要としていないからです。声の周波数に影響を与えるのは、言語体系による違いがもつとも大きいのです。

高周波の音を多分に使っている言語には、スウェーデン語などがあります。

「基礎教育のためのヴォイストレーニング」 Vol.12

○自信が欠けると声の魅力もなくなる

 

 「何か元気ないな」、「悪いことあったな」というのは、声でわかります。その人に不幸があると身体、表情、眼、姿勢、身振り、そして声に表われるのです。

 以前は羽振りのよかった人が逮捕などされると、別人のように暗い声になっています。報道で、そういうのを選んでいることもあるでしょうが、誰でもそうなるものでしょう。

 声でのコミュニケーション術、それは、言葉とともに、人間の獲得した最大の武器です。わずか2歳の子でも会話します。赤ちゃんは、言葉もなく、声だけで自分の意志をまわりに伝えます。

 子どもをみていると“今泣いたカラスがもう笑った”と、その表情の変化のスピードの速さや幅の大きさに驚かされます。声の表情が、心を表わします。

かつて、私たち誰もが子どもの頃はそうだったのです。成長するとともに、ストレートに心を表わすと、まずいことが多くなって、声も素直に出なくなってきたのです。社会的には、思っていることが、すぐ口から声に出たら、うまくやっていけないからです。

 でも、笑ったり笑い転げたり、泣いたり泣き腫らしたり、そのときの声は、心に反応していますね。

 

○声だけでも勝てる

 

 二人の人に電話して、一方はいつも明るくハキハキ、「待ってました」とのごとく、すぐに出る、もう一方は事務的な応対だとしたら、どう思うでしょう。

 友だちが落ち込んで弱気になったとき、あなたが声の優秀な使い手なら、千載一隅のチャンスです。あなたを頼ってきたときに、あなたから発される声が、その人を元気づけます。ところが、どんなに心を込めても、冷たい淡白な声に聞こえたら、落ち込ませるでしょう。

 皆に好かれない人の場合、こういうケースから少なからずあります。

 恵まれて育った人は、あまり声に感情を表わすことに慣れていないのです。深いつきあいでもなければ、声に何か込めるような必要もなかったから、そうなりやすいのです。

 また、私が思うに、ファッションモデル出身の女優さんは、声に苦労しているようです。モデルはしゃべり慣れていないこともありますが、背が高いので目立つのを抑え、声を大きくしないようにして、あまり使い慣れていない人が多いのです。

 

○職場の人間関係をよくする声

 

 人間関係をよくする声は、しっかりと相手を受けとめる声です。

 日本では、あまり音声の力に頼りすぎないことも大切です。声が大きすぎると、聞いている方も疲れます。声の大きさには充分に配慮しましょう。デリカシーが問われます。

 

 いろんなお店で働いている人の声を聞く機会はたくさんありますね。職場では、声の使い分けが、きちんとなされています。お客さん、上司、同僚に使う声は違います。それは言葉遣いでの違いです。お客さん、上司には、敬語、同僚、部下には、親しさに応じて、かなり違ってきますね。人間関係の違いが、声に表われているのです。人間関係は、その声で区別していけばよいということです。

 好き嫌いが声に表われるなら、声で好き嫌いを表わせます。職場では嫌いな人に嫌いとは表わせませんから、みな、好きな人に使う声にすればよいのです。そんなことで声は減りませんから、大丈夫です。

 とても好きな人に使う声を使ってみてください。すべてが、うまくいくようになります。相手を嫌えば嫌われるし、好きになれば好かれやすくなります。あなたの好き嫌いに関わらず、声でよい方へ演出するのです。

 そういえば、他の人の人間関係を見抜くのにも、声は大きなヒントです。上司や部下に対して、露骨に声を使い分けている人もいます。その人の好き嫌い、尊敬度、傾倒度、忠誠度なども見抜けます。

 

○夢のための声日記

 

 イメージを引き出すキィワードは、言葉です。声の感じで、その人のイメージや情報を引き出せます。

 「あの人どんな人だったか」と思い出すとき、何を言っていたかより、どんな声で言っていたかの方が残るからです。

 人が亡くなったとき、その人の生前の声、笑顔とともに笑い声を思い出して偲びます。亡くなったことは悲しくとも、そういう思い出を与えてくれたことに感謝です。そう考え、心の中では笑って送り出しましょう。

 

 いつか自分が送られる日まで、声の日記をつけてみましょう。

 あなたの夢が、確実にかなうためにです。

 

1.    年  月  日(  )天気(  )

2.目標

3.声のために行ったこと

4.声を使ったときのこと

5.どう声を使えばよかったのか

6.今日の声の調子と健康

7.明日の声の使い道

 

○声は意識したら耳に入ってくる

 

 自分の目標をしっかりとイメージしたら、自分に必要な情報は入ってきます。声も同じです。

 あなたの名が呼ばれたら、あなたにはとてもよく聞こえるはずです。以前、ジャマイカの空港で私は場内呼び出しを受けました。そのとき放送を何も聞いていなかったのに、自分の名前だけは聞こえました。

機上で映画をみて眠くなって目をつぶっていたのに、ストーリーは何となくわかります。そこに自分の知り合いの名前と同じ名前がでたら、耳に飛び込んできます。これも、カクテルパーティ効果※の一つでしょう。

 自分に関するもの、自分の好むもの、必要なものは、声を通じても入ってくるのです。

 あなたの好きな人の声や身内の声は、黙っていても聞こえてきます。心のなかに聞こえてくる、その声に従えばよいのです。

 

※カクテル効果

 パーティで、たくさんの人のなかから、聞きたい人の声や自分の課題だけを聞き取ることのできる能力が、人間の耳にあります。これを、カクテルパーティに、ちなんで、カクテル効果といいます。

 

○耳の力を養う

 

 もしあなたが耳の力が弱ければ、補いましょう。

 

 耳の弱い人(これは聴力が弱くて聞こえないということと違います)

・英語の発音が苦手だった

・歌詞、メロディがなかなか覚えられない

・ラジオが聞きづらい

・音楽があまり好きではない、音感やリズム感に自信がない

 

 耳の強い人

・ものまねがうまい

・カラオケが得意

・聞きとりに苦労しない

 

○アンテナを立てよう

 

 声を聞く能力は、個人差があります。学ぶにも、いろんな型があり、目でみる、耳できく、手を動かし書いてみる、口で言ってみる、それぞれに得手不得手があるものです。これにも、かなりの個人差があるようです。それでも、あなたも、友人の声すべてを聞き分けられるはずです。誰の声かを識別できる力があるのです。

 

 五感をもっとうまく利用するために、それぞれの感覚を組み合わせて活用するとよいでしょう。

 音読は、それを目と口の相乗作用で行うことになります。

 

○声で唱えると実現する

 

 口グセに気をつけようというのは、言葉を口に出していると、その通りになるからです。

かなり以前から、そうした分野は、自己暗示、成功哲学などといわれ、理論づけされてきました。大脳生理学などにより、言葉の力、声の力は、確かなものと認められてきました。

 

 自分自身に語りかけてみましょう。自分にやさしく語りかけると、やさしくなれます。植物やサボテンも、やさしい声に反応するそうですから。

 脳は、事実―現実に起きたことか、仮想イメージかを判断しません。潜在意識のなかでは、夢も現実も、バーチャルリアリティもリアルも、それが心身に起こす反応に違いはないのです。

 梅干しを思い浮かべるだけで、唾液が出ますね。

 映画や小説を読んで、感情移入できるのも、そのためです。

 スター(推し)のブロマイドをみていると幸せな気分になるのも、似ています。主人公に感情移入するのも同じ。小説やまんが、ゲームも人格形成に大きく関わっています。

 「ムカツク!」と口にしたら、ムカツクし、「しゃあねえ」とため息ついたら、力も抜けるのです。

だから、自分によい声でよい言葉を愛を込めて語ってください。

 

声が出るのは、とても複雑なメカニズムです。

声帯は、どんな楽器よりすぐれています。わずか2センチほどで、これだけの自在な音を扱えるものを、いつか人間はつくれるでしょうか。

「基礎教育のためのヴォイストレーニング」 Vol.11

〇自分の首をしめる声

 

“借金で首が回らない”といいますが、本当に首の筋肉がこわばり、首が回らなくなるらしいです。すると声も、出なくなります。押し殺された声になります。

 元気なさそうに暗い声を使う、スネたふりをする、子どもっぽい声を出す、すべては、あなたの首をしめることになります。

 私は仮病を使ったことがあります。ほとんど治りかけていたのを、まだ具合の悪い振りをしていたのです。そして、声を力なく出していたら、本当に気分が滅入って具合が悪くなってきました。

 病気に逃げると、病気に慕われて、本当に病気になってしまうのです。

 人間の心身は、とてもきわどいバランスをとって成り立っています。気を抜き、息を抜き、声を抜くと、しぼんだ風船のようになってしまうのです。そのときには、身体は、まわりの病原菌のえじきになってしまいます。恐いことですね。

 逆に、あなたが、気を入れ、息を入れ、声を出したら、風船のようにパンパンに膨らみ、何ごとをも跳ね返します。気合いを入れ、「イエイ」と叫んでみてください。

 暗い声を使いたくなったら、ニコッと笑い、その気分を吹きとばしてください。

 

 自分に否定的な言葉やネガティブな声を使うのをやめましょう。言葉のクセは、なかなかとれません。まず声だけでも、明るくしましょう。

 カラオケで悲しい歌を悲しく歌うのは、悪くありません。少し救われます。他の人に、あなたの悲しさが伝わります。

プロの歌手は、悲しい表情で歌い切ったら、ニコッと笑います。あなたの心の悲しさを少しもちあげて、何かを気づかせ、そっと解消させてくれます。それが芸です。

 人は、救いを求めるのです。悲しいことを喜んで言ってはなりませんが、声をあまり暗くする必要はありません。陰気にしていると、幸福も逃げてしまうからです。

 

〇ストレスで声が出なくなる

 

 マイナスイメージのいきつくところ、発声の機能に何ら損傷がみられないのに、声が出なくなってしまうことがあります。

 ストレスによって、心身にはいろんな変化が生じます。そのなかでも、声は比較的、大きな影響を受けます。

ヒステリーで声を張り上げる人もいます。

 落ち込んだときの声は、暗くこもってしまいます。心を閉じたことも、声はまわりに伝えてしまいます。

 「一人にしてくれ」というときには、声は出しません。声からその人の状態がわかります。

 でも、こういうことも笑いとばすことで解決できるのです。

 

 ストレスは、生きていくための刺激です。それをプラスに受けとめるかマイナスに受けとめるかは、あなたしだいです。受け身になるほどに、つらく、攻め手になる方が楽になるのです。すると、楽しくなり、生活のリズムを取り戻します。人の心身は、そのようにつくられています。

 あなたはジェットコースターやバイクは好きですか。それに動物を乗せたらどうでしょう。状況がわからないままに乗せられたらパニクって、恐怖で大嫌いになるでしょう。あなたも嫌いなら、絶対に乗りたくないでしょう。好きでも具合が悪いときは、無理でしょう。自ら選んでストレスを受けるのは快感ですが、強いられて受けるのは不快です。ジェットコースターで手を上げ、声を出して楽しむ人は、そのストレスを心身と声で大きく解放しているのです。

おもしろいですね。ためたら暗くつらくなるばかりの声が、発散させたら、明るく楽しくなるのです。スポーツや、コンサートなど、声を思い切り出せるところをキープしておきましょう。

 

〇ダイエットは声に悪い

 

 ダイエットは、声によくないのですが、スタイルと声と、どちらをとるかといわれたら、多くの人はスタイルをとるのかもしれません。過度のダイエットは、健康のためによくありません。声のためにもマイナスです。

 かつて声のよいのは、太った歌手と決まっていました。太れば声がよくなるのではありません。しかし、身体が楽器ということでは、体格は関係します。大太鼓と小太鼓では、迫力が違いますね。

 声も迫力だけで勝負するわけではありません。太く深い音色では、チェロにかなわないバイオリンにも、オーケストラの重要なポジションにあるのです。

 そういうことが求められるのは、強さを求められた時代の男性です。かつては身体が大きく強い男たちの時代でした。多産の時代は、女性も太っていて健康というのが求められたものです。しかし、日本では少子化で、遠い時代となりました。

 魅力的な声は、健康が売りもの、健康な身体がベースです。声によい食べものについては、諸説ありますが、栄養価の高いものなら、構いません。

 

〇はっきり言えないとややこしくなる

 

 何ごとも、常に主導権は、自分にあると思いましょう。明らかな嫌がらせを受けても、無理してがまんしようと、心を閉ざしてしまうのではありません。気にせず放っておくか、どうして嫌がらせに合うのかを考えることです。

 自分のどこが悪いかと反省するためではありません。まずは、事実を客観視するためです。

もしかすると、嫌がらせだと、自分が一方的に思い込んでしまったのかもしれません。何ごとも頭で決めつけないことです。“君子危うきに近寄らず”、は、君子になってから考えたらよいでしょう。

 ニュースなどの情報だけで判断して行動するのは、あなたの人生を狭く平凡なものにします。あなたの声、言葉一つで、どんな人とも、良好な関係を築くことも可能です。大きな成功を手にした人は、こういう小さなことを一つずつ、自分のプラスになる人間関係に転じていったのです。

 

 世の中に出て、何年かは、いろんな人に振り回されてみるのも、とても大きな勉強です。人間の嫌なところ、くだらなさも体験し、実感してください。その時期が過ぎて、一生、振り回されていては、先はありません。

 でも、あなたから縁を切る必要はありません。すべての人にうまく関わっていこうと考えなくすればよいのです。それでも、あなたは、たいして不自由なく、生きていけるでしょう。

 はっきりと自分に言ってみましょう。声のトーンを変えて「私には必要ない」と。

 

〇声は一人ひとり違う

 

 私は、ぶりっ子やカラオケ声といった、ものまね声をあまり評価しません。よく思わないのは、声は生まれつき、それぞれの身体に備わった楽器の出すものだからです。自分に合った使い方があるからです。磨いたり鍛えたりしていく可能性もあり、また、限界もあるのです。

 「どんな声にもなれる」という人もいます。音響加工を加えると、ずいぶんと脚色も、演出もできるし、発声もある程度、変えられます。ものまね声も、そっくりにできます。しかし、そうするほど、声は本来のパワー、その人自身の魅力を発揮しないのです。

 声にも指紋と同じく、一声でその人をほぼ特定できるだけの個人差があるそうです。証拠能力も高いそうです。犯罪捜査や本人認証などにも、それは使われています。一人として同じ声はないからです。

 ところで、私はフランスのオペラ座のヴォイストレーナーから、「なぜ日本人の声は二通りしかないのですか」と言われたことがあります。彼女に言わせると、「日本人は男の声、女の声、その二つ」。

耳のよくない人なら、そんなものかもしれませんが、トレーナーとして最高の耳をもつ彼女が、そんなことを言うわけがありません。「フランス人は、一人ひとり違っている、一人でいくつもの声をもっている」と。

日本在留の長かった彼女の言うことで、私はこれを「人に好かれる声になる」という拙書の推薦文カバーに、日本人へのメッセージとして入れました。

最近は、声への関心は高まり、嬉しく思います。しかし、まだまだ、実効果は出ていません。あなたがその先駆けを切ってください。

 そこまで、多くの人は、自分の声に関心がないのです。たとえば、ある国にいったら、全員が同じ色の口紅を塗っていた、そんな感じと思ってください。私たち日本人は、声に対して口紅さえ塗っていないくらいにみえたかもしれません。

 

〇日本人には、日本人の声

 

 日本人が金髪にしたり、パーマにしたりする、これはもったいないことでしょう。日本人は、羽織はかま着物が似合い、洋服は合わないとまでは言いません。“ざんぎり頭を叩けば……”から150年を過ぎ、体格もよくなり、スーツの着こなしも板についてきました。しかし、背広などは、肩幅のある向こうの人に合っているのです。日本人の体型や、歩き方などには、着流しが一番です。

 グローバル化の時代、身体に洋服、口に英語でもよいでしょう。しかし、それを国際化と思ってはいけません。日本というのは、舶来主義で、向こうのものばかりに目を向けてきました。そんな時代があったからこそ、追いつけ追い越せたのですが、今は自国を、足元をみつめるときです。

 今ほど日本が文化やスポーツで世界の注目を浴びている時代、日本人が尊敬されている時代はありません。海外に学びに行く。それはよいとして、そこで日本の芸能や歴史、風土、食べもの作法など、尋ねられて答えられますか。彼らは、遠い国にいて、日本を学んでいるのに、日本人が日本について語れないとしたら。

 日本人の女性は、今も世界の人気者、長い黒髪に象徴される美しさには、オリエンタル、エキゾチックを越えて、憧れともなっています。着物を着ると、向こうの美女さえかすんでしまう。なのになぜ、向こうのまねをして、向こうのものを身につけるのでしょう。ブランド品のよさはあるとしても。

 日本人の男性も、評価をあげてきています。昔より、支配階級の民族は、被支配階級の女性と結ばれました。女性が自分よりも下とみる国の男性を選ぶことはなかったのです。日本の男性も国際的に進出して、大きな評価を得ています。もう日本一でなく、世界一でないと、というご時勢なのです。

「基礎教育のためのヴォイストレーニング」 Vol.10

〇声の効果の大きさを知る

 

 笑顔一つで好かれるといいます。本当に魅力的な笑顔って、とても難しいのです。買うことも作ることもできません。

 笑顔を磨く方法、わかりますか。笑っていないと、笑顔はできません。笑顔スクールみたいなものもあるようですが、だからといって、へらへら笑っていたらよいのではないのです。心から笑っていないと、よい笑顔にみえてきません。

 笑っているのに笑っているようにみえない弁護士さんがいます。例えとしてお聞きください。それは、職務上必要なことでもあり、かつ演出も入っているのでしょうが、仮にあなたが弁護士さんに何かをお願いするとき、相手に笑顔があるときとないとき、どちらが話しやすいでしょうか。お医者さんなら、どうですか。

 声も同じです。声を磨くには、自分のもっとも魅力的な声を出していくこと、それがもっとも大切なことです。

 「そんな声が出るなら苦労しないよ」と言われそうですね。そう、誰もが笑顔やにこやかな声の魅力を知っているのに使えない。それがどんなに効果的かをうまく使ってきた人ほどに経験して味わってきていないからです。

でも、あなたの身のまわりにいませんか。きっといます、魅力的にふるまっている人に。

 しかも、笑顔で魅力的な声とは、強く結びついているのです。

 

〇好かれる声のイメージ

 

 あなた自身の目標とする声のイメージをはっきりとさせてみましょう。 

 

A.みんなに好かれる声

  B.仕事で好かれる声

  C.友人として好かれる声

 

それぞれに、結構、違うことがわかりますね。

 

 声というと、まだどうも、はっきりしないと思われるときは、キャラクターから考えていくのもよいでしょう。キャラクターと声も、深い関係があります。

あなたの声やキャラクターを知るための作業です。楽しんでやってみましょう。

 まずは有名人を使って記入してみてください。よくありますね。結婚したい人、恋人にしたい人、上司にしたい人、そういう感じで、けっこうです。

 

        キャラクター   

  A.

  B.

  C.

 

〇あなたを取り巻く人と声のイメージ

 

 難しかったですか。でも一度やっておくと、次からは楽です。なぜなら、目だけでなく、耳でも、その人の声、話し方を無意識のうちに入れるようになるからです。

 次の作業はもっと簡単です。あなたの身近な人、親戚、友人、兄弟、両親など5人くらいの人の声のイメージを書いてみてください。

 

                声のイメージ

  1.    さん(性別   年齢   歳)

  2.

  3.

  4.

  5.

 

 

〇体験から声をみる

 

 シーン別に(体験)、あなたに残っている声のイメージを言葉と一緒に書き出してみましょう。

 

 1.あなたが印象に残っている声

  2.あなたが印象に残ったときのシーン

  3.そのときの相手の声

  4.そのときの自分の声

 

        相手    状況    言葉    声のイメージ

  1.

  2.

  3.

  4.

 

 思い出ついでに、より深いシーンに入りましょう。次の3つについて、ことばや声について、それぞれ考えてみましょう。

 

  1.いい体験ができたとき

  2.その体験にときめいたとき

  3.何かを実現するとき

 

 次に声から思いつくシーンをあげてみましょう。

 

  1.とても嬉しかった声

  2.とてもつらかった声

  3.とても心に残った声

 

〇自分の声によって、好かれる相手が変わる

 

 あなたが好きなのに、相手から好かれないという経験はありませんか。それはあなたの努力だけでは、何ともしがたいこともあります。

たとえば、魅力の一つである声もまた、遺伝的なものや育ちなどにも深く関わっているからです。しかし、声は変えることもできます。つまり、魅かれ合う関係にも大きな影響を及ぼすのです。

 

 どんなに頭のよい人、かっこよい人でも、どうしても好きになれない人っていませんか。それも性格やセンスが合わないならともかく、何の不足もない人。なぜでしょう。

 もし、あなた以外の人には好かれるのに、あなたは好きでないという人がいたら、わかりやすいですね。

 そんなことを他の人に対して思ったこともないという人は、幸せだった人です。でも、だから幸せを逃しているということもあるのです。なぜなら、大嫌いな人がはっきりしていれば、大好きな人も浮びあがってくるからです。

 確かに人間としては、誰もわけ隔てなくつきあえる方がよいでしょう。しかし、本当の友だちというのは、一握り、その人だけというのですから、心おきなく生の感情、本音でやりとりしましょう。

 たとえば、何となく合わないというのは、その人の感じからくるのですが、多くの原因は、受けとめる側のあなたにあります。どんなにいい人でも、小さい頃、その人に似た人にいじめられていたら、近づくのも嫌でしょう。そういう人と、同じ匂いがする、同じ髪型だ、同じものを身につけているとしたら、第一印象では大きくマイナス評価してしまうのです。

声も同じです。どんなによい声でも、その声で叱られたり、怒鳴られた経験しかなければ、どきまきするものです。

 だから両親や兄弟、学校の先生や親戚の人の声は、あなたの意識のずっと深いところに大きな作用を及ぼしているのです。

 

〇行動しよう、声を出そう

 

 今は、判断できるレベルよりも、ずっとたくさんの情報を得ています。その結果、逆に行動しにくくなります。そうした情報から、結果を予測してしまうからです。情報があまりに多いため、手間をかけて比較することもできないので、選択の判断さえ、情報に任せてしまいます。

 やってもみないのに「やってもムリだよ」と思い、動かないのです。「やってムリなら、無駄、損した」という省エネ思考が、見受けられます。「やってムリなら恥ずかしいし、バカみたい」と安っぽいプライドに支配されてしまうのです。

 

声を出したり、他人に声をかけることも同じように思ってはいないかと、心配になります。

 「あなたは、この二日間、何も食べていません。お金も持っていません。どうすればよいでしょうか」

そのように聞けば、どうしますか。

「ネットで検索して調べます」と答えるかもしれません。何時間、ネットで調べても、お腹はふくれないでしょう。メールで食べものを送ってもらいますか。

 すぐに外に出て、通りがかりの人に片っ端から事情を話してみたら、どうでしょう。たぶん、あなたはすぐに一食分、食べられるでしょう。声をかけたからです。

 

いろんな情報を得たために、そのうち「できない」というのが口グセになるのなら、もったいないことです。

 「やってムリならやらない」というのと、「やってできなかった」というのは、まったく違います。そこで体験ができたら、その体験から学んでいけるからです。すると、次にまた、できなくても、少しは近づけるかもしれません。そうして学んでいけばよいのです。

 時間を費やして、情報だけとっても何も変わらないのです。

 

 すぐできてしまうものなどは、できたといわないのです。ただ、済んだだけです。できないようなことをやったから、できたというのです。成功、失敗を一時で決めないことも大切です。

 できないことをやり続けるのが、人生の醍醐味です。成功よりも、失敗したときに味わいがあります。人間関係も同じです。失敗しないと人のよさは味わえません。

 成功したときには、誰もが楽しく、その前の失敗談を話します。失敗せずに成功した人はいないのです。

 つまり、まず、試みることに意味があるのです。

 成功、失敗にわけるのでなく、成功かも失敗かも体験しないことが、もったいないことなのです。

 だから、行動しましょう。「はい、声を出しましょう」ということです。

「基礎教育のためのヴォイストレーニング」 Vol.9

〇日本語は百音以上ある

 

 五十音図ということばは、聞いたことがあると思います。ア、イ、ウ、エ、オの5つの段に、ア、カ、サ、タ、ナ、ハ、マ、ヤ、ラ、ワで、行段の総和5×1050音というわけです。歴史的仮名遣い(旧仮名遣い)です。

ここで、おかしいことが3つあります。

 ヤ行は、ヤ、ユ、ヨで、ワ行は、ワだけしかない。ンが入っていない。

 でも、ワ行のイ、エ、オは、ヰ、ヱ、ヲで、昔は違う音でした。文字のイウエは、重複します

 つまり、音数では、47、イロハ(伊呂波)…の47文字となるわけです。そこから先ほどのワ行のイウエをのぞくと、44。ヲも発音ではオと同じですね。

でも、日本語にもそれ以外に、たくさんの音があります。

 

〇音節(拍、モーラ)と単音

 

 日本語の最小単位は何でしょう。日本語をニホンゴとひらがなで書くと、ニ、ホ、ン、ゴという四つの文字、そのニやホが一つの単位のように思えます。

 数えてみると、ニホンゴで4つ、同じ長さで4つの音が並んでいます。これを4音節と数えます。

 それでは、「汽車ぽっぽ」はキシャポッポ、これは6つの文字ですが、読むとキ、シャ、ポッ、ポで、4音節ですね。4拍という方がわかりやすいかもしれません。

 それでは、ローマ字で表わしてみます。ニホンゴは、Ni Ho N Go、汽車ぽっぽはKi sya pot po(ッはtu ttuなど)、ここで、kstnhmyrwは子音、母音がaiueo、その2つのそれぞれを単音といいます。その組み合わせで「ka=か」となります。kaのそれぞれは、単音といいます。

 

〇直音と拗音

 

 直音というのは一つの文字が一拍で数える音です。先の五十音図の音はすべてそうなります。

 しかし、小さいャ、ュ、ョがつくと、キャと二つの文字を使いますが、一つの発音(一拍)です。

 ン、ツ、ーは、それぞれ撥音(ン)、促音(ッ)、引く音(ー)といわれる特殊拍です。

外国語では、これを一拍とはしません。たとえばホンで二拍になる日本語に対して、HONで一拍です。

 しかし、日本語では、遊びのとき、グリコで3拍はともかく、パイナップル、チョコレートは、6拍分となりましたね。本当は5拍です(拍の長さが均等になることを等時性といいます)。

 

〇学級文庫っていえますか

 

 指で唇を左右にひっぱり、「学級文庫」といってください。ブからウになって、おかしなことになります。唇をひっぱると、バ行のバビブベボは、アイウエオになります。マ行、パ行もです。

つまり、この3つの行は、唇を使うから、使わないようにするとできないのです。次に「アカサタナハマヤラワバパ」というと、マ、バ、パができません。唇を使わないと発音できない。そこで唇の動きがみえては困る腹話術師が苦労する音になっているのです。

 これを、唇で音をつくっていた、(調音[構音])といいます。

 ブンコのブはBu、これがuになるのは、Bが欠けたからです。Bは子音、uは母音です。これは逆に、uBをつけたとみることもできます。

 

〇父音はなぜ消えた

 

 かつて、今の子音を父音とよんで、たとえば「母音aに父音Kがつくと、子音Kaが生まれるなどとしていたときがあったそうです。  

さて、母音はアイウエオというのはわかりましたか。それでは子音は、カキクケコやバビブベボでよいのでしょうか。詳しく調べてみると、かつては、ブBuが子音で、Bが父音、uが母音でした。父と母から子が生まれると、なんともわかりやすかったのです。今は子が育って父にというのは冗談ですが、Bが子音、uが母音となっているようです。

 子音は、呼気を口や鼻から出す母音を妨害してできているのです。

 この場合、唇を調音のpoint(点)として、調音点とよびます。ブの調音点は両唇です。これを両唇音といいます。パ、バ、マ行は、同じ両唇音です。

 調音点は、子音によって違っています。カとガは、口の奥(軟口蓋)、サザタダナは舌先があがり、前歯の裏、歯茎(しけい)、ヤはその間くらい(硬口蓋)。ラは、舌先が歯茎、ハはふれません。ワは両唇と口の奥になります。

 口の前から順に、口蓋―硬口蓋―軟口蓋―口蓋垂(のどちんこ)となります。

 fvは、上歯と下唇、thは歯と舌先(歯)となります。

 

〇清音と半濁音、有声音と無声音

 

濁点「゛」をつけたのが濁音です。

 母音は、有声音で、声の有る音、声が有るとは、声帯がふるえて声となることです。

 それに対して、子音の静かにの「シー」とか、ろうそくを消す「フー」というような音、振動している音ではないので無声音です。

 しかし、シーとフーをジーとブーとすると、有声音になります。つまり、無声音の子音に゛(濁点)をつけると、有声音になるのです。

 こうして、声帯振動をさせたり、させなかったりして、音の違いを生じさせます。

 母音は、子音のように呼気の妨害がないのに、有声音になります。

 ハヘホは、声門が調音点です。

「基礎教育のためのヴォイストレーニング」 Vol.8

〇話してもわからないことば

 

 耳で聞くだけではよくわからないことばもたくさんあります。たとえば、

1.アルファベットの略語(NPOITAI…)

2.外来語(「アウトソーシング」「ソーシャルワーカー」…)

3.お役所ことば どこかの部署のみで使われることば (「策定する」…)

4.専門用語 

などです。

そこでは、言いかえたり、説明を補ったりする必要があります。また、別のやり方として、ゆっくりと正確に読むなど、声の使い方を変えて、わかりやすくできます。

声に表われる態度も、いろんなことから感じられます。

 そのなかで、正しいか間違いかがはっきりとするのは、敬語の使い方くらいです。

 あとは、聞く人の感じ方や受けとめ方によるところが大きく、必ずしも客観的な基準があるわけではありません。TPOや相手との関係によって違ってきます。

 

 話しぶり、速度、声の大きさ、表情、視線、ことばの使い方、専門用語、略語、外来語、方言、コミュニケーションなどにおいて、「人間関係を円滑にするための働きかけ」や、「相手に配慮した言語行動」のことを、ポライトネスといいます。

 それは、大きく2つに分けられます。一つは、気さくに接して、相手との心理的距離を縮めようとするもの(ポジティブ・ポライトネス・ストラテジー)、もう一つは、礼儀正しさや格式を重んじて、相手の立場を尊重して心理的距離を保とうとするもの(ネガティブ・ポライトネス・ストラテジー)です。どちらがよいというのでありません。世代や組織によっても違ってきます。

 

ポジティブ          ネガティブ

相手に興味・共感を示す  敬意を表す

相手の要求・望みを満たす        習慣的な間接表現を使う

冗談をいう           疑問文、緩衝的表現を使う

同意点を探す   

=不一致をあげる                 謝罪する

楽観的にいう             負担を軽減する

理由を述べる             借りをつくることになる

相互利益を主張する      悲観的にいう

Brown and Levinson

 

 つまり、親しみやすさか、礼儀正しやすさか、わかりやすさか、正確さか、おもしろさか、格調の高さ、格式かというのは、ケースバイケースであり、どちらがよいとは決められないということです。

(第25回「ことば」フォーラム 国立国語研究所、「音声と音声教育」(水谷修、大坪一夫著 文化庁、参照)

 

〇英語ではじめて、発音を知る

 

 あなたが声について関心をもったのは、何がきっかけですか。合唱? カラオケ? 声変わり?……、私は英語の授業でした。先生に当てられて、私が読むと、まわりがくすくすと笑うのです。私は決してまじめな方ではなく、いえ、いつもよく笑われていたから、まったく気にはならなかったのですが、あるとき、英語に関しては、どうも発音のせいだなと感じたわけです。ベリイウエローとカナを振って、そのまま読んでいたので、教室を活性化させてしまいました。

 私はそれだけ鈍く、今から考えると、それが大変な長所だったのです。ただ他の人より音声について早く敏感になったのかもしれません。とするなら、怪我の巧妙といえるかもしれません。

 

 私の例は極端ですが、あなたもきっと似たような経験を、いえ笑われていなくとも、英語を習ったときにしませんでしたか。

 「アとエの間のae(アエ)で出すんだ」などと言われて、耳をすまし、口をつくって、その音を発する。いわゆる発音練習です。

 ここで耳で聴いて、声を調整するということ、つまりヴォイストレーニングを体験したわけです。

 もちろん、英語で初めて経験したわけではありません。あなたは、日本語を読むことができます。生まれてすぐに日本語を話したり、読んだりできましたか。いいえ、日本語も生まれてから両親をはじめ、多くの人に教えてもらったのですね。大変だったのです。

 でも、わずか生後3、4年で、かなりのことを話せるようになりました。英語学習などよりもずっと早く使いこなしていたのです。毎日がことばの勉強、日本語のヴォイストレーニングだったのです。あまり記憶にないのですが、くり返し、日本語の音声体系を耳で聞いて、ことばで発して覚えていったのです。

 

〇泣き声から日本語の音声学習まで

 

 最初、生まれるとオギャーと泣く声、これは、初めて肺で息をして出した一声です。おかあさんの羊水内から体外に出され、水中生物から哺乳類になったのです。

 それから喃語(なんご)といって、ことばにならない声で、まわりの人に自分の意志を伝えようとするようになります。「お腹へった」「うんちした、気持ち悪い」「ねむい」などということを、声で知らせるのです。

むずかったり、いらついたり、わがままし放題の時期です。それに対して、「よしよし」とか「だめ」とか、ことばでなく声の感じで、両親の反応を知ります。そのことばを母国語として聞くことで、発することが早くできるように脳に配線ができていきます。

 そして、学校に入る頃までに、およそ主なことばを聞いて話すことができるようになります。その母国語が、あなたのベースとなります(臨界期)。いわゆる、あなたのネイティブなことば=母語は、日本語となったわけです。

 

 さて、そんなことをすべて忘れて、中学校にあがると(あるいはその少しまえから)、最初の外国語である英語に接するわけです。そこで日本語にない発音がたくさんあることを知ります。発音記号などで学びます。

 それでは、日本語にはそういうものはなかったのでしょうか。いいえ、幼稚園や小学校一年生のときに50音ということで「あいうえお」という母音や、「(あ)かさたなはまやらわ」という子音を学んではいるのです。

 ただ、日本語というのは、音声面ではとてもシンプルなので、だいたい幼稚園までにもう正しく話せるようになるのです。

 なぜなら、5つの母音に子音をつけていくと、すぐに言えるからです。つまり、A、I、U、E、Oのまえに、Kがつくと、KaKiKuKeKo、それで通じたらすむので、それ以上、詳しくは学ばないのです。発している音は必ずしも50音表での100余りの音だけではないのですが、そのように覚えるのです。あとは、ひたすら読み書き、つまりカタカナや漢字の習得に時間を使うのです。

 音声面での発音が多く、しかも難しい外国語では、外国人も母語の発音や発声について、基礎教育で学ぶことは当然です。つまり、日本語は音声面でシンプルなので、私たちはあなたもほとんど日常レベルで音声についてそれほど学んではこなかったわけです。

 

〇方言と共通語

 

 もし、あなたが地方にいて、いつか東京や関西に出るとしたら、そこでことばのギャップを感じ、再び音声を学ぶかもしれません。英語以外の国に行くときも、その国のことばを多少は学びますね。

 地方によっては学校で学ぶ共通語と大きく違うために、日本語の音声教育をするところもあります。「さしすせそ」などが苦手な地方もあります。

 ただ、TVのおかげで東京や関西の話し方は、番組から学んでいることが多いようです。たとえば、東北の出身の人でも、ズーズー弁になるようなのは、今では、意識的に使い分けられるようになっているのでしょう。

 これはヴォイストレーニングというより、発音の矯正です。特に日本語の場合、単語が違わないのなら、アクセント(高低アクセント)とイントネーションの問題です。

 あなたも、日本語以外の言語をネイティブとしている外国人の日本語がおかしいのはわかるでしょう。あれだけ優秀で日本語もマスターしているはずの外国人が、日本人の日本語と同じに聞こえないのは、先に述べた言語学習の年齢制限(臨界期)にも関係しています。

 方言でなくとも、人によって、たとえばサ行やダ行がうまく言えない人もいます。しかし、苦手な音があってもだいたい、他の音がしっかりしていたら通じます。

 声とことばの関係が少しみえてきましたか。発声と発音について、日本人である私たちは、大して音声教育を受けてきていないのです。しかも、日本語には、あまり複雑な発音がありません。これが日本人が外国語の習得が難しい原因の一つなのです。

より以前の記事一覧

ブレスヴォイストレーニング研究所ホームページ

ブレスヴォイストレーニング研究所 レッスン受講資料請求

サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想

発声と音声表現のQ&A

ヴォイトレレッスンの日々

2.ヴォイトレの論点