3-1.声の話

「最強トレーニング」 Vol.14

〇さまざまな音をつくる子音(1)カ行(ガ行)

 

声を出すときに、声を発するところや声を妨げるところ、その位置ややり方が変わると音も変わります。そこで生じた音を子音といいます。

 

日本語の場合は、子音は母音につく形(原則として1子音+1母音)です。柔軟かつすばやく出すことが求められます。母音が流れをつくり出すのに対し、子音はそれを妨げ発します。

K、TFなどは、声帯を震わさずに、喉、舌、唇によって発音されます(これを無声音といいます)。

L、MNRZVWなどは、声帯の振動を伴います(これを有声音といいます)。

日本語の欠点は、口の中で平たく浅い声になってしまい、外にひびいていかないことです。それを欧米の言語のように口の中を縦に広く、響きも胸と鼻の線を結ぶ<縦のイメージ>で出すことがポイントです。欧米の発声と同じように日本語もしっかりと伝えられるようにしていきたいものです。

 

日本語では子音母音の区別がないため、スーツ(Suit)、スーパー(Super)のす(Su)とスクール(School)、スケート(Skate)のS(子音のみ)を同じ発音「ス」で認識しています。

それを、耳での感覚による認識をより鋭くすることで解決していきます。日本語の音声言語教育の必要性は大いにあるのですが、今のところ、外国語学習(聴音と発音)によって代用されているといってもよいでしょう。

 

K 舌の中央を山型に軟口蓋につけ、息を止めてこれを離すことで発音します。「か」は、舌根の奥で行なっているため、次にくる母音が不明瞭になりがちです(Gにも同じことがいえます)。

N 日本語「ん」とは違います。歯茎の軟口蓋に舌の先がついて、瞬間的に鼻に抜けます。

V、FW 下唇の裏と上の前歯で摩擦して発音します。

Z 歯の間ではなく、舌を歯の間で出します。

 

□カ行の発音

EX.「こんにちは」 「こんばんは」

 

〇カ行音……カ[ka] キ[ki] ク[ku] ケ[ke] コ[ko

 

日本語で最も語数が多いのが、カ行、ガ行で始まることばです。

カ行の子音[k]は、奥舌と軟口蓋でつくる破裂音です。奥舌を軟口蓋につけて息の出口をふさぎ、息をはき出すとき、この閉じた部分をつき破ることによって発します。

 「アカアカ」をくり返してみましょう。鏡でみると、喉の奥(軟口蓋)の口蓋垂に舌が盛り上がります。「カ」「ク」「ケ」「コ」はこうして発音されます。

 

<キとカクケコの違い>

「カキカキ」といいながら、鏡で喉をみてください。

軟口蓋は「カ」でみえるのに、「キ」ではよくみえません。舌の手前が盛り上がるからです。キ[ki]は、「イ」の発音につられて、舌の接点が他のカ行音よりも前で硬口蓋になります。これを口蓋化といいます。口蓋化は、他の行にも出てきます。(調音点は、前方から、キ→ク、ケ→カ→コの順です。また、キ、クは、無声化することがあります。)

 

〇ガ行と鼻濁音について

 

・ガ行音……ガ[ga] ギ[gi] グ[gu] ゲ[ge] ゴ[go

[g]は、[k]と同じに発する子音です。[k]が無声音、[g]は有声子音です。[g]は強い破裂音で、強く発音すると耳ざわりです。「ガ」「グ」「ゲ」「ゴ」に対して、「ギ」は口蓋化します。

 このガ行音は、呼気を鼻へぬく鼻濁音になることがあります。

 

〇ガ行が鼻濁音になる場合

 

助詞のガ  EX.山カ゜(゜は鼻濁音化を示す)

もとはカ行のものが複合語になって濁ったもの  EX.株式会社

数字でも固有名詞化したもの  EX. 十五夜、大五郎

 

〇ガ行が鼻濁音にならない場合

 

1シラブルにくるガ  EX.学校

複合語  EX. 専門学校

外来語  EX.スィンガー

擬音    EX.ガンガン

数字    EX5(ゴ)

 

  • 〈カ行のトレーニング〉

(カ)固まった価値観を変えろ/階段の壁にかかった消化器

(キ)今日のキリンの気持ち/地球の危機きっと来てる

(ク)空想の中の百済の国/熊本の空港にくる

(ケ)過去の経験にけりをつける/やけ酒のわけ

(コ)苔むした小石の小径/行楽地で孤独な子供

 

「最強トレーニング」 Vol.13

〇あまり大きく口を開閉しないこと

 

日本人の発音練習は、きれいな(美しくひびく)日本語を使おうと、口の形の練習ばかりをやっているかのように思われます。(若い女性のナレーター、アイドルやファーストフードの店員、大企業の受付、プロの電話交換の声などを思い浮かべてください。)

 しかし本当は、身体からしっかりと息を流し、胸の深いところで声としてしっかりととらえ、充分に共鳴させた上で発音した方が、よいのです。身体を使う分、喉は楽になります。

へたな合唱団のように口ばかりパクパクして、本当の声が身体から出てこないようでは困ります。11音、大きく口を開閉するのは不自然な上に、息の流れが一定でなくなり、流暢に聞こえにくくなります。

 現場で即戦力を求める場合、こういう形になるのは、やむをえないかもしれません。ビジュアル(口の形)でも、伝わる分、口の形を整えるのは、有利であったからです。

 しかし、ここでは、声としてしっかり出した上で、音として調整するようにしましょう。

 口をはっきりとあけることは、最終段階でよいのです。口の形からやる人も多いのですが、母音というのは唇や口に直接関係していないことを知っておいてください。

 

〇日本語のアイウエオは一時、使わなくてよい

 

日本語では声が浅く、どうしても無理が生じて聞こえます。たとえば、「ウ」の発音は軽く口を閉じ喉をならすものですが、こうすると息がもれやすく身体からのしっかりとした声になりにくいのです。日本語の口の形通りに発音すると、ア、イやエも、ずいぶんと薄っぺらい声になります。

外国人が日本語で歌ったものは、とてもきれいに音が響いています。これは、「U」でOに近いところで、喉も口のなかも開いたまま発声するからです。私や役者が話すときは、この深い母音AIUEOを使っているのです。

 

〇インターナショナルな発音は、発声から

 

インターナショナルな発声の練習をします。これは、いままでの日本語の音声トレーニングと異なります。でも、20年以上使い慣れ聞いてきた日本語のくせがそう簡単にとれるわけではありません。特に、日本語での発音をもとに外国語の発音をつくろうとする無理からきます。

そこで私は、外国語の発音以前の発声まで立ち戻り、そこからの深い音を借用させています。つまり、どうせ勉強するなら何語でもOKという調音以前の発声を身につけようということです。しっかりした発声でなくては発音もうまくいかないからです。

 

※発音は聞きとる力によって大きく異なります。母音を浅く捉えた日本語と日本人の生活は、日本人を国際的に強い音声言語の使い手にはしませんでした。

 

〇発声から発音へ

 

 日本語のアエイオウを、AEIOUとおきかえて、英語で説明します。ただし、英語のAは口内が狭くなりがちなので注意してください。

A……GARDEN(ガーデン) 口を大きくあけ、舌を平らにして明るく。薄っぺらな声にならないように

E……EVER(エバー) Iより口を大きく。多くの息を使う

I……CHEESE(チーズ) 唇がほどよく開き、明るく広く

O……FOR(フォー) 舌を平らにする

U……FOOL(フール) 唇をあまり前につき出さず、鼻音にもならないように気をつける

 ついでに、もう3つ、発音を学びましょう。

ユ( Ü)(ウムラウト)……ウの口形でイを発音(英語になく、ドイツ語・フランス語) [※ウムラウト・・・後続母音の影響による母音変異]

アー(ER)……HER、口を中くらいにあけて、やや唇をつき出す

ア(A)……HAT、大きな口で明るくはっきりと出す

 

〇外国語の発音もよくなる

 

 AEIOUを、最初の段階では、「A」と「E」の間の音、「E」と「I」の間の音など、それぞれの中間音を出してみるのもよいでしょう。ここでは、響きと声をコントロールする方法をおぼえることに意味があるからです。あいまいな音をうまく出せることも、インターナショナルなレベルでの発声・発音に対応していくためには大切なことです。

もちろん、ここでいう、あいまいとは、言語(発音)不明瞭ということではありません。日本語のアイウエオではないだけで、はっきりした音ということです。

 

AEIOUアエイオウ、母音のチェック

 

A」「E」「I」「O」「U」で同じ音色にとることをチェックしてください。

□喉が開いている

□声がしっかり胸についている

□お腹をしっかりとつかって支えている

□語の響きが均一である

5音とも、身体の使い方、息の使い方がそろっている

□息が詰まっていない、きちんと流れている

□舌に力が入っていない、平らになっている

□呼吸の準備をしてから発声している(ため、構えがある)

□あごが出ていない

 

〇ことばの基本は5つの母音

 

母音とは、声帯で発せられた声が、共鳴器官を通って鼻や口から外へ出るまでの間、妨げられずに出たものです。

日本語では、ア行音 あ[] い[] う[] え[] お[] にあたります。

 

〇母音の発音

 

EX.「ありがとうございます」 「お先にいただきます」

 

母音は、舌の位置、口の開き方の三点で、発音が変わります。

 

[あ]自然な口の構えで、あごを大きく開きます。上下の唇の間に、指二本が縦になんとか入るぐらいが、「あ」の最大の口の開きです。舌はあごと一緒に下げて、唇はまるめません。

 

[え]「あ」から、あごを閉じてきて、舌の位置を「あ」のときより前にもち上げます。唇は、両端をやや左右に引く感じです。

 

[い]「え」からあごを閉じてきて、ほとんど開かない状態にします。舌は、上歯ぐきの上の硬口蓋へ向けて、ジーと摩擦音が起こる手前まで高く上げます。唇は、平たくわずかに開けます。

 

[お]「う」の場合より、あごを開き、上下の唇の間に、人指し指一本がたてに入るぐらいの大きさにする。舌は「う」のときよりやや奥へ引き込み、「あ」の場合より奥舌がうしろへ持ち上げられます。唇は五つの母音の中で、一番丸くします。

 

[う]「い」に近いのですが、あごの開きは、五つの母音の中で最も小さくなります。舌先を奥のほうへ引っ込め、舌のつけ根に近い部分をやや緊張させてもり上げる感じです。唇は「い」より両端を左右から中央へ引き寄せます。(日本語の「う」は、完全にまるめるのではなく、外見上は平らな感じ。唇は丸くなりません。)

 

〇声からことばに

 

 声が使われ始めたときに、ことばはまだありませんでした。

最初に使った声は、動物と同じく痛みや恐れを表したり、敵を威嚇するもの、悲鳴に近いものなどだったと思われます。

日本語では5音しか認識しない母音も、国が違えば異なる音が多くあります。かつては、日本語のなかにも今と違う発音がたくさんあったのです。アイウエオは、後々に日本語のことばとして(とくに書くために)定められたものです。

 

基本を旨とするトレーニングでは、原始的な音のエネルギーにまで戻ってそのパワーを吸収していきたいものです。

結果として、発音、ことばとして聞こえるようにそろえることができればよいのです。

声が出てからことばになっていったのですから、まずは声が出ることにこだわって、チェックをしていきましょう。その後にことばとして使えるようにしていきましょう。

 

  • 母音の発声トレーニング

「ア」 アーいい天気だ

「エ」 エーそうだったんですか

「イ」 イーッだ イッヤッダッ

「オ」 オー ワンダフル

「ウ」 ウー マンボッ

 

〇母音の発声で特に注意すること

 

□「あ」……舌の力が抜けているか

□「え」……口が狭すぎて「い」に近くなっていないか(このときは、唇を少し横にひく)

□「い」……「え」とか「あ」に近くなっていないか

□「お」……口の開きすぎで「あ」に近くなっていないか、唇を使いすぎて「う」に近くなっていないか

□「う」……「¨」(ウムラウト)になっていないか 

 

 指や鉛筆をくわえて、口の形をまったく動かさず、唇と舌で5つの母音を発してみるとよいでしょう。

 母音そのもののもつ音質(フォルマント)は、口に到達する前につくられています。そのため、口を動かさないで、5音とも発声できます。母音は声を出した瞬間につくられるのです。ですから、口先に頼って発音せず、腹話術のように口の奥で声にするイメージをもつとよいでしょう。

 唇には力を入れすぎてはなりません。少し緊張させて声をしっかりと前に出すように習慣づけてください。きちんと発されていたら、声は結果として前に飛びます。

 舌は、前歯の歯ぐきのうしろです。そこに自然に軽くつけておきます。舌根(舌の根元の方)に力が入るとよくありません。舌を平らにするように注意してください。あごと舌を楽にすれば自然とそうなります。

 すべてのことばをはっきりと発音しすぎることによって、流暢な流れ、ことばの抑揚を打ち消してしまう人もいます。これは、ことばを口先ではなく、口の形をあまり変えずに、はっきりと響きで伝えられるようにすることによって解決できます。

 私が深い声を重視するのは、発音面で区分けすればよいアナウンサーならともかく、この問題を解決せずには、魅力のある声が出せないからです。

ことばをはっきりさせるための発音練習は必要ですが、それと声で、自分の意志や感情を伝えることは別問題です。相手に伝わり、相手の心を動かすだけの表現がのる声が、まずは大切であることを忘れないで下さい。

 

  • 母音のトレーニング

<ア行のトレーニング>

(ア)あした、あさって、しあさって/秋、愛は熱く燃える

(イ)イライラしている猪/一途なる意志とイマジネーション

(ウ)うれしい噂は嘘だった/ウカウカしていると運が逃げる

(エ)偉い絵師が選んだ絵/エネルギュッシュな演技に詠嘆

(オ)お母さんの大きなおなか/お金を落として怒る人

「最強トレーニング」 Vol.12

〇呼吸のしくみ

 

声帯そのものは意識的に動かすことができません。そこで呼吸をコントロールすることで、その周辺の筋肉も含めた声のコントロールをしていくのです。

 

〇呼吸は肺が行なうのではない

 

呼吸は、肺がそれ自体の力で膨らんだり縮んだりして行なうものではありません。肺は、ゴム風船のようなものと考えてください。肺を取り囲む胸郭(きょうかく)が、横隔膜、肋間筋(ろっかんきん)などによって拡張したり収縮したりして、肺に働きかけ、吸ったり吐いたりできるのです。

 

〇吸気と呼気

 

吸気は、身体のなかを広げることで、肺がふくらみ、肺内の圧力が低くなり、口や鼻から空気が入ってくるのです。

もともと呼吸とは、空気の酸素を血液中に取り入れ、体内で生じた不要な二酸化炭素や水蒸気を吐き出すものでした。およそ一、二秒で吸って、一、二秒で出していたのです。

 その呼気をことばや歌など、発声に使うと、十秒くらい出して一秒吸うといった必要がでてきました。つまり、発声のための呼気のコントロールをしなくてはいけなくなってきたのです(横隔膜などは、元は吸気のための筋肉ですから、呼気に使うように、トレーニングしなくてはいけないのです)。

 

〇腹式呼吸と横隔膜のしくみ

 

 横隔膜は胸腔(肺)と腹腔(胃腸)の境にあります。しゃっくりのときに動くところです。お椀をふせたような形をしている筋肉質のものですが、これが収縮すると、全体が平らになって下がり、胸郭のなかが広がります。肋骨の下に手をあて、息を吐いたり吸ったりしてください。声楽家のように、本格的に腹式呼吸を身につけた人は、腰のまわりに空気が入るかのようにふくらむものです。

ドンデルスの模型で説明します。これは、びんを胸郭に、底に張ったゴム膜を横隔膜に見立て、二股のガラス管(気管)の先には、ゴム風船がついています。

 底のゴム膜を下に引っ張ると、びんの中の気圧が外の圧力よりも下がり、ゴム風船には自然に空気が入って膨らみます。そして、底のゴム膜を引っ張っていた指をはなすと、びんの中の気圧が上がり、ゴム風船は縮み、空気は外へ流出します。

 これが、吸気と呼気にあたります。

 

〇胸式呼吸(肋骨呼吸)と肩呼吸(鎖骨呼吸)

 

腹式呼吸に対して、声を完全にコントロールするのに適さないのが、胸式呼吸です。これは、肋骨や鎖骨で、胸部を広げ空気を入れます。ラジオ体操の深呼吸は、肋骨を引き上げて胸を広げて吸い、逆の動きで吐きます。

 激しい運動をするとハアハアと肩で息をします。これは吸うのも吐くのも速いため、すばやく酸素をとりいれるためのものです。どちらも、胸や肩が動くと見た目によくありません。(息を丁寧に保って声をコントロールできないので、発声には不向きです)息を吸うと、肩や胸がもり上がるなら、胸式呼吸と思ってください。

 

〇肺活量は気にしないこと

 

肺活量で悩む人が多いのですが、成人してからは減るだけです。小柄な人や女性は肺活量が少ないのに、声が悪いというわけではないでしょう。そんなことは気にせず、息の使い方を変えるようにしていきましょう。

大切なのは、限られた呼気量をどれだけうまく声に変えられるか、ということだからです。息がいくら多くても、息もればかりで、声として生かせないのであれば意味がありません。

いかに少ない呼気量でうまく声にできるか、それはいかにしっかりと共鳴させられるかで、決まってくるのです。

 

〇呼吸は鼻と口、どちらでするのか

 

 鼻呼吸がよく、口呼吸はよくないと、よくいわれます。確かに鼻で吸う方が、喉を乾燥させない、異物を除去するなど、健康上もよいでしょう。そのため、時間をとって行なうトレーニングにおいて、注意するのはわかります。

 しかし、呼吸の原理から考えると、吐いた分は自然と入るのですから、吸うという意識を持つことや、吸うトレーニングはあえて行なう必要はないといえます(口内を意識するために吸う息を感じてみるなどというのは、よいでしょう)。鼻がつまっていたら話せないわけでもないのですから。

 

〇たくさんのメリットがある腹式呼吸

 

腹式呼吸は、たくさんの息を横隔膜でコントロールして使えるので、発声上、さまざまなメリットがあります。そこでなぜ腹式呼吸が大切なのか知っておきましょう。

 

〇腹式呼吸を知ろう

 

腹式呼吸ができてくれば、お腹の周り全体が自然と外側へふくらむのが感じられるはずです。

両足をかるく開き、背筋を伸ばして立ってみましょう。肩の力を抜いて手を腰の両わきへあて、そこに空気が入るように息を入れてみます。そのとき、肩、胸が盛り上がったり、力が入ったりしてはいけません。

 最初はわかりにくいので、上体を前方へ倒してやったり、座ったり、寝ころんだりして、息と身体(お腹)との関係をつかむとよいでしょう。

 

〇なぜ腹式呼吸が大切なのか

 

腹式呼吸は、息を身体でコントロールして使えるので、声にメリハリがつけられます。話を力強く展開していくことができます。

人前であがると、声が細かくふるえたり、声の高さや大きさがうまく調整できなくなり、ひどいときは声が裏返ります。

心臓がドキドキして呼吸が浅くなり、お腹で支えられなくなるからです。しかし、腹式呼吸では、横隔膜で支え、あがりからくる緊張などの影響をあまり受けなくてすみます。しかも、喉を安定させやすいことから、歌唱やせりふの基本条件となっているのです。

 

〇腹式呼吸のときの注意

 

首を回したり、肩を動かしたりして、常に緊張を解きほぐしましょう。肩と首の間、胸とわき、肩との間の筋肉は、特によくほぐしておくことです。

 息を吐いてみます。喉がかわくような吐き方でなく、お腹の底から楽に絞り出すような吐き方がよいでしょう。吐き切ったら、少し止め、そしてゆるめます。すると、自然と息が入ってきます。

 これを、身体の動きとして意識しましょう。「口で息を吸っているのでなく、息が身体に入ってくる」ようにするのです。

 上体を前屈させると、お腹の前のほうが押されるので、背筋や側筋が使いやすくなります。

 

よく腹式呼吸をお腹の前を動かして鍛えている人がいますが、これは内臓器官を圧迫するだけで、あまり勧められません。

横隔膜は、肺の下にお椀をふせたような形でついているので、前ばかりを鍛えるのでなく、均等に動かしましょう。 鍛えにくい背筋や側筋を使いこなしていくことです。本格的に腹式呼吸を身につけたオペラ歌手などは、腰のまわりに空気が入るかのようにふくらみます。

 息を吐くときには、あごがあがらないようにすることです。日本人の大半は、あごが前に出すぎています。

 

〇腹式呼吸のわかりにくい人のために

 

胸を張り、少しやや上に向けて、もちあげると、腰のまわりに少し緊張を感じます。そこの筋肉(背筋、側筋)が、声を自在に扱うために大切です。足はやや開き、楽な姿勢をとることです。頭を後ろに反らないように気をつけることです。こういう立ち姿勢も慣れるまで疲れるものです。

街を歩くときも、食事をするときも、さっそうと胸を張って、背筋を伸ばし、あごをひいて、常日頃から格好よくしましょう。

1.両足を少し広めに開いて、まっすぐ立ってください。

2.肩があがらないように気をつけて、両手を腰の横にあてて、そこの筋肉を動かしてみてください。その後、両手はおろした方が、肩があがらなくてよいでしょう。

3.息を吐いたあと、少しずつ、そこに空気が入ってくる感じを確かめてください。多くの人は、前腹が出っぱるぐらいでしょう。身体ができてくるにつれ、腰の両わきや背後がふくらみます。

 次に床の上に仰向けに寝てください。

 少し重いもの(本などを34冊)をお腹のみぞおちのあたりにのせて、力を抜いてください。

じっとしていると、ものがお腹の上で動くので、呼吸が呼気と吸気のくり返しで行なわれているのがわかるでしょう。少し強く吐くと、その分反動で、お腹の方へ入っていくようになります。自然に吸気します。肩が動かないように気をつけましょう。

 

〇腹式呼吸の習得法

 

 声を使うときに必ずいわれるのは、腹式呼吸です。といっても、腹式呼吸は、誰にでもできます。腹式呼吸で声をコントロールすることができているかどうかが問題です。

 寝ころがってみれば、腹式呼吸していることは確認できます。しかし、それが声に応用でき、声を出したときに腹式呼吸でコントロール(常に腹式と胸式呼吸は共存するのですが)するのは、なかなか大変です。

 日本人の場合、日本語がとても浅い息で発音できることばであるため、身体や息を使った発声をあまり習得できていないといってもよいでしょう。外国人のことばの発声の響きも参考にしてみてください。強い吐息(吐気)をしっかりした深い声にせず、発音を口先や口内で浅い息で作っているのでは、声量や声域がなく、個性的な声も出しにくい状態です。

 決して、新しい声をつくるわけではありません。自分のもっている声を最大限に発揮できるようにしていくのです。それには、自分自身の今、持っているベターの声の発見と、その声のトレーニングからです。

 一般的に腹式呼吸は、誰もが日常的に使っていますが、発声時にそうならない人もいます。特に、女性のなかには、腹式呼吸を意識して身につけた方がよい人がたくさんいます。話すときにこそ、腹式呼吸中心にならなくてはなりません。

 

  • 腹式呼吸のトレーニング

1.息をお腹から出してみましょう。お腹が少しずつへこんできます。苦しくなったら、そこで、お腹がもとに戻る反動を利用して、お腹に空気を満たしましょう。吸えなくなって止まったら、そこでまた吐き出しましょう。

この動きを23分くり返します。

2.次にこれを次のように2秒止めてやってみましょう。

 息を吐く→2秒止める→吸う→2秒止める

 きちんと止めなくても、吐かなければ入ってくるので、保つ感じでよいでしょう。

 喉を中心としたところや、上半身に力が入らないように呼吸ができるようになることを目的としてください。

3.次は1回の息を吐く時間を5秒にしてみてください。息を吸うのに2秒、次に、5秒を10秒にしてみてください。少しずつ呼気の時間を長くしていってください。次には、吸気の時間を短くしてみてください。

 息を吐く(5秒)→吸う(2秒)

 〃   (10秒)→〃 (2秒)

 〃   (20秒)→〃 (15秒)

 〃   (30秒)→〃 (1秒)

 呼気は、少しずつ、お腹の力で調整できるようになるにつれ安定してきます。息の流れに乱れがなく、均一に一定量が吐けるようになるようにしましょう。やがて、息も少しずつ深くなってきます。

4.息をできるかぎり長く出してみましょう。それを、毎日1回、時計で測って記録しておきましょう。 < 年 月 日 秒>

 

〇腹式呼吸のイメージ

 

腹式呼吸のトレーニングでは、深く息を吸ったり、深呼吸するようなトレーニングはしません。息を吐いたらその分自然に入ってくるというのが呼吸だからです。呼吸については、吐いてから吸うときへの移行を、一つの円を描くようにイメージして行ないます。

 

〇胸式呼吸をめだたせない

 

息を少し強めに何回か吐いてみてください。

このとき、胸や肩がもちあがるなら、胸式呼吸を過度に加えた呼吸を行なっているということになります。

胸式による呼吸は、声帯周辺に無理な緊張を与えるため、発声には好ましくありません。腹式呼吸を、毎日の生活のなかでもしっかりとできるように、身につけていきましょう。

 

〇息の支えを得る

 

息を吸っているときは、横隔膜が下がって平らになり、胸郭が広がります。お腹の方に圧力がかかって、左右に押し広げられます。肋骨の下の左右の筋肉に弾力が感じられます。これをトレーニングによって、意図的にコントロールできるようにしていきます。つまり、すぐに横隔膜が上がらないように、保つのです。このお腹の支え、息の支えが、腹式呼吸による発声の基本となります。

 

〇お腹に意識をすえる

 

 お腹に力を入れようと考えると、全身が緊張してしまいます。こういうときは、下腹に、力でなく意識を持っていってください。意識が頭ではなく腹にすわっているときには、自然に力が抜け、思うようになっているものです。

声は、硬いところへ響きます。喉が硬ければ喉に、舌が硬ければ舌に、あごならあごにひびいて、こもってしまうわけです。

筋肉が硬くなっては、どんな動きもスムーズにできません。ひざに力が入ると、みぞおち、胸、首と力が入ります。身体は一つなので、全体に影響してしまいますから、注意してください。

女性は、声帯が男性の3分の2くらいの大きさで、横隔膜の位置も男性に比べるとやや高いため、腹式呼吸、胸声をマスターするのに、やや時間がかかるようです。

 

  • 呼吸のトレーニング

 両足を少し開き、リラックスして立ってみてください。

 息の量や長さをコントロールします。息がわかりやすいように、スーッといいながら練習します。

1.「スーーーーー」(長く吐く。息がくずれないように2040秒くらい)

2.「スーーッ」(息を均等に吐ける範囲で1520秒くらい)

3.「スッスッスッスッ」(息の瞬発力をつける)少しずつ速いテンポに進んでいくようにしましょう。最初は1秒に1回で練習してください。

 

  • 息の瞬発力を高めるトレーニング

 「ハッ」、「ハッ」、「ハッ」、「ハッ」、「ハッ」と、一回ごとに、お腹が少しふくらむ感じで吐きます。

 これを、ドッグブレスといいます。走ってきた犬のように、早く深くたくさん吐いてみましょう。

※やりすぎは危険です(過酸化症候群になる)。具合の悪くならない程度に、その日の体調にあわせてやりましょう。

 

  • 呼気の調整トレーニング(各1020秒)

 息を止めても、喉は開いたままで、必ずお腹で切るようにしてください。

1.均等に息を20秒流してください

2.初めは強く、だんだん弱くしてください

3.初めは弱く、だんだん強くしてください

4.3から2へ続けてください

5.2から3へ続けてください

6.短く強弱をくり返してください

 

  • 呼吸の機能強化のためのトレーニング

1.ゆっくりと息を出し、出し切ったら、23秒止め、自然と息を入れる(10回)

2.息を(ハッハッハッハッ)と犬が走り終えたときのように速く吐きつづける(30秒間)

3.時計をみながら、5秒、なるべく速く吐き、5秒休む(1分間)

4.均等になるように意識して息を吐き出す(10回)

5.少ない息から、少しずつ吐く量を大きくしていく(10回)

6.上半身を中心に大きく身体を動かしながら声を出す(オイチニイ、サンシ、ゴー、ロク、シチ、ハチ)

7.脱力して、はねながら「アー」と声を出す(5回)

8.上半身を前傾させたところから、ゆっくりと上にあげながら息を吸い、「ああー」といって、戻す(3回)

 

〇腹筋の強化トレーニング

 

ここでは、腹筋の弱い人のために、それを鍛えるためのトレーニングを紹介します。

腹式呼吸に関して、お腹の前の方の筋肉はあまり固くならない方がよいので、補助的トレーニングとして用いましょう。これによって側筋や背筋をつけ、対応しやすくしておくのです。

1.仰向けに寝ころんで、足を30°くらいに持ち上げます。これを毎日行ないます。

2.仰向けに寝ころんで、頭の下に両手をあて、上半身を持ち上げます。これを毎日行ないます。

 

〇呼吸のチェックリスト

 

□喉がすぐに乾かない

□息を吐くと、お腹と結びつきが感じられる

□胸に力が入っていない

□背中はまっすぐにしている

□口をパクパクさせていない

□重心があがっていない

□肩があがらない

□上半身に力が入っていない

□首や頭がまっすぐになっている

□あごはひいていて、力が入っていない

□呼吸は同じペースで行われ、ムラがない

□お腹は苦しくなく、お腹の前の方に力が入っていない

□頭痛やめまいはしない

 慣れていないうちにあまり続けてトレーニングすると、過換気症候群の症状がでることがあります。時間を区切ってやるようにしてください。息苦しくなったときは、すぐに止めて座って休んでください。

「最強トレーニング」 Vol.11 

〇構想(イメージ)をもって話すこと

 

たとえば、テニスのプレーヤーは、相手の打つ前の動きからみて先に落下点を予測し、そこに先まわりして自分のフォームをくずさず打ち返します。話も、自分のフォームが充分に生かせるように予め、どのようなフレーズにまとまるかをしっかりとイメージしましょう。

行きあたりばったりでは、1つひとつのことばや音も途絶えがちになります。次のフレージングへの入り方のタイミングや声量、リズムののり、ことば、発声(響き)などが、ベストのタイミングでまとまりません。

「木を見て森をみず」ということにならないように、全体を見通した上で、声や息を配分しましょう。

 

〇フレージングを保つトレーニング

 

「すべての案件が昨日の会議で可決されました」

これを一つのフレージングの流れのなかでいいきってみましょう。

このとき、1つひとつのことばを身体でしっかりと押え、すべてのフレーズをそのことばの流れの上で1本化してとらえます。バラバラに口先からどこへ飛んでいくかわからないようにガナリたててはいけません。方向はひとつ、その声で一つひとつのことばをたたみかけるようにしっかりとつないでいくのです。

フレーズをこま切れ、ブツ切れにすると、フレージングと、ことばの命脈を奪います。このとき、息をしっかりと流さないと、その脈や流れも出てこないのです。

 もうひとつ気をつけたいのは、ことば、あるいはフレーズの最初と最後(発生と終止)のところでは、必ず同じポジションで声をとるということです。とくに、喉で息を切って終わると、次のフレーズで声が出にくくなり、裏返ったり、フレージングがうまくいかない原因になります。これはリピート、つまり部分的な疲労防止策です。

 

〇フレージングを正しくいうトレーニング

 

ことばのメリハリから、フレージングを考えてみましょう。

「いつもの会場で開催いたします。」

1.「いつものか、いじょうで」

2.「いつもの、かいじょうで」

3.「いつも、のかいじょうで」

これも、「いつものか、いじょうで」と聞こえないように、「いつも の 会場 で」としっかりと伝えましょう。

どうですか?大分感じが違ってくるでしょう。

 

これも、フレージングの使い方による差です。日本人は細かくとらえ、全体的につかんで大きく表現することが苦手です。小さな単位ごとにいってしまうのです。

それに対し、大きな感情のうねりのなかに、細やかな繊細な感情も入っているようにするのです。フレーズのとり方が大きいと、声が楽に出ます。気持ちよく聞こえるのです。声の動きを、波やうねり、ボールのバウンドのようなものとイメージしてください。

(つまり、最初にひとつ大きなフレーズをつくると、あとは、その勢いでいくつかの小さなフレーズが、動きのなかに出てくるということです。小刻みにブレスすると、この大きなうねりがなかなか出てこなくて、のりにくくなりがちです。)

日本語は、抑揚なく間伸びして、ことばのなかにリズムが出にくいことばです。これをメリハリの効くことばに変えていくのです。べらんめえ調のマネから練習するのもよいでしょう。

 

〇口上を聞いてみよう

 

相手を退屈させないように、日本語をうまく立ち上げている例としては、落語の語り口や、漫談、大道芸人、たたき売りの口上、もの売り(金魚や、トウフや、青竹や、石焼芋)、舞台役者のせりふなどがあります。

このあたりに、日本語をことばとして生き生きとさせる大きなヒントがあります。

子供が、おもちゃを買って欲しくて、「おかあ!さん!」といういい方は、生きていることばだから、人に働きかけるのです。

 

〇大きく踏み込んで流れをつくる

 

フレージングの話に戻ると、最初に大きなバウンドをするほど、はねて進める力が長く残っているということです。早めに大きく踏み込み、あとで自由度を長くとるのがフレージングの基本です。この自然な力を充分に生かしてもっていくと楽に心地よく聞こえます。

小さな波ばかりでは全体的に動きも出にくいし、毎回そういう波をつくらなくてはいけないので、大変な上に単調な一本調子になります。外国人があんなに楽しく速く話せるのは、このフレーズでの力の生かし方といえるのです。

 

〇声は身体という楽器から出る

 

“お腹から声を出せ”とは、よくいわれますね。ところが、それがどういうことなのかは、よくわからないのではないでしょうか。まずは、声を出すための楽器としての自分の身体のしくみを理解し、発声のためのフォームをつくっていきましょう。

 

〇身体が声を出す楽器ということは

 

私たちの声は、喉にある声帯から生じ、身体に共鳴させて出てくるものです。つまり、身体が声を出す楽器ともいえるのです。

 となると、身体そのものが成長する、あるいは鍛えられるにつれ、楽器も変わっていくわけです。つまり、他の楽器のように、完成されたものとして扱えないのです。声については、生まれ授かった自分自身の身体という楽器をよく知り、どううまく使いこなすかを学んでいく必要があるのです。

 

〇姿勢-身体と呼吸と声を一つにするために

 

畳文化で猫背の姿勢で生活していた日本人は、喉を圧迫し、こもった喉声やしゃがれ声にしてきました。そういう声を小さいときから、たくさん聞いているために、私たちの声もそういう声になりやすいのです。

しかし、本当に声の機能を充分に発揮しやすくしたところの身体の理に従った声が求められます。まず、本当に自然な声にするために必要な姿勢を習得していきましょう。

何事においても、その人の姿勢を見ただけで、おおよそのキャリアがわかるといわれます。何をするにも、姿勢というのは基本です。

ヴォイストレーニングの基本姿勢に関しては、声のために最も習得しやすい形を優先します。その形ができて自由に変化することを目指します。

自然で無理がなく、楽であることがよい姿勢の条件です。しかし、最初はどうしてもどこかに力が入りがちになります。姿勢は、練習の始めと途中と終わりと3回チェックしてください。

 

〇姿勢を正しくする

 

次の順に整えてみてください。

1.胸の位置をややあげて、背筋をピンと伸ばす(やや鳩胸のように)

2.首をまっすぐしたまま、あごをひく(頭のてっぺんからコインを落とすとまっすぐ身体のなかを通るように)

3.重心は低めに(やや足を開くとよい)

4.顔はまっすぐに前を向く

 

4つの姿勢

 

1.基本姿勢(立っている)

壁に、かかと・お尻・背中・後頭部をくっつけてください。そのときに、両足のかかとを、左右にこぶし二握りほど開きます。そこから、このこぶしを、背中と壁の間に入れてみてください。少し胸が上がると思います。その状態であごをひき、肩があがってないのを確認してください。

 

<チェック>

・ひざを軽く曲げて、かかとを床から離すと、つま先で立つことになります。

・ひざの屈伸を数回くり返し、身体の重心が下の方にきていることを確認しましょう。

・息を吐いて、胸や肩が動くようでしたら、胸の位置をハト胸のように少し高く持ち上げてみましょう。

・どうしても、練習中に肩や胸が動くときは、重いものを両手にぶら下げたり、寝転んで、身体を固定してみるとよいでしょう。

 

2.基本姿勢(腰かける)

イス(硬いもの)に腰かけ、背骨をまっすぐに伸ばしましょう。両手は軽くひざがしらのやや上にそえます。前かがみにならないようにしましょう。両足の幅は基本姿勢1と同じくらいに開きます。この形のまま立つと、基本姿勢1になります。

 

3.基本姿勢(前屈する)

腹式呼吸のわかりにくい人は、最初の姿勢を前屈にするとよいでしょう。腹式呼吸で声を出すとき、立ち姿勢でやると、胸の上だけに息を入れてしまう人が多く、また、前方のお腹ばかりが動いて、うまくいかないことが多いからです。

腰かけたり、前屈してやった方が始めは、声がつかみやすいでしょう。身体と息、息と声を結びつけるトレーニングとしては、身体全体をリラックスさせるためにも、この基本姿勢3を用います。

このときは、背中の線と頭の後ろの線が一直線になるように注意してください。

 

4.基本姿勢(寝ころぶ)

仰向けに寝ころがると、身体の下半分を固定できるので、呼吸を自覚しやすいです。

どんな姿勢でも、背中と後頭部の線は一直線になるように気をつけましょう。

 

〇姿勢のチェックリスト

 

□自然でゆったりした楽な姿勢

□顔はいく分、上向き

□目はしっかり見開く

□視線はまっすぐより少し上に

□下あごは少しひく(うなじを伸ばす)

□肩、首に力を入れない

□首は少し後方にひき、まっすぐおとす、立てる

□胸をはり、広げたまま、やや高く保つ

□腕はだらっと下げる

□お腹は引っ込める

 

〇発声のしくみを知る 

 

まずは楽器としての、私たちの身体の構造を、発声、呼吸のメカニズムを中心に、四つに分けて大まかに捉えてみましょう。

 

1.呼吸(呼気)がエネルギー源

人間の身体という楽器をオーボエにたとえてみると、声帯は、そのリードにあたり、声の元を生じさせています。リードを振るわせ音を生じさせるのが、肺から出る息(呼気)です。

声帯そのものは動かせないので、呼気をコントロールすることによって、周辺の筋肉も含めた声のコントロールを習得していくわけです。そこで、確実に声をコントロールするのに、腹式呼吸のトレーニングが必要となります。息は肺を取り囲む筋肉の働きによって横隔膜を経てコントロールされています。

 

2.声帯で息を声にする

肺から吐き出された空気は、直径2cmぐらいの気管を通って上昇してきます。咽頭は、食道、気道を分けるところにあります。気道の調節は、唾を飲むと上下に動く喉頭でやります。この喉頭に、V字の尖った方を前にする象牙色の唇のようなものがあります。これが声帯です。

 声帯は、気管の中央まで張り出し、左右のがくっつき、呼気がせき止められます。一秒に何百回~何千回もの開閉で、声を生じます。その響きのない鈍い音を、喉頭原音といいます。

 

3.声の元の音を響かせる

声は、声帯の振動から空気のうねりで生じます。これは口笛のように、口唇そのものの音でなく、空気音なのです。いわば声帯という、二枚の扉の狭い隙間で生じる音のことです。

その声を大きくしたり、音色をつくりだすのは、楽器の管(空洞)にあたります。(声は喉を中心に口や鼻までの声道で、共鳴します。身体の共鳴腔は、口腔、咽頭、鼻腔などです。口内の響きを舌で変えて母音をつくります。)

 

4.唇・舌・歯などで、声をことばにする

響いている声を、舌、歯、唇、歯茎などで、妨げて音をつくります。それが子音です。(これを構音・調音ともいいます。)

「最強トレーニング」 Vol.10

〇声の表情を伴って伸ばす

 

 「お世話になりました」とはっきりいってみてください。ゆっくりと、しっかり、やや大きな声でいいます。「せ」とか「た」とかが、うまくいえましたか。

もしうまくいえない音があるようでしたら、その音を後でしっかりとトレーニングします。

ことばのトレーニングを繰り返し行なうのもよいでしょう。ついでに、「よい経験になりました」に変えてみましょう。

そこで、表情をつけてみます。役者になり切ってやってみてください。

単に大きな声を出せばよいというわけではありません。そのなかにメリハリをつけ、あなたのもっているイメージが伝わるようにしてください。そのイメージをこわさないで表現を大きくしてください。

強弱、メリハリをイメージで大きくとっていくのです。すると、少しずつフレーズが大きくなって、音が伸びてきます。ことばがいい切れなくなったり、フレーズの1本の線の中でことばが処理できなくなったら、それ以上伸ばすのをやめます。

何度もトレーニングしているうちに、声はうまく伸びるようになってきます。

言霊(ことだま)といって、ことばの中には魂、命が入っているのです。これをよりパワフルに伝えるために伸ばしていくのですが、表現力が失われるほど、だらだらと伸ばしてはいけないのです。

 

  • 声に表情をつけるトレーニング

たっぷりと表情をつけていってください。

1.「私は、とてもうれしく思っています」

2.「お世話になりました」

3.「よい経験になりました」

 

  • たたみかけるトレーニング

テンポをあげ、ハイテンションでピーク、サビを出しましょう。

テキ屋、もの売り、フーテンの寅さんなどのタンカを参考に、勢いよくたたみかけてください。

1.「はいはい、どんどん、買ってちょうだいね」

2.「それはね、一番いいよ」

 

  • ツッパリのトレーニング

断定的にいって、強いひきつけをねらいます。やりすぎると、反感をもたれますが、こうして緊張感を合間で喚起させることは、有効なことです。そのあとに、やさしくゆっくりと声を使うと、より効果的になります。緩急の緩と急を、うまくどこかに入れていくわけです。きっぱりと断定してから、ふつうのいい方に戻してください。

1.「いりません。でも、時間をいただければ、検討いたします。」

2.「いけません。気をつけてください。」

  • 嘆願するトレーニング

あまり卑屈にならないことです。人柄や性格にもよりますが、相手によっては、それが効果的なこともあります。

気持ちを込めていってみましょう。

1.「お願いですから、残してください。」

2.「助けると思って、お決めください。」

  • 下手に立っていうトレーニング

 聞く人はお客様、お客様は神様と、常にうやまうことです。敬語をベースに使い、相手の尊厳に配慮します。

 嘆願してみましょう。

1.「何卒、ご容赦願えませんでしょうか。」

2.「どうか、お許しください。」

3.「失礼致しました。」

 

〇プロミネンス(prominence 強調)とは

 

プロミネンスとは、表現を相手に強く伝えること、強調してはっきりと伝えることを示します。「際だち」「際だたせ」「卓立」「対比の強調」「文アクセント」などともいわれます。ある特定のことばを結果として強調することです。

強調するためには、強い調子でいうのが、一番、簡単です。その他にも、間やテンポを変えるなど、いろんなやり方があります。

これは、個人の選択に任されている場合と、社会的習慣として決まっている場合があります。いいたいことをわかりやすく伝えるために強調します。どこにこのプロミネンスをおくかで、文章の意味が変わってくることもあります。

 いつも、どの語がどのように際立っているかを、チェックしましょう。

〇プロミネンスの原則

 

声で全てを強くいうと、均等化され、逆効果となります。特に意味をもつ大切なことばだけを強調するのが一般的です。

大声でいったために、発音が不明瞭になったり、うるさくて何をいったのかわからなくなるようでは、本末転倒です。

特に伝えたいことばに絞って目立たせるのが、プロミネンスの原則です。

この場合、プロミネンスとは、強弱アクセントの強勢のことではなく、語や文章そのものを強めるということです。

強くいうと、大きく高くなりがちですが、結果的に、しっかりと伝わればよいのです。ですから、プロミネンスにもいろんな方法があります。そのことばの前後を弱くいう。前後に間をとる。長くいう、太くいう、はっきりという、表情や方向を変えていう、などもプロミネンスの手法です。

 

  • ことばに緩急をつけるトレーニング

/のついているところまで速く、//のついているところまでゆっくりいってみましょう。

1.「あなたの上司は/ここから遠く離れたニューヨークの郊外に//住んでいます。」

2.「私は/いつも//あなたのことをずっと//思っています。」

 

  • 強調(プロミネンス)トレーニング

(1)低く、弱く読む

 次の下線部に-のついたことばを、声を低く弱く、小さな声にして読んでみましょう。そのことばの意味を強めるように、声に気持ちをこめます。

1.「お客様が ずぅっと 迷っているときは 声をかけましょう」

2.「会議で どんどん 発言をしましょう」

(2)伸ばして読む

 次のように一つの声を長く伸ばすと、そのことばの意味が強調されます。

 次の下線部に-のついたことばの意味を強めていいましょう。

1.「そんな バカな話があるものですか」

2.「時間はまだ たっぷりと あります」

(3)速く読む

 次の下線部に-のついたことばを、声を速めて(早口で)、意味を強めてみましょう。

1.「わたしの勘が ぴたりと 当たった」

2.「そんなこと 知るわけないでしょう」

(4)強調箇所を変える

「私は(1)、午後一時に(2)、会議室で(3)、営業部長と打ち合わせをします(4)

1.誰が行くのですか (1)

2.いつ、行くのですか (2)

3.どこに行くのですか (3)

4.何をしに行くのですか (4)

 この四つの疑問のどれに最も強く答えるかによって、それぞれ際立たせたいところ、プロミネンスがおかれるところが違ってきます。

〇話の調子を変える

 

チェンジオブペースとは、ペースをチェンジする、話の調子を変えることです。

自分の声をテープで聞いたとき、単調で、退屈に聞こえるとしたら、調子が変わらないからです。話すのに、慣れていないと、大体そうなります。声や話し方に変化がないと、聞いている人は引き込まれません。

 でも、あなたは友だちに、退屈な話をする人だとは思われていないでしょう。それは、友だちと話すときには、チェンジオブペースをしているからです。それでも仲間内で聞いて退屈なときもありますね。その理由を考えてみましょう。

・話題がないとき、自分に関心のない話題のとき

・一方的に相手ばかりがしゃべっているとき

・間合い、テンポ、リズム、フィーリング、呼吸が合わないとき

・メリハリ、相手のしゃべり方が単調で変化のないとき

・発音、ことばが聞きづらいとき

友人との間では、しゃべり方まで問われることはないでしょう。おたがいのことを知っているし、関心のあることをしゃべっているからです。

それよりも、呼吸、間、コミュニケーション上で大切なことが、案外と気づかないまま、いい加減になっているものです。

友人相手ではないときは、もっとわかりやすく伝わるようにしなくてはいけません。

たとえば、友人であっても、一人でずっとしゃべっているのに、聞いている人が退屈せず、魅き込まれていく人もいるでしょう。話題も大したことがないのに、次の一言が待ち遠しいような話し方をする人、そこに自然と含まれている技術が、チェンジオブペースです。

〇ことばに抑揚をつける

 

 ことばには必ず抑揚があります。たとえば、子供達がふざけあって話していることばは、大きくなったり小さくなったりして、その感情を伴って私たちの耳に入ってきますね。

しかし、その子たちに教科書や作文を読ませたり、ト書きを話させてみてください。「ボクノオトウサンハ・・・」といきなり、生気を失った単調で、一本調子なことばの羅列、いわゆる棒読みになってしまいます。

 普通の会話の中にも、音節(シラブル)がもつ自然なアクセントがあり、強調されているところがあります。これによってことばの意味がわかりやすくなるのです。

 こういったことばに対する感覚の鋭さを磨くためには、文章を読み聞かせる力をしっかりとつけることからです。すべてのことばは、高低・強弱、そして音量、リズムと変化をもっています。これをしっかりとらえ、それをさらに大きくイメージしたのが歌や芝居のせりふだと思ってください。

 

〇抑揚と強調のトレーニング

「あなたの先日の企画は とてもよいと思います」

 これを、語調、語気、語勢、間をいろいろと変えてやってみましょう。

1.語調 高低 高い-低い

2.語気 強弱 強い-弱い

3.語勢 緩急(テンポの変化) 早い-ゆっくり

4.間 「企画は」であけましょう。その前後の音の高さに気をつけましょう。

 そこで、ことばを発見し、感じることです。

 ことばの一つひとつに情感が入るような表現ができるためには、声、ことばに強い関心をもって、感じることです。こういった音の世界の動きに、感性での快さを捉えていくことが、上達への道となります。

〇緩急の表現のトレーニング

 緩急は、普(普通)→緩→急→普→緩→急→普とつけます。

 緩では、感情を抑制し、急で、感情を解放します。

「ゆっくりとつたえる」

1.ゆ っ 、く り 、と 、つ、た、え、る

2.ゆ っ く り と、つ た、 え る

3.ゆっ・・・く・りと、つた、える

緩急とは、単にぶつ切りにしたり、音間をあけることではありません。一つずつ切ると音が切れて幼稚になるので、音を持続させる気持ちでいいます。強アクセントをおいたあと、たっぷりにゆったりというとよいでしょう。

 抑揚(イントネーション)は、ことばの調子、語調、語気、語勢に気をつけ、情感的に入れ込んだ表現で、練習しましょう。充分に気持ちを込めてやってみることです。

 長い間のあとは、やや高めに大きく入ると効果的です。これを「高出し」といい、日本語の場合は特に大切です。

 

〇声とことばから表現を感じる

 

ここで、怒った顔で笑ってみましょう。心と身体(生理)は一体のため、表情と違う表現をするときには、ひどくアンバランスで、ぎこちなくなるでしょう。次に、笑った顔で怒ってみましょう。どうでしょう。

日本語は、プライベート、オフィシャルの区別が大きいのに、日本の教育では、音声表現をあまり学びません。そのためか、どうも日本人は音声表現において、うまくありません。たとえば、英語のように抑揚をつけて日本語で話せたら、そのまま対話として通じる表現になりやすいでしょう。日本語でそういうことをしっかりやっているのは、役者の養成所くらいです。

 

そこで、役者のようにしっかりとした声で話すことを心がけましょう。それを、テープに録ってチェックしましょう。

ひとつはことばを大きく伸ばす方向でとらえていくこと(声量)、もうひとつは、高低に幅をもたせていくこと(声域)です。この両方が声の基礎条件になっているといえます。そこで、日本語もそのように応用してみるわけです。

 メリハリをつけるにも、どこを強調すべきなのかを考えなくてはなりません。

 抑揚には、リズムやことばの感じをうまく生かすようにしましょう。

「最強トレーニング」 Vol.9

〇手本とするプロのスキルを盗む

 

プロの話や声の使い方から職業別に、特に学ぶべきとこ ろを示しました。それぞれに特色がありますね。

□アナウンサー〜 アクセント、イントネーション、正確さ、メリハリ、標準語

□役者〜 ジェスチャー、表情、パワー、インパクト、声質、スピード、表現

□声優〜 発音、声色、表現、個性

□落語家〜 語り口、伝え方、動作、間、ユーモア、表現

DJ、パーソナリティ〜 コミュニケーション術

□朗読家〜 イメージ、語り、声質

□講演家、インストラクター〜 構成展開、内容

ここでは、彼らのテクニックをいくつか学びましょう。

 

〇人前で話すときの注意

 

人前での話では、聞く人は発言しない(できない)のですから、その分、聞いて噛み砕くための、間をとらなくてはいけません。こういうときは、話し手がリラックスしな いと、聞く人もくつろげません。聞く人への気配りを忘れ ないようにします。

また、一方的にこちらから話してばかりでは、相手にと って不快なものとなりかねません。特に、知識の押し売り はやめましょう。

元首相の田中角栄は、「どうですか、みなさん」「そう思いませんか、みなさん」が口ぐせでした。

大きな声だけでは、息切れするし、うるさくて聞く人も くたびれます。大きめのイメージで声を出し、動き、ジェスチャーの方を大きめにするとよいでしょう。

 

〇人前で話すときに覚えておくと、間をつなげることば

 

1.「聞こえますか、一番、遠くの人。 はい。

では、話し始めます」

2.「なんだかわからなくなってきましたね」

3.「•••ときまして、これが私の専門ですから」

4.「―のようなものです」

5.「―みたいな」「―という感じです」

全体と部分、スタンスをうまくつかまえておくことです。

 

〇声のテクニックのいろいろ

 

文頭をたたみかけ、文末はゆっくりと抜くと、わかりや すく聞こえます。

ピリッとした声で入り、ピークは低音で息をまぜていう とよいといいます。

間は充分に保ち、たたみかけと、間で、話を強烈に伝え ましょう。

どんなに気のきいたことばでも、声の力が伴わないと、 効果は半減します。

肩の力を抜きましょう。両手を効果的に使いましょう。

 

  • 呼びかけ調を使う

「あなたの」「みなさんの」「わたしたちの」

  • 軽い例をあげて重々しさをとばす

「―さえすれば〇〇できる」

  • 質問話法

「このなかでパソコンをお持ちの方…」

 

  • 声で相手をじらせ、ひきつける効果をねらうトレーニン グ

1.「あとで述べますからね」

2.「もう少し先で教えましょう」

3.「ここからが大切なのですよ」

4.「さて、どうなるでしょう」

5.「ここまでは、誰でもわかりますね」

6.「それでは、本題です」

7.「今日はここから十五分だけ、しっかり聞いてください」

8.「これまでは序論、ここからですよ、大切なのは」

 

  • 得した気分を与えるトレーニング

1.「ここだけの話ですがね」

2.「誰にもいってはいけませんよ」

3.「あなただけに話しますけどね」

 

  • 人をひきつける出だしのトレーニング

1.「おもしろい話なのですが」

2.「耳よりな話なのですが」

3.「とっておきの話ですが」

4.「ここだけの話ですが」

5.「オフレコですが」

 

  • 話に期待をつなげるトレーニング

1.「次はもっとおもしろいですよ」

2.「こうなんですよね」

3.「実は、ですね…」

4.「それではこれをみてください」

 

  • クッションことばのトレーニング

1.「厳しいことをいうようですが、」

2.「誰でも人ごとだと思っているのですね。これが…」

 

〇ことばや声で逃げない

 

デール•カーネギーは、「話術の魔力は君のもの」で、「あ なたのいうことを力強く、断定的にいいなさい」といって います。これは、「―と思われる」「多分―」「私個人の意見 では」などといったあいまいなことばを使わないようにと いうことです。ルーズベルトは、これらをいたちことば (weasel words、つまりおくびょうな、シッポがついている意味)と名づけました。

主張したいときは、強調するところをはっきりと示しま しょう。

それには、断定することばを使います。ただし、声を強く使いすぎると押しつけがましくなり、相手が拒否感を抱 くので、よくありません。自分の感情を他の人に強制しす ぎないことも大切です。

 

  • 断定することばとそのいい方のトレーニング

次のことばは、強い口調で使ってこそ効果をあげます。

1.「きっと」

2.「断じて―ない」

3.「またとなく―」

4.「とっても」

5.「たいへん」

6.「すごく」

7.「ひじょうに」

 

〇ひかえて強調する

 

ひかえめ、わざと弱めるのも効果的です。たとえば、程度を表わすことばも「すごく大きい」よりも、やや手前でセーブするとよいでしょう。

1.「〇〇の次くらいに大きい」

2.「日本で二番目くらいに新しい」

 

〇テンポとスピードを変える

 

話し方のテンポは決まっているものではありません。聞 く人によっても、話の難易度によっても違ってきます。こ れは、話し方のメリハリや話し手のスタイルによります。

テンポは速くなったり遅くなったりしてもよいでしょう。 聞く人にとってわかりやすくなるように工夫することです。  単調で退屈で眠くならないように、相手の気持ちになって、

うまく変えることです。

 

1.スローテンポ

難しい話をわからせるとき、また相手を反省させたり納 得させる必要のあるときには、ゆっくりとかんでふくめる ように話します。

難しい(話や箇所)、抽象的、数字・専門用語、ポイント など。

特に相手が、初心者、外国人、一般の人のいるところ、 メモ、ノートする人の多いとき

2.アップテンポ

相手があまり聞きたがらない話は、スピードをあげます。 簡単、重要でない、具体的、わかりやすいところ。

その話について、もっと詳しい人がいるところや自慢話 など、早く切り上げたいところではなおさらです。

 

  • テンポを変えていうトレーニング

次の文を、1.ふつう、2.速く、3.ゆっくりと、三通りで読んでみましょう。

「スピードは速くなったり遅くなったりしてもよいでしょ う」

 

〇カラオケの歌詞をBGMにのせて語る

 

カラオケ曲で、歌うのではなく、語るトレーニングをし ましょう。歌詞には、起承転結があります。しかも短いので、最適です。

日本語は、高低アクセントのため、強弱がつきにくく、 間延びして、ダラダラした話になりがちです。

 

〇方言も使いよう

 

方言には、日常会話のなかではほのぼのして味があるの で、最近はもてはやされています。関西弁などは特に母音 が多く、やわらかい言語です。

しかし、パブリックなスピーチなどには、誰にでも伝わ る共通語で、話せるようになりましょう。

 

〇リズムをつける

 

あまりにゆっくりと平坦に話していると、聞き手は退屈 になります。話には、メリハリや間が必要なのです。文は短くいい切ります。そして鋭く切り出し、リズムをつくり、 それにのせていきます。これがスピーチのコツです。

短く切ると次のことばが出ないのではと思い、恐くなる ものです。しかし、堂々と間をあけてください。

間があいてしまったときには、考えればよいのです。沈 黙を恐れる必要はありません。その間で、相手は考えたり、 しゃべったりしているかもしれません。

聞く人は、間でそこまでの話をまとめて、そこからよう やく先に頭がいくのです。

夫婦げんかでの間やたたみかけ方こそ、声の使い方と間 のお手本であるといわれます。表現すべき必然性の高いも

の(たとえば、映画の弁論ものの1シーン)から学ぶとよいでしょう。

 

〇声はムチのように強くしなやかに使う

 

口から発された声が、ハタキの先のようにバラバラになっては困ります。あたかもムチのようにどこへ振ってもし なやかに、強く、11本までしっかりと最先端のさらに先 まで力が伝わるようなイメージを声にもちましょう。遠く の的に矢を射るように、声はいつもしっかりと焦点をもっ て出すことです。

たとえば、「わたしは」といってみてください。「た」や 「し」が弱まりませんでしたか。

一本の線のように身体から発声できましたか。もちろん、 強くして「わたしはあー」と、選挙演説の人とか体育会系の人のゴリ押し発声にならないようにします。

フレーズとの間をもたせるために、呼気のコントロール と深い発声ができなくてはなりません。これも、「私は」と きちんと伝わるようにいえなくてはならないのです。

 

「最強トレーニング」 Vol.8

〇声のうまく使えないことのデメリットを知る

私の友人で、とてもおもしろい情報をたくさんもっている人がいます。ところが彼が話すと、そのよさがまったく伝わらないのです。充分に情報や話すべき内容をもっているのですから、これは、話し方、伝え方が問題ということになります。 

話し方は、音声によって伝達する技術です。たとえ、どんなによいことをいっていても、声が小さすぎては伝わりません。発音が聞き取れなくても伝わりません。 

しっかりと話を伝えるなら、最小限の声量と相手が聞きやすい声の使い方が必要なのです。 

とはいえ、話し方においては、どこまでが技術なのかがわかりにくいものです。 

そのため話し方や声の使い方をしっかりと学ぶには、かなり高い意識をもたなくては、いうに易く、行なうは難しです。 

つまり、人前でよほど苦い思いでもしない限り、トレーニングの必要性にめざめないでしょう。そのときどきを適当にしのいでいるうちに慣れてしまうからです。そのため、 いつまでたっても、あまり上達しない人が多いのです。 

たとえば、表情はポーカーフェースのまま、どんなこともボソボソ早口でしゃべる人がいます。とてもわかりにくいのですが、日本人社会のなかでは、こういうことを指摘する人は、あまりいないのです。 

そのため、本人は気づかず、いつまでも変わりません。まるで外国人と話すように、話す内容の実質半分くらいしか伝わっていないのに。 

としたら、これによって、その人はどのくらい損をしているかは、はかりしれません。こういうことは程度の差こそあれ、誰にでもあてはまることなのです。 

1.声が伝わりにくいこと、それによって多少ともデメリッ トを被っていることに気づくこと 

2.話し方、声の伝え方をよりよく直すこと 

そのためには、話を声から見直し、声をトレーニングすればよいのです。 

 

〇いい換える力をつける 

 

声やことばを豊かにすると、伝わることも豊かになります。単一な声でのいい方では、聞く人は飽きてきます。よくひきあいに出される例ですが、TV の料理番組でのタレントの「おいしいですね」の繰り返し、「アンタの仕事は味わうのでなく、その味を適確に伝えることだろう」といいたくなりますね。話としては、貧困なボキャブラリーで 通用しません。 

しかし、これも声の出し方を変えることでかなりカバーできます。タレントは、まさに内容のない話でも、相手との間をもたせるプロです。声の表情や身体の使い方に思わ ず感心してしまいます。 

ビジュアルに頼れないラジオでは、声がもっとも有効に生かされています。 

テレビのアナウンサーとラジオのパーソナリティの話し 方を比べてみるとよいでしょう。 

考えてみれば、話というのは同じことを伝えるのに、何度もいいかえて、理解できるまでわかりやすく説明するのに大半の時間をかけているものです。それとともに、大体、世の中、多くの人は、同じことを違うことばでいっている だけだということもわかるでしょう。 

つまり、話の伝達の本質は、いい換えです。それは、ことば自体が伝えたいことをキーワードとして取り出し、表象、シンボル化して伝えているものであるからにほかなりません。 

ですから、その一つひとつのことばに具体的な事象や感覚を導き出すイメージが伴ってはじめて、実感がつかめます。そのために、ことばを重ねていったり、そのことばにトーンやニュアンスの変化をつけたりするのです。古館伊知郎さんのかつてのプロレス中継は、まさにその 例でした。多様なボキャブラリーに加えて、あの語り口、声の力が彼をトップキャスターに押し上げたのです。 

 

〇相手にイメージをつくらせる 

 

いくつかのことばを繰り返しているうちに、聞く人のなかには、ある具体的なイメージが生まれてきます。声をうまく使うと、さらにそれが、つかみやすくなります。声に力があれば、一言でそのイメージを伝えられるのです。 

ビジュアル化とは、それを一目でわかるようにしたものです。テレビでは、目で見てわからないところだけ、ことばやテロップで補えばよいでしょう。誰でも見てわかることは最小限の、ことばで止めておかなければくどくなりま す。 

 

〇語りかけ調がベース 

 

声も、所信表明のようになっては、共感を得られません。 語りかけ調にすると、伝わりやすくなります。相手とのコミュニケーションをとりやすくすると、あなたも話すのが楽になります。そういう話し方にもっていくには、いくつかのスキルがあります。 

「こういうことを聞いたことがありますか」 

「3 つ、ポイントがあります」 

「皆さんはどうでしょうか」 

このように、単発に発しても消えていくことばを、先に案内したり、あとにひいたりと、前後にからめていくことによって、話の内容を立体的にわかりやすくしていくのです。こういうときの声は、ゆっくりめに使いましょう。 

 

〇問答調にする

落語のように脚本型、卜書きと登場人物のせりふ、プラス効果音や小道具(扇など)で伝える方法もあります。声は、二人で問答しているような間をとって使います。 

(例) 「……」と、そのおじさんがいったわけです。

「……」と私は答えました。 

「……」とくる。 

「……」てなもんで… (この間、机の上を一つ叩く)

声を転がすように、リズミカルにすると心地よいものです。これも、話を聞きやすくするテクニックの一つです。 

 

〇指示語でまとめる 

 

指示語はあまり使わず、具体的にしたほうがよいといわれます。しかし、指示語のなかには、前後にいうことを示すという働きがあります。これはとても便利です。いったことをまとめたり、次にいうことに興味をひかせることができるからです。このときの声は、やや鋭くつっこみましょう。 

「こんなことがいわれています」 

「こうしたらどうでしょうか」 

「こう私は考えます」 

「こうではなかったでしょうか」 

引用する例を予め指し示したり、後において、まとめることができます。 

 

〇三つという型に入れる 

 

「三つ、ポイントがあります。一つは…、二つ目は…、三つ目は…、以上、この三つのポイントです」

こういう型にはめこんでいくのも、わかりやすくするコツです。 

さらに「次の七つです」のように示し、さらに「サシスセソ…」とか「オアシス」のように、頭の音と絡めたり、よく使うことばでまとめて覚えやすくすると、その部分の話がまとまって、はっきりとします。 

提示においては、声はカチッとはめたように、同じテンポ、同じ声質、同じ声量で使うのがコツです。 

 

〇声で相手に投げかけてみる 

 

「皆さんはどうでしょうか」 

「あなたもそう思いますか」 

慣れないうちは、なかなかこういった一言が切り出せぬものです。しかし、使うと強くひきつけることができます。 声でリーダーシップを発揮するには声の勢い、覇気が欠かせません。思い切ってやってみましょう。 

 

〇難しい表現は、やわらかい声で親しみやすくする 

 

誰の話にも、それぞれ、話のくせがあります。話し方や話のスタンスのとり方も、それなりにその人らしくあるものです。 

身近な人の話し方やその声を思い浮かべてみるだけでも、 いろいろと特色やパターンがあるでしょう。 

そこから自分のクセに気づくことは、話し方や声を学ぶために、とても有効です。決してアナウンサーのようになろうとしなくてもよいのです。むしろ、一般的には、親しみ感のある方がずっと大切でしょう。 

普段はそういうことができていても、難しいことばや説明になると、硬い声でガチガチに固めて、棒読みしていま す。その結果、よけいに難しそうに聞こえます。こういうときこそ、あえて明るく柔らかい声を使うことです。 

 

〇くせになっているいい回し(口ぐせ)をとる 

 

あなたにとっても、使いやすいことばとそうでないことばがあります。もちろん、聞く人によって使い分けも必要です。しかし、思わず多用して害となっていることばもあるかもしれません。 

あなたが話すときに、何度も使っていることばはないでしょうか。 

「非常に」「とっても」「いろいろ」「あのう」など、くせとなっていることばを、チェックしてみましょう。案外と気づかないまま、何回も出てくることばがあるはずです。 

ここでは、多用しないほうがよいことばをチェックしましょう。どうしても、いい換えられないときは、そこでゆっくりとしゃべりましょう。 

・音としてわかりにくく、さけた方がよい紛らわしいこと ば 

「渋谷」(シブヤ)-「日比谷」(ヒビヤ) 

「七時」(シチジ)-これは「イチ」と勘違いされやすいの で、「七」は「ナナ」というほうがよいでしょう。

「急に急転」「広義の意味で」「予め予告する」などは、重複させないことも大切です。 

・話ではわかりやすくいい換えるほうがよいことば 「開幕」→「始まりました。」 

・程度は具体的に表わす 

「しばらく」「まもなく」「すぐ」「けっこう」「ほどよい」「て きとうに」「とても」「口ではいえないほど」 

これらは、具体的な数値や量を用いましょう。 

 

「最強トレーニング」 Vol.7

〇ケースバイケースの声の使い方

 

話では、自分のいいたいことを伝えるのですから、相手を迷わせず、自分の話についていきたいと思わせたいものです。話が終わったら、くどくど語らず、そこでサッとひくというのも大切です。

 引き際の好感度も含めて、さわやかな印象を残しておくのです。

 そのために必要なことは、次の六つです。

 

(話し手に求められること) (聞く人の反応) (声の使い方) (例文)

1.明確な意図(方向) -こっちかい   やや強く張りのある声  「こちらにいらしてください」

2.信頼と安心感 -ついていくぞ   落ち着いた低くおごそかな声  「ご安心ください」

3.聞く人の利益 -ついていきたい   高めに明るく楽しそうに  「このようにすると、うまくいきますね」

4.具体的な方法 -ついていける   しっかりとゆっくりとした声で  「そのまま続けてください」

5.要所、ポイントのまとめ -ついてきたぞ   はっきりと明瞭で芯のある声  「このようになりました」

6.投げかけ -わかった、やれそうだ ありがとう   元気に快活にはずむように  「そうです。そのとおりです」

 

 これに必要なのが、1.話し手の態度、2.声での伝達技術、3.話の内容と価値、4.受け手の理解と納得です。

 つまり、話の内容もさることながら、それをどのように声で組み立てて、指し示し、相手の心に届かせるのかということです。

 

〇話の主筋をキープして、枝葉は声でそらす

 

話は本筋からそれても構わないのですが、それが聞く人にわからないことも少なくありません。つまり、ちょっとした脱線や余話も、聞く人によっては、その位置づけを説明しないと伝わりにくいものです。

うまく構成して話をのせていけば、聞く人は正しく判断できるようになるのですが、聞く人にも、いろんな人がいます。そこで迷いが生じると、話の効果が半減してしまいます。そういうときは、一度、話の流れを説明するとよいでしょう。わかっている人にも確認できて安心感がもたらされるし、一区切りともなります。

 いつ本筋がそれて、いつ戻ったのかを、声を少し変えて明示すると、とてもわかりやすくなります。声は大きさ、速さ、語り口と、いろんな変化をさせることができます。こういった枝葉は、話の腰を折っているのですから、適当なところで戻すことです。

話の幹だけでは、建前、能書きで、理屈としては通っても、納得してもらえるわけではありません。幹をより太く通すために、枝葉にそらすのですから、そこでわかりにくくなったら意味がありません。

 そういうときは、具体的な体験談を入れましょう。話がふくらみ、興味がひきたてられるようになります。もちろん、不要な枝葉は、思い切って捨てるべきです。

 枝葉である以上、幹とつながっていなくてはいけません。わかりにくいときは、そのマップを黒板で明示するくらいの親切心があってもよいでしょう。)

 

〇声での転換のトレーニング

 

ことばとともに声を変えることで、内容の転換をスムーズにできます。

<話をそらすとき>

「ちょっと脱線しますが」

「あ、そういえばちょっとこんな話があります」

<話を戻すとき>

「では、話を戻しまして」

「もとい(古い)」

「ちょっと話がそれましたね」

 

〇話を切り替えるときの声の使い方

 

声で次のような変化をさせてみましょう。

1.ゆっくりと

2.おもむろに

3.声をひそめて

4.息声をまぜて

5.低い声で

 

〇話に信頼性をもたせる声の使い方

 

話に信頼性をもたせるためには、話し手の態度に加え、声の使い方で補えます。

話のなかで、あまりに調子よく、よい話ばかりが続くと、まゆにつばもつけたくなります。

そういうときは、少し声を落としましょう。(低くして、ゆっくりと)いくつかの欠点も、あえて伝えるとよいでしょう。これは、結果として、よいところを強調して伝えることになります。

話にはいろんなタイプや切り出しがあります。ときに警告や不安をあおることにも、声はとても有効に使えます。

 

〇結びは余韻

 

何事も、結びは、もっとも大切です。エンディングが決まりそこなったら、どんなよい話も失敗です。そこだけでもうまくいけば、それまで、失敗していても救われます。ともかくここ一番の自信をもって、明るくさわやかにいい切りましょう。

話は、口から発されては消えていくから、確かなものとしては残りません。発されているところから消えます。残るのは、最後のフレーズの感じだからです。

 つまり、最後の(締めの)ことばと、声の余韻が話の印象の決め手となります。鐘の音と同じで、終わったあとに心に聞こえるものがあって、感じるのです。

 映画評論家の故淀川長治氏の「さよなら さよなら さよなら」、水野晴郎氏の「映画って本当にいいですね」

この二人の名は、名セリフとともに記憶されています。そういえば、捨てぜりふというのも、ダメ押し的に働いてくるものですね。

 

〇話の終わり方

 

「それではまとめておきます」、「本日、話したことは〇〇でしたね」のように、きちんとした声で、話を終わらせます。

□「終わりにします」とはいわなくてよい

□だらだら語りつなぐのはよくない

□終わるまえに、終わることを匂わせておくとよい

 

  • まとめることばのトレーニング

1.「要するに、これまで私の話してきたことは、一言で申し上げると…」

2.「本日の話のポイントは…」

3.「これまでの話をまとめてみますと、…ということになります」

要点を強調し、要領よくまとめましょう。

 

  • 締めのことばのトレーニング

1.「本日は貴重なお時間をいただきありがとうございました」

2.「ご静聴ありがとうございました」

丁寧に、感謝の気持ちを込めていいましょう。

 

〇強く主張するエンディング

 

願望の結び、決意の表明というエンディングもあります。雰囲気を盛り上げて、力強く短く結ぶのは、選挙演説でおなじみですね。

それに対して、問題提起型というのは、断定せず、聞く人に考えてもらうときの、エンディングです。自分の結論を強いず、考えてもらうのです。

 

1.決意表明型

「必ずお役に立てます!」

「皆様のお力添えにかかっています!」

「皆さんのご協力を切に望むしだいであります!」

「私は〇〇ということを肝に命じ、断固として、〇〇する所存です!」

「必ずしや〇〇であると信じています」

「この決意で一杯です!」

「〇〇〇〇でありたいものです!」

「〇〇〇を、ここでお約束致します!」

 

2.問題提起型

「これからは皆さんは〇〇してください」

「〇〇していこうではありませんか」

 

  • 来客への挨拶と別れ際のひとことのトレーニング

ていねいにゆっくりと名残惜しさを声ににじませてみてください。

1.「遠いところお越しいただきましてありがとうございました」

2.「お寒い中をご来社いただきましてありがとうございました」

3.「本日はお忙しい中をわざわざお運びいただき恐れ入りました」

4.「わざわざご足労いただきましてありがとうございました」

5.「では、明後日にお待ちしておりますので」

6.「では、あとはよろしくお願いいたします」

7.「部長の××さんにもよろしくお伝えください」

8.「お気をつけてお帰りください」

9.「では、ご連絡をお待ちしております」

「最強トレーニング」 Vol.6

〇第一印象をよくする

 

話は、最初の五~十分間で聞く人の評価はほとんど決まるということです。つまり、声一つから、次のようなことを感じるわけです。

□頼りない      □安心だ

□信頼できない  □信頼できる

□自信なさそう  □自信をもっている

□いばっている  □謙虚、礼儀正しい

 できる限り、明るく元気な声を使いたいものです。

 

〇話は、導入の声で決まる

 

最初の23フレーズでの声がすべてを物語ります。その人の声に、態度、精神、感性、性格まで、集約されて出てきますから、そこで人をひきつけられるかが、第一の勝負です。ここで悪い印象だと、聞く人の気持ちをあとになって伴わせることは、かなり難しいからです。

 導入部でどういう気持ちにさせるかが最大の問題です。よい映画は、最初のシーン、テンポから、おもしろさが伝わるでしょう。つまり、人の心を動かすに足る価値や内容があれば、冒頭からおのずとそのことを予期するものが声ににじみ出てくるのです。

出だしには、その人の人となりが声に出ます。自分の声の性格を知り、それを意識して、武器として使っているか、それによって、話が支えられているかということに着目してみましょう。

話の切り出しのときに、テンションとやわらかさを共に保つことは、意外と難しいことです。

 

〇第一声の声の出し方

 

自分だけでなく、相手も緊張しています。それをほぐし、ホッとさせましょう。それから徐々に、自分のペースにもっていくことです。

スピーチなら、会場をながめ、数秒間の空白時間をつくって、相手が自分に集中してから、切り出します。

「えー」「えー…」

「みなさん、ええですか…」

「まあ、そのお」くらいは、許されるでしょう。

相手が集中するのに、

・二~三秒の間をあけて、つまり「イチニイのサン」くらいでスタートします

・出だしは、声は低め、ゆっくり落ち着いていることをアピールしましょう

 

〇相手別に声を使い分ける

 

さらに相手のタイプ、気質、気分にも柔軟に合わせたいものです。

話す立場によっても、どこまでやわらかくするかは、許容範囲もありますが…。

 

相手の年齢によって、声を使い分ける

 □若い…語りかけ調 EX.ごくろうさん

 □同年齢…同調 EX.お疲れ

 □年配…ゆっくり、やさしく EX.お疲れさまです

 

立場によって声を使い分ける

 □講師として 

 □参加者として 

 □主催者として 

 □招待客として 

 □接待役として 

 □店員として

 □プレゼンテーターとして

 □受付係として

 □幹事として

 □部下として

 

EX.「本日はありがとう(ございます。)」

1.司会として

2.招待客、ゲストに

3.上司に

4.部下に

 

〇話のペースは、声でつかむ

 

話に完璧ということはありません。誰でも部分的にいい損ねたり、間違ったりすることもあります。

それが全体の信用性を薄めるようではいけません。悪い影響はできるだけ、他のところまで及ぼさないようにしましょう。そのために、失敗は目立たないようにそこで切り、うまくカバーしなくてはいけません。安定した声は、話のミスをフォローしてくれます。

 一番まずいのは、話のペースがつかめないうちのボンヘッド(凡ミス)です。そういうときのミスは、一時ギクシャクしますが、決して深追いせず、先に進めてしまえばよいのです。話よりも、声を動揺させないように気をつけましょう。心配しなくても、どこでも挽回はききます。

 うまく話がのってきたときのとちりなら大丈夫です。むしろ、その人の愛嬌や人間味が出て、話にプラスに働いていくものです。同じ失敗も、声の雰囲気で、吉とも凶とも出るのです。それは、自分の呼吸で運んでいるかどうかという違いです。

 だから、話の本題に入るまでは、予め一気に押せるような展開をもっておくとよいでしょう。うまくいかないときは、定石となるような話を使って、声のペースをとることを優先するのです。そこからゆっくりと本題に切り出すのです。声のペースを安定させるのは、呼吸法などが大切です。

 よほどひどいミスをするか、口うるさい客がいない限り、話の途中で「それは違うぞ」などという指摘や「へたくそ」などという野次はあがりません。だから、一人で調子にのることさえ用心すればよいのです。

 

〇声の心配り

 

話は、自分で作文して、それを読み上げて終わりというものではありません。そこで聞く人の理解度や興味やノリを感じながら、その場においても、絶えずいろいろと変化させていかなくてはいけません。それに応じて、声も変じていくのです。

 そのためには、次のようなことに心を配りましょう(ただし、最初はあまり左右されない方がよいでしょう)。

 

□聞く人の態度

1.理解度 □難しい □簡単

2.興味度 □高まっている □持続  □消失している

3.ノリ  □あり  □なし

 

□話が変じたか、変じたとすれば、その要因

1.間

2.テンポ

3.口調

4.言葉

 

〇相手の聞きたい話をする

 

自分が話したいことと聞く人が聞きたいことが相反してくるようなときには、一時、相手の聞きたいことを優先しましょう。

聞く人にもいろんな人がいるから、すべての要望に応えられるものではありません。

だから、全員に伝えようとするまえに、そのなかの一人に満足のいくように伝えようとするとよいでしょう。その雰囲気を皮膚でキャッチし、悪ければ方向修正し、よければ利用していきます。

聞く人のノリを感じるには、顔の表情、笑いや目線をチェックします。うまくいっているときは、これが自分のイメージとそれほどずれてはいないはずです。

□目線

□顔つき

□笑顔

 

〇相手を絞り込もう

 

最初は、好感をもってくれている(ようにみえる)人に対し、話しかけるようにして、話のペースをつかみましょう。

しかめっつらしている人は、気にせず相手にしないでよいでしょう。そして、話が佳境に入ってきたら、ちらほら反応をみていきましょう。

 

・好感をもっている人をみつける

□よくうなずく人

□微笑んでいる人

□あいさつを返してくれる人

 

「最強トレーニング」 Vol.5

〇声のイメージトレーニング

 

 本番の舞台でありのままの実力を発揮するためには、イメージトレーニングが有効です。

これは、スポーツや芸術の分野では早くからとり入れられています。メンタルトレーニングと並び、自分のもつ能力を発揮するのに大きな役割を果たしているのです。

 つまり、一言でいうと、プレーヤーがそのプレーを予め、同じ時間内に寸分違わずイメージできたら、すでに身体はその通りに動き、成功するということです。話もパフォーマンスと声で成り立っているものですから、この要素を多分にもっています。

 

まず、人前に立っている自分を具体的にイメージしてみましょう。

1.いつ

2.どこで

3.誰の前で

4.何を話そうとするのか

 

あなたの前には、あなたの話を聞きにきた人がいます。そのイメージをもって話をしてみるのです。できたら、声を出して行なうとよいでしょう。これを録音(できたら録画)しておきましょう。

誰かに語りかけるつもりでするとよいでしょう。録音を再生してチェックしましょう。

 

〇演じるということ

 

スピーチ・講演も、研修・会議の発表も、自分を主役にした舞台と考えてみましょう。

人前で話すことは、役者が演じることに似ています。

台本を自分で書き、それを自作自演で、人前でみせるわけです。その演出監督までするのです。

どうしたらよくなるのかがわからなければ、ドラマ、芝居、映画に学びましょう。

聞く人は声にも注目しています。声は、トータルの演出力に負うものです。

次の面からのチェックもしてみましょう。

 

・相手との距離と声の大きさを意識する

1.50cm 小さく

2.1m ふつうに

3.2m 少し大きく

4.3m もっと大きく

5.10m 大きく

 (マイクを使用するときは、マイクを使ってチェックします)

 

・相手の数や場の形式をふまえる

1.対話 11       電話、応対、交渉のとき

2.ミーティング 12~多 会議、討議のとき

3.スピーチ 1:多     集会、パーティのとき

 

〇あがりや過度の緊張が伝わらない声にする

 

なぜ人前で話すとあがるのでしょうか。

それは、第一には覚悟がないからです。

話で失敗しても、命はとられません。人前に出たら「煮るなり焼くなり好きにしてくれ」と開き直ることも大切です。人の注目を集められるこの時を楽しみましょう。あがることも含めて、自分の身体や心臓、脈をいとおしみましょう。

 ときに、自意識過剰になってあがることもあります。

しかし、他の人はあなたが思うほど、あなたのことを気にしていないし、期待もしていません。

さらに、失敗するかもなどと心配することからあがることもあります。仮に失敗しても、他の人は大して気にしません。そういう失敗は、多くの人にも覚えがあるからです。人は、失敗に対して優しいものです。多くの人は、聞いてもすぐに忘れてしまうものです。へたにとりつくろったりすると、あまり見苦しいことはやめて欲しいと思われるだけです。

印象に残らぬスピーチよりは、失敗しても印象に残るほうがよいとさえいえます。

 

〇話すときは、開き直ろう

 

人前に立って、自信のないものをやろうとすると、誰でもあがるものです。この二つが共にそろっているのが、スピーチや人前での話なのですから、あがらないほうがおかしいと思えばよいのです。

 プロの歌い手はもちろん、世界的に名高いオペラ歌手や演奏家のなかにも、毎回、舞台であがるという人はたくさんいます。彼らは、あがりながらも実力を発揮できています。それは、ケタ違いの練習量のおかげと、そのことで仕事をしているという覚悟があるからです。その自信が、それをほどよい緊張としてプラスに変えてしまうほどの力をもっているのです。

 スピーチも、この緊迫感がなければ、終わっても本人も聞く人も今一つスッキリとしないのではないでしょうか。

 あがって力が出なくなるのは、あがったせいではなく、あがることを恐れ、あがったら何もできなくなると思い込んでいるからです。間違えたり恥をかくことを恐れる気持ち、よいところを見せようと気負う気持ちが、誠実に伝えようとする気持ちを邪魔しているのです。

 伝えることを楽しもうと徹したとき、あがっていようがあがらなかろうが、うまく話せるようになるものなのです。

 

〇あがり防止法

 

 それでも、少しでも落ち着いて、うまく話したい人のために、あがり防止対策をいくつかご紹介しておきましょう。いろいろ試してみてください。声が震えなければ、そうはわからないものです。

 

□練習を積み、自信をもって話せるようにすること。

□会場をあらかじめ見ておき、できたら立ってみること。

□他の人が話すときもいっしょに話しているつもりでリハーサル(疑似体験)をやっておくこと。

□お客さんの一人に聞かせるつもりで、マイクのなかに向かって、あるいは自分にいい聞かせるように(「お客の顔をカボチャだと思え」といわれる)。

□手のひらに人と書いて三度、飲み込む。

□震えがきたら、全身に一度、力を入れてから脱力する。

□ひざがガクガクするようなら、足の親指にしっかり力を入れてぐっと曲げてみる。あるいは、ひざの屈伸運動をしてみる。

 

何よりもよいのは、深呼吸することです。まず、大きく息を吐きます。そして、ゆっくりと入れます。

あがるときには、顔が熱くなったり、息がうまく吐けなくなるからです。冷たいもので顔をぬぐったり、ゆったりと、何か好きな言葉を声に出して読んだりすると、落ち着くことでしょう。

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